【インタビュー】BIGMAMA、身体のパーツをモチーフに制作されたメジャー1stアルバム『-11℃』

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■ロックバンドで“ビタッ”っと終わることってすごくカッコイイ
■息をのむ瞬間をロックバンドが作れるかはすごく魅力的なこと


――「Funbalance」という曲が良いですね。コードを軽快に鳴らしたギターの使い方も音色も他の曲とニュアンスの違いますよね。この曲だけちょっとテイストが違って聴こえるのはどうしてなんでしょう。

柿沼:この曲は、どちらにも行けたんです。ゴリゴリでボトムがしっかりしてサウンド的にも歪んでいる、パンクっぽくも作れたんですけど、金井の歌詞の世界観とポップさに僕は呼ばれた気がして。だからこの曲だけテレキャスターを使って軽やかに録ってみて。この曲が良いっていう人も結構いたので、この曲の持って行き方はこれで良かったなって思ってます。

――リード曲の投票とは別に、バンドとして「この曲があったからこそこのアルバムができた」という1曲を選ぶとしたら、核になった曲というのは、やはり「心臓」であるた「Strawberry Feels」なんですか。

金井:逆説的に言うと、「CRYSTAL CLEAR」「Funbalance」はこのアルバムに入れなくてもよかった。入ってなきゃいけなかったのは、1曲めの「YESMAN」でした。「CRYSTAL CLEAR」は、僕がある程度完成させて持って行ってしまったことと、ドラムが打ち込みの要素で完結してしまっていることを含めて、最初に言った“一点突破型”の作品にするときに、初期設定がちょっとズレてたんです。ただ、最終的にそのズレをその道筋の外枠だと自分たちの中で認めて心地よくできたのでOKなんですけど。それがギリギリのラインだったので、その中に「Funbalance」がきちんと収まったんだと思います。それで言うと、今回みたいにリード曲をファンの方に選んでもらうのはいいのですが、曲順を決めてもらうのはダメなんです。それは、僕らが作品として美学を持ってやっているところなので。料理の出し方というか、何から味わってくれたら一番美味しいかっていうオススメがあるので。1曲目の「YESMAN」は今、信念を持って一線を引きますっていう、自分たちの意思・態度を表明する曲なんです。そこからスタートすることが、このアルバムにおいて僕らが緊張して心意気を持って踏み出す一歩目、一音目なので、それはすごく必然性が高いというか、当たりまえだけど一番勝負しているところなんです。


▲『-11℃』初回限定盤


▲『-11℃』通常盤

――「YESMAN」は、余韻がそのまま2曲目の「Ghost Leg」に繋がって行きますよね。これは、2曲セットで自分たちの意思を表明しているようなところがありますね。

柿沼:これは、偶然でした。「Ghost Leg」は「Strawberry Feels」の次くらいにできていた曲なので。「YESMAN」を作って曲順を考えたときに、コードもたまたま一緒だったので、空気感もすごく繋がって。

金井:最終的に、曲順をプレゼンするときに、コードが同じだなっていうのは、最初からわかっていて。こうしたらどうかっていう案は割とスッと通りましたね。

――しかも、1曲目が「手」2曲目が「足」ということで、手足を動かしてここから歩きだすっていう、アルバムのスタートに相応しい感じになってますね。

柿沼:ああ、確かに。

金井:足は、(曲作りが)速い方がいいと思っていました。「躰」をテーマに書くときに、下半身が難しいという自覚があったんです。例えば「手」だったら、「その手を広げて~」とか「手をつないで~」とか、簡単に書けそうですよね。でも足って難しいと思っていたので、曲作りの初期の段階で「足」で早めに済ませました。「Ghost Leg」は春先にはできていてライヴでやっていました。そこで、このアルバムの下半身の人体模型みたいなものができた気がしたので、このテーマで行けるっていう確信を与えてくれた曲だし、制作的にはこの1、2曲目が大きいですね。このアルバムがどういう作品になるかを自分たちで表明する上で、必要不可欠だったと思います。

――フル・アルバムって、繰り返し聴いていると7、8曲目が好きになるようなところがあると思うんですよ。そういう意味で言うと、「Funbalance」「Miffy's Mouth」ってすごくアルバムらしい位置に置かれてるなって。

柿沼:すごく、わかります。僕も、5年後くらいに改めて聴くと「一番好きなの、7曲目かも」みたいなときがあるので。それがアルバムの魅力なのかなって。何度も聴いてる中で、車を運転しながらちょっと考えごとをしているときに、フッと流れてきて耳に残る曲というか。この曲をそういう位置に入れようって意識したわけじゃないんですけど、「Miffy's Mouth」ができたときに「これ、推し曲だね」って言っていたくらいの曲なので、それがここに入っているという安心感が、良いアルバムになっているポイントだと思います。

――「Miffy's Mouth」は、ブレイクしたときの静寂が、アルバム1枚を通してもとても印象的でした。この曲はどんなイメージでサウンド作りをしたんですか。

金井:昨今、静寂にビビっているところが自分も含めてあったんです。ビタッと止まって誰も何も喋ってない、みたいなところが。ただ、古くはマイケル・ジャクソンのあのポーズ(「smooth criminal」で見せる前傾姿勢で止まるパフォーマンス“ゼロ・グラヴィティ”)でずっとみんなが息を飲んで観ているみたいな、ロックバンドで“ビタッ”っと終わることってすごくカッコイイなと最近思っていて。みんなが息をのむ瞬間をロックバンドが作れるかどうかっていうのが、すごく魅力的なことのように感じているんです。「Miffy's Mouth」や5曲目の「Jelly Miens」の曲作りをリアドの家でやっていたときに、「何もしない方がカッコイイ、キメでちょっと放っておいた方がカッコイイ」っていう話になって。それはこの2曲の曲作りで大切にしていたところです。実際に今、ロックシーンの中にいるバンドと一線を引きたいと考えたときに、そういう静寂を上手く使いこなせている方がカッコイイなって思うし、この2曲はその役割を果たしてくれる気がしています。

――こういうアルバムのリリース前のインタビューって、だいたいそうだと思うんですけど、アーティスト側は制作してから結構時間が空いていて、聴いたばかりのこちら側との温度差ってあると思うんです。アルバムができたときと比べて印象が変化してる曲ってありますか?

金井:それで言うと、「Step-out Shepherd」をプレイする機会が増えてきていて。言い方が正しいかわからないけど、この曲ってそんなに労力をかけてないし詰まってないんですよね。でも、それって聴く人にとっては関係なくて。僕らがどんだけ煮詰めて下ごしらえをして愛情を込めて差し出したものも、パっとその場にあるもので出したものも、どっちがカッコイイなんて、準備の時間なんて関係ない。「Step-out Shepherd」はそんなに悩まなかった方の曲で、みんなが得意なことを持ち寄って「はいどうぞ」ってやった曲なので。改めて、僕らが生み出すために使ったエネルギーと、結果論としてそれが放出しているものって、全然釣り合いが取れないなって思いながら。でも、それって客観的に正しいから。そこの温度差みたいなものについては、思うところはありますね。

柿沼:僕は「CRYSTAL CLEAR」が、ミックス、マスタリングのときに良い曲だなって思いました。一番最初にできた曲なので、どんどん変わっていった。このアルバムの中で響いたときにまた一つの意味を持っているような曲に思えています。昨年、日本武道館でライヴをやったときに、映像と一緒にやって、そこでも思い入れのピークを迎えたような気がしたんですけど。またこのアルバムで聴いてふと考えたときに、すごくバンドにとって大事な曲だし、ある意味では作れないタイプの曲だと思うので。この曲が最新アルバムに入っていて、新曲としてまたこれから演奏して行けるっていうのは、すごくラッキーだなって思いますね。


▲柿沼広也(Gt.Vo)

――音作りの面で、ヴァイオリンがいるっていうのがBIGMAMAの大きな特徴ですが、ギターとのコンビネーション、音作りの楽しさや難しさについて教えてもらえますか?

柿沼:一言でパっと言うと、めちゃくちゃ難しいですね。11年経っても、いまだに悩む部分はあります。でもその中でも色んな方法論はあって。『Roclassick』というロックとクラシックを掛け合わせた作品を作ったときなんかは、クラシックのフレーズを使って、そっちの土俵に行くことも試しました。ヴァイオリンの自然なフレーズを使いながら、ロックバンドとしてどうできるかっていう、それも一つのチャレンジでした。ヴァイオリンを音像の中で前後どっちに置くかで楽曲の印象も変わるし、例えば弾いてるフレーズが同じでも全然印象が違うんです。その持って行きどころ、聴かせどころを間違わないようにすれば、BIGMAMAの楽曲になるっていうところはあります。ライヴではどうしてもエレクトリック・ヴァイオリンを使うんですけど、生のヴァイオリンにしか出せない倍音をどう表現するかっていうのは、バンドだけじゃなくてPAさんとのチーム感もあるし。まずヴァイオリン自身の音をちゃんとすれば、割とバンドサウンドとは合うんだなって思います。

――二人は高校生のときからお互いを知っている仲ですよね。「Ghost Leg」の〈青い春には戻れない〉という歌詞を聴いて思ったんですけど、まったくの新人ではないし、かといってベテランでもないというキャリアの中で、いまそれぞれどんな心境でバンド活動をしているんですか。

金井:新人だと思っているところもあるんですよ。いまだにずっとチャレンジャーだし。ただ、キャリアを重ねて、やってはいけないことも増えていて、恥ずかしいことは絶対にしちゃいけないと思っています。曲作りを含めてそうだし、柿沼が「カッコ良くないな」って俺のことを思うことはやりたいくない。それに尽きますね。身近で信頼している人間がカッコ悪いと思うことは絶対にやりたくないし、カッコイイなって思ってくれることをやりたいし、今はそれでいいんじゃないかな。その結果が、美学の積み重ねでどんどん美しくなっていくと思うので。最終的に、世の中のロックバンドの中で自分たちが、どこかのピラミッドの2番目3番目にいるんじゃなくて、小さくてもいいから、ちゃんと自分たちのピラミッドを建てたい。そういうことが、バンドとして一番価値が高いと自分は思っています。

柿沼:もともと、同級生で音楽が好きでこうやって続けているなかで、とくに各々が言葉でお尻を叩きあったわけではないんです。でも、気付いたら「うちのドラマー、他のバンドよりいいな、ベースもいいな」とか、後から加入したヴァイオリンの(東出)真緒ちゃんもどんどん馴染んできて色んなアイデアをくれるようになっていて。金井は、もともと「こいつ、ちょっと他の人と違うな」って思っていたのが、こういう社会に出て「やっぱり金井みたいなやつってあんまりいない」って思うようになって。友だちっていうスタートだけど、その中で各々を見て成長したり、気付いたり、でも自分を見失わないで今も仲良くやれている。奇跡じゃないですけど、そういうメンバーと音楽を作っているのが、すごく幸せだなと思っています。この気持ちってきっと、お客さんにも伝わっている気がしているんですよ。僕たちが楽しんで音楽を作って行けばもっと広がっていくだろうし、僕ら自身も高め合っていけるんじゃないかなって、そんな環境に身を置いているのが、すごく幸せだし、それをこれからも大事に思ってやっていくかだけだなって思っています。

取材・文●岡本貴之


リリース情報

BIGMAMA NEW ALBUM『-11℃』
発売日:2018年10月31日
初回限定盤(CD+DVD) UPCH-7459 税込:¥4,104(税抜:¥3,800)
通常盤(CD) UPCH-2175 税込:¥3,240(税抜:¥3,000)
1.YESMAN
2.Ghost Leg
3.Strawberry Feels
4.Insomniark
5.Jelly Miens
6.POPCORN STAR
7.Funbalance
8.Miffy’s Mouth
9.Step-out Shepherd
10.Happiemesis
11.CRYSTAL CLEAR
12.High Heels, High Life
※初回盤DVD内容 :
8/22 新木場STUDIO COAST「UKFC on the Road2018」BIGMAMAライブ映像収録予定

ライブ・イベント情報

<LIVE major 1st album “-11℃” リリースツアー「+11℃」>
2018.12/25(火) 東京 マイナビBLITZ赤坂
2019.01/13(日) 広島 CLUB QUATTRO
2019.01/14(月祝) 福岡 DRUM Be-1
2019.01/20(日) 香川 高松MONSTER
2019.01/22(火) 静岡 Live House浜松窓枠
2019.01/26(土) 新潟 LOTS
2019.01/27(日) 長野 松本ALECX
2019.02/02(土) 宮城 石巻BLUE RESISTANCE
2019.02/03(日) 宮城 仙台Rensa
2019.02/11(月祝) 愛知 Zepp Nagoya
2019.02/16(土) 大阪 なんばHatch
2019.02/17(日) 金沢 EIGHT HALL
2019.02/24(日) 札幌 PENNY LANE24

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