【レポート】<MIRAI TOKYO>、リッチー・ホウティン&アルヴァ・ノトが魅せた最先端で最高のアクト

twitterツイート

2018年10月27日(土)、豊洲PITにて、現代最高峰のテクノアーティストのリッチー・ホウティンと、ドイツの天才サウンドアーティストで、坂本龍一とのコラボレーションでも有名なアルヴァ・ノトを迎え、それぞれの最新オーディオ・ヴィジュアルを披露するイベント<MIRAI TOKYO>が行われた。

■日本での開催は不可能と思われていた
■ライブセットがついに実現

会場の「豊洲PIT」は、最新鋭の音響と空間を有する都内有数のライブスペース。ここに高精度の大型LEDビジョン、ライティングを持ち込み、アーティストの望むままのステージセットでパフォーマンスを披露した。現在リッチー・ホウティンはこのライブセットでワールドツアー中だが、巨大フェスティバル向けのライブセットとなっているため、その膨大な機材やステージセットアップを考慮し、日本での開催は不可能と思われていた。だが、主催者たちが緻密なミーティングを積み重ね、ついに日本で実現することとなったのだ。

外で、開場の時を待つ。一般的な音楽イベントよりも外国人客が多く見受けられ、輪になって話し込み「最近babymetalが良いんだよな」などと音楽談義で盛り上がっているのが聞こえてきた。他のイベントと大きく異なると感じたのは、一人客も多かったこと。こうしたイベントは仲間とワイワイ連れ立って行くのも楽しいが、なんせ「テクノ」というジャンル自体が、EDMなどに比べると、よりマニアックなジャンルだと思われ(かなり個人的な見解だが……)、共通の趣味を持つ知人がいないと誘うのが難しい。「一人でも、なんとしてでも観に行きたい」。多くの人が、そんなふうな意気込みとともに心待ちにしているように思えた。


16時の開場時から、オープニングアクトを務めるISHIJIMAが彼らしい音で出迎える。真っ暗闇の会場に、大型スクリーンに浮かぶ「未来東京」という白文字。スモークが焚かれており、イベントのスタート時点で既に幻想的な世界が完成していた。ISHIJIMAが選曲する不規則なリズムが、観客をドキドキさせる。ふいに強いドラム音が入ってきて、アンビエントみの強い音が、確かな四つ打ちに変わった。ファッションショーでも聞かない、クラブのテクノイベントでも聞かない、この空間でより引き立つ、ディープで無骨な音だ。スクリーンに映し出された蛍の光のような煌めきが何かのはじまりを予感させ、皆、静かに前方を見つめた。強い音ではじまった音は、坂本龍一の「Anger」。スクリーンに映し出された近未来的な映像と見事にマッチし、オーディエンスをゾクゾクさせた。


次の出演者は、ミニマルテクノの女帝・Aalko aka Akiko Kiyama。空間は彼女の色に染められ、異様な雰囲気になった。レーザービームが会場を照らし、隙間なく響く音が、耳と心臓にダイレクトに入ってくる。不思議な音が空間に刺さり、ファンは壊れたように踊らされてしまう。

■サウンドとヴィジュアルがシンクロする
■圧巻の光景がそこにはあった




ついに、アルヴァ・ノトが登場。冒頭のゆったりした音に揺らされたかと思うと、いつもの彼らしいアシッドなサウンドが爆音で流され、オーディエンスを踊らせた。日常生活でも、クラブやDJバーに足を運び音楽を楽しむことはできるが、これだけの大音量で重厚なサウンドを聴ける機会はそうそうない。私たちは、日々の深刻な四つ打ち不足を埋めるかのように、体じゅうに音を取り込んだ。パフォーマンス中の彼は演者として注目して欲しそうな素振りは見せず、あくまでも音と映像が引き立つような佇まいを見せた。片や、サウンドと映像は実に攻撃的で、見るものを震わせた。
アルヴァ・ノトのアクトが終わると、何やら大きな機材がステージに運ばれてきた。見慣れない異様な光景に、観客も戸惑いながらスタッフたちの挙動を見守る。

遂に、リッチーが登場。背後からスポットライトで照らされる姿が、とんでもないかっこよさだった。



日本人は、何にでも「○○王子」とつけたがる。テクノの巨匠であるリッチーに「テクノ王子」なんていう日本的なダサいキャッチコピーがつけられていることに憤りを感じていたが、この晩のリッチーは間違いなく「王子」としか言いようがなかった。

オーディエンスのテンションがあがり、そこらじゅうで「フォー!!!」という叫びが聞こえた。そこを「リッチーフォー!!!ティン」と言ってくれないかなぁ、とふと思ってニヤついた。



大がかりで無機質なセットに、ストロボガンガン、空港の滑走路のようなライト……と、空間を洗練させる要素が揃いすぎていた。そして、度肝を抜かれて目が離せなくなってしまったのが、巨大スクリーンにリアルタイムで投影される、リッチーの姿。ただの、彼の姿をアップで映すカメラ……ではないのだ。各機材に無数のカメラが取り付けられており、彼の正面、横顔、手元、真上からの姿などが、サーモグラフィーのようなミニマルな映像になって次々と映し出される。彼が、大きな機材のなかでせわしなく動いているのが分かる。そして、極端にデザイン化されて映される彼の髪の揺れから、彼が4拍子でなく16拍子でリズムをとっていることも伝わってきた。サウンドとヴィジュアルがシンクロする圧巻の光景は、芸術に関わるすべての人間が見るべき、最先端のパフォーマンスだと感じた。

もちろん、アクトが終わってリッチーがはけても、大きな歓声や拍手、アンコールを望む口笛が止むことはない。アンコールに応えたリッチーは、Plastikman名義の曲「Spastik」を披露した。彼は様々な名義で音楽活動をしており、その名義によって作成するテクノのジャンルが異なるのが特徴。Plastikman名義で行なう活動は特に実験的だ。一般的な音楽イベントにおいて、アンコールでは、絶対に盛り上がるであろうお決まりの曲をかけるのが定石だが、彼はそうした「ふつうのこと」に身を委ねず、実験的でアシッドな楽曲を用いた。確立された地位を得ても、なお挑戦を続ける彼だからこそファンが愛してやまないのがよく分かる。「よくぞかけてくれた!」と、爆上げしているファンが多く見受けられた。

ところで突然だが、音楽イベントに来た際につきまとうのが、「どこで見るか問題」。最前列の手すりにしがみついて見るか?後ろの壁にもたれて見るか? 真ん中あたりで音を楽しむか? 特に、今回の会場の豊洲PITは面白い構造になっており、段々畑のようなフロアの各所に手すりがあった。様々なポジションからの視点を見てみようと思い、場内を一周してみると、どこからも楽しむことはできるのだが、やはり一番前の盛り上がりに勝る場所は無かった。「一番前は混んでるし……」「そんなにファンじゃないし……」「コアなファンだけ集まってるんでしょ?」……そんな思いを抱えており、人混みが嫌いなこともあり一番前を避けたくなるところだが、やはり最前列には、他と違う謎の空気感がある。


かつて、「テクノ音楽はトランス状態になって危険だから密室で聞くの禁止」とされた国があったとかいう、本当だか嘘だか分からないけれど、テクノファンとしては本当だと思いたい話を耳にしたことがある(ソースを知っている方がいればご享受願いたい)。最前列では、まさにそんな状況が起こっていた。演者が生み出すパフォーマンスがダイレクトに観客に伝わり、爆音に体がジャックされる。前方では、男性も女性も、リズムにさえ乗っていないゾンビのような予測不能な動きで踊る人が多く見受けられた。ダンスがどうとかそんなことはどうでもよく、音にヤられてしまっているのだ。そして、その中にいると自分も音楽にロックオンされて、音と自分、二者だけの世界に入ることができる。

様々な気づきを得て幕を閉じた、今回の公演。「現代最高峰」、「天才」…仰々しいフレーズが付けられる、リッチー・ホウティンとアルヴァ・ノト。彼らがそう言われる所以は、常に、他人に受け入れられるか分からない未知の領域に挑戦し続け、いつまでも偉大なパイオニアで居続ける姿勢にあると思う。これからも、彼らが紡ぎ続ける新たなストーリーから目が離せない。

取材・文:MORISAMA

<MIRAI TOKYO - Audiovisual Media Art Show>

2018年10月27日(土)
開場・開演16:00/終演21:00
会 場: 豊洲PIT(東京都江東区豊洲6-1-23)
https://toyosu-pit.team-smile.org/
出 演:
RICHIE HAWTIN[CLOSE - Spontaneity & Synchronicity]
ALVA NOTO[UNIEQAV]
AALKO aka AKIKO KIYAMA[LIVE]
ISHIJIMA[Openning DJ]
料 金:
前売 8,500円 当日 10.500円
チケットプレイガイド:
イープラス http://eplus.jp/miraitokyo/
RA https://jp.residentadvisor.net/events/1165892
iFLYER https://bit.ly/2pqWPVb
主催・制作:株式会社ミスターフュージョン 協力:新豊洲フェス、東京花火大祭

◆<MIRAI TOKYO - Audiovisual Media Art Show> オフィシャルサイト
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報