【ライブレポート】Base Ball Bear、ペトロールズとRHYMESTERを迎えた<I HUB YOU>日比谷野音公演で「今日は3ピース特集」

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Base Ball Bear主催対バンツアーが、この秋、約9年ぶりにスタートした。タイトルは<Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>。副題の“I HUB YOU”には、“私とあなたをつなぐ” “私があなたをつなぐ” “私であなたをつなぐ”という意味が込められているという。BARKSは東名阪3公演の規模で行われる同ツアーのすべてをレポートしていく。その第二回目は対バンにペトロールズとRHYMESTERを迎えて行われた10月21日(日)の東京・日比谷野外大音楽堂公演となる。秋の野音を熱くさせた同公演のレポートをお届けしたい。

◆Base Ball Bear × ペトロールズ × RHYMESTER 画像

“3ピースでの演奏”をコンセプトにしたツアー<LIVE IN LIVE〜I HUB YOU〜>の真っ只中で行われた7回目の日比谷野外大音楽堂での恒例ライブ<日比谷ノンフィクション>。毎回、趣向を凝らした<日比谷ノンフィクション>だが、今回はゲストにペトロールズ、RHYMESTERを迎えての対バン形式。ピンときた方もいると思うが、3組ともに3ピースという<LIVE IN LIVE〜I HUB YOU〜>の流れもしっかりと汲んだ内容だ。それぞれが確固たる、独自の音楽を追求し道を打ち立てている3組であり、サウンドの方向性は違えども志を通わせる者同士だろう。


▲長岡亮介 (G. Vo / ペトロールズ)

▲三浦淳悟 (B / ペトロールズ)

▲河村俊秀 (Dr / ペトロールズ)

10月半ばの日比谷は、17時を過ぎると、虫の声が響きわたってくるような美しい秋の宵で、ひんやりとした空気をまとっている。その情緒的な時間を一段と濃く味わい深いものとしたのが、ペトロールズだ。

「ホロウェイ」からスタートしたライブは、長岡亮介(G/Vo)の渋みの効いたギターと、三浦淳悟(B)、河村俊秀(Dr)の紡ぐテクニカルかつ瀟洒なビートによる、変幻自在のアンサンブルが心地好い。ゆらりゆらりと観客はサウンドに身を任せているうちに、ステージ上の音、3人の呼吸がどんどんと白熱していって、途方もない音の宇宙へと放り出される感覚だ。


幻想的なコーラス&メロディとグルーヴィなベースソロを響かせる「闖入者」から「コメカミ」と続き、「<日比谷ノンフィクション>、呼んでもらってありがとうございます。ペトロールズです、よろしくお願いします」と長岡が軽く挨拶をすると、メロウな「KA・MO・NE」で観客をうっとりとさせていった。互いの楽器と歌が饒舌で、それでいて程よくリラックスした気持ちのいい隙間があるアンサンブル。絶妙な音の駆け引きが効いたサウンドと、そのタイム感はこの3人でしか鳴り得ないものだろう。

そして1曲ごとに夜が濃くなっていって、照明がまばゆく映えるなかでの「FUEL」は、観客の高揚感、盛り上がりも最高潮で、曲中の“Hey”の掛け声を誘う長岡の声に、観客が高く手を上げて、ダンスをしながら応えた。ファンキーなメロディと、それぞれが曲のハンドルを握るように見せ場を盛り込んで、景色が変わっていくドライブの楽しさを味わった後にたどり着いたのは、緻密で万華鏡的な音の小宇宙感のある「ASB」。音楽で酩酊する、そんなステージに拍手喝采が湧いた。


▲宇多丸 (Rap / RHYMESTER)

▲Mummy-D (Rap / RHYMESTER)

▲DJ JIN (DJ / RHYMESTER)

続いて登場したのはBase Ball Bearの「The Cut-feat. RHYMESTER」(2013年発表)で客演し、また小出祐介が10代の頃から敬愛するRHYMESTER。

「ペトロールズ、かっこよくて、出、づ、ら、い」といって観客を笑わせながらも、クールなトラックに、鋭く攻撃的なキレもユーモアもあるラップと、緩急のあるMCふたりの喋りのグルーヴなど、ステージのどこを切り取ってもしっかりとエンターテインメントなものになっていて、曲間や、ゆる〜いトークにもリズムと、観客をグイグイ引き込む面白さに満ちているのが、RHYMESTERのライブ。


存分にその真髄を見せるステージで、DJ JINの華麗なターンテーブル捌きから、宇多丸、Mummy-Dの2MCがしょっぱなから「さ、わ、げー!」と全方位で盛り上げ、「After 6」から「ゆれろ」と続けると、観客は高く手を掲げ、大きくコール&レスポンスに応える。「楽器などの形は違えど、ヒップホップバンドなんです」と語り、「俺たちとっての楽器はターンテーブルだ」といって、DJ JINが“俺たちの演奏”を見せる。初めてヒップホップのライブに触れる人にも最高にフレンドリーで、しかしグッと突き刺すところは容赦なく切り込む。日本のヒップホップシーンを切り開いてきた腕っ節と、懐の深さ、大人の戯れも併せ持った3人の佇まいは、最高にかっこいい。

「“I HUB YOU”をテーマにBase Ball Bearが結んだこの3組は、めちゃくちゃいいカードだ」と言い、「ペトロールズ、かっこよくて出ずらいっていってた後ろで、こいちゃん(小出)が、“俺がいちばん出づらい!!”」と言っていたことなど、バックステージの感じやお互いのいい関係性が垣間見えるMCでも観客を沸かせ、ラストは「余計なお世話だバカヤロウ」で、“バカヤロウコール”を巻き起こし、Base Ball Bearへと熱々のバトンを繋いでいった。


そしていよいよBase Ball Bear。3人の登場に大きな歓声が湧いたのも束の間、いきなりゲストにRHYMESTERを呼び込んで「The Cut-feat.RHYMESTER」でスタートするという贅沢なセットリストが実現。堀之内大介(Dr/Cho)と関根史織(B/Cho)、そしてDJ JINによるぶっといグルーヴと、歌とラップの掛け合い、小出のギターとDJ JINのスクラッチのバトルなど、美味しいところだらけのセッションとなった。

まだまだ余韻を味わいたいところだが、この1曲でRHYMESTERを見送ると、改めて「日比谷―!」という叫びとともに「LOVE MATHEMATICS」で会場一体の盛大なオイコールを巻き起こして、関根がスティックベースで曲をエフェクティヴに彩る「君はノンフィクション」へと続けていく。風が冷たいくらいの夜だったが、観客の熱は高い。




MCでは小出が、「今日は3ピース特集」であること、彼らが「最も尊敬する3ピースバンドに来てもらった」ことを語った。「多分、会場でいちばん浮き足立ってるのは僕です」と小出。また今回の<LIVE IN LIVE>のサブタイトルとなっている“I HUB YOU”に込めた思いも語る。Base Ball Bearがハブとなって、みんなといろんな音楽を結びつけたいこと。また小出がハブられていたという10代の頃を振り返り、「そんな自分が音楽に助けられて今がある」ということを語った。中堅と呼ばれるキャリアとなった今、「ここからのライブは、ただ共有するだけじゃなく、何か特別なものを持って帰ってほしい。多分Base Ball Bearは80歳くらいまで続くと思うんですけど、残りの50年もその気持ちで頑張りたい」と力強く、明るく語る姿が印象的だ。

このMCを挟んでの後半戦は、グッと濃密なアンサンブルで聴かせる。「SHINE」から「Tabibito In The Dark」へという流れで3人の紡ぐサウンドがクレッシェンドしていくと、会場のテンションも跳ね上がる。ライブらしい、ダイナミックなアレンジと、3人でのマキシマムなサウンドが大迫力で、続いて「yoakemae」はスピード感たっぷりに観客の体を揺らし、ラストは「ドラマチック」で大きなジャンプで締めくくった。


今回の<LIVE IN LIVE〜I HUB YOU〜>では対バン相手とコラボレーションを披露しているBase Ball Bear。アンコールに応えてまず、小出とペトロールズの長岡がステージに立ち、長岡のギターで小出が歌う「どうしよう」をしっとりと聴かせた。

古くからの付き合いだという両者。「実は、「真夏の条件」(2007年)のミュージックビデオで使ってる赤いモズライトは、亮ちゃんと一緒に御茶ノ水に買いに行ったんだよね」(小出)というエピソードも語られた。ここまであまり共演のイメージがなかった両者だったけれども、同時代を走ってきた同志ならではのいい空気と呼吸感が、その歌とギターに込められていた感じで、会場のムードも和やかだ。


▲小出祐介 (Base Ball Bear)+長岡亮介 (ペトロールズ)


続いては堀之内と関根、RHYMESTERを呼び込んだ。小出がRHYMESTERを知ったきっかけが、まさにハブられていた学生時代、1996年にこの野音で開催されたヒップホップイベント<さんピンCAMP>だったという。その同じ場所で、憧れの人たちと共演できることはとても嬉しいと語った。

そんな尊敬する先輩と同時期に、同じようなテーマの曲(RHYMESTER「人間交差点」、Base Ball Bear「スクランブル」)を発表していたそのシンクロニシティにも触れ、今回のコラボは、「スクランブル」と「人間交差点」のスペシャルマッシュアップに。


▲Base Ball Bear × ペトロールズ × RHYMESTER

単なる対バンイベントではなく、何か特別なものを持ち帰ってもらうライブを、しっかりと形にしたコラボレーションとなった。歓声の中で2度目のアンコールに応え、「祭りのあと」を披露し、充実の<日比谷ノンフィクションVII>の幕を閉じた。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle)

■<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」『日比谷ノンフィクションⅦ』>10月21日(日)@東京・日比谷野外大音楽堂 セットリスト

【ペトロールズ】
01. ホロウェイ
02. 闖入者
03. コメカミ
04. KA・MO・ME
05. FUEL
06. ASB
【RHYMESTER】
01. JIN-TRO (マイクの細道)
02. After 6
03. ゆれろ
04. ライムスターインザハウス (Sing Sing ver.)
05. ちょうどいい
06. アカペラ〜Back&Forth
07. 余計なお世話だバカヤロウ
【Base Ball Bear】
01. The Cut (w/ RHYMESTER)
02. LOVE MATHEMATICS
03. 君はノンフィクション
04. SHINE
05. Tabibito In The Dark
06. yoakemae
07. ドラマチック
encore
en1. どうしよう (小出×長岡)
en2. スクランブル × 人間交差点 (w/ RHYMESTER)
w.encore
en3. 祭りのあと

■<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>


▼大阪公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>
10月13日(土) 大阪・なんばHatch
対バン:キュウソネコカミ

▼東京公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」『日比谷ノンフィクションⅦ』>
10月21日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
対バン:ペトロールズ / RHYMESTER

▼名古屋公演
<Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」>
11月11日(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
対バン:the pillows ※the pillowsサポートベース・関根史織

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