清春、ASKAなどからエールも続々。写真家・今井俊彦が初の写真集発表+個展開催

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写真家/映像作家の今井俊彦による、自身の名義での初となる写真集が完成。その発売と同時にこれまた初となる写真展を開催する。まず写真集は『Last waltz』と題され、11月27日より発売。そして個展については同日から12月2日にかけ、東京・渋谷ギャラリーLE DECOにて、『nobody knows me』と銘打ちながら6日間にわたり行なわれる。

◆今井俊彦 画像

今井俊彦の名前は、これまで数多くのアーティストの映像や写真を手掛けてきたことで音楽ファンにも知られているに違いない。実際、今回の写真集刊行と個展開催に際しても、清春、ASKA、奥田民生、高野哲をはじめとする、彼と関わりの深いさまざまな音楽家たちから応援コメントが寄せられている。とはいえ、今井の手による写真や映像に馴染みのあるファンでも、彼個人についてはまだ多くを知らないという人が大半だろう。そして実のところ、それが今回のプロジェクトに乗り出すうえでの彼自身にとっての動機でもあった。今井は、つぎのように語っている。

「僕らの仕事というのは、基本的にはあくまでアーティストありきのもの。そこで、そろそろ自分自身の名義のもの、より純粋な形での自分の作品というのを発信したいと考えたんです。もちろんアーティストに寄り添った作品のなかにも自分らしさというのは出ているはずなんですが、それは100パーセント純粋な自分ではない。まずは一度、そうしたものを世に発表できる場を設けてみたい──そう思ったのがすべての発端です。実際、これまでアーティストの写真集や映像を作ったことはあっても、自分自身の名前を掲げた作品を発表したこともなければ個展をやったこともなかったので」

事実、このプロジェクトは“人気アーティストと関わりの深い写真家に、出版社が話を持ち掛けた”といった類のものではない。音楽に喩えれば、まさしく自主レーベルを立ち上げてのソロ始動のようなもので、今回の写真集制作に際しては、印刷所との交渉から紙のセレクトに至るまで、すべて今井自らの手によって進められてきた。さらに細かいことを言うなら、告知用フライヤーのための言葉選び、文字のフォントやサイズに至るまで、何もかもが彼自身の判断によるものとなっている。

写真集に掲げられた『Last waltz』という表題からは、ザ・バンドの1976年の解散ライヴとその模様が収められたアルバム、記録映画を想起させられるが(こちらは正式には『The Last Waltz』)、今井自身の意識のなかにもそれがあり、このタイトル自体を言葉として前々から気に入っていたのだという。

「嫌なことがあった時、心が壊れそうな時……。そういう時にこそクリエイティヴな意欲が湧いてくることというのがあると思うんです。たとえば大切な誰かを失ってしまった時とか。アーティストがそういう時の気持ちを歌にしたくなるのと同じような感覚が、おそらく自分のなかにもある。そこでこの言葉を思い出し、終わりから何かが始まるのもいいかな、と考えたんです。この写真集を作るにあたって、今まで溜め込んでいたセレクトというのも当然あったんですが、自分のなかで何か足りないピースがあると感じて……それで結果、実はこれまで一度も逝ったことのなかったニューヨークをひとり旅してきました。その旅の間も、頭のなかには『Last waltz』という言葉があった。それがキーワードというわけではないし、その意味について説明したいわけでもないんだけども、その言葉から何かを感じてもらいながら写真集を眺めてもらえたなら、そこでなんとなくストーリーを感じてもらえるんじゃないかと思っています。もちろんその物語は見てくださる方の感覚に委ねられるべきものですが、僕自身のなかにはちゃんとひとつの流れがある。その旅についても同じことですけど、今回はとにかく、すべて自分でやってみたかった。“はじめてのおつかい”じゃないですけど(笑)、ひとりで生きていく術を身に付ける、というか。ちょっと大袈裟に思われるかもしれませんが、実際そういう試みでもあったんです」


そうした写真集とリンクする形で開催される写真展について、今井は「写真集とは別に、あくまで写真展用の展示をしたいと思っている」と言う。無機質な壁に整然と写真を並べるのではなく、会場の空間全体を使ってその場でしか体感できない何かを表現する──それが彼の考えていることだ。それが実際どういった展示のあり方になるのかは、実際に観てのお楽しみというところだろう。

それにしても、今井ほどのキャリアと実績の持ち主が、自らの個展に掲げたタイトルが『nobody knows me』(誰も僕を知らない)だというのは意味深長だ。やや自虐的な言葉のセレクトでもあるように思われるが、これについて彼は以下のように説明している。

「これまでいろいろやってきたけども、誰も本当の自分を知らないんじゃないか、という気持ちが常にどこかにあるわけです。もちろん人間が好きだし、アーティストが好きだし、音楽も大好きだし、そこから離れるつもりも全然ない。同時に、“これがアートだ!”みたいなことを言いたいともまったく思わない。むしろもっと単純に“僕が撮りたかったものを見てみて”という気持ちなんです。アーティストを通して自分を見てくれている人はいても、本当の自分まで見てくれている人はほとんどいないはず。もちろんそういう現実については納得できているんですけど、やっぱりそろそろ年齢的にもこういう作品を作ってみたいと思ったんです。そこで僕なりの狭い世界を感じてもらえたら、と。これをやっておかないとこの先に進めない気がして」

今井の言葉は控えめそうでいて、とても強い。彼は「写真一枚の力は、音楽などの力には到底及ばない。だけども誰かの人生に影響を少しでも与えることができたなら、それはすごいことだと思う」とも語る。実際、今井が関わってきたアーティストたち自身もまた、彼の手による表現から何かしらのインスピレーションや刺激を受けてきたに違いない。『nobody knows me』はきっとそうした何かを体感できる場となるはずだし、その会場でも販売される『Last waltz』についても同じことがいえるに違いない。是非この機会に、各アーティストのファンのみならず、会場に足を運び、このロード・ムーヴィー的写真集を手に取ってみて欲しいところだ。

文◎増田勇一



【アーティストコメント】

「その風景や対象の前にその瞬間輝いてる今井ちゃんが居たんだなって感じます。
僕はもうすごい年数彼にレンズを向けられてるのでそれが分かります。
別にミュージシャンを撮ってなくても
この人の中ではずっと音楽と写真、
例えば自分と家族、洋服と靴みたいな感じなんだろうなと。
被写体とカメラマンを超えて、もはや長年の友人が目にした人生の一幕達。
僕で言うと、たくさん書いた詩に近いのかなって思います」──清春

   ◆   ◆   ◆

「ある時、うちに遊びに来てた今井くんが「ニューヨークに行ってくる」と言う。
「ん?仕事で?」と聞くと「いや、写真集出そうと思って。個展もやろうかと思って」
30年近くになる長い長い付き合いだが、今井くんの口からそんな言葉を聞いたのは初めてだった。
それを聞いて驚きと、なぜかちょっと緊張して、そして大いに興奮した。
カメラマン今井俊彦が、誰とも混じらず、誰にも左右されずに、自分だけの感性で撮った『写真』という作品を発表する。
それはバンドマンがひとりきりでソロアルバムを作るのにちょっと近い気がしている。
そしてそれはいつも今井くんに被写体として撮られてる俺にとっては、とても興味があり、単純に見てみたいと思った。
そして写真集は完成して個展を開く。
おめでとう。そして是非に、この俺も好きな作品を多くの人たちに見てもらって、気に入ってもらえたら本当に俺も嬉しい」──八熊慎一(SPARKS GO GO)

   ◆   ◆   ◆

「作品において「経験」「テクニック」「センス」、これを持ち合わせることは、重要ですが、それを超えてしまうものがあります。「情熱」です。 
「情熱」「魂」が注がれていない作品は、⼼を撃ちません。 
今井俊彦は、⼀⼈の写真家として出発しました。その後「映像」の分野にも進出し「被写体」と⾃分の距離を確⽴したように感じます。 
今回「カメラマン今井」への原点回帰となった写真、写真集には、ふと⾜を⽌めて眺めさせられてしまう魅⼒が集約されています。 
「情熱」の今井俊彦と、今後も「被写体」となれることに喜びを感じています」──ASKA 

   ◆   ◆   ◆

「知ってるカメラマンの中で、一番撮ってる感のない男です、今井くん
写真集! 個展!!
やる気になったのか?
ニュ、ニューヨーク!」──奥田民生

   ◆   ◆   ◆

「今井さんが切り取った美しい世界で作られた作品。
それを見せてもらった直後の感想を素直に述べると、こんなに胸がぎゅっとなる瞬間を写真に閉じ込められるなら、カメラをいつでも離さないだろうな。
あ。だから今井さん、だいたいカメラ持ってるんだな。
俺がもっと歳を重ねたら、どんな風に撮ってくれるのかな。ずっと撮ってほしいな。
そんな事を思いました。
言葉にうまく出来ないような素敵な時間があるという、その証明のような写真集です。
見たほうがいいです」──有村竜太朗

   ◆   ◆   ◆

「月の裏側映れー!って、吠えながらライブを撮影してるカメラマン。
これだけ読むと意味不明な不審人物ですが、そんなカメラマン・今井俊彦。
被写体の裏側にある何かを切り取ろうとしてる、って言えばカッコいいですが、そんなにそうでもなく!
文字通り本気で、月の裏側を念写しようとしてるのよね。
彼の被写体となってハヤ20年くらいですが、歌ってる瞬間それより、間奏とかで気を抜いた瞬間を切り取るんです。
そんな写真がなんとも大好きで。
自分が全身全霊から離れた一瞬がバレる。そうするとアラ不思議。歌では表現し切れなかった何かを写してくれる。
例えば、ギタリストがチューニングしてる緊張感も、ベーシストとドラマーが目線を外す瞬間も、楽屋での何気ない冗談も、美しい物語になる。
今回の写真集もそんな感じ。誰かの日常が、非日常となって誰かに届く。
会った事も無い、これから出会う事も無い、そんなNobody達の美しい物語。
今井俊彦の初の写真集ですが、もしかしたら初の、物語集なのかも。
月の裏側映れー!って、吠えながらライブを撮影してるカメラマン。
そんなカメラマン・今井俊彦」──高野哲 (ZIGZO, THE BLACK COMET CLUB BAND, nil, インディーズ電力)

   ◆   ◆   ◆




■写真集『Last waltz』

2018年11月27日発売
ハードカバー/110ページ/A4横サイズ
初版限定サイン入りポストカード付

■個展『nobody knows me』

会期:2018.11.27~12.02
開催時間:11:00~20:00 (最終日のみ 11:00~17:00)
場所:渋谷ギャラリー LE DECO -ルデコ- 3F
東京都渋谷区渋谷3-16-3 高桑ビル
※入場無料
※同展示会場では、写真集の他、オリジナルプリント作品、ポストカード、Tシャツなどの販売も予定。
<オープニングイベント概要>
日時:2018年11月27日(火) 18:00-21:00
場所:渋谷ギャラリー LE DECO -ルデコ- 3F
出演:高野 哲(nil, THE JUNEJULYAUGUST, THE BLACK COMET CLUB BAND,インディーズ電力 & ZIGZO)
スペシャルな受付係:八熊慎一 (SPARKS GO GO)
※19:30頃 高野哲 LIVE
※入場無料
※開催時間は状況により前後する場合があります。

■今井俊彦(イマイトシヒコ)プロフィール

日本の写真家・映像作家。東京都生まれ。
多摩芸術学園で学んだのち、主にロックを中心とするミュージシャンを被写体とした音楽写真を撮影。アルバムジャケット、ライヴ写真、映像作品も多く手掛ける。
飄々とした佇まいでいながら本能的感覚的、大胆かつ繊細な作品を繰り広げミュージシャンからの信望も厚い。

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