英国最大級のポップ・アイコン、リトル・ミックスの成長の軌跡と、最新アルバム『LM5』で踏み出した新たな一歩

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リトル・ミックスというグループに、人々はどんなイメージを抱いているのだろう? オーディション番組から生まれたシンデレラたち? 自由奔放な言動や私生活のゴシップで注目を集める、お騒がせアーティスト? スパイス・ガールズの後継者? どれも当たっているのだが、最初にクリアにしておきたいのは、彼女たちが現在の英国最大級のポップグループであり、数々のヒット・シングルとヒット・アルバムを通じて社会的なインパクト与えてきたカルチャー・アイコンだという点だ。



『Xファクター』の第8シーズンに応募した4人の英国人女性──レイ・アン・ピノック、ジェシー・ネルソン、ペリー・エドワーズ、ジェイド・サールウォール──が番組の中でリトル・ミックスを結成し、グループとしては『Xファクター』史上初めての優勝を果たしたのは7年前のこと。デビューするなり大ブレイクして、13曲の全英トップ10シングル(うち4曲はナンバーワン)を送り出し、毎回趣向を変えたアルバムを発表するごとにセールスがアップ。イマドキ珍しい上昇型のキャリアを積み重ね、2016年に発表した4作目『グローリー・デイズ』では国内だけで100万枚を売り上げて、初のBRIT賞(最優秀ブリティッシュ・シングル賞)も手にしている。



成功の理由として挙げられるのは、ジャンルをクロスオーバーする曲のクオリティはもちろんのこと、確かな歌唱力、歌って踊れるグループならではのパフォーマンス力、そして全員が主役、全員がリード・シンガーだというユニークな成り立ちだ。スパイス・ガールズが掲げたガール・パワー主義を受け継いだ彼女たちは、人種も出自もファッションの好みもそれぞれ違う4人のキャラを対等に前面に押し出し、個性の尊重や同性間の友情、女性の自立を柱に力強いメッセージを発信。世界中で熱狂的な支持を勝ち取ってきた。



そんなリトル・ミックスの5枚目のアルバム『LM5』は、前作の大成功を受けひとつの区切りをつけた4人にとって、新たな時代の始まり。「『グローリー・デイズ』の成功は“もっと上を目指そう”と私たちを駆り立ててくれたと思う」と話すのはジェイドだ。「殊にこの1年間に、私たち独自の“声”みたいなものを見つけた気がするの。とにかくすごく強い女性になれて、今の私たちに不可能なことは何もない!って思えるのよね」。



従って、普段から自信には不足ない彼女たちが、いつも以上の意欲と向上心を抱いて着手したアルバムであることが、これらの曲から十分に伝わってくる。過去に60年代のソウル、80年代のシンセポップ、90年代のR&B、10年代のEDM……と、幅広いスタイルを作品に織り込んでいた4人は、最近全員がハマっているというR&B、ダンスホール、ヒップホップにフォーカスし、何よりも自分たち自身の嗜好を重視。TMSやMNEKといった常連の売れっ子プロデューサーに加えて、ティンバランドやジョン・ヒルらアメリカ人の大物も起用し、ビートに重点を置いた本作では、ミニマルで無駄のないプロダクションが言葉の存在感を強調している。何しろ、彼女たちには言いたいことがたくさんあった。


「今回は第一に、女性のエンパワーメントをテーマにしようと最初から決めていたの。とにかく“女性”というのが大きなテーマで、女性としての私たちがどんな風に感じているのか、表現したかった。なぜって、SNSが大きな影響力を持っている今の時代、女性たちは大変なプレッシャーを感じているわ。ルックスはこうじゃなくちゃいけないとか、こう行動しなくちゃいけないとか、色んな基準を押しつけられていて。と同時に、女性がお互いを支えようというムーヴメントも盛り上がっているわよね。そういう世の中の動きも反映させたかったのよ」。

つまり、テーマそのものは今までの延長上にあるのだが、明らかにトーンが違う。無邪気に理想を歌っているだけではなくて、リアリティと説得力がある。これは、公私にわたって様々な体験をして大人になった4人が、#MeTooムーヴメントにも後押しされて、改めて女性として生き方のマニフェストを示し、団結を訴えるフェミニスト・アルバムなのだ。それゆえにゲストも、ラッパーのニッキー・ミナージュを始めとする女性に限定。彼女たち自らラップ風に歌う「ジョーン・オブ・アーク」や「ストリップ」には、聴き手の背筋をピンと伸ばすような自信が漲っている。




自信と言えば、普段よりシンプルなファッションと控えめのメイクで、4人がナチュラルな自分を誇らしげに見せているジャケットも印象的だ。「ここではとことんオーセンティックな姿を提示しようとしたの。不要なものをはぎ取って、ありのままの自分を見せたかった。そうすることに抵抗を感じないし、それでいいんだと訴えたかったのよ」。そして、先頃お披露目された最新シングル「ストリップ」のミュージック・ビデオでは、ナチュラルを限界まで推し進めてヌードを披露したリトル・ミックス。目下、賛否両論が飛び交う大論争が巻き起きているが、きっとそんなことは承知していたに違いない。これもまた、2018年の彼女たちに怖いものはないのだという意思表示のひとつなのだろう。


文◎新谷洋子

ニュー・アルバム『LM5』


2018年11月16日(金)全世界同時発売
〈国内盤CD(全19曲)〉
SICP-5915 ¥2,200+税
※初回仕様のみスペシャル・パッケージ / ロゴ・ステッカー封入
※ボーナス・トラック収録
01. ザ・ナショナル・マンセム
02. ウーマン・ライク・ミー feat. ニッキー・ミナージュ
03. シンク・アバウト・アス
04. ストリップ feat. シャラヤ・J
05. モンスター・インー・ミー
06. ジョーン・オブ・アーク
07. ラヴ・ア・ガール・ライト
08. アメリカン・ボーイ
09. トールド・ユー・ソウ
10. ワサビ
11. モア・ザン・ワーズ feat. カミーユ 
12. モーティヴェイト
13. ノーティス
14. ザ・キュアー
15. フォーゲット・ユー・ノット *
16. ウーマンズ・ワールド *
17. ザ・キュアー (ストリップド)*
18. オンリー・ユー (with チート・コーズ)*
19. オンリー・ユー (アコースティック) ★
*=デラックス盤ボーナス・トラック
★=国内盤ボーナス・トラック

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