【ライブレポート】キング・クリムゾン、凄まじき来日公演の速攻レポ

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圧倒、感動、どんな言葉を駆使してもこの日のライヴの凄まじさを表すのにふさわしいものになりそうもない。正直、3年前になる15年の公演があまりに素晴らしく、これを越えるキング・クリムゾンに出会うことなどないと思っていた。しかし『ライヴ・イン・シカゴ』、来日直前に出た『メルト・ダウン』といったライヴ・アルバムによりいとも簡単に更新されていたから、ある程度、覚悟は出来していたが、そんな思惑をはるかに越えるパフォーマンスが現出した。ロバート・フリップが“八頭獣クリムゾン。4つ目の決定版”と断言したことを証明し、さらに飽くなき前進と絶え間ない冒険を目指しているのを示したステージだった。

通常、まだ沢山公演が残っているもののライヴ評はセットリストなど詳しく触れないのが礼儀だが、彼らの場合は、まさに一期一会、その日に何が飛び出すのか、どんな順番で演奏されるのか、そのすべてが一度しか出会えないドラマであり(当日に決定するロバートの中にはその日のテーマがあるのだろう)、伏せることにあまり意味性を感じないので気にせず書いていく。


スリー・ドラムスによる「ヘル・ハウンド・オブ・クリム」で祝祭の始まりが告げられ、そのまま「ニューロティカ」へと突入し宴は始まった。80年代クリムゾンの『ビート』収録ナンバーからスムースに「スータブル・グラウンズ・フォー・ザ・ブルース」へとつながる流れが新鮮。最新メンバー、ジェレミー・ステイシーがここでもうキーボードに向かうが、今回とても印象的だったのが、彼のピアノなどでの活躍で、ビル・リーフリンがキーボード専任になったことと合わせて、早くも大きなパワーアップが実感できる。

といった冷静な対応もここらまでで、トニー・レヴィンがスティックを手にリードする「ディシプリン」「インディシプリン」が続けて演奏される時点で、彼らが久しぶりの日本公演初回に特別な意図を持っているような気がしてきた。それは複雑かつ多様なリズムの組み合わせのダイナミズムを増し、さらにハード&メタリック面でも更新し続ける最新の姿であり、その姿勢をベースに各時代から自在に取り上げられた曲たちをより完成度高い収斂へと導く流れだ。 それを組曲的な展開のなかでより多く示したのが、この日の特徴で、「サーカス」に始まる“リザード”組曲の繊細さを備えた美しさの中にみごとに反映されていく。各曲、それぞれ静寂や破壊の風景が描き出され、ジャッコ・ジャクスジクの歌声もさらに磨きがかかり、ここらの描写が巧くなっている。


ロバートのギターが冴える「アイランド」を挟んで、前半の白眉となったのが、ここからの“ラディカル組曲”だ。「ラディカル・アクションⅠ」から「メルト・ダウン」「ラディカル・アクションⅡ」、そして最後の「レベル・ファイヴ」までとてつもない熱量がステージから放射される。メル・コリンズのアルト・サックスの咆吼、ロバートの高速ピッキング、そしてトニーのスティックが、細かくバンドに刺激を与えていく。


パット・マステロットのバラエティに富んだパーカッション類が華やかな装飾を加え、対照的にギャヴィン・ハリソンの鋭角的なドラミングやジェレミーの意外にオーソドックスなプレイなどが、大きなスケールで彩なしていくスリー・ドラムスの驚愕的な緊迫感はバンド全体のポテンシャルをさらに押し上げ、完璧なまでに叩きのめされた。フリップが一時期言っていた“ヌーヴォ・メタル”、そして『ラディカル・アクション』では“メインリー・メタル”と名付けたサウンドの究極形が見えたような気もしてきたが、ここで第一部が終了。ここまでで約1時間半だ。

やや放心状態のまま20分のインターミッションを挟み、第二部も「デヴィル・ドッグス・オブ・テセレーション・ロウ」のパーカッシヴな導入に続き『レッド』からの「堕落天使」に驚かされる。甘美的な響きと、その後方でハードで重いフレーズが全体の空気を変えていき、まるであの74年クリムゾンへの幻影が後方に膨らんでいくかのようだ。そのままロバートのギターがダイナミックに暴れる「レッド」へと流れていくスリルはたまらない。第一部からダイレクトにつながるヘヴィさが圧倒的な高みに登り詰めていくかのようだ。

さらにクラシカル・クリムゾンを遡り、ついに「ムーン・チャイルド」が静かに流れ出す。あまりに切ないメロディに、まるで狂獣が一瞬、身体を休めているかのようでもありトニーはアップライト・ベースを弓弾きでロバートのギターとデュエットで展開し、さらにトニー、ジェレミーのカデンツァへと展開していき幾筋もの流れが静かに集まりだしたところで一気に「クリムゾン・キングの宮殿」へとなだれ込んでいく。

全員の思いとテクニックが結集し、次の局面を開こうとしていくアンサンブルに酔いしれる。これほどのミュージシャンたちが集まることで生まれる緊張感、つねに新たなアイデアや試みを持ち込み切磋琢磨することで、バンドでしか出し得ない感動の場が更新される奇跡。


確かに曲そのものは50年も前に出来たものかもしれないが、ここで演奏される生命力の歓喜に満ちた演奏は、とてつもないものの誕生を想記させる。充実感はメンバーも同様だったのか、ビル・リーフリンが珍しく身体をスウィングさせているようにも見えたし、その勢いは次の「イージー・マネー」でも少しも衰えることがない。前回の来日時でもハイライトの1曲だったが、この日も後半にいくにしたがいジャッコの熱いヴォーカルが全開で、その勢いのまま「太陽と戦慄Pt.Ⅱ」となり、ある意味で主役でもあるスリー・ドラムスが細かいリズムのやりとりやグルーヴをミックスさせ、これまたオリジナルとは違った地平で曲の生命が拡大していくのを見ているかのようだ。


ここで本編終了。熱狂的なアンコールに応えて奏で出されるのは、珠玉の「スターレス」だ。深いロングトーンが会場の人すべてに救済を求めるかのように響きわたっていく。真紅のライトに染まっていくステージからは、熱い歓喜と荘厳さを合わせ持ったヴァージョンが流れ出していた。間違いなくいまも前進、深化を続けるバンドとして、じつに挑戦的なセットリストと演奏密度の初日だった。 “さあ続けよう、KCの絶え間ない冒険を”、ロバートのこの言葉が間違いなく聞こえた。

文●大鷹俊一

ライブ・イベント情報

<KING CRIMSON キング・クリムゾン | UNCERTAIN TIMES>
札幌 12月2日(日) 札幌文化芸術劇場 hitaru
仙台 12月4日(火) 仙台サンプラザホール
金沢 12月7日(金) 本多の森ホール
大阪 12月9日(日) グランキューブ
大阪 12月10日(月) グランキューブ
福岡 12月12日(水) 福岡サンパレス
広島 12月14日(金) 広島文化学園 HBG ホール
東京 12月17日(月) Bunkamura オーチャードホール
東京 12月18日(火) Bunkamura オーチャードホール
名古屋 12月21日(金) 名古屋国際会議場センチュリーホール

リリース情報

『メルトダウン~ライヴ・イン・メキシコ』
2018.9.26発売 ¥7,500+税 Blu-ray+3HQCD
<国内盤特典>
・HQCD仕様
・初回特典:特製チケットホルダー
●Blu-Ray
1. Neurotica / ニューロティカ
2. Pictures of A City / 冷たい街の情景
3. Cirkus / サーカス
4. Dawn Song / 夜明けの歌
5. Last Skirmish / 最後の戦い
6. Prince Rupert’s Lament / ルパート王子の嘆き
7. Epitaph / エピタフ~墓碑銘
8. Devil Dogs Of Tassellation Row
デヴィル・ドッグズ・オブ・テセレーション・ロウ
9. Fracture / 突破口
10. Islands / アイランズ
11. Indiscipline / インディシプリン
12. Peace / 平和
13. Easy Money / イージー・マネー
14. Interlude / 間奏曲
15. The Letters / レターズ
16. Sailor’s Tale / 船乗りの話
17. CatalytiKc No9 / 触媒 No.9
18. Fallen Angel / 堕落天使
19. The Talking Drum / トーキング・ドラム
20. Larks’ Tongues In Aspic part II / 太陽と戦慄 パート2
21. Starless / スターレス
22. The Hell Hounds Of Krim / ザ・ヘル・ハウンズ・オブ・クリム
23. 21st Century Schizoid Man / 21 世紀のスキッツォイド・マン
Track 4,5,6=組曲リザード パートC「戦場のガラスの涙」より
●HQCD-1
1. Walk On / 入場
2. Larks’ Tongues In Aspic part 1 / 太陽と戦慄 パート1
3. Neurotica / ニューロティカ
4. Cirkus / サーカス
5. Dawn Song / 夜明けの歌
6. Last Skirmish / 最後の戦い
7. Prince Rupert’s Lament / ルパート王子の嘆き
8. The Hell Hounds Of Krim / ザ・ヘルハウンズ・オブ・クリム
9. Red / レッド
10. Fallen Angel / 堕落天使
11. Islands / アイランズ
12. The Talking Drum / トーキング・ドラム
13. Larks’ Tongues In Aspic part II / 太陽と戦慄 パート2
Track 5,6,7=組曲リザード パートC「戦場のガラスの涙」より
●HQCD-2
1. Indiscipline / インディシプリン
2. The ConstranKCtion Of Light
  ザ・コンストラクション・オブ・ライト
3. Epitaph / エピタフ~墓碑銘
4. Banshee Legs Bell Hassle / バンシー・レッグス・ベル・ハッスル
5. Easy Money / イージー・マネー
6. Interlude / 間奏曲
7. The Letters / レターズ
8. Sailor’s Tale / 船乗りの話
9. CatalytiKc No.9 / 触媒 No.9
10. Meltdown / メルトダウン
11. Radical Action 2 / ラディカル・アクション 2
12. Level Five / レヴェル・ファイヴ
13. Starless / スターレス
●HQCD-3
1. Peace ? An End / 平和
2. Pictures of A City / 冷たい街の情景
3. Devil Dogs Of Tassellation Row
  デヴィル・ドッグズ・オブ・テセレーション・ロウ
4. Fracture / 突破口
5. In The Court Of The Crimson King / クリムゾン・キングの宮殿
6. Heroes / ヒーローズ
7. 21st Century Schizoid Man / 21 世紀のスキッツォイド・マン
8. Discipline / ディシプリン
9. Moonchild / ムーンチャイルド
10. Tony’s Cadenza / トニーのカデンツァ
11. Jeremmy’s Cadenza / ジェレミーのカデンツァ
12. Breathless / ブレスレス
13. Cool Jam / クール・ジャム
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