【ライブレポート】笹川美和、歌で綴る詩

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笹川美和が12月5日、shibuya duo MUSIC EXCHANGEにて<笹川美和 Concert 2018 〜春待ち月唄会〜>東京公演を開催した。

◆コンサート 写真

本公演は15周年記念ベストアルバム『豊穣 -BEST ’03~'18-』のリリースを経て開催されたものであり、笹川にとって今年最後のコンサートでもある。チケットはソールドアウトしており、残念ながら会場に足を運べなかった方も多いだろう。そんな方と、そしてまだ笹川の音楽に触れたことのない方に向け、本項でこの公演の魅力を少しでも伝えられたらと思う。

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コンサートタイトルにある“春待ち月”というのは陰暦で12月を意味する言葉。照明が落とされたステージに一筋の光が落とされ、タイトル通りの冬の凛とした月夜をイメージさせるような空気の中「プリズム」で始まったコンサート。設楽博臣(G)の優しいマンドリンの音と山本隆二(Pf&Key)の優美なピアノにのせて、笹川美和が歌い始める。

ステージにはピアノとキーボード、ギターなどの楽器が置かれているだけ。大掛かりなセットや華美な装飾、派手な映像の演出はない。しかし一曲目にして、“笹川が歌う”それだけで充分だと感じた。

このコンサートは、まるで詩集のページを手繰っていくようなものだったと思う。最初のMCで笹川美和は「目を瞑って、目ではなく頭をメインに楽しんでいただければ…」と述べていたが、意図しなくとも、その歌に合わせた情景が目に浮かんでくる。


「紫陽花」では雨上がりの独特な香りと甘酸っぱい失恋が思い起こされるし、「朧月夜」では故郷のまっすぐな田舎道をご機嫌で走っている気分になる。笹川のピアノ弾き語りで披露された「家族の風景」では少しハスキーに歌う“ハイライト”“ウイスキーグラス”の言葉がリアリティを醸し出し郷愁に涙が出てくる。

歌詞に克明な情景描写がなくても、笹川の豊かな感性によって、じっと座って聞いているだけでさまざまな場所や情景にトリップ。本来、歌の力とはこういうことを指すのだろうなと思う。

また、笹川の楽曲はしっとりとした美曲だけではないのも魅力。中盤の「忘れないでいて」からはディープでアダルトな世界が広がった。ピアノとギターの演奏も、情感的に。「咎」では鬼気迫る“ゆるしてね”というフレーズにぞくっとしてしまうし、「都会の灯」には恋に翻弄される女の悲哀がたっぷり。


歌の表現力はもちろんだが、歌詞にも感動を覚えた。例えば「都会の灯」ではタクシーそのものを指す言葉はないにも関わらず、愛しい人に呼ばれ夜中に駆けつける車中がはっきりと見えるのだ。「金木犀」での愛の中にある嫉妬を“砂漠の砂ほど”と表現するところや、12歳の頃に初めて作曲したという「向日葵」で笑顔を“向日葵”涙を“紫陽花”と例えるなど、言葉選びの妙も聞いていて楽しい。

そんな風にどっぷりと笹川の感性に引き込まれつつ迎えたコンサート終盤。ここでは「真実の雫」「笑」と、心に迫ってくる歌が続いた。笹川は15周年を迎えるに当たり「苦しくて苦しくてどこに逃げたらいいのかわからない時もありました。心から楽しくて今が終わらなければいいのにと思うこともありました。でもどんな時も、どんな事も、永遠には続かない。」と述べていた。


15年の音楽生活から得た、ひとつの答えのような楽曲たち。大人になるにつれ、失ったものや捨ててきたものが増えていくが、そんな中で“本当に大切なものは何か”を、優しい歌で教えてくれる。ラストは「ここに集っているみなさんに感謝をこめて」と「今日」を披露。“時を受け入れ、愛し、孤独を知り、それでも笑って今日を生きていく”というシンプルで大切なメッセージを受け取った。

数々の情景や心の機微、生きる標までを、詩集のページをめくるように綴ってくれた笹川。会場を出ても心の中には “美しいものに触れた”という余韻がたっぷりと残っていた。

笹川はコンサートのラストに「すみません、恐縮でございます…」と彼女らしい低姿勢で15周年を迎えられたことに感謝しつつ「来年は今年よりも活動できるように頑張りたいと思います」と述べていたので、16年目を迎え彼女が新たに紡いでいく音楽を楽しみに待ちたい。

写真◎勝永裕介
取材・文◎服部容子(BARKS)

セットリスト

M1.プリズム
M2.紫陽花
M3.朧月夜
M4.蝉時雨
M5.家族の風景
M6.向日葵
M7.金木犀
M8.忘れないでいて
M9.咎
M10.横顔
M11.都会の灯
M12.真実の雫
M13.笑
M14.今日

EC1.琥珀色の涙
EC2.高鳴り

『豊穣 -BEST ’03~'18-』

発売日:2018年10月31日(水)

■CD+DVD
初回生産限定盤 
オリジナル紙ジャケット仕様
品番:CTCR-14944/B 
価格:¥4,600(税抜き)

▲初回生産限定盤

■CD only
品番:CTCR-14945 
価格:¥2,800(税抜き)

収録内容
- CD -
1.笑
2.金木犀
3.止めないで
4.紫雲寺
5.朧月夜
6.今日
7.都会の灯
8.家族の風景 ※齊藤 工の長編初監督作品『blank13』(主演:高橋一生)主題歌
9.紫陽花
10.蝉時雨 ※新曲 ※舞台「野球」飛行機雲のホームラン ~ Homerun of Contrail テーマソング
11.真実の雫 ※新曲
12.高鳴り ※新曲
13.向日葵-2018Ver.- ※リテイク
- DVD -
・「笹川美和 Concert 2018 ~新しい世界~」日本橋三井ホール ライブ映像
・「笑」-2018Ver.-ミュージックビデオ

▲通常盤


◆笹川美和 オフィシャルサイト
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