【インタビュー】androp、バラード・アルバムでありながらバンド感を失わないニュー・アルバム『daily』
■10周年というのは自分達が自分達を祝うんじゃなくて
■andropを聴いてライブに来てくれる人への感謝を伝えたい
――続いて、皆さんが今回のレコーディングで使用した主な機材なども教えていただけますか。
前田:僕は今まではずっとジャズ・ベースを使っていたんですけど、今回は全部プレシジョン・ベースでいきました。前から持っている60年製のローズ指板のプレシジョン・ベース。60年辺りは過渡期で、メイプル指板もあるんですけど、僕はローズが好きなんです。今回ベースを替えたのは、音数が少なくなればなるほど、一つ一つの楽器が立っていくべきだなというのがあって。ジャズ・ベースは良くも悪くも中間管理職じゃないけど(笑)、上と下のつなぎ役という感じがあるんですよ。それに対して、比較的我が強い楽器を使いつつ曲に馴染むようなことをしたいなというのがあって、プレベにしたんです。周りの楽器の音が歪んでいるとプレベはイマイチだったりするけど、今回はみんなの音が洗練された方向だったので、プレベが合いましたね。あと、アンプを鳴らしていないんです。全部ラインで録りました。
――それは、ちょっと意外です。
前田:アンプで鳴らすと、キャビネットに立てたマイクの音にラインの音を混ぜたときに、確実に位相が悪いんですよ。アンプだけの音を使ってくれるならいいけど、そういうわけにもいかないんですよね。ロー感でいうと、ラインは確実にローからハイまで全部の成分が入っているから。昔の人はアンプだけか、ラインだけのどっちかなんですよ。それに尽きるというか、やっぱり一番音が良いのはそこなんじゃないかなと思って、今回はラインだけでいくことにしたんです。ただ、完全な“素の音”ではなくて、プラグインを使ってコンプレッサーやEQを自分の手元でかけたし、「Saturday Night Apollo」はシンベみたいな歪み感がほしくて、中域だけ歪みをかけたりしました。
伊藤:ドラムは、ラディックとグレッチのビンテージと、カノウプスの現行モデルが半々。キックを大事にしたかったというか、全体的な音像としてハイハットが前に出ていたのを、もうちょっとキック寄りにしたかったんです。なので、キックはしっかりしたローとアタックが両方ある現行のものを積極的に使いました。さっき話が出たように、今回のエンジニアさんは初めてだったんですけど、何曲かレコーディングしていく中で、この人と一緒にやるときはこれかもな…というのが出てきて。キックは現行がいいし、スタンダードな楽器を使ってチューニングやミュートで曲ごとに対応するのが、今回のエンジニアさんとは兼ね合いがいいことがわかったんです。だから、あまり沢山楽器を使う感じではなかったし、そもそもビートに寄った曲が多くて、タム/フロアを使わない曲も多かった。そういうときは、タムはつけずに、シンバルも2~3枚だけ置いたシンプルなセッティングで録ったんです。だから、よりビートのためのチューニングにフォーカスできた。それが、良かったなと思います。
佐藤:ギターはいつも使っている自分の67年製のテレキャスターと内澤君が持っている59年のハードテイル(トレモロアームがないもの)のストラトキャスターをメインで使いました。
▲佐藤拓也(guitar & keyboard)
内澤:あと、59年のテレキャスターもあったよね。
佐藤:そうそう。でも、基本的に67年のテレキャスターと59年のストラト、アンプはマッチレスとマーシャルを用意すればandropの音になるというのがあって、その中でやりくりするという感じでした。テレキャスとストラトの使い分けに関しては、荒々しいというか、良い意味で違和感を持たせたいときはテレキャスをメインにすることが多いですね。ストラトのほうが、きれいに楽曲に馴染む印象があるんです。
内澤:佐藤君と僕は同じギターとアンプを使いまわして録るんですけど、二人が同じ機材を使う場所はないようにしました。僕も59年のストラトと67年のテレキャスを使い分けつつ、「Blanco」は全編を通して59年のテレキャスです。
――3本のビンテージ・フェンダーは全部メイプル指板ですね。メイプル指板のほうが好きなのでしょうか?
佐藤:好きですね。
内澤:メイプルのほうがちょっと“バキッ!”とした音がするけど、ビンテージだからいい感じに角が取れているんですよ。だから、音質にしても、音の立ち上がりの速さにしても、ちょうどいいという感じなんです。
佐藤:そうだね。あと、ギター・ソロも曲によって変えていて、ソロはストラトのほうが多いかもしれない。
▲伊藤彬彦(drums)
――ストラトですか? ソロ音が太いので、テレキャスターかなと思いました。
内澤:僕の59年のストラトは、太い音がするんです。
佐藤:ちょっとテレキャスっぽいよね、やっぱりハードテイルだからだと思うけど。それが好きで、よく使わせてもらっています。ただ、「Home」のギター・ソロはテレキャスだったかもしれない。「Canvas」と「Blanco」は、確実にストラトです。
内澤:あとは、アコギですね。アコギはその時々で変えていて、マーティンのD-18とD-19、D-35、それにギブソンのJ-45辺りを使いました。あと、テイラーの314ceも使っています。テイラーをレコーディングで使ったのは初めてだったかもしれない。「Blue Nude」は貼り付けっぽいアコギのリフが鳴っていますよね。あのリフは波形編集も含めて音作りをしたかったので、深みというよりは輪郭が欲しくてテイラーを使うことにしたんです。
――アコギを細かく使い分けていることからは、アコギも大好きなことがわかります。さて、『daily』は聴きどころ満載の一作であると同時に、andropの新たな魅力も味わえる必聴の一作になりました。さらに、アルバムをリリースした後は年末から年始にかけて、大きなイベントに多数出演されます。
前田:ライブも楽しみにしています。もうずっとandropをやってきて、やっと僕は演奏するのが楽しい時期に入ってきたんです。変な話、本当にスタートラインに立ったような感覚があるというか。社会人の人も、新卒で会社に入って30才を過ぎると自分で仕事ができ始める…みたいな。それに近い感じで、ようやく音楽をすることが楽しくなってきている。それも含めて今はバンドがすごくいい状態で、ライブでも楽しんでもらえる音楽をやれると思う。なので、ぜひそれを聴きにきてほしいです。
伊藤:年内のライブはイベントが多くて、ロックフェスものもあれば、オフィシャルサイト会員限定ライブもあって。会員限定ライブでは、ここ最近定期的にやっているアレンジ違いというか、andropの別の顔を見せるようにしているんです。『daily』ができる要素にもなった、ジャズっぽさなどを入れ込んだライブをしているんですよ。andropの基盤が固まってきたことでそういう振り幅を出せるようになって、それをメンバーみんなが楽しんで演奏できていることが、すごくいいなと思うんですよね。そういう状態なので、フェスにしても、会員限定ライブにしても、きっと楽しんでもらえると思うので、期待していてください。
佐藤:まだ発表になっていないけど、来年は10周年イヤーとしていろんな活動をしていくので、楽しみにしていてほしいです。今まではずっと“前に、前に”と進んできたけど、10周年という言葉を借りて、来年は振り返る作業もしようと思っているんです。もちろん振り返るだけじゃなくて、最新のandropを見せるのも楽しみですし。来年はよりみんなに楽しんでもらえるように、喜んでもらえるようにやっていきますので、よろしくお願いします。
内澤:みんなも言ったように来年10周年を迎えるわけですけど、自分達が10年続けてこれたのは聴いてくれる人がいるからこそなんですよね。だから、10周年というのは自分達が自分達を祝うんじゃなくて、andropを聴いてくれたり、ライブに来てくれる人に対する感謝の気持ちを伝えられる1年にしたい。そういう気持ちから『daily』というアルバムもできていたりするんです。10年を超えても自分達はやりたいことがいっぱいあって、すごくワクワクしているんですよ。2019年は、それをみんなに伝えられるような1年にしたいと思っています。
取材・文●村上孝之
リリース情報
2018.12.19リリース
初回限定盤(CD+DVD)
UPCH-7474 ¥2,600(税抜)
通常盤(CD)
UPCH-2182 \2,000(税抜)
CD
01. Hikari
フジテレビ系木曜劇場「グッド・ドクター」主題歌
02. Blue Nude
03. Blanco
04. Saturday Night Apollo
05. Canvas
06. Home
DVD
「Home」Music Video
「Home」Making Video
ライブ・イベント情報
東京・下北沢GARAGE 開場16:30 / 開演17:00
2019.02.19(火) HMV GET BACK SESSION androp『relight』LIVE
東京・LIQUIDROOM 開場18:00 / 開演19:00
2018.12.21 (金)
androp member page Special Live 2018
日本橋三井ホール
2018.12.24 (月)
MERRY ROCK PARADE 2018
ポートメッセなごや
2018.12.28 (金)
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
インテックス大阪
2018.12.31 (月)
COUNTDOWN JAPAN 18/19
幕張メッセ国際展示場
2019.01.24 (木)
J-WAVE INNOVATION WORLD LIVE PLUS
豊洲PIT
2019.01.26 (土)
HMV GET BACK SESSION androp「anew」 LIVE
下北沢GARAGE
2019.02.10 (土)
大ナナイト~TAKASAKI club FLEEZ 15th
2019.02.19 (火)
HMV GET BACK SESSION androp「relight」 LIVE
LIQUIDROOM ebisu
2019.03.30 (土)
-LIVE HOLIC 5th ANNIVERSARY- uP!!! SPECIAL LIVE HOLIC extra vol.3 supported by SPACE SHOWER TV
幕張イベントホール
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