【インタビュー】都啓一[Rayflower]が語る「『ENDLESS JOURNEY』はターニングポイント」

ポスト

■またツアーをやりたいという気持ちが
■瞬間的でなかったことを実感しています

──たしかに、IKUOさんの中にはSakuraさんなら叩けるだろうという信頼感があったんだと思います。田澤さんが書かれた「希望の歌」は、どんなふうに形にしていったのでしょう?

都:田澤君の中にあるイメージを聞いて、「こういうのはどう?」「こういう感じはどう?」というやり取りをしながら、彼の意見を汲み取って僕がメロディーを整えてデモを作るという感じで。和声の広がり方とかは僕のアレンジですね。

──温かみや楽園感を湛えた世界観を構築するのは難しさがあると思いますが、すごくいい形に仕上がっています。

都:この曲は、要するに狭くないんですよ。音像の空間やレンジの面でちゃんと広い。それは、ミドルとかローのイコライジングがどうということではなくて、大事なのは和声。音符がきれいに並んでいれば、イコライジングなんかしなくてもいいんです、音楽というものは。ちゃんと低いところに低い音があって、高いところに高い音があれば、自ずと広さが出る。「この楽器のこの辺りの帯域をもうちょっとください」みたいなことを言いがちですけど、そうではなくて。ちゃんと音が並べられていることが大事なんです。

▲IKUO(B) ※画像2点

──なるほど。

都:ピアノはまさにそういうフルレンジの楽器なんですよね。なので、僕は常にフルレンジを意識しています。たとえば、ベースは動くけど、コードは動かないようにしたり。U2がそうなんですけど、イギリスとかアイルランドのバンドは広大さを出すことに長けているんですよね。U2の広大さは音数で構築しているんじゃなくて、それぞれの楽器がどこを弾いているかで成り立たせている。「希望の歌」は特にそういうアレンジによる広さが色濃く出ていると思います。

──やはり、テクニックを活かされているんですね。『ENDLESS JOURNEY』は様々な要素にさらなる磨きがかかったRayflowerを味わえますし、新境地の曲もあるなど、必聴といえる一作になりました。

都:僕ら自身も楽しんでもらえるアルバムになったんじゃないかなと思っています。『ENDLESS JOURNEY』収録曲は現在進行形のツアーで全曲披露しているんですけど、ライブを重ねていく中で若干変わったところもあって。それはファンの皆さんの思いによるものだったりするんですよ。そういう部分も全部活かせるように最新のRayflowerがパッケージされている作品が『ENDLESS JOURNEY』です。それに、このミニアルバムは、ある意味Rayflowerのターニングポイントなんじゃないかなという気がしているんです。ここが起点になって、また新しい章に入っていく。そういう意味でも、バンドにとって大きな一作になったと感じています。

──同感です。続いて、ツアーについて話しましょう。現在Rayflowerは<TOUR ~Endless Journey〜>の後半戦に突入したところですが、ここまでの手応えはいかがですか?

都:まずひとつは、先ほどお話ししたように、前回の全国ツアー<Brilliant Place TOUR>を終えて、“またツアーをやりたい”と思ったんですけど、その気持ちが瞬間的なものではなかったということを今改めて感じています。すごく楽しいですし、充実感もある。ツアーも後半ですけど、すでに終わりたくないと思っていますし。もうひとつは、その気持ちが次の動きへの原動力になる。それはファンの皆さんからもらったすごくあり難いもので、次の展開へと膨らませることも出来ているんです。

▲Sakura(Dr) ※画像2点

──ツアー初日からライブの内容が良かっただけに、今は本当にすごいことになっているでしょうね。それに今回のツアーは『ENDLESS JOURNEY』収録全曲を披露されていますので、リリース前の公演ではほとんどのお客さんが知らない曲もあった。なのに、初日からお客さんのリアクションが熱いことに驚きました。

都:あり難いことに、初日以降もずっとそういう状態が続いています。今回はツアーの途中に音源をリリースすることになったじゃないですか。本当のことを言うと、ツアー前に音源をリリースしようと思えば、収録曲を減らせばできたんです。でも、タイアップの絡みとかがあってそれができなかった。僕はピンチをチャンスに変えたい人間なので。とりあえず新曲をどんどんレコーディングしていって、それをトレーラーとして使うことにしたんです。そのうえで、「次のミニアルバムに入れる曲は、今度のツアーで初日から全曲やるから」とメンバーに言いました。今の時代はツアー前にネットを使ってトレーラー的に1コーラスずつ聴かせたりすることができますからね。ただ、僕的にまったく新しいリリースの仕方でした。

──7曲ということはライブの約3分1ですから、ある意味冒険ですよね。

都:そうか、たしかに3分1くらい……それはまぁまぁなことですね(笑)。それでも僕は全曲やりたかったんです。ただね、正直なところ「ENDLESS JOURNEY」がラストナンバーっていうのは大丈夫かな?というのはめっちゃ考えて(笑)。「螺旋のピース」がオープニングナンバーというのもそう。お客さんの耳に馴染んでいないスローチューンだから、自分達の持てる力を出し切って、それこそ見せつけないとダメな曲じゃないですか。メンバーにも相談したところ、「いや、この構成でいきましょう」ということになったんです。「お客さんの反応に左右されず、ツアーを通してブレずにいきましょう」と。そういうこともあって、ツアー初日までは不安もあったけど、ライブを重ねていく中で、安全策を採らずに決断して良かったなと思うようになりました。ライブで演奏することで新曲が育ったし、まだ音源が出ていないのに、お客さんのノリも固まりつつある。そういうことも、今回のツアーの大きな楽しみになっています。

──長いキャリアを持ったメンバーが揃っていながら、守りに入ることなく攻めの姿勢を貫いたことが、いい方向に出ましたね。

都:攻めてますよ、今でも(笑)。というか、そこに関しては若い頃よりも拍車がかかっていますね。昔はしんどく感じたり、やりたくないと思ってしまうようなときもあったけど、今はバンドに関連したすべてのことが楽しい。そういう気持ちでバンドをやれている自分は、すごく幸せだなと思います。

◆インタビュー(4)へ
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報