【ライヴレポート】Psycho le Cému、<FANTASIA>ファイナルで「結成20周年の新たな旅へ」

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去る2018年12月14日、Zepp DiverCity TokyoでPsycho le Cémuの東名阪ツアー<FANTASIA〜勇気の幻想曲を探す物語〜>ファイナル公演を観た。

◆Psycho le Cému 画像

このライヴは<FANTASIA>というコンセプトツアーのファイナル公演。どういうコンセプトかというと、メンバー扮するキャラクター達が幻の曲を探すというPsycho le CémuらしいRPG的な設定だ。その幻の曲というのが「FANTASIA」で、この曲に“恋”“怒り”“勇気”という3パターンのアレンジを施し、今回のツアー会場となった名古屋、大阪、東京の3つ会場限定でリリース。名古屋では恋編を、大阪では怒り編、東京では勇気編を演奏して販売するという、参加型RPG的手法を貫いたツアーだ。






定刻を少し過ぎ、荘厳なSEがなりメンバーがステージに登場。ナレーションで、これから展開される「幻の曲を探している」という物語が説明される。さらにメンバーが扮するキャラクターの紹介があり“ライヴ=物語”がスタート。1曲目「BLADE DANCE」、2曲目「DANCE II HEAVEN」と物語は勢いよく進んでいった。

でも、なぜバンドは幻の曲を探すという物語のライヴを行ったのか? その答えがこのツアーのために作られた「FANTASIA」の詞の中にあった。それが、“破滅へと向かうの? あの世界 僕が終わらせた”“時はもう戻らないFANTASIA 忘れないで 神様へ もう一度だけ空に羽ばたく勇気を 掴みかけていた夢のカケラ”という箇所だ。




ご存知の通り、バンドは頂点を目指していた時だったが2005年6月、DAISHIの逮捕により活動が止まった。メンバーだけではなく、誰もが想像してしまう……“もしあの事件が起こっていなければ”と。この問いの答えは神のみぞ知るわけだが、メンバーは異口同音に“バンドが解散あるいは引退することを想像していなかった”旨をBARKSインタビューで答えていた。「もう1年やって解散して、みんな音楽を辞めていたかもしれないですね」(AYA)。「解散というよりは僕個人的には、自分が辞めていたかもしれないし、誰かが辞めていたかもしれないと思います」(Lida)とのことだ。

もちろん逆の見方もある。事件がなければX JAPANやLUNA SEAといった先輩が立ったように満員のアリーナのステージに立っていたかもしれない。事件の半年前に『ニューズウィーク日本版』(2004年10月20日号)の特集“世界が尊敬する日本人100”に選出されたPsycho le Cémuは海外で大成功を収めていたかもしれない。そんな幻がこのバンドにはつきまとう……。これはあくまでも筆者の想像だが、今回の曲とツアーは、DAISHIがもし事件を起こしていなかったら……そんな幻の時間を追い求めていたのではないかと思えてならない。



ライヴのクライマックスはやはり10曲目に披露された「FANTASIA」だ。この日は勇気のヴァージョン。美しいメロディがポップスにアレンジしてあり、まさに勇気が湧いてくる仕上がりだ。「FANTASIA」の演奏が終わるとナレーションが流れ、「メンバーは幻の曲、3つ全てのヴァージョンを手に入れた」ことが告げられた。そして、幻の曲を手に入れたメンバーがそれぞれ言葉を発していく。最後はDAISHI。DAISHIはメンバーへの手紙を読み出した。この手紙の内容はメンバーには完全に内緒だったそうだ。メンバーのことをそれぞれイジリながら、どの手紙もメンバーへの感謝の気持ちに満ちていた。その感謝の気持ちは、あの事件が起因しているのは明かだ。この手紙で「FANTASIA」の意味が腑に落ちた。

振り返れば、DAISHIは事件後、きちんとした記者会見などを開いていない (個人的には記者会見などは全くもって不必要だと思うが)。言葉を選ばず言えば、ヌルッと復帰した。そのけじめをメンバーとファンにするための儀式が必要だった。その儀式がこの「FANTASIA」であり、今回のツアーだったのだ。一連のBARKSインタビューでDAISHIは「「FANTASIA」は完全にファンの人のために歌ってます」と言っていた。ファンの前できちんと事件のけじめをつけたかったのだ。ならばDAISHIは、ファンに向けても手紙を読むべきだったのかもしれない。だが、それはしなかった。その代わり、幻の曲を手に入れたDAISHIが、本編16曲目の「愛の唄」で最高のボーカルパフォーマンスを舞台から放った。






これでDAISHIの事件のモヤモヤが完全に吹っ切ることができたのなら、2019年のPsycho le Cému結成20周年イヤーは最高のものとなるであろう。実は、メンバーもBARKSの一連のインタビューでモヤモヤしたままのDAISHIに少し苛立っていた。「もう一回Psycho le Cémuは、DAISHIがパワーバランスをむちゃくちゃにすべき時期に来ています。音楽的な意味、表現的な意味でむちゃくちゃにする作業がすごく必要な気が今はしていますね。DAISHIが『若いチームもしっかりしてきたから、俺、結構安心してできるわって』って言ってることに対しての苛立ちは、最近多いんですよ」とはseekの弁だ。

seekの発言はもっともだと思う。周知の通り、Psycho le CémuというバンドはDAISHIがメンバーを集めたバンドで、DAISHIが旗振り役だ。そのDAISHI自身の言葉を借りれば「しょうもないボーカルになってると思います。正直、事件前の方がとんがってましたからね」ではダメなことは火を見るよりも明らか。ただ、この日の「ファイティング!」から「REMEMBRANCE」までの5曲のアンコール演奏は凄かった。これを見る限り、2019年の20周年は以前の誰も手が付けられないPsycho le Cémuが見られるはずだ。

事件の禊は済んだ。バンドはあの事件が起きる前に戻れたのだ。




そして、終演後に発表された20周年を記念して行われる企画の数々。その中に「2019年5月12日、中野サンプラザ、 ~もうひとつの未来へ~」があった。中野サンプラザといえば、Psycho le Cémuは2006年5月7日の同ホール公演で、事件を受けて正式に活動を停止した。

今回の「FANTASIA」という曲とツアーで事件のことを吹っ切り、事件前からもう一度やり直すPsycho le Cému。2019年、20周年を迎える彼らの新しい旅は幻ではなく、リアルにすごいものになるはずだ。

取材・文◎ジョー横溝
撮影◎青木早霞

■東名阪ツアー<FANTASIA~勇気の幻想曲を探す物語~>2018年12月14日(金)@Zepp DiverCity Tokyoセットリスト

01. BLADE DANCE
02. DANCE Ⅱ HEAVEN
03. You&Me
04. 妄想グラフィティー
05. あきらめないDAYS
06. ノスフェラトゥ
07. one day
08. Liberty, babies
09. 激愛メリーゴーランド
〜芝居〜
10. FANTASIA~勇気の幻想曲~
11. 聖~excalibur~剣
12. 摩天楼カオス
13. Revenger -暗闇の復讐者-
14. LOVE IS DEAD
15. LAST EMOTION
16. 愛の唄
encore
en1. ファイティング!
en2. 祈り
en3. STAR TRAIN
en4. Murderer・Death・Kill
〜芝居〜
en5. REMEMBRANCE




■20周年結成記念日<Psycho le Cému 20th Birthday Party〜ぼくらの成人式〜>

2019年5月03日(金・祝) 品川インターシティホール
open17:00 / start18:30
▼チケット
全席指定 ¥12,000(税込)
※本公演はFOOD+1DRINK付きのパーティー形式になります
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【オフィシャルHP先行受付】
受付:1/5(土)12:00~1/14(月・祝)23:59
http://r-t.jp/plc0512

■<エピローグ 〜もう一つの未来へ〜>

2019年5月12日(日) 中野サンプラザホール
open17:00 / start18:30
▼チケット
全席指定 ¥6,800(税込)
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【オフィシャルHP先行受付】
受付:1/5(土)12:00~1/14(月・祝)23:59
http://r-t.jp/plc0512

■<PLC Home Party>

2019年6月07日(金) 新宿BLAZE
open18:00 / start18:30
出演:Psycho le Cému / SiXX / MIMIZUQ / Dacco
▼チケット
オールスタンディング ¥5,000(税込)
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【オフィシャルHP先行受付】
受付:1/5(土)12:00~1/14(月・祝)23:59
http://r-t.jp/plc0512

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