【ライブレポート】MUCC、ミオヤマザキ、首振りDolls、BBTS、MajestiCらBARKUP FUKUOKAで競演

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福岡県のライヴハウス・BARKUP FUKUOKAが3周年を記念して立ち上げたイベントライヴ<BARKUP FUKUOKA Presents DREAM × PARADE vol.1>が2019年1月5日に同所にて行なわれ、MUCC、ミオヤマザキ、首振りDolls、Broken By The Scream、MajestiCら5アーティストが競演を果たした。レポートが到着したのでお届けしよう。

◆<BARKUP FUKUOKA Presents DREAM × PARADE vol.1> 画像

2019年1月5日。
世の中が大きく時代を変化させた年でもあった平成。その元号が改元される節目に、数多くのアーティストやロック・バンドを輩出する町であることでも知られている福岡で、新たなライヴイベントが立ち上がった。このライヴイベントは、福岡県大野城市にある約1500人のキャパシティを誇るBARKUP FUKUOKAが3周年を記念して立ち上げたイベントライヴであり、バンドに限らず、アイドルやダンスグループなどが幅広い層が“音楽”という共通ツールのもとに集まる音楽フェスを目指していきたいという目的を第一に企画されたものであった。

第一回目の出演アーティストとして集められたのは、ロック界では知らない者はいない存在となったMUCC、“ミオラー”なる熱烈な信者ファンも多く、カリスマ的なロックバンドになりつつあるミオヤマザキ、多くのロックレジェンド達がこぞって推奨する期待のロックバンド首振りDolls、メタルサウンドとアイドルを融合させた新ジャンルグループBroken By The Scream、全ての音楽ジャンルをミックスさせ、ロックというジャンルに落とし込んだMajestiCという毛色の異なる5バンドだった。


▲MajestiC

トップバッターを担ったのは、BARKUP FUKUOKAの最優秀候補として出演が決定したMajestiC。ピアノの刹那的なフレーズをイントロとし、メロウな旋律にボーカルのEVEki(イブキ/Vo)が歌を乗せた「誓いが海に星まいて」からライヴをスタートさせた彼らは、1曲目からフロアの熱を上げていった。2曲目に届けられた和テイストを実に美しくロックの中に滲ませた「散りゆく桜」も、“ミクスチュアーバンド”と自らを称するMajestiCの象徴なのだろうと感じさせる、頑なロックではない大衆性を持ったロックであった。

中盤では、BARKUP FUKUOKAの最優秀候補という立場から、この日の出演者であったMUCCの「ニルヴァーナ」、首振りDollsの「イージーライダー」、ミオヤマザキの「メンヘラ」、Broken By The Screamの「サヨナラバースデー」のカヴァーを届けるというサプライズで会場と出演者を盛り上げ、2番手のBroken By The Screamへとバトンを繋げた。


▲Broken By The Scream

バトンを受け取ったBroken By The Screamは、出演者の中では特に異種。最近ではロックフェスにアイドルが出演することも珍しくない時代になったが、メタル系スクリーミングアイドルを名乗るBroken By The Screamが魅せてくれたこの日のライヴは、“異種”を感じさせることのないメタルを武器とした真っ向からの戦いとなった。

バックのゾンビバンドが奏でる爆音の中、4人はステージに登場すると、そのサウンドに物怖じすることなくデスヴォイスとキュートな歌声を交互に絡ませオーディエンスの度肝を抜いた。高音スクリームの雲林院カグラ(ウリインカグラ)、低音グロウルの野月平イオ(ノヅキダイライオ)、クリーンヴォイスの熊埜御堂ヤエ(クマノミドヤエ)と流鏑馬アヤメ(ヤブサメアヤメ)が絶妙なバランスで、デスメタルサウンドを放つ絶対的なスキルを誇るゾンビバンドの上に声を乗せて客席を煽り、彼女たちならではのノリでライヴを盛り上げていったのだった。

「Do・Do・N・Pa!!」では、アイドルらしからぬオールデスヴォイスという完全に振り切った楽曲でオーディエンスを釘付けにし、その後も「サヨナラバースデー」「夢花火」と人気の高い楽曲を畳みかけ、振り切ったパフォーマンスとキュートさで会場を魅了し続けていった。爆音を放つバンドの音に打ち勝つ力強い歌唱と全力を尽くしたパフォーマンスは完全にアイドルという枠を超えていた。この先、何本かの海外公演が決まっているという彼女達の今後の活躍に期待したい。


▲首振りDolls

3バンド目に登場した首振りDollsは、昨年の12月に新たなベーシスト、ショーン・ホラーショーを迎え、新体制となっての初ライヴであった。The Zanies の「The Mad Scientist」をオープニングSEに用い、ギターのジョニー・ダイヤモンドとベースのショーン・ホラーショーが華々しく登場し、少し間を置いてドラムボーカルのナオが艶やかな着物姿で姿を表した。3人がステージに揃ったその始まりは、最高のROCK SHOWを約束してくれる前触れに思えた。この時点で、見る者に高揚感を与えられるドラマを描けるバンドはそうそういない。

死と対面して書かれた歌詞がリズミックなロックチューンに乗って届けられる「切花」を1曲目に、間髪入れずにいなたさが漂うロックン・ロールを聴かせる「金輪罪」、猟奇的なギターから乱歩地獄へと引きずり込んだ悍ましいロック「鏡地獄」をたたみかけ、多くのロックレジェンド達を虜にした往年のハード・ロックが漂う「悪魔と踊れ」でオーディエンスとのコールレスポンスを挟むと、ナオのシャウトから、まるで戦車が突き進むような力強い表現力と爆音で我が道を貫いた。

「よく聴け! これが悪魔のギターだ!」
というナオの叫びからジョニーのギターソロが始まるなど(※別曲では歯で弦を弾く歯ギターも披露)、時折、ナオが曲中にプレイへと導く口上を述べるナレーションを挟み込んでいく“見世物小屋”的なライヴの楽しませ方も、このバンドならではの独特な個性。とにかくド派手で楽しいというのが彼らのライヴの在り方だ。

さらに、見る者を驚かせたのはラスト曲「ロックンロール」だ。ここで彼らがオーディエンスに魅せたのは、ジョニーとショーンのギター・ベースバトルだった。うなりを響かせたジョニーのギターと、スラップと強い弾きをもって見せ付けたショーンの凄腕ベースプレイの掛け合いではフロアから大歓声が湧きあがり、ジョニーがスタッフに肩車をされ、フロアでギターソロを響かせたヘルズマウンテンなる彼らの武器に、オーディエンスは驚きながらも全員屈託のない笑顔を見せていたのだった。

「久々に緊張した〜〜〜! 少しでも武道館に近付けた時間になりました! サンキュー! バイバイ!」と、ロックスターでありながら素の言葉を解き放った人間臭いボーカルのナオの人間性も、このバンドのカラーなのだろう。

ライヴの最後には、エンディングSEに用いたKISSの「God Gave Rock 'N' Roll to You II」でオーディエンスと共に掲げた両手を大きく広げた。毎回ライヴごとに魅せてくれるこの景色は、自らをロックン・ロールの道に引きずり込んだ偉大なるロックスター達への敬意。今の時代、ここまで歌舞伎けるロックバンドは他にいない。彼ら首振りDollsの音と存在は、忘れ去られてしまった本当の意味でのギラギラしたド派手なROCK SHOWを彼ららしくいなたく甦らせてくれた最高の時間だった。そして彼らはこの日、確実に初見のオーディエンスの心を奪った手応えを感じたに違いない。


▲ミオヤマザキ

前者からの世界観を一変させたミオヤマザキのステージは、まさに、今、勢いに乗っていることを感じさせる自信に満ちたライヴであったと言えるだろう。デジタル色の強いSEでtaka(G)、Shunkichi(B)、Hang-Chang(Dr)が登場すると、フロアからは自然発生的にクラップが起こった。それぞれが定位置に着くと、最後にずるずると大きなぬいぐるみを引きずってボーカルのmio(Vo)がステージに気だるく登場した。mioが中央に立った瞬間、“ミオラー”なる信者が生まれるだけのカリスマ性に納得した。彼女が宿すオーラに一瞬空気が止まったのを感じたからだ。私自身、ミオヤマザキのライヴを観たのは初めてであったが、正直、今、とても気になっていたバンドであったこともあり、その個性的な始まりに対してもとても興味をそそられた。

暗めな照明の中、臨終音を示す様な機械音が流れると、mioが歌詞というよりも心の中の鬱憤を詰まった言葉に変え一気に吐き出していった。
「ミオヤマザキ、始めます」
mioの号令のような一言から、taka(G)、Shunkichi(B)、Hang-Chang(Dr)が音を放つと、mioはシニカルな歌い方で歌い進めていった。“あんたの正義は誰かを救えんの?”という台詞的な歌詞が差し込まれる「正義の歌」は中盤でジャジーにサウンドが変化しつつも、4つ打ちのリズムに押し上げられていく。センスのいいリズミックな楽曲「女子高生」を間髪入れずに届け、完全にオーディエンスを虜にしていく。現代社会の闇へのアンチテーゼを感じさせる女子高生の現状をリアル過ぎるほどリアルに描いた歌詞からは、胸の痛くなる現実を突き付けられる。メッセージ性の強い歌詞、というものではない。しかし、目を背けることなく現実を直視して描かれたその丸裸な言葉(歌詞)にこそ、聴き手は共感するのだろう。捉え方によっては、直視するには辛過ぎるとさえ感じるその歌詞も、デジタルロックを取り入れたインダストリアルなロックに体を委ねながら聴けることで、不思議な浄化作用を生み出すのである。それこそがミオヤマザキのロックなのだろう。

“不倫は犯罪です”という言葉がフロアで大合唱になっていた、これまで観たことのない光景を魅せてくれた「民法第709条」やインダストリアルなメタルサウンドを押し出した「CinDie」を間髪入れずに届けていった後半戦も疾うに限界を超えたシニカルさで驀進し、MUCCへと繋げたのだった。


▲MUCC

ラスト。さすがの風格を漂わせての登場となったMUCCは、イベントを締めくくる説得力あるライヴでオーディエンスを惹きつけた。SUMMER SONICやOZZFEST、KNOTFEST JAPANなど大規模なフェスへの出演や、昨年行われた『Vans Warped Tour Japan 2018 presented by XFLAG』でKornや Limp Bizkitと名を連ねた経験を持つ彼らのライヴは、どっしりと構えた安定感が漂う。しかしながら、決して型に嵌まることなく、ライヴ毎に変化する体温を感じさせながら、それをその日の正解とする瑕疵のないMUCCらしいライヴは、この日もこの日だけの熱を放ち、集まったオーディエンスを沸かせた。

そんなラスボスMUCCが1曲目に選んでいた楽曲は「メディアの銃声」。今から13年前にシングル「ガーベラ」のカップリング曲としてリリースされたこの曲は、ドラムのSATOち作曲・ボーカルの逹瑯の作詞によって生み出されたMUCCを象徴するいい意味での暗さと、歌詞を重んじるロックバンドである彼ららしいメッセージが込められた1曲だ。マスメディアと人間の業を逹瑯らしい言葉で皮肉ったこの歌詞の中で、逹瑯は綺麗事だけでは生きられない人間の醜い業を恨む葛藤を絶叫に変えて差し込んだ。会場中が静まり返るほどに切迫したその叫びには狂気を感じた。それは、13年前に、もうここまでしっかりとMUCCというカラーが確立させていた素晴らしさに、今更ながら驚いた瞬間でもあった。

YUKKEの重厚なベースフレーズから始まる煽り曲「大嫌い」を2曲目に置いてオーディエンスを挑発していった流れから、古めな曲で構成されたセットリストで挑むのかと思いきや、3曲目から「ENDER ENDER」で、過去の“ムック”時代から進化時代への“MUCC”へと舵をきった。ムック時代のヘヴィさとは異なるキレのある重低音とメタル要素を強く感じるスピード感を宿した「ENDER ENDER」から繋がれたのは最新曲「アイリス」。それは、MUCC色を色濃く感じさせる質感でありながらも、更なる進化を感じさせる、ロックという言葉には収まりきらない新たな表情だった。

「最近は、ライヴハウスで何バンドも集まる対バン形式のライヴがなかったんで、昔を思い出すっちゅうか。テンション上がってます。ウチらが楽しんでるところを見て、一緒に楽しんでもらえたらと思います」
逹瑯のラフなMCを挟み、「自己嫌悪」へ。ミヤのセリフが印象的なムックらしいMUCCはフロアを大きく揺らした。

後半戦に「娼婦」「蘭鋳」という過去曲を再度差し込み、「蘭鋳」ではお決まりとなった全員座らせての一斉ジャンプで圧巻のノリの見せ付け、最後は“今”のMUCCで締めくくった。

ラスト曲はリーダーであるミヤ作詞作曲による「生と死と君」。深く体に染み込む感覚に陥るこの曲は、愛する人との別れを想像させる歌詞の中に、死生観だけではない生きる上での大切な何かを教えてくれる。腹の底から大きく吐き出される逹瑯のボーカルは、言葉を大事にするMUCCというバンドの要。聴き手を惹きつけ、その存在と共に胸の奥にその声ごと言葉を印象付ける唯一無二のボーカリストだ。「生と死と君」は、そんな逹瑯の魅力を引き出す力を持った偉大な楽曲だと思う。MUCCはこの日、他を凌駕する確固たるロックバンドの確立を証明して魅せたと言ってもいいだろう。

最高のライヴを繰り広げたMUCC、ミオヤマザキ、首振りDolls、Broken By The Scream、MajestiCという5バンドが繰り広げた最高の幕開けとなった<BARKUP FUKUOKA Presents DREAM × PARADE>が、この先も末長く続いてくれることを切に願う。

取材・文◎武市尚子
写真◎HBK! (FUKCREC)

<BARKUP FUKUOKA Presents DREAM × PARADE vol.1>

2019年1月5日(土)BARKUP FUKUOKA
【開場】16:00 【開演】17:00
CAST:MUCC、ミオヤマザキ、MajestiC、首振りDolls、Broken By The Scream
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