【インタビュー】さかいゆう、音楽人生のすべてを賭けて実現させたメロディとグルーヴの最高到達点

ツイート

■J-POPに飽き飽きしたおじさんへの希望の光だと思います
■日本のポップスも捨てたもんじゃないって


――サイプレス上野にがっつりジャズ・ソウルをぶつけてラップさせる、「SoDaRaw」は最高に面白い。

さかい:サ上(サイプレス上野)があんなお洒落なトラックでラップするわけねえ、というところから、サ上に決めましたからね。あれでジブさん(Zeebra)だったら、超お洒落になってたと思うんですよ。ジブさんはギンギンに今っぽいラップをガンガンやってるから、もうちょっとオールド・スクールなジブさんがもう一回聴きたいなと思って。

――それが「Tokyo Loves」。フィーチャリング・Zeebra。

さかい:ジブさんは顔見知りではあったんですけど、話したのは初めてぐらいで、“オファーしてくれてありがとう”と言ってくれて。そうなったらいいヴァイヴスが出て、ただかっこいいだけじゃなくて幸せのスパイラルに入って、そういうのって音に出るんで。ミックスのmolmolくん(佐藤宏明)もジブさんが大好きで、めっちゃ気合い入ってました。テストの段階から“俺の渾身のミックスです!”って。

――そうかと思えば、蔦谷好位置と一緒作った「最後栄光」とか。良い意味でJ-POPど真ん中の人も、がっつり参加してる。

さかい:そう。この曲が一番J-POPっぽい雰囲気があるかもしれない。「煙のLADY」もそうだけど、もっと東京シティ・ポップな感じで、それは土岐麻子が参加してるから。東京シティ・ガール代表ですからね。でもどこかに田舎くささがあるのが僕の良さというか(笑)。ただのお洒落じゃない。

――確かに(笑)。

さかい:ただお洒落なものとか、ただ新しいものとかは、危ないんですよ。トレンドの可能性があるから。新しいとトレンドは違うから。

――ああー。

さかい:トレンドを超えた新しいものを作りたいですよね。今流行ってるものが一番古いから。ジェイムス・ブレイクみたいな人、海外でもめっちゃ出てきてるじゃないですか。YouTubeで1000万回とかみんな見られてるけど、あんまり面白くない。全部やってることがわかるから。ジェイムス・ブレイク本人は、すごいと思いますけど。


▲『Yu Are Something』初回限定盤(CD+DVD)


▲『Yu Are Something』通常盤(CD)

――聴覚的にモダンな感じで言うと、「I'm A Sin Loving Man」とか、「Silent Couple」とか、今のR&Bだなと思いましたけどね。音のクリアさと深みがすごい。

さかい:音は、そうしますよ。音は絶対に昔より良くなってるから。全世界的に、奥行きとハイにもう一回焦点が当てられてきましたね。一時期は音量とミッドだけだったのに。だからJ-POPもだんだん変わってくると思いますよ。J-POPのミックスは、足が細いおデブちゃんだから。

――あれ、疲れるんですよ。長く聴いてると。

さかい:そうそう。歌は聴こえるけど、ドラムがちっちゃくて、ストリングスとかギターで派手にして。それもだいぶ変わってきてるから、いいんじゃないですか。今の10代の子のほうが、耳が良くなるかもしれないですね。

――何て言えばいいんですかね、このアルバム。ジャズあり、ソウルあり、R&Bあり、ラップあり、ピアノ・バラードあり。邦楽あり洋楽あり、古くもあり、新しくもあり。

さかい:何て言いましょう。日本ポップス史上に燦然と輝く無冠の大作。誰が無冠や!

――元に戻ったぞ(笑)。

さかい:でもこれ、誰が買ってくれるのかな。

――あはは。そこ突っ込む。

さかい:比較的CDを買ってくれるほうなんですけどね、僕のファンは。でも自分のファン以外も驚く作品になったから。おじさんに届けたいんですよね。

――おおー。おじさん狙いますか。

さかい:J-POPに飽き飽きしたおじさんへの、希望の光だと思いますけどね。日本のポップスも捨てたもんじゃないという、自分で言っちゃアレですけど、誰かが言ってほしいなと。

――僕が言いますよ。日本のポップスも捨てたもんじゃない。そういうアルバムですよ。

さかい:みんなノックアウトされますよ。されてますよ。知り合いのソウル・バーの人とかに聴かせたら、“ええー!”ってすごい盛り上がってくれて。“これはうちでかけれるね”って。

――頼もしい。まさに、10年やってきたからできた作品。

さかい:それはあるかもしれないです。それと、音のトレンドが、自分にとって都合の良いものになってきたこともあって。音量規制もなくなって、Spotifyとかそういうものも、聴いて気持ちいい音なので。もちろんCDで聴いてもいいですけど、すごくいいなあと思いますね。本当は、全部アナログで出したいんですよ。今までのアルバムを。

――おお。それ聴きたいです。

さかい:いつかやりたいんですけど、今はタイミングではないみたい。

――いつかかなえる夢ですか。

さかい:「SoDaRaw」でもサ上が言ってますけど、“好きなコト程/何故かキツく当たる”って。好きだから逃げれないんですよ。僕は仕事でやってないから、音楽を。逃げれないから、苦しいですよね。だから絶望も一個ありますよ。作れたという喜びと、“ああ、俺の好きな音にはならないんだ”という絶望と。

――切ないですね。切ないといえば、アルバムの最後の「You're Something」。この曲だけ切なさの深みが全然違う。非常にパーソナルな独白。何かあったんですか。

さかい:いや、常に孤独で絶望ですよ。

――ああ。アーティストは。

さかい:というか、僕が。自分は自分を知ってますからね。人は褒めてくれたりしますけど、自分は自分の天井を、決めてはいないけど、一応知ってるつもりだから。それを頼りに、毎日生きてるわけじゃないですか。絶望しかないですよね(笑)。もうちょっとうまくなろうと思ったりします。


――うーん。すごい高いレベルの話なんで、何も言えないですけど。

さかい:仕事でやってたら、いろんな方面に役立つんでしょうけどね。こう考えたらポジティブ・シンキングだよね、みたいな。でもそれで解決しないですからね。ずーっと修行ですよ。

――修行ですか。

さかい:人生賭けてやってることが仕事になってるのは、相当ラッキーですけどね。僕の場合、すごい時間かかっちゃったんですけど。20代の頃は生きてくためにバイトしてて、おまえは仕事せずに音楽だけやれよって言ってくれたから、事務所に入ったんですよ。30歳からそういう生活ができだしたんですけど、20代は本当はもっと音楽やりたかったし、すごい孤独でしたよ。1日5時間ぐらいしか音楽に向き合えないし。

――その葛藤は尊いと思います。若い人にぜひ伝わってほしいです。ちなみに「You're Something」って、英語の意味で言うと。

さかい:「たいした奴だ」って感じかな。あいつはなかなかの奴だ。あいつは重要な奴だ。あいつを軽く見ちゃダメかもしれない。言いようによっては、ちょっと偉そうですからね。He's Greatとか言っちゃうより、“あいつすげえかもしれない”っていう感じ。

――タイトルは、それをYuにしてある。

さかい:よく使うんですよ。一個前のアルバムは『4YU』だったし。『ONLY YU』っていうのもあったし。

――たいしたアルバムです。

さかい:そうやって言っていただければ。上から目線で、“なかなかのアルバムだな”って言ってもらえればうれしいです。そして、45歳以上限定。

――あはは。それはキビしい。

さかい:逆プロモーションで、話題になりそうですけどね(笑)。

――確かに。あのジョンスコが!っていう感激を共有したいと。

さかい:そうそう。おじさんキラーなアルバムだとは思いますよ。音楽をピュアに好きな人のためのアルバム。ピュアだからめんどくさくなるんですよね、おじさんって。だんだん年をとると。

――ピュアと頑固はセットですから。

さかい:僕も、だいぶめんどくさい部類に入ると思います(笑)。

取材・文●宮本英夫


リリース情報

5th ALBUM『Yu Are Something』
2019.1.23 Release
【初回限定盤】
初回限定盤(CD+DVD)
3,800円(税抜) UMCA-19060
【通常盤】
通常盤(CD)
3,000円(税抜) UMCA-10068
-CD-
1. Get it together feat.Michael Kaneko, Ray Parker Jr.
2. 煙のLADY feat.土岐麻子
3. I‘m A Sin Loving Man feat.黒田卓也
4. 桜の闇のシナトラfeat.John Scofield, Steve Swallow, Bill Stewart
5. Brooklyn Sky feat.黒田卓也
6. SoDaRaw feat.サイプレス上野
7. Magic Waltz feat.John Scofield, Steve Swallow, Bill Stewart
8. Silent Couple
9. Tokyo Loves feat.Zeebra
10. 確信MAYBE feat.おかもとえみ(フレンズ), Ray Parker Jr.

11. Fight &Kiss(Something Mix)
12. 最後栄光13. You're Something
-DVD-
Fight & Kiss (Music Video)
You're Something (Music Video)
Documentary of “Yu Are Something”
“(They Long To Be) Close To You” cover by Yu Sakai

ライブ・イベント情報

「サ上とロ吉とさかいゆう」
2019年1月24日(木) club asia(東京都渋谷区円山町1-8)
出演:サイプレス上野とロベルト吉野 / さかいゆう
問合せ:club asia 03-5458-2551(15:00-21:00)

『さかいゆう TOUR 2019 “Yu Are Something”』
・2019年4月6日(土)高知キャラバンサライ
全自由\4,860(税込、整理番号付、ドリンク別)
OPEN/START:16:30/17:00
一般発売日:2/16 10:00~
問合せ:DUKE高知 088-822-4488

・2019年4月7日(日)大阪国際交流センター
全席指定\5,400(税込)
OPEN/START:17:00 / 17:30
一般発売日:2/23 (土)
問合せ:GREENS 06-6882-1224

・2019年4月22日(月)Zepp Diver City
全席指定\5,400(税込)
OPEN/START:18:00/19:00
一般発売日:2/23(土)
問合せ:ソーゴー東京 03-3405-9999

◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報