【インタビュー】FEVER 333、「君は単なるリスナーじゃない」

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■ エンパワーメントの意識を作っていきたい

── 昨年あなた達のEP『メイド・アン・アメリカ』を聴いて圧倒されて、アルバムが出るのをずっと楽しみにしていたんですが、『ストレングス・イン・ナンバーズ』には完全にやられました。本当に最高のアルバムですね。

3人「ありがとう!」

── このアルバムを作るにあたって、サウンド面、歌詞の面でそれぞれに目指したことは何でしたか?

▲アルバム『ストレングス・イン・ナンバーズ』

アリック「歌詞は全てジェイソンが書いてるから、サウンド面について話すけど、可能な限り多くの影響を取り込んで、僕達のサウンドを広げようと試みたんだ。メンバー全員が好きな音楽もあるけど、それぞれに違う好みも持ってて、リスナーが予想しないような音楽も聞いてるんだよね。だから、僕達の多様性を取り込んで、それらを自然な形でまとめた作品にしようとしたんだ」

ステファン「僕達のEPは、僕達のサウンドを世界に紹介するクールな導入作品になってたと思うんだけど、このアルバムは全ての面でより強力になってると思う。誰かがレビューでこう評してたんだけど、『ヘヴィ・ロックやヒップホップのファンでなくても、誰もが聞ける曲があるアルバム』なんだ。ヘヴィなロックのアルバムって、アルバムの大半がヘヴィで1曲だけスローな曲があるような作品が多いけど、僕達のアルバムは、その中間に位置する曲もカバーしてると思う。僕達がやれる様々なタイプの曲を入れたから、すごくスローな曲もあるし、少しダンサブルな曲もあるし、本当に色々なんだ。このアルバムのおかげで、次に僕達がやりたいことの可能性も広がった気がする」

── そうですね。あるインタビューで、このバンドを始めるにあたって、“プラック・パンク・ロック”を作ろうと思ったとジェイソンがコメントしていたのを読んだのですが。

ジェイソン「うん」

── このアルバムは、“ブラック・パンク・ロック”を超えた、よりワイドなサウンドになっていますよね。美しいメロディの曲が何曲も入ってますし。

ジェイソン「うん、それが狙いだった。俺達が大好きなアートと音楽の要素を全て入れるように試みた。でも、それらの影響に敬意を払って、単にサンプルしたり拝借したりしないように気をつけたよ。歌詞の面では、できるだけ沢山の人達に、このバンドのこと、3人の人間がやってることを知ってもらえるような内容にしたんだ。俺達は、一人一人が自分達の力を感じること、自分が持っているとは思わなかった力に気づくことができる場を提供してる。そうやって、エンパワーメント(自ら自分に力をつけること)の意識を作って行きたい。だから俺はパワーって言葉をくり返し使ってるんだけど、人として君が持つ力を理解することは、このバンドにおいて最も重要なことだからなんだ。君は単なるリスナーじゃない。一人の主張者で、地球という大きなパズルのピースの一つ、重要な構成員なんだ。そして今は、人類の集合意識の中で、大きなシフトが起こってる。特に若い世代は、もっとお互いを認め合ってる。それはもっと様々な影響に触れてきたからなんだ。音楽についても同じで、違う音楽の影響に触れれば、違う音楽を理解するようになる。文化もそうだ。違う文化に触れてから、それを理解するようになる。だから俺達は、サウンドと歌詞の両方で、俺達が表現したい文化を人々に見せるアルバムを作ろうとしたんだ」

── それぞれの音楽的な影響を知りたいので、昔から大好きなアーティスト/バンドを教えて下さい。

アリック「僕が一番好きなバンドは、アット・ザ・ドライヴ・インだと思う。そういえば昔、彼らの日本公演の映像をいつも観てたよ。彼らの音楽を初めて聴いた時、僕が聴きたいと思ってたサウンドがそこにあるのを感じたんだ。彼らの音楽が放つ怒りやエネルギーが、イキりすぎてないっていうか、マッチョすぎない感じがして、共感できたんだよね。他にも好きなバンドは沢山いたけど、僕が音楽をやりたいと思ったのは彼らの影響だと思う」

ステファン「スマッシング・パンプキンズ。父に教わったんだ。彼らが本当に様々なサウンドの曲を作って、やりたいことを何でもやってるのが好きだった。メタルのリフを入れて、エレクトロニックの曲も作って、ダブル・アルバムも出して、アルバムのカバーも含めて全てがセンス良くて。有色人種のメンバーと女性メンバーがいたし、彼らの全てが魅力的だったよ。学校で、周りは皆パンク・ロックばかり聴いてて、僕はスマッシング・パンプキンズを聴いてたから笑われたんだけど、僕にとって彼らは本当にクールで完璧だった」

ジェイソン「俺が一番好きなロック・バンドは、ブッシュ。これを言うと必ず冗談だと思われるんだ。でも『シックスティーン・ストーン』と『レイザーブレード・スーツケース』は、驚異的なアルバムだった。それまでR&B、ソウル、ヒップホップだけを聴いていた俺のターニング・ポイントになったバンドっていう懐かしい思い出もあるからなんだけどさ。10歳の時に叔父にブッシュのアルバムをもらって、音楽の見方が変わったんだよ。でも、俺が音楽をプレイするようになったのは、ミュージシャンの親父の影響なんだ。俺達は奇妙な関係なんだけど、親父は俺が大人になる上での手本だったし、アメリカのクールな黒人の手本だったんだ。親父が音楽をやってる姿を見てたから、自分が大人になって音楽をプレイすることを仕事にする姿を思い描くことができたんだよ」



── 本当にそれぞれ違ってて、興味深いです。私がフィーバー333を初めて聴いた時に思い出したのは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだったんですね。他の評論家もよく指摘していますが、このバンドのエネルギーとケミストリー、そして社会的なメッセージは、非常にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに通じるものがあると思います。彼らの音楽はどう思いますか?

アリック「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは大好きだよ。それは本当によく指摘されるんだけど、言われる度に僕達は感謝してる。子供の頃の僕は彼らの歌詞を理解するためにリサーチしたんだ。そんなことをしたバンドは彼らが初めてで、人生に影響する問題に関してメッセージを伝えるために音楽を使うっていう考え方にも、すごくインスパイアされたよ」

ジェイソン「彼らは、政治的な活動とロックをクロスオーバーさせたミュージックの代表格だからね。彼らが道を切り開いてくれた。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがいなかったら、俺達みたいなバンドは登場しなかったと思う。だから、彼らと比べられるって、本当に賛辞だよ。ちなみにさっき、トム・モレロがソロでパフォーマンスをするのを見たばかりだよ。彼らは本物だよ」

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