【インタビュー】kobore、音楽性の広がりが深度を増していることが印象的な1stフルアルバム『零になって』

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koboreは、2015年に結成された府中発のギターロックバンド。力強さや瑞々しさ、洗練された味わいなどを湛えた個性的な楽曲と精力的なライブ活動、コンスタントな音源リリースなどにより着実にスケールアップしてきた彼らから、最新作『零になって』が届けられた。koboreの1stフル・アルバムとなる同作は、より音楽性の広がりを見せると同時に深度を増していることが印象的。2019年に入ってさらに加速することを予感させる彼らに、バンドの成り立ちや『零になって』について語ってもらった。

■“やりたくないことはやらない”というのがテーマ
■自分がやりたくて最高に楽しいと思えるものだけをやる


――koboreは、どんなふうに結成されたのでしょう?

佐藤赳 Vo/Gt(以下、佐藤):僕は、高校を卒業してから弾き語りをしていたんですが、バンドをやりたいなと思っていたんです。自分の弾き語りの曲をバンドでやったらどうなるのか知りたくて、みんなに「ちょっとやってみてくれない?」と声をかけたことがkoboreを結成するきっかけになりました。GarageBandやCubase(共に作曲用ソフト)を使えばバンド・サウンドをシミュレーションできるけど、それだと想像が広がらないし、自分の知識には限界があるからショボい感じにしかならないんですよ(笑)。だから、生身の人間にお願いしたほうがいいなと思ったんです。

――いいメンバーが揃いましたね。弾き語りの曲をバンドで演奏するところから始めて、音楽性も徐々に変わっていったのでしょうか?

佐藤:変わったというか、広がっていきました。始めた当初の僕は、本当になんでも良かったんです。ドラムを叩いたりベースを弾いてくれる人がいれば嬉しいという感じだったから。そういうスタンスだと、メンバーそれぞれの好きなものとか、やりたいものが自然と入ってきますよね。それに刺激を受けて、こういうのもいいな、こういう曲もやりたいなと思うようになって、曲の幅が広がっていったんです。今は、“やりたくないことはやらない”というのがテーマというか。自分がやりたいと思ったこと、最高に楽しいと思えるものだけをやるというスタンスになっています。

――楽曲の良質さや幅広さ、メンバーの個性が伝わるアレンジなど、koboreは魅力が多いバンドといえます。1月23日にリリースされた1stフル・アルバム『零になって』の制作は、どんなふうに始まりましたか?

佐藤:『零になって』は、すごく考え込まれたアルバムという印象を受ける人が多いみたいですけど、実は制作が始まったときは結構切羽詰っていました。2018年は50本を超えるツアーをまわって、その途中途中で曲作りをしていたので、本当にほぼほぼ何もない状態からのスタートだったんです。だから、テーマを掲げてそれに沿って曲を作ったりするんじゃなくて、とにかく曲を作るしかなかった。今回は、そういうところから入っていきました。

――そういう状態で幅広さと完成度の高さを持ったアルバムを作る辺り、バンドの底力を感じます。

伊藤克起 Dr(以下、伊藤):そう言ってもらえると嬉しいです。『零になって』はいろんな曲が入っていて、どれも自信があるけど、僕の中で特に好きな曲をあげるとしたら「さよならは言わずに」ですね。今までのkoboreは、こういう6/8拍子の曲はやったことがなかったんですよ。そういうところで印象的だし、メロディーがいいし、歌っている内容もジーンとくるものになっていて、すごく気に入っています。アルバムの最後にこの曲を持ってきたのも正解だったなと思いますね。

佐藤:「さよならは言わずに」は楽曲的にも、歌詞の面でも、僕の中ではわかりやすい曲です。53本のツアーをまわっている最中に、次のツアーもほぼほぼ決まっていたんですよ。ただ、53本まわったがために、次は20~30本くらいの規模になると。そうなると次回は行けない場所が出てくるから、そういう土地の人に向けて曲を書きたいなと思ったんです。それで、“こっちからいけないときもあるけど、僕達はずっと歌っているからいつでもきてください”ということを歌った曲を作りたいなと思って。そういう言葉を前向きだけど、ちょっとせつないメロディーで歌うというコンセプトのもとに作ったのが「さよならは言わずに」です。それに、ライブの最後に合う曲ということも意識して作りました。

安藤太一 Gt/Cho(以下、安藤):僕は「ワンルームメモリー」という曲が好きです。この曲を聴いた人は、自然とサビを歌いたくなる気がするんですよ。声に発して歌いたくなるメロディーと言葉の詰め方になっていて、メチャクチャいいなと思いますね。ちょっと女々しい感じだけど、重たくは感じさせないという曲調も好きだし。「ワンルームメモリー」は、僕の中の推し曲です。

佐藤:この曲は僕の実体験ではなくて、僕の友達が体験したことが元になっています。僕自身は独り暮らしをしているわけじゃないし、ワンルームに住んだこともない。友達の話を聞いて、相手の女の子はこういう気持ちだったんだろうな、男はこういう気持ちだったんだろうなということを想像して、それを自分の経験と照らし合わせて書きました。だから、みんなに向けてというよりは、20代に照準を合わせた曲といえますね。お酒を飲める年齢の人とか、ワンルームで独り暮らしを始めたばかりの人というように響く人間が限られているけど、こういう曲もあってもいいかなと思ったんです。


――全然“あり”だと思います。10代の子が聴くと大人の恋愛に対する憧れを感じるでしょうし、上の世代の方は20代の頃を思い出すでしょうし。なので、響く人が限られているとは思いませんよ。

佐藤:それ、わかってもらえましたか(笑)。僕も高校生のときにちょっと意味がわからなかった歌詞も、バイトを始めてわかるようになって、長く聴き続ける曲になったりしたんですよ。アルバムだから、そういう曲が1曲くらいあっていいかなと思ったんです。だから、10代後半でkoboreを聴いてくれている人は、2~3年後にまた「ワンルームメモリー」を聴いてほしいですね。それで、ずっと聴いてもらえる曲になるといいなと思います。「ワンルームメモリー」は安藤も言ったように僕の中では過去最大に女々しい曲だし、他の曲に比べてサウンドがガシャガシャしているんですよ。そんなふうに、今回のアルバムの中ではちょっと異色な曲ではありますね。

田中そら Ba(以下、田中):僕は「スーパーソニック」という曲が、すごく好きです。カッコいいと言ってくれる人もいますけど、僕はアホっぽい曲だなと思うんですよ(笑)。それは、良い意味でですけど…。歌詞も含めて、聴いていたら元気になる曲で、一番好きですね。朝聴くと気持ちが上がって、良い1日を送ってもらえると思います(笑)。

佐藤:「スーパーソニック」は、ちびまる子ちゃんの「おどるポンポコリン」という曲がありますよね。あの曲を聴いて作ろうと思ったんです。“なんでも かんでも みぃんなぁ~ ♪”というノリは最高じゃんと思って。超キャッチーだし。「おどるポンポコリン」みたいにキャッチーな曲はkoboreにはなかったし、今度のアルバムは僕らになかったものを詰め込みたいという気持ちがあったんですよ。それで、とにかく“ダサカッコいい曲”を作ろうと思って作ったのが、「スーパーソニック」です。

――ええっ? ダサいとは感じなかったです。
v佐藤:いや、“ダサカッコいい”は、カッコいいんですよ。ダサいものはダサい。そうではなくて、ダサカッコいいものを意識して作って、いいものができたなと思います。

――そういう意味でしたら同感です。「ナイトワンダー」もそうですが、「スーパーソニック」は4つ打ちではないのにダンス感があることが印象的です。

佐藤:それは、意識しなかったよね?

一同:うん。
v佐藤:躍らせるというよりは、聴かせるというイメージで作りました。ただ、4つ打ちで脈打つような感じではないけど、ノリがいいということは意識したんです。だから、中間をいく感じの曲にはなったかなと思います。

田中:「スーパーソニック」はミュージック・ビデオになっているんですけど、監督はメチャクチャ踊りながら撮っていました(笑)。


▲佐藤赳 Vo/Gt

――それは頷けます。それに、2~3年前でしたら、どのバンドもこういう曲は4つ打ちにしたと思うんですね。8ビートでダンスを香らせるところに新しさを感じました。

佐藤:そう言われると、たしかにそうですね。当時は4つ打ちが流行っていたから。でも、僕はリズム隊に関しては任せきりなので、そういうリズム感の独特さは彼らが出してくれたんです。僕は、こういうリズムにしてほしいというようなことは、あまり言わないんですよ。

――リズム隊お二人のセンスの良さを感じます。「スーパーソニック」の歌詞についても話していただけますか。

佐藤:この曲は比喩表現を多くしようかなと思って、歌詞に出てくる“君”を時計だったり、スーパーソニックだったりに例えました。それに、“君”が誰を意味しているのかが、わりと曖昧なんですよね。大事な人なのか、大事な人と一緒にいる時間なのか、僕らで言うとライブをしているときなのか…というふうに、みんなの想像を膨らませる歌詞ということを意識した歌詞になっている。つまり、この曲は“早く時間が過ぎる”ということしか歌っていないんですよ。“こういう時間は早く過ぎる”ではなくて、どういうときは時間が早く過ぎるかは、みんなに任せるという。それぞれの解釈で、いろんな人に共感してもらえるといいなと思います。

――いろいろな技を活かされていますね。では、佐藤さんの中で特に印象の強い曲をあげるとしたら?

佐藤:「ナイトワンダー」です。前作の『ヨル ヲ ムカエニ』のレコーディングをしていたスタジオは小さいベランダがあって、そこがすごくいいんですよ。すぐ傍を、電車が“パーン!”と通ったりして。そこでタバコを吸いながら、こういうときに聴く曲がほしいなと思ったんです。僕と同じ世代の人はタバコを吸い始めたり、お酒を飲むようになったりするのが、カッコいいからという理由の人が多いんですよね。僕の中にもそういう感覚があって、スタジオのベランダの雰囲気とか、そこでタバコを吸っている自分のアクションにハマる曲がほしくなった。完璧に、このシチュエーションで聴くしかないでしょう…くらいな曲ということを意識して、「ナイトワンダー」は作りました。


▲安藤太一 Gt/Cho

――だから、エモーショナルなんですね。

佐藤:そう。メロウで、深く落ちていくイメージです。歌詞は同じフレーズを繰り返しているんですけど、つまらなく聴こえないようにするために、歌詞で韻を踏んでみたりしました。言葉を字余りなしで、ピタッとはめるようにしたし。「ナイトワンダー」は、聴いていて心地好いということを一番重視しました。

――曲作りのヒントになったイメージなどを、そのまま楽曲で表現できるスキルを持たれていることがわかります。ここまでにあがった曲以外に、スロー・チューンの「東京タワー」にも惹き込まれました。

佐藤:東京を歌った曲は、地方から上京してきた人が作ることが多い気がするんですが、それをぶっ壊したかったんです(笑)。それに、上京してきた人が作るより、元々東京にいる人間が東京の皮肉を歌ったほうが、説得力があるんじゃないかなと思って。そういう考えのもとに「東京タワー」は作りました。

――とはいえ、上京してきた人が聴いても染みる歌詞になっていませんか?

佐藤:そう。僕が上京した体で書きました。ツアーで1ヶ月間東京に帰れない時期があって、それを終えて東京に帰ってきたときに、たまたま仕事で東京タワーの近くに行く機会があって。それで東京タワーを見たら、すごくきれいだなと思ったんです。いつもはそこに建っているのが当たり前で、見ても特になにも感じなかったけど、1ヶ月いろんなところを見て帰ってきたら“ズン!”ときた。それで、上京した体で歌詞を書くことにしたんです。そういう歌詞の書き方はしたことがなかったので、チャレンジした曲でもありますね。

――スカイツリーではなくて、東京タワーというのもいいなと思います。

佐藤:デジタルよりも、アナログという(笑)。それがkoboreには合っているんじゃないかなと思ったんです。

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