【インタビュー】逹瑯&ミヤ [MUCC]、「世に出るタイミングをずっと待っていた曲がある」

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■こうやって掘り起こすのも前向きな選択
■新しい曲に向かうっていうスタンス

──過去のデモから掘り起こしたもう一方の「ヴァンパイア」は?

ミヤ:当時のアルバムの世界観に必要なかったからなんですよ、浮いてて。世界観がハッキリした新しいことをやりたいと思って作った曲ではあったけど、“『THE END OF THE WORLD』(2014年発表12thアルバム)にはいらねえな”と思っちゃったんです。ただ、軽く録音もしていたんで、当時のドラムとベーストラックをそのまま使って、新たにピアノやオルガンを入れて完成させた感じですね。

──歌詞も女性目線で、曲もドラマティックに展開して、精神撹乱してくようなストーリー性もある。すごく惹かれるナンバーですよ。

逹瑯:俺もこの曲調は好きで、覚えてましたね。『THE END OF THE WORLD』には入らなかったけど、逆に今回はスッと馴染んで入ったんで、アウトテイクというよりは、世に出るタイミングをずっと待っていた曲だと思う。

▲ミヤ (G)

ミヤ:「この曲はいいよね」って話を当時のディレクターもすごくしていて。別に入れたくないわけじゃなかったんだけど、本当にあのアルバムにそぐわなかっただけで。

逹瑯:『THE END OF THE WORLD』に入れないほうが、この「ヴァンパイア」のためには良かったんじゃないかな。アウトテイクだからダメな曲ということじゃなくて、そのときのタイミングや全体の流れで、お互いのためにならないんだったら置いといたほうがいいっていうジャッジもあるから。それは後ろ向きの選択ではないし、こうやって掘り起こすのも、ネガティブというより前向きな選択だと思う。

──熟成させると美味くなることありますよね、肉も酒も。あと楽曲も?

ミヤ:だと思います。でも「ヴァンパイア」は、歌詞もほとんど変わってないんですよ。ただ、サビの感じが何となくのニュアンスでしかなくて。ここまでストーリー性のある詞は、今回のコンセプトがなかったらやらなかったと思う。今回、完成するべくしてしたかなって感じはあります。

──今だからこその感覚やセンスも、過去の曲に入れ込もうとしました?

ミヤ:逆に今のほうがアレンジが見えやすかったです。当時は何となくの雰囲気でやってるんですよ。デモを聴いていると、“こういうことをやりたかったんだろうな”って感じですね。できているところもあれば、できていないところもあって。だから、“ここはいらねえな”とか。

逹瑯:ボーカル的には、どの時代の曲とかは関係なくて、今、目の前にある曲を歌うだけなんで。すごくシンプルに、新しい曲に向かうっていうスタンス。

──シンガーとしての自分を全開にして、歌で持っていく「積想」。これが当時、アウトテイクになった理由は?

逹瑯:今、各地方の集中型ツアーを廻っているんですけど、お客さんを入れた状態で公開レコーディングをして、そこで録ったデモテープを持っていって売ってるんですよ。今回は、“ツアーのタイミング的に冬っぽい曲を作ろう”って話だったんです。それに公開レコーディングありきなんですけど、“今は、こういう曲をやりたい”ってイメージが膨らんでいったのが「積想」で。作りながら、“これは目の前で一発録り向きの曲じゃないな”と思いながらも(笑)、“これはこれで好きだからしょうがない”と。“そもそもこれが選ばれるはずがない”と思って作ってた。俺の中では曲を作っている段階からアウトテイクになることを確定してたんです(笑)。

──その心境をもうちょっと教えてもらえます? 世に出ないことが分かってて曲作りを続けるわけですよね。

逹瑯:いや、でもバンドを続けていれば、リリースできるタイミングってそこだけじゃないから。

ミヤ:普通のレコーディングスタジオで公開レコーディングするなら、あのタイミングでも「積想」を選んでたかもしれないんですよ。でも、その時は“カセット4トラックMTRで一発録り”だったんで無理だなって。曲を聴いた瞬間、“後々のアルバムに入るべき曲だな”ってことは俺も思っていたんで。今回のアルバムにはすごくマッチしていたわけで、この「積想」もタイミングを待っていた曲のひとつじゃないですかね。

▲コンセプトアルバム&ツアーフライヤー

──ヘヴィネス要素たっぷりに広がりも奥深さもある「in the shadows」。これも凄まじく聴き応えある曲ですよ。

ミヤ:前回のシングルの曲出しのとき、YUKKEが曲を作れなくなってて。“メンバーそれぞれが作詞作曲した4曲を入れる”ってコンセプトからブレることがもしあったとしても、リリース日は変えられないから、保険の曲として俺が作ったんですよ。別に新しいことはしていないけど、“昔のMUCCっぽくていいな”と思ってたので、この前の北海道ツアーでやっていたり。ライヴでやっている曲が音源に入るというか、ライヴ先行で聴いた曲を後から音源で楽しむってことを、今、やりたくて。それでデモテープを作ってツアーも廻っているんですよ。そのデモテープの曲も後々のアルバムに入ることになるんだけど、まず手始めとしてそういう体験をしてもらいたいなと思って、今回「In the shadows」を入れてみたと。当時、レコーディングも済んでいたんで、これこそ本当のアウトテイクかもしれないです。

──当時というのはシングル「時限爆弾」(2018年7月発表)ですよね?

ミヤ:そうです。俺、アウトテイクって好きで。外タレとか、昔のアウトテイクをボーナストラックとして追加収録して、後からアルバムを再発したりするじゃないですか? “あっ、あのアルバムの音してるわ”とか思うんですよ。聴くのも楽しみで。

──「In the shadows」自体、「保険で作った」と軽く言いながら、かなりの仕上がりですよ。

ミヤ:もちろん当時、入れる前提でレコーディングしているんで。そのレコーディングの翌日にYUKKEが曲を作ってきたんじゃないかな。だから値段の高いプレッシャーをYUKKEに与えたっていうか。しかもこの曲は俺、家で作ったんじゃないんですよ。その場のスタジオで作って、そのまま録音しちゃったんで。歩みについて来れない人間の気持ちを上げるために作ったという。曲としてはいいけど、斬新なことはあまりしてないし、それまでのMUCCにありそうな曲と言えば、そう。ただ、昔よりは柔軟になってきたところがあって、歌詞も入れて形にしてみたら、それまでやれていないことをやれているかなって。最終的にはそういう楽曲にはなりましたけど。

──プレッシャーを与えるために、処刑台の詞にしたんですか?

ミヤ:それ、いいと思います、話の流れとして(笑)。でもプレッシャー与えるためだけに作ったわけでもないですからね。

──新たに書き下ろした曲も、昔っぽいという言い方は適さないかもしれないけど、ヘヴィネスな要素が自然に入り込んでますよね。

ミヤ:今回のアルバムだから、そういうこともできたっていうところもありますよ。ホラーというコンセプトがあるから、ちょっと怖くしてみようって感覚もあったし。アレンジのアイデアとしても、ホラーにヘヴィネスなサウンド感はくっついてまわるんで。コンセプトに呼ばれたっていうのはあります。

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