【2/17放送】竹原ピストル、“生き方としての歌うたい”が立った武道館公演が蘇る

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2018年12月22日、<全国弾き語りツアー“GOOD LUCK TRACK”>の最終公演として、竹原ピストルは日本武道館のステージに立った。フォーク・デュオ、野狐禅としての結成から20年目、ソロ・デビューから10年目という遅咲きの快挙に、一度でも彼の音楽と人柄に触れたことのある者は惜しみない拍手を贈った。武道館でたった一人、弾き語りをやってのけたアーティストは他にもいる。が、彼ほど真っ直ぐに不器用に、体中に痣を作るようにしてアンダーグラウンドから這い上がり、「生き方としての歌うたい」を貫いてここに立った男は、そうそういるものではない。

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短パンにTシャツ、頭にタオル、足にアディダスのスニーカー。普段のライブと変わらない姿で、ゆっくりとアコースティック・ギターを爪弾く1曲目「オールドルーキー」から、熱い言葉の弾丸が炸裂する。武道館を埋め尽くした観客が固唾を飲み聴き入る中、「LIVE IN和歌山」「どーん!とやってこい、ダイスケ!」など、旅先での出来事や人との出会いから生まれた言葉を、目の前にシーンが浮かぶように生き生きと歌う。照明は白一色のスポットライトのみ、ボクサーのように身をかがめて立ち前方をにらみつけ、ギターとハーモニカだけの伴奏で語るように叫ぶように歌い続ける。凄まじい迫力だが、不思議と怒りや攻撃性は感じない。激情と優しさがないまぜになった、独特の空気が武道館を包み込んでゆく。



最新アルバム『GOOD LUCK TRACK』から、TVドラマ『バイプレイヤーズ』主題歌「Forever Young」、情けなくも切ないロスト・ラブソング「I miss you…」に加え、吉田拓郎のカバー「落陽」、野狐禅時代のレパートリー「カモメ」などを交えてライブは進む。「一等賞」では手拍子が沸き起こるなど、観客も乗ってきた。「オーバー・ザ・オーバー」などアスリートをイメージした応援歌、歌うたいがステージに臨む繊細な心境を綴る「マスター、ポーグスかけてくれ」など、歌詞に込めた多様なドラマのおかげで緊張感が途切れない。





中盤のハイライトは、何と言っても「Amazing Grace」と「カウント10」だろう。讃美歌として知られる「Amazing Grace」からメロディーを借り、激情を内に秘めつつ恩人への鎮魂歌へと綴った熱い思い。ぼくはどんなに打ちのめされようとも、絶対にカウント10を数えない── 。「カウント10」の、何度倒されても立ち上がってきた「不屈のシンガーソングライター」の生き方を、そのまま歌詞にした人生哲学。時にラッパーのように言葉の弾丸を撃ちまくり、講談師のような節回しで物語を伝え、フォークシンガーのように地に足のついた視点から日々の暮らしを歌う。つくづく、凄い男だ。

ライブは後半に差し掛かる。生命保険のCMソングになった人気曲「よー、そこの若いの」では、自分から観客に手拍子とコーラスを求めておきながら、あまりの盛り上がりぶりに思わず笑ってしまう、お茶目な一面を見せてくれた。「例えばヒロ、お前がそうだったように」では、この世を去った悪友に向けた生々しい感情が、いつしか壮大な死生観へと昇華される、鬼気迫る歌を聴かせてくれた。「ちゃんと人間か?」繰り返されるフレーズがずしりと心に突き刺さる。そして中島みゆきの「ファイト!」をまるでオリジナルのように自在に歌い、遠藤ミチロウの「カノン」を讃美歌のように崇高に歌う、圧倒的な吸引力に満ちた竹原ピストルの素晴らしき世界。本編ラスト曲「ドサ回り数え歌」に至るまで、そのパワーはまったく衰えることなく、その言葉は鋭くも優しく研ぎ澄まされたままだった。











このライブの模様は、2月17日にWOWOWで放送される。映像を通して、いや映像だからこそ感じられるその表情と立ち姿と歌声の凄みを、その目と耳でぜひ確かめてほしい。言文一致という言葉に例えれば、言歌一致、言生一致を貫く唯一無二のシンガーソングライター。竹原ピストルの世界へようこそ。




文◎宮本英夫
撮影◎フクマサリョウジ

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■番組情報

<竹原ピストル全国弾き語りツアー“GOOD LUCK TRACK”>
【放送スケジュール】
・2019年2月17日(日)よる10:00
・2019年3月19日(火)よる9:00

【収録日・収録場所】
2018年12月22日/東京 日本武道館

【出演】
竹原ピストル

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