【スペシャル対談】日山豪×shuntaro 「BORDERLESSー“音”と“映像”で越境するー」

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■可能性を広げる
■「自由のつくり方」

日山:いろんな表現が越境して、自由になっているところで、改めて考えたいのは「自由のつくり方」ですね。「自由」とは決して好き勝手にして良いということではなく、発注側、制作者側が共にプロジェクトのゴールを認識していて、そのための行動に自由があるということ。その選択肢、工程の踏み方が自由になってきているということです。今いわゆる“働き方改革”で言われている大きな単位での自由さが、「音をつくっている」僕個人まで広がってきていることはヒシヒシ感じるなあ。

shuntaro:それで言うと、個々人の結びつきで自由にビジネスができる波は起きていますよね。例えば場合によっては、ある程度知名度のあるインスタグラマーが商品を個人的に売ったほうが、その商品をマーケティングして売るよりも売れたりすることもある。けれどクライアントの立場からは、今までの慣習があるから、「どこまで自由にやっていいのか」という線引きが上手につけられなかったりもします。僕らのような制作サイドが、そのアプローチの手助けをするっていうのも今後は結構大切になってくるように思ってるんです。

日山:そうそう、そこは僕もすごく大切だと思っていて、個人でその自由さを感じるからこそ、クリエイター自身もどう動くかを考えることがすごく大事だと思いますね。音をつくる人は仕事を請け負うかたちが多いですし、それ以外になると「オリジナルでリリース」という仕事とは別軸で動かなければならないのが必須のスタンスになってしまっている……さあどうしようかと。

shuntaro:写真や映像もそうですよ。案件を受けた時点で企画が既にあって、「こうしたいです」と仰っていただくんですが、それが今の世の中に合っていないこともあって……クライアントワークスだからと割り切ることもできるけれど、僕らが感じた「こうしたらいいんじゃないか」という部分で合致する点が見つかるのであれば、素直に自分達から新たに提案した方が結果的には喜ばれるし、僕らもやりがいがある。そういう中でこそ「音楽」と「映像」の接点やその他の領域との接点も、自由につくられていくと思いますし、良い関係が築けるからこそ、仕事の関係が広がっていくと思います。それこそが、これから大切になっていく「在り方」だと思います。

■挑戦すべき
■「概念の正しい壊し方」

日山:ここ5年くらい、僕の中で「曖昧」が気になるワードなんです。クラブDJをしている中で、実は本業を別にやっているDJさんに会うことがとても多いのですが、その人の背景に、音楽だけでないマルチ性を感じて、すごく新鮮です。

shuntaro:とんかつDJアゲ太郎(編注:トンカツ屋を営む一家の長男・揚太郎がクラブカルチャーに感銘し、とんかつ屋とDJの類似点を発見しながら双方で成長していくギャグ漫画)みたいな。

日山:そうそう! 僕自身、昔、建築を学んでいたり、オーディオ機器メーカーで販売員をやっていたというマルチな部分が、今の仕事にもかなり活きています。だから音楽とは全く関わりのない他業種の人と音楽の話をするのも、すごくおもしろくって。自分の中にあった音楽の見方では見られなかった、新たな発見をすることがあります。そうやって、その分野を専門にしている人間の中に蔓延する「こうじゃなきゃ」という概念の意味を「正確に捉えて、適切に離れたい」ですね。


shuntaro:僕らが頻繁に言われるのは「撮り方が変」ってことです(笑)。というのも、これまでの動画撮影の現場を踏んできた人たちにとってあり得ない撮り方も、工夫して撮影する中でドンドンやるのでビックリされます。けれど撮影方法然り、実は機材や表現の常識が既に古くなっているってこともあるわけで、あまり慣習に縛られないようにはしてますね。

日山:大多数の経験値や合理化がフレームワークになって、「主流」のやり方と考えられ、それがいつの間にか「正しいやり方」に言い換えられ、それ以外のものは「違う」と判断されることが確かにありますね。一方でそれが崩壊というか、今再構築されている段階まできているとも思います。そこで今、僕が気をつけているのが「正しい壊し方」。主流を知った上で、それを意識すると同時に、最先端にいる自分なりの正しい判断が必要になってくると思います。そこにはもちろん、知識と知恵が必要です。

shuntaro:ただ、もし仮に知識を知らずに挑戦して、結果間違えたとしても、「自分たちは間違えていた」ということが分かります。そこで初めて知識の重要性を知るのでも良いと僕は思っています。「昔のやり方のほうがよかったのだ」という気づきも生まれますしね。それと「正しく壊す」には、デザイン的な考え方というか、感性と論理の同居が必要だと感じています。ただ自由に感性の赴くままつくるのではなく、クライアントとつくり手、それぞれの「良い」と考える論理が合致するから、本当に良いものができる訳ですし。だからこそ、ボーダーを越えるためには、論理のガイドラインとなるような知識は、ある程度必要なのかもしれません。


日山:Krebs Cycle of Creativity(サイエンス・エンジニアリング・デザイン・アートの4視点から価値を創造するという考え方)のように、科学と芸術の垣根を超える事も重要視していきたいですね。特に映像と音は近しいから、これから全然違う分野でお付き合いすることもできるのかなあとも思います。

■「メントスコーラ」的化学反応を
■音と映像で

日山:例えば、映像と音楽は掛け算だと考えています。0.5と0.5を足して「1」にするような補い合う関係ではなく、お互いが光る粒を持っていて、それらを1つの容器に入れた時に、ブワッと膨れ上がるようなイメージです。コーラにメントスを入れるような(笑)。どこまで膨れ上がるかは予想できないんだけど、後から「凄いことが起きてる」と気づくこともありますね。

shuntaro:やっぱり音と映像の相乗効果は大きいですよね。「案件」というお題を受けて、映像をつくり、音楽をつけてもらって、音が映像に、映像が音に触発されて、掛け合いになる。仕事をする上でそういった相乗効果の掛け合いがうまくできる、コラボレーションすることでお互いが良くなっていく方々とは、その先も気持ちよく仕事を続けていけると思います。

日山:それこそ『EMBRACE』のMVはクライアントワークスではなかったし、音楽が先で、映像をあとからつくってもらいました。しかし僕はあの時、かけ算が起きてる実感がありました。クライアントワークスとか、アーティスティックな作品とか関係なく、そういうことが起きるのは間違いないと思います。

embrace from bird and insect on Vimeo.



撮影:阿部大輔
編集協力:八代真央

◆日山豪 オフィシャルサイト(ECHOES BREATH)
◆shuntaro オフィシャルサイト(bird and insect)
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