【インタビュー】ザ・ラモナ・フラワーズ「ともかく、皆と何か違うことをしたいと思って」

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UKロックをベースにしながらインディ、ニューウェイヴ・テイストを自由自在に操る5ピース・バンド、ザ・ラモナ・フラワースがニューアルバム『ストレンジャーズ(STRANGERS)』を発表した。耽美なダンス・ロックをはじめ、70年後半~80年代のニュー・ロマンティックの流れを汲んだエレクトロ・ポップまで網羅するなど、その器用さとポップネスは注目に値する。今回は、バンドの成り立ちから最新作、そして日本に対する思いを訊いたオフィシャル・インタビューを掲載する。ちなみに、ギターのサム・ジェームスは掃除機を代表するプロダクトで有名な「ダイソン」の創業者ジェームス・ダイソンの息子という一風変わった経歴の持ち主である。

  ◆  ◆  ◆

▲アルバム『ストレンジャーズ』

── バンドはどのように結成されたのですか?

The Ramona Flowers(以下、TRF):僕(サム)とウェイン(Vo)、デイヴ(Key/G)で始まったよ。もともと俺らはバンドを組んでいたんだ。今はもうとっくに解散したけどね。

TRF:そう、もともとはボーカル・トリオだったんだよ(笑)。

── ボーカル・トリオ??

TRF:ごめん、ジョークだよ(笑)。ともかく、皆と何か違うことをしたいと思って。新しいバンドを結成しようと決意して、広告を出したのさ。唯一スティーヴからしか連絡が来なかったけどね(笑)。それでスティーヴが入って。そしてブリストルでエド(Dr)を見つけて、チームに入れたのさ。

── オーディションを受けたのですね?

TRF:うん、他のドラマー候補と合わせて二人しかいなかったよ(笑)。

── このバンドがどのようなバンドになって欲しい、という明確なイメージなどはありませんでしたか?

TRF:あったよ。以前はロック・バンドみたいなバンドだったんだけど、俺たちみんな、もっと違ったことをしたかった。もう少しエレクトロ感を出したかったというか…とにかく大きな変化が欲しかった。そのあらゆる変化が何か、当時ははっきりはしていなかったけど、何であれ飛び込む心の準備はできていたよ。

── 今作アルバム『ストレンジャーズ』は、最新音楽の中にも80’sニュー・ロマンティックの匂いがすると思いますが?

TRF:もちろんさ。80’sのエッセンスがしっかり詰まっている作品だよ。今回、最も重点を置いたのは、僕たちだけのサウンドを見つけることだった。僕たちはそのときはまだ幼かったからリアルタイムではなかったものもあるんだけど、でも歳を重ねていくにつれて、その当時の楽曲の真価を知ることになる。それからというものの、心だけはその時代に戻り、その時代の曲に惚れ込んだよ。面白いことに、それらの曲がリリースされた当時は結構見下されていたんだよね。当時は誰もその真価を知らなかったよ。なのに今は、当時の曲は名曲だって、みんなその真価を認めている。

── スティーヴはもとからシンガーになりたかったのですか?

スティーヴ:まあ、なれるんだったらいつでもなりたかったよ(笑)。

TRF:(スティーヴは)ギタリストに向いてないのだけは確かだね。

スティーヴ:(笑)俺は二十歳になるまで、自分が結構うまく歌えるってことを知らなかったんだ。オーストラリアを旅行していたある日、カラオケ大会に参加することになったんだ。そしたら俺がずっと勝ちまくって…そのおかげでタダでお酒を飲めたんだよ。その時気づいたんだ。「俺、そんなに悪くないかも」ってね(笑)。

── 何の曲を歌ったのですか?

スティーヴ:確か、「ヘイ・ジュード」だったよ。それで一回勝って、ロビン・ウィリアムスの曲も歌った気がする。もともと俺はギターを始めたかったんだけど、歌が結構うまいってことを知って、なんなら歌う方が全然簡単だから歌おうと思ったんだ。それならなんとかできるからね(笑)。

── (サムは)もとからギタリストになりたかったんですか?

サム:まあ、そうだね。12歳のころからギターを弾いていたから。

── デイヴもずっと同じ楽器をやっていたのですか?

デイヴ:俺は、ほかの楽器は本当にヘタクソだったからね(笑)。

TRF:他の楽器が下手すぎてキーボードに格下げられたんだっけ?(笑)。それは冗談として、デイヴはギターもうまいよ。ライヴの時はデイヴもギターを弾くし、サムとデイヴとでそれぞれ違うスタイルのギターを披露するんだ。

── アメリカの音源チャートの大半はエレクトロ・ベースで、打ち込みを多用する、ライヴでは完全再現しにくい曲で席巻されていますが、皆さんは、エレクトロながら、楽器の生の音も共存するバンドですね。

TRF:そうだね。今回のアルバム『ストレンジャーズ』は、特にその特徴を生かすのに苦労したよ。何とか成し遂げたけど(笑)。なんというか…その、あいまいなラインがあるんだよね。ライヴでは演奏しづらい作品にするが、再表現できないものにするからこそ、無限大にアレンジできる自由を曲に与えたいという思いで楽曲制作に取り組んでいるんだ。その価値を活かしつつ、作品の本質も保持するにはどうすればいいかを考えるのにとても長い時間を費やしたよ。とにかく、エレクトロだけど、もっと生の音を出すバンドでありたいと思っている。

── 日本に対する皆さんの印象が知りたいです。

TRF:本当に大好きだよ。日本は、なぜか訪れる度、新しいものに接する感じ。この間はスノーボードをしに軽井沢に行って、田舎と山を味わうことができた。素晴らしい国だよ。大好きだ。

── 前回(2017年)、フジロックで初めていらっしゃった際は、現地付近は観光できましたか?

TRF:全然(笑)。あのとき苗場は雨も降っていたしね。野生生物には出会えたけどね。クモの後を追ったり…面白かったよ。あとはただ、霧とか木…そして(観光したのは)東京だけだよ。前回は本当に余裕がなくて忙しかったから。

── ホテルとコンサート会場のみですか?

TRF:まあ、そうだね。それとプロモで、オフィス、多くのオフィス(笑)。だから、よくあるんだけど、周りで俺たちがどこに行ってきたっていうのを聴くらしいんだ。そしたら僕らは考え込むんだよな。だって、全然観光できてないから(笑)。慌ただしい出入りと、次の場所への移動とかでね。東京こそ、イギリス以外で最も故郷のような感じがする場所だよ。LA、ニューヨークを含めてね。

── 言語の障壁はありがちだと思いますけどね。

TRF:そうだね。でも、それこそがいい所じゃないかな。でもアメリカに行っても全く同じだよ。LAとか。確かにみんな英語でしゃべっているけど、何が言いたいのか分からない(笑)

── そうなんですね(笑)。では、サムにへ、頻繁にきかれるであろうダイソンの質問です。

サム:OK(笑)。

── (大手電化製品メーカー)ダイソンの創始者の息子であることのメリットとデメリットは何ですか?

サム:メリットは…まあ、父(サー・ジェームス・ダイソン)はあらゆる困難と戦いながら育ち、目標を達成するのに全ての人生を費やして、結局それを手に入れた、まさに成功の道を歩いた人だよ。だから、僕は小さい頃から、ある目標を目指して、それに全力を注ぐと、必ず夢が実現するという信念と共に成長することができたんだ。父のストーリーはクリエイティヴで、僕にとっても大きなインスピレーションになったからね。それによって、僕も情熱と創造力、そして自分に対する信念を鍛えることができた。このような理念を持って生きることができてとてもラッキーだと思う。

── では、デメリットは何かありますか?

サム:デメリットか…そうだね、かなり複雑な人生ではある。とても複雑になりがちで、やることがいっぱいだよ。僕はダイソンの役員にも就いているから、たくさんの会議に参加したり、色々な所に(出張で)行かなければならない。でも、同時にどうやって製品を作って、それを様々なマーケットに販売するか、バンドとも結びつけられる部分があって、楽しいよ。たくさん学んでるさ。でも、それに伴う責任も相当大きい。

── たまにはスーツ姿で現れたりもしますか?

サム:スーツは決して着ないよ。

TRF:サムは、結婚式であってもスーツ着ないからね。

サム:それこそ、ダイソンの良いところの一つだよ。スーツを着る必要がないんだ。

TRF:時々、俺たちはサムが完全にクレイジーだと思うんだ。たまにサムが「サンフランシスコで役員会があるから、2日後に戻る」って言って、ミーティングに行って、終わったらすぐ戻ってくるんだ。半端ないよ。

サム:そんなもんだよ(笑)。

TRF:俺たちは絶対やりたくないよ。

── そうなんですね。ありがとうございます。では、最後に、今後の新曲のプランについては?

TRF:まだ途中かな。でも俺たちみんな、バンドの方向性をより良くするために、慎重に努力を重ねてきたつもりだよ。そして、次の音楽には更にエネルギーがこもるようにしたいんだ。もう少し、ライヴに近い、ライヴの感覚を取り入れたいね。

── いいですね。では、本日これからのプランは何ですか?

TRF:まずはディナーに行くよ! 観光も楽しむしね。あと、サポートしてくれてありがとう。日本をもう少し探険してみようと思っているよ。また近いうちに必ず来るよ。

  ◆  ◆  ◆

■ザ・ラモナ・フラワーズ(THE RAMONA FLOWERS)『ストレンジャーズ(STRANGERS)』

2019年1月30日発売
WPCR-18171 / \1,980 (tax incl.)
www.theramonaflowersmusic.com/

Track list
01. Strangers ストレンジャーズ
02. Out Of Focus アウト・オブ・フォーカス
03. Come Alive カム・アライヴ
04. Ghost ゴースト
05. Dramatist ドラマティスト
06. Same Sun セイム・サン
07. If You Remember フ・ユー・リメンバー
08. Seeing Double シーイング・ダブル
09. Venice ヴェニス
10. Numb Drunk ナム・ドランク
11. Supplement (Slide) サプリメント(スライド)

■プロフィール

サム・ジェームス(Gt)
ウェイン・ジョーンズ(Ba)
スティーヴ・バード(Vo)
エド・ガリモア(Dr)
デイヴ・ベッツ(Key & Gt)

イギリスはブリストルで結成された 5ピース・バンド。バンド・ネームは、カナダのコミック作品『スコット・ピルグリム VS. The World』に登場する女性キャラクターから命名された。

2014年リリースのデビュー作『Dismantle And rebuild』が評価をうけたことで Stereophonicsのツアーに参加。2016年に2作目となる『Part Time Spies』を発表。<Reeperbahn Festival>や<Parklands Festival>、<Boardmasters Festival>、<Lounge On The Farm Music Festival>など、様々なビッグフェスに出演。

2017年に<FUJI ROCK FESTIVAL>に初参戦。同年12月には東京・原宿アストロホールにて来日公演を行った。 彼らの音楽性はまさにジャンルレス、ボーダーレスで、UKロックをベースにしながらも、インディ、ニューウェイヴ・テイス トを自由自在に操り、UKならではの憂いのある耽美なダンス・ロックを奏でたと思いきや、70年後半~80年代のニュー・ロマンティックの流れを汲んだエレクトロ・ポップまで網羅するなどその器用さとポップネスは目を見張るものがある。幅広い音楽性と、極めて現代的なフォーマットをベースに併せ持つロック・バンドである。

また、ギターのサム・ジェームスは掃除機を代表するプロダクトで有名な、イギリスに本拠地を構える電気機器メーカー「ダイソン」の創業者ジェームス・ダイソンの息子であるという一風変わった経歴の持ち主。

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