【インタビュー】「I'm a Pop」で溢れ漏れた、ちゃんみなの天才っぷり

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■ その「上」って誰なの? ここに連れてこいよ、って

──注目を浴びる立場にいることで、なんらかの責任感も覚えたりしますか?

ちゃんみな:責任感…なのかな、別に押さえ付けられている気もないし、従うつもりもないですけど、責任みたいなものは感じてます。

──アーティストって、発言力/影響力を持ちますよね。

ちゃんみな:そうです、そうです。だからひとつひとつの発言を大事にしないといけないし、説得力は欲しいなとは思ってます。でも思うことは曲にしたほうが消化できるから、そういう生き方のほうが私に向いている。愚痴は家族や友達に聞いてもらえるし(笑)。

──ミュージシャンシップを高めるために意識していることはありますか?

ちゃんみな:合わない人でも話すように、その人のことを知るようには意識しています。

──コミュニケーションを取る?

ちゃんみな:そうです。この人は何を考えてるんだろう?っていうことは、よく見るようにしています。あとは、匂いを覚えたりとか。春の匂いとかってあるでしょう?それと同じように国によっても匂いがあって、アメリカの匂い、日本の匂いがある。

──雨降る前の匂いとか。

ちゃんみな:そうそう。その匂いで「懐かしいな。あの時あんなことしたな」とか思い出すんです。どこ行っても匂いってありますもんね。

──今回のシングル「I'm a Pop」には、手応えは感じていますか?

ちゃんみな:やっぱり「I’m a Pop」は聴いて欲しいなって思います。一般の人にとってはちょっとわかりにくい曲調かもしれないんですけど、私の意思みたいなところはあるんで。たくさんの人に聴いて欲しいというよりは、世に出しておきたいっていう気持ちが強いんです。私は実体験を元に曲を書くので、カップリング曲の「Never」や「Sober」は、こういうことがあったよっていう報告みたいなものでもあります。ファンの子達には、聴いてそこから感じ取って欲しいなと思いますね。


──ちゃんみなにとって、楽曲制作とライブパフォーマンスはどちらに主軸がありますか?

ちゃんみな:うーん…難しいですね。今はライブ前だからライブ…なのかな。ライブはみんなに直接的に伝えられますよね。本当に残るものって形に残らないものなんだそうです。ライブの感動だったりとか、曲を近い距離感で直接歌ってあげられたこととか、それを聴いて泣いてる人とか頷いてる人とか…私から見た景色は形には残っていないけど、自分がやりたいことはそっちに近いのかな。音楽をやってよかったって思うところです。

──もともと音楽=体験ですものね。ライブ体験は、当日だけの話ではなく、チケットが欲しいと思ったときからストーリーは始まっていますから、そのすべての体験が財産なんだと思います。

ちゃんみな:そういう話を聞くとそれだけで泣けちゃう。「受験頑張って(ちゃんみなのライブに)行くね」とか言われると、「私のために来てくれるの?」って感動しちゃうの。

──そういう意味でも、「I’m a Pop」には商魂が全く感じられないんですよね。失礼な話ですけど「売る気ないのかな」って思った。

ちゃんみな:本当にそう(笑)。

──ワーナーミュージック・ジャパンもバカなのかな。

ちゃんみな:ははは(笑)、でもそうなんですよ。実は「Doctor」をリリースする時も「大丈夫?」って言われたんです。私も「わかってる。言いたいことはわかる。でもミュージックビデオはこういう風にして」って言いながらやっと出せるようになったんです。でも、今では海外からの反響もよくて、歌詞にも共感してもらってたりしている。こういう音楽を聴かなそうな子からも「「Doctor」聴いてます」って言ってもらえた。意外と私の元々のファン層にもはまったし、その他のファン層にもはまった。それがよかったからなのか知らないですけど、今回のシングルを出そうという時にスタッフさんも「やりましょう」って。止めないの?って思いました(笑)。「Doctor」出したことをいいことに調子乗ってねぇ?って(笑)。

──ウケる(笑)。


ちゃんみな:本当にスタッフに恵まれていて「ちゃんみながやることは信じる」って言ってくれているんです。お互いに信じ合ってるから、こういうことができてるのかなって思います。他のレーベルだったら多分出せなかったと思います。

──かつて音楽制作の現場って「売れなくてもいいから、とにかく良いものを作ろう」というスピリットだったんですが、今は「売れなくてもいい」なんて言ってくれるレーベルはなくなった。…と思ったら、ここにありましたね。

ちゃんみな:そうですね。「ここにありますよ」って言いたいです(笑)。「売れなくてもいいから」とは多分言わないですけど「いいもの作ってね」って思っている。どこかには刺さるだろうっていう考えがみんなにあるんでしょうね。「売る気がない」というよりは「日本の音楽みんなで変えて行こうぜ」っていう気持ちがあるんです。現状の日本は「こういうのが売れる」っていう方程式みたいなものがあるじゃないですか。コード進行とか、タイアップが決まったら次はこういう音楽番組に出て…ってね。それって、多分ですけど、新しいものを採り入れようとしていないんですよ。で、それをやってるのって上層部のおじさんたちだったりする。

──…(ヤベ、私も上層部のオジサン)。

ちゃんみな:どのアーティストに聞いてもどのレーベルの人に聞いても「いやね、上が厳しいんだよ」って言うんです。「え、その上って誰なの? ここに連れてこいよ」って思う。口が悪いんですけど…上が変わったらそれで変わるのか?って言ったら、それもわからない。だって上に忠実な部下たちが用意されるから。そうしてるとずっと変わらない。ワーナーの社長のカズさんとかは、すっごい頭が柔軟なんですよ。「どんどん行こうぜ」みたいな感じの人ですごいなって思います。

──そもそも富を得たくて音楽家を目指す人なんていないわけで、才能が突き抜けている人ほど俗世間から異端扱いを受けるものです。自らの音楽や表現を理解してもらえない苛立ちやもどかしさはありませんか?

ちゃんみな:というか、上の人達がもうちょっと頭が柔らかくなればいいのにな、と思います。YouTubeもショートじゃなきゃダメとか。リリイベをめちゃくちゃやる人とかいますけど「ちょっと違くない?」って思うんですよね(笑)。「広めたい」じゃなくて「売りたい」が一番前に来過ぎちゃってて。

──少なくとも創造と破壊/スクラップ&ビルドを起こさないと、本当の再生はできないですよね。前作で「痛み」について歌っていたちゃんみなだけど(「PAIN IS BEAUTY」)。

ちゃんみな:グローバルにもっと広く活動していきたいとは思ってるんですけど、やっぱり日本を軸にずっと尖り続けていきたいなとは思います。まだ尖っていたい。

──そこは大丈夫でしょう。

ちゃんみな:ははは(笑)。

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