【ヴォーカル対談】怜[BAROQUE] × 田澤孝介[Rayflower]、ツーマン前哨戦で「“歌”って人柄だと思ってる」

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■年齢を重ねて大人になってからの今
■スイッチを入れることが大事だった

──BAROQUEの場合はいかがです?

怜:2人しかいないから、すごくシンプルになったと思います。圭は基本的に、ベーシックをほぼ100%まで作り込むんです。メロディーまで“全打ち(すべて打ち込まれた状態)”で、テーマも持ってる。でも、4人とか3人体制だった頃は、それを100%形にするというよりも“バンドでつくりましょう”という曲の落とし込み方だったんです。それが今、2人になった分、より原曲の世界観に100%忠実に作ってます。特に最近は、メロディの踏み方について言えば“俺はこう思って歌詞を乗せてるけど、作曲者の立場からするとこっちほうが正解”とかあるじゃないですか? 自分としては100%OKのものを書いて渡して、それを元に一緒に「この言葉って、こっちの言い方のほうが良くない?」「じゃあこれどう?」みたいなやり取りをして、突き詰めているんです。今回からお互いの100%を構成するやり方をしています。

田澤:100点満点どころか、もっと上だよね。今、めちゃめちゃいい状態じゃないですか?

怜:はい。お互いが本当に気持ちいい“これだ”というところに行き着くことができてから、“じゃあ、仮歌に行こう”ってなる。で、仮歌でまた自分たちを疑って、“ここは違うかな?というところがあったら変えよう”みたいな。たぶん昔だったら、「この詞が嫌」と言われたら、「えっ!?」となってたんですよ。“なんで? こんなにいいのに”と思って自分は出してるから。だけど今はそうは思わないですね。「あ、そっか。それいいね」みたいな。ここまでの関係になるには、本当に時間が掛かりましたけどね。

田澤:1人で背負うというより、やっぱり軸が2本あるんだね。“よいしょ!”って、向こうとこっちで一緒に持ってる感じがすごくする。いつか到達するポイントだと思うんですよ、クリエイティヴなことをやってると。客観視って絶対に必要じゃないですか? 僕、そういう客観を自分のものにできるようになってきたのは、ごく最近なんです。だから、いいなーと思いますね。

怜:まだまだ全然、客観視できてないと思うんですけど、それは本当に必要ですよね。だから、メンバーに恵まれてるなと思います。

田澤:そう言えるのもすごいわ(笑)。

▲怜[BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018「FALLING FOR // YOU」>12月25日@渋谷ストリームホール

──Rayflowerはメンバー個々がベテラン揃いのバンドですが、田澤さんはメンバーとどんな関係性なんですか?

田澤:僕と都(啓一 / Key)さんは、怜くんと圭くんの関係に近いかもしれない。都さんには歌詞も見せるし、「田澤くん、ここちょっと意味分からんわ」と言われたら直しますし。昔は直さなかったんですよ、「いや都さん、これはこういう意味で……」って返してた(笑)。

──自分を貫き通すみたいな?

田澤:そうそう。都さんは「田澤くんがそう言うならいいよ」って受け入れてくれるんですよ。ただ何かの折に、“いや、ちょっと待てよ。俺は書いてるプロセスを知ってるから「ここはこういう意味だ」って言えるけど、パッと読んだ人が分かるように書けなければいけない”と思って。そうすると必要になってくるのが、客観性なんです。どこまでが自分のポリシーで、どこからがエゴになるのか? その配分がものすごく難しくて。だからさっきの怜くんの“ここははみ出したほうがいいかな?”って計算するという話もすごく分かる。あんまり綺麗すぎると引っ掛からないんだよね。

怜:その通りだと思います。

田澤:“あえて拙さを”というか。そこが職業作家じゃない僕らの良さだから、“このいびつさがええんや!”って自分を出してもよくて。ただそれが言い訳であってはいけない。「好きか嫌いかは別として、おっしゃることは分かります」と言わせないといけない。説得力という意味で、そこにはテクニックや積み上げてきたものが必要やし。BAROQUEはそういうところにいってるんだなと。

怜:いえいえ、まだ片足ぐらいです。でも、おっしゃってることはすごく分かります。

田澤:Rayflowerは全員が曲を書けるから、ある意味大変なんですよ。たとえば、メロディーの譜割りひとつ取ってもメンバーそれぞれのクセが違うから、言葉の乗せ方も異なるんですよ。“この人が作るメロディーの区切りポイントは、俺が表現したい文字数と合いづらい”とかもある。あと、作曲者に「テーマとかありますか?」って聞いたら、結構な確率で「ない」と言われる(笑)。

怜:「今、自由に感じてることを書いていいよ」ということですか?

田澤:そうそう。でも逆に、自由ってつらくて。まず、テーマを探すのに時間が掛かるんですよ。で、とにかくずっと曲を聴いて“何を言うのが正解か?”を無理矢理にでも探します。その代わり、書いたものに文句を言われることはないんですけどね。

怜:書いたものがちゃんとゴールになるんですね。

田澤:文句言われたら、たぶん俺、「じゃあ最初から言えや!」って怒るし(笑)。

怜:はははは。

▲怜[BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018 IN THE ATMOSPHERE>2019年1月19日@札幌SPiCE

──もしそうなった場合、Rayflowerというバンドは、自由に言い合える関係性ではあるんですか?

田澤:まだそういう事件が起きたことがないので、分からないですね。もし、僕が怜くんみたいに「やってられるか!」って怒鳴るようなことがあったら……(笑)、まぁ、みんな大人やから、変なふうにはならないんですけど。でもね、俺、ドライとクールって違うと思ってるんですよ。クールって冷えてるでしょ? ドライって熱いから乾くのであって。熱は必要なものだからドライであるべきで、クールが一番つらい。何も言ってこないで任せてくれるメンバーの感じが、ドライのほうであってほしいなっていう。喧嘩したいわけじゃないからね。今は俺も、昔よりは言いたいことがどんどん言えてるし、メンバーも言ってくるようになったけど、Rayflowerはまだ歴史が浅いから、今の怜くんと圭くんの関係を聞いて、“あぁ、すごくいいなぁ”って思う。

怜:バンドのカタチが変わっても、僕と圭は10数年一緒にバンドをやってるんですよね。だからこそ、言わなくてもいいこと、自分でやっておかなきゃいけないこと、言わなくても分かるだろ?っていう2人の空気みたいなものがあって。それって時に、田澤さんが言う“ドライじゃなくてクール”に感じちゃう瞬間も少なくない。だからこそ年齢を重ねて大人になってからの今、“スイッチ”を入れることが大事だったんだなと思います。怒鳴ることがすべてじゃないけど、感情を露わにすることで、“あ、昔はこんな感じだったよね”と思い出したり。

──どういう形にせよ、本音を伝えていくことって重要だなということは、お話を伺っていて感じます。“ま、ここはいいか”と諦めて黙るのではなくて、ちゃんと熱をもって伝えていく。バンド運営においても、作品づくりにおいても、そういうエモーショナルさ、正直さはやはり大事なんですかね?

怜:大事だと思うんですよね。できてるようでできてなかったんだなって、今でも思うことが多いです。

田澤:僕らもそうかもしれない。ちゃんと話はできてるんですけど、波風を立たせないために黙っておくこともできたりするから。これは言い方が難しいけど、Rayflowerっていうバンドは、もともとはアニメのタイアップソングを作って歌う、ということが始動の経緯で、いわゆる企画ありきで集まったメンバーやから。そういう意味では、同じ釜の飯を食った仲みたいな関係性ではなかった。そこから“ちゃんとバンドにしよう!”という成り立ちだったから、活動序盤は必死だったかもしれないですね。幾つもの音源を作って、何本もツアーを重ねて、ツアー中にメンバー間でディスカッションを一層するようになって、“やっと最近、対外的にも自分らの精神的にもよりバンドらしくなった”と安心してましたけど、怜くんの話を聞いて、“俺らまだまだやなぁ”と思ったし、“もっと良くなれるんだな”という希望も見えたというか。

怜:バンドってやっぱり、ツアーをやると強くなりますよね。スタッフを含めたチームもそう。今みたいな気持ちになれたのもツアーで培ったものだし、曲作りのきっかけにもなるんですよね。

田澤:いや、真面目……って言ったら今まで不真面目と思ってたみたいやけど(笑)。そうじゃなくて、BAROQUEってすごい謎やったから。

怜:それ、どこに行っても言われます(笑)。

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