指揮を振り歌う、人工生命×アンドロイド「オルタ3」世界初公開

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株式会社ミクシィ、国立大学法人大阪大学(基礎工学研究科 石黒研究室)、国立大学法人東京大学(総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系 池上研究室)、株式会社ワーナーミュージック・ジャパンによる4社共同研究プロジェクトの合同記者発表会が2月28日、東京・新国立劇場にて行なわれた。

◆「オルタ3」動画

同会見には木村弘毅氏(株式会社ミクシィ 代表取締役社長執行役員)、石黒浩氏(国立大学法人大阪大学教授、工学博士)、小川浩平氏(国立大学法人大阪大学講師、工学博士)、池上高志氏(国立大学法人東京大学教授、理学博士)、土井樹氏(株式会社オルタナティヴ・マシン)、増井健仁氏(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン エグゼクティブ プロデューサー)、村瀬龍馬氏(株式会社ミクシィ 執行役員CTO)、渋谷慶一郎氏(音楽レーベルATAK主宰、音楽家)、内田まほろ氏(日本科学未来館)、大野和士氏(指揮者、新国立劇場オペラ芸術監督)、島田雅彦氏(作家)が参加。人間とのコミュニケーションの可能性を探るために開発された人工生命×アンドロイド「オルタ3」が世界初公開され、「オルタ3」が指揮と歌唱、音楽家でアンドロイド・オペラの発案者である渋谷慶一郎氏が伴奏を務め、国立音楽大学学生・卒業生有志オーケストラが演奏に参加し、アンドロイド・オペラ<Scary Beauty>(スケアリー・ビューティ)が披露された。



渋谷慶一郎氏は、初音ミクを使用したボーカロイドオペラ『THE END』(2012年初演)を手がけた実績を持ち、パリ公演を大成功で終えたあと、関係者から「次は何をやるのか」と尋ねられた際にとっさに「アンドロイドのオペラを作りたいと思っています」と答えたという。その後、石黒氏と知り合ったことで「これは呼ばれている感じがする。実現しよう」と決意し、<Scary Beauty>の制作に至ったとのことだ。

▲渋谷慶一郎氏(音楽レーベルATAK主宰、音楽家)

また、本プロジェクトの実証実験の場を提供する株式会社ワーナーミュージック・ジャパン エグゼクティブ プロデューサーの増井健仁氏は「エンターテインメント業界は人間と人間でショーをつくってきたが、人間とアンドロイドでどうやってショーをつくるかを実証実験していきたい」と語った。

さらに、プロジェクトの今後の展開についても発表された。<Scary Beauty>の世界各地での公演、日本科学未来館キュレーター・内田まほろ氏の企画による世界各地での展示が予定され、世界中から東京に注目が集まる2020年8月には新国立劇場が特別企画として上演する、世界的指揮者の大野和士氏、作家の島田雅彦氏、渋谷氏で共作する新作オペラに「オルタ3」が参加するという。同プロジェクトは人間とアンドロイドによる新たなコミュニケーションとアート、音楽、サイエンスの未来を示唆していく。







■「オルタ3」とは

オルタ3は、機械が露出したむき出しの体、性別や年齢を感じさせない顔といった特徴により、人の想像力を喚起し、これまでにない生命性を感じさせることを目指したアンドロイドロボットです。これまでにも、アンドロイドと人工生命に関する世界的に著名な大阪大学と東京大学の研究者が協力し、オルタを2台製作し研究を推進してきています。この研究の挑戦は、外界との相互作用により、ロボットが生命感を自ら獲得することができるかどうか、また、これを通じて、生命とは何かといった根源的な問いに答えることです。オルタ3では、これまでのオルタの開発、研究を通じて得られた知見を基に、より生命観を感じさせる振る舞いのモデル化に関する研究をさらに加速させることを目指します。また、本研究において最も大事な、外界との相互 作用による動作生成技術をさらに推し進めるため、世界中あらゆる場所に運ぶことができ、より堅牢で継続的に使用可能になるようなデザインを目指しました。これまでの「オルタ」2台とは異なり、オルタ3は、両目のカメラ、口からの発声機能といった、人間により近いセンサーシステムや表現能力に加え、歌唱のために口周りの表現力を向上。また、オルタ2よりも出力が強化されたことによって、身体表現の即時性の向上やダイナミックな動きが可能となりました。また、誰でも分解・組み立てができ、飛行機輸送もできるポータビリティもオルタ3における進化の一つです。

■オルタ3プロジェクトの今後の活動

2019年
3月13日〜5月5日:tanzhaus nrw 主催フェスティバル“Hi, Robot! Mensch Maschine Festival”での公演・展示(ドイツ・デュッセルドルフ)

3月13日:アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』フェスティバルオープニング公演(デュッセルドルフ・Robert-Schuhmann-Saal)

3月15日〜17日:プレビュー展示(デュッセルドルフ・NRW Forum)

3月28日〜5月5日:“Körperwende – von Nam June Paik bis Hiroshi Ishiguro” 展示(デュッセルドルフ・NRW Forum)

5月16日〜8月26日:“AI: More Than Human”展 展示(イギリス・ロンドン・バービカンセンター)

9月以降:アンドロイド・オペラ 『Scary Beauty』世界数か国で公演予定

※上記以外にも今後さまざまな活動を予定

■新国立劇場 2020年特別企画について

オペラ、バレエ、ダンス、演劇という現代舞台芸術のためのわが国唯一の国立劇場、新国立劇場(東京都渋谷区)は、世界の注目が東京に集まる2020年8月、日本の魅力を世界へ発信する絶好の機会として「特別企画」を企画することとしました。科学技術、共生といったテーマを織り込んだ新しい舞台作品を通じ、舞台芸術の可能性を広く世に問い、その魅力を国内外にアピールすべく、子供たちとアンドロイドが創る新しいオペラを上演します。この特別企画は、新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士が企画、作家の島田雅彦に台本を、『Scary Beauty』をディレクションする渋谷慶一郎に作曲を委嘱。指揮は大野、演出は新 国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子が務めます。
この新作オペラには人工生命搭載アンドロイド「オルタ3」が物語の核となる役で出演し、もう一方の核となる100人の子供たちによる合唱と相互に関わり合いながら歌い、演じて、アンドロイドと子供たちの友情のドラマを紡ぎます。子供たちと共に、プロのオペラ歌手と新国立劇場合唱団も出演、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団が務めます。さらに、国内最高水準と評価される新国立劇場バレエ団も参加し、新国立劇場始まって以来の全ジャンルのコラボレーションが実現します。

公演日程:2020年8月下旬
会場:新国立劇場オペラパレス
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