【インタビュー】平林純、春らしさを湛えた爽やかさを前面に出した新境地の1stシングル「恋する私は美しい/愛しているよ」

ツイート

■これからは自分が本当に表現したいもの、良いと思うものを核にしつつ
■“こういう面もありますよ”という形でポップなものも創っていきたい


――3曲目の「エンドロール」は、アコースティック・ギターの弾き語りです。

平林:これは前作「妄想テクノブレイク」(2018.9.19)の最後に入っていた「世田谷ナンバーの恋~妄想テクノブレイクver.~」と同じく、私が宅録したトラックです。今回の「恋する私は美しい」と「愛しているよ」のアコースティック・ギターはプロの方に弾いてもらったんですけど、この曲は自分でギターも弾いています。

――なるほど。すごくミニマルな曲といえますね。

平林:そう。この曲は私が以前勤めていた会社をやめる最後の日に、皆さんの前で歌おうと思って作ったんですよ。出張とかでその場に来れなかった人もいたので、後で聴いて欲しいなと思って、曲をYouTubeにも上げることにしたんです。今回の「エンドロール」はそのために作ったトラックをそのまま活かしました。会社をやめる最後の1週間くらいで曲を作って、歌詞を書いて、宅録したので、これはメッチャ急いだ曲です(笑)。

――そういう感じがしないので、ちょっとビックリです。歌も、ギターもすごくいいですね。

平林:ギターいいですか? 私は、ギターはあまり自信がないんです。

――コードがきれいに鳴っていますし、リズムもいいですし、音もいいです。

平林:ギターは、録った後にエフェクターを掛けました。といっても私は全然わからないので、Logicのエフェクターを順番に試していって、良いなと思ったのを選んだだけですけど(笑)。

――でも、どういう音を選ぶかにセンスの良し悪しが出るわけですから。この曲のギターのコーラスやコンプの掛かり具合は絶妙です。

平林:ありがとうございます。でも、これはもう本当に1Kの宅録という(笑)。


――それに、1分11秒で終わってしまうことも印象的です。

平林:あまり長くても…というのがあったので。元々、今回のシングルは「恋する私は美しい」と「愛しているよ」の2曲でいく予定だったんですけど、2曲だとちょっと淋しいよねという話になって。じゃあ、何を入れようとなった時に、フル・コーラスの曲を入れるのもなぁ…と思ったし、「エンドロール」は思い入れのある曲なので、これにしようと決めました。

――曲が短いことで、会社でお世話になった皆さんへの感謝の思いを軽やかに伝えるものになっているのがいいなと思います。

平林:押しつけがましかったり、ウェットなものにはしたくなかったんです。サラッとしていて、でもちゃんと気持ちが伝わるものにしたいと思って。それを、うまく形にできたかなというのはありますね。

――3曲それぞれテイストが違っていて、楽しめました。今回の「恋する私は美しい」は、MVも撮られたのでしょうか?

平林:撮りました。「恋する私は美しい」は、MVも明るい感じです。憂いている映像を撮りがちな私なんですけど、今回はちょっと笑顔を見せています(笑)。また曲の話に戻りますけど、私の母は歌をやっていたんですね。母に「純の曲は一人じゃないと聴けないんだよ」と言われたんです。「妄想テクノブレイク」はタイトルにしてもそうだし、曲も「あなただけなだけ」とかは友達と聴くと気まずいと。ちゃんと気まずくない曲を作って欲しいと(笑)。そういうことも大事だなと思って、今回は中高生が買ってくれて、お母さんが「これって、どういう意味?」と聞かれた時に気まずくなく答えられるような歌詞にしたんです。そういう曲なのでMVも明るくしたほうがいいなと思って、明るい方向でいくことにしました。ハウススタジオで、白い感じで、ずっとバンドで歌っているというMVです。

――映像面でも新しい平林さんに触れられますね。今日お話をうかがって「恋する私は美しい」の裏側には葛藤もあったことがわかりましたが、それを経て、今作は平林さんらしさとメジャー感を併せ持った注目の一作になりました。

平林:そういう風に感じていただけるなら良かったです。「恋する私は美しい」みたいなものは映画のお話をもらえなかったら、絶対に生まれなかったと思うんですよ。だから、得意な方向性ではなかったけど挑戦して良かったなと思うし、今後もタイアップのお話をいただけたら臆せずやってみようという気持ちになりました。

――今作を聴いて、平林さんがキャッチーということを理解していることを改めて感じましたし。

平林:ええっ、本当ですか? 私は、よく周りの人にキャッチーさが足りないと言われるんですよ。


――暗かったり、マニアックだからといってキャッチーではないということはなくて、平林さんの音楽はキャッチーだと思います。周りの皆さんが言っているのは、ポップネスやメジャー感という意味合いじゃないですか?

平林:ポップではないですね。……たしかに、言われていることの前後を考えると、“ポップじゃない”という意味だと思います。「もうちょっと明るいほうがいいんじゃないか」とか、「もうちょっとわかりやすいほうがいいんじゃないか」というようなことを言われるので。それに対する答えの一つともいえるのが、今回のシングルなんですよ。だから、ずっと私のことを応援してくださっている皆さんが、これをどういうふうに受け取るかが気になっていたんです。でも、ライブに来てくれている皆さんが、「恋する私は美しい」は良いと言ってくださるんです。だから、自信を持ってもいいのかなと思ったりもするんですけど。

――すべて平林さんの中から出てきたものですし、皆さん良いと感じると思います。

平林:そう感じてもらえると嬉しいです。私は去年の年末まで、なぜか陰鬱な気分だったんです。理由があったわけじゃなくて、なんかテンション上がらないな…みたいな感じだった。でも、年明けから今年は明るく、ポップにいこうという気持ちになってきたんです。だから、今の私の中で「恋する私は美しい」は楽曲も、歌詞も、MVも違和感はなくて、より多くの人に届くといいなと思っています。ただ、かといって私はこういう路線だけをやっていくのは無理なんですよ。なので、これからは自分が本当に表現したいもの、良いと思うものを核にしつつ、“こういう面もありますよ”という形でポップなものも創っていきたいですね。

――今後の広がりも楽しみです。楽しみといえば、シングル・リリースを記念して4月14日にHMV渋谷でインストア・イベントが開催されます。

平林:30分くらいのイベントで、トークとミニライブをします。ただ、シングルの曲だけだと、すぐに終わっちゃうので、他の曲も歌おうかなと思っています。最近は生で聴いていただける機会を少なくしているので、4月のインストア・イベントはファンの皆さんと会える貴重なチャンスなんですよね。私が「恋する私は美しい」に込めた思いを生で聴いていただけるのが嬉しいし、対面でサインしたりすることも予定しているんですよ。私自身がすごく楽しみにしているので、ぜひ遊びにきて欲しいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

1st Single「恋する私は美しい/愛しているよ」
2019.3.6 Release
\1,200+tax(FBAC-080)
M1.恋する私は美しい(映画「Bの戦場」主題歌)
M2.愛しているよ
M3.エンドロール
M4.恋する私は美しい(instrumental)

ライブ・イベント情報

「恋する私は美しい」発売記念イベント
・日時:2019/4/14(日)19:00~
・場所:HMV&BOOKS SHIBUYA 6Fイベントスペース
・イベント内容:ミニライブ&サイン会

◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報