【ツーマン前哨戦 対談】圭[BAROQUE] × 都啓一[Rayflower]、「何も宿っていない音楽には意味がない」

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■共同作業は怜としかしてないし
■バンドは向いてないんです(笑)

──そういった人間力が音楽に直結していくということですが、圭さんのギターサウンドもどんどんエモーショナル度が増してる気がします。より曝け出していこうという想いがあるんですか?

圭:そうですね。もともと4人とか5人いたメンバーが減って、今、2人になったからというのもあります。自分はバンドを構成している一部じゃないですか? たとえば、5人なら5人のある種のテリトリーみたいなものがあるんです。そこからはみ出るとちょっとバランスが崩れるという。そのテリトリー内で自分の個性を出すのがバンドだと思うんですけど、2人だけになった時に以前と同じようにやっていたら、お客さんが“何かが欠けていると思ってんじゃないか”と感じたんですよ。“完全じゃないもの”にお金を払って観に来てもらうのは失礼だし、表現の仕方を変えないといけない。2人の主張が音楽の中でもっと濃いものにしないといけないのかなって。

──なるほど。

圭:以前は4人の中の1人として表現できていれば良かったんですけど、それを2人で成立させないといけないと思ったんです。ならば、今までは曲全体で伝えようとしてたことを、ギターの一音だけで自分の人間性や考えていることまで伝えられるようになりたい。そうするにはどうしたらいいのかな?って何年か考えましたね。だから、たとえリハーサルだとしても、音楽をやる時は常に“表現してるんだ”ということを考えて。無駄打ちしないじゃないですけど、そうしないと何も成長してる気がしない、というか。

都:それも分かる(笑)。

▲圭 [BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018「FALLING FOR // YOU」>12月25日@渋谷ストリームホール

──常に全身全霊で。

圭:そうだし、それが楽しいということもあります。たとえば同じ曲を演奏するとしても、“今日は悲しい感じでやってみよう”とか“今日は楽しい感じでやってみよう”とか、極端に言ったらそういう試みだけで音の何かが変わるんですよ。言葉では説明できない違いなんですけど、ファンの人には意外と伝わったりする。ツアーに何度も来てくれるようなファンって、そういうのをキャッチするのが上手いですから。だからステージ上で気を抜くことはないんです。

都:たしかにセットリストが一緒でも、“今日はこの曲、何となく良かったな”とかいうメンバー間の感想はあって。それを一番感じてるのは常連のお客さんなんだよね。本人たちとしては“えっ? 昨日と今日、そんなに違った?”って思うことがあるくらいだし(笑)。いやいや、圭くん、素晴らしいですね。なかなかそこに気付かないものだから。

圭:さっきの都さんがおっしゃったように、僕も“人生は有限”ということを心掛けているんです。ありきたりですけど、僕たちにとってはツアーの10数本の内の1本でも、その日しか観られないファンもいるし、その日を最後に僕がもう演奏できないという状況が起こりうるかもしれない。長くやればやるほどライヴが日常になってしまうんですけど、それはもったいないなって、年を重ねるごとに思うようになりました。話が少し逸れますが、病気になった僕の友だちは、「病気になって初めて世の中が美しく見えた」って言うんですよ。別れを意識しないと気付けないこともあって、音楽をやっていてもそれを感じています。

都:桜って年に一度だけ咲くじゃないですか。闘病中は、また春に桜が見られるかなって……いろいろと思うことがあったんですよ。そうすると“死ぬ寸前でもなんでもいい、失敗してでもいいから何かやろう”と思えたんですよね。後悔したまま死にたくない。人間って絶対失敗するもんやし、失敗があるから成功もあるわけやから、恐れる必要がないんですよ。それなら行動することのほうが大事で強いもので。それはRayflowerを動かす上でのエネルギーとしてずっとあるかもしれない。

▲圭 [BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018 IN THE ATMOSPHERE>2019年1月19日@札幌SPiCE

──では、ツーマンイベントについてうかがいますが、対バンはワンマンとは違うお客さんとの出会いの場でもあります。ステージに臨む上で何か違いはありますか?

都:違いを演出できるほど器用じゃないかもしれないです(笑)。それよりも自分たちの持っているものをとにかく出そうという感じかな?

圭:BAROQUEは去年30数本というツアーを回って、2人体制で初めてというくらいライヴをたくさんやった1年だったんです。そこで、2人でのワンマンライヴのカタチがやっと見えた気がして。“それならば、対バンの時はどうなんだ?”ということを知りたいから、ツーマンイベントを始めたのかもしれないです。プロとしては、いつでも同じ表現ができたほうがいいんでしょうけど、ツーマンだときっと変わることもあるだろうし。何が違うのか自分たち自身が知りたいというのはありますね。

──となると、イベントタイトルの<kiss the sky Ⅰ>にはどんな意味があるのでしょうか?

圭:ツーマンライヴだと分かるようなタイトルにしたいと思っていたので、“キス”という言葉を遣いたかったんですね。

──どういう時に浮かんだ言葉なんですか?

圭:「決めて」と言われて考えました(笑)。ツアータイトルも曲タイトルも、日頃何となく生きていて、自分に引っ掛かる言葉というのがあるので。

都:分かる(笑)! 特にツアータイトルは、早い段階で決定しないとチケットの販売も含めて発表事が進まなかったりするからね。

──曲を作られる時はキーワードが先にあることが多いですか? それともイメージがまずあって、そこに言葉が生じてくる感じですか?

圭:両方ありましたけど、これまで様々な曲を作ってきて“何か題材がないとできない”ということが自分で分かってきたんです。外部から楽曲制作を依頼される時って、ある程度テーマがあるんですけど、そのほうが作りやすくて。それがないと、音を選ぶのも難しいじゃないですか。悲しい曲であれば悲しい音色を選ぶし、全てのゴールが決まるから。題材なく作った曲も昔はあったりしましたけど、伝わらないことも少なくないんですよね。最初に怜に聴かせるんですけど、そういう曲の反応を見てイマイチだったりすると“あ、やっぱりな……”って落ち込む(笑)。後から考えたら、“これはテーマがハッキリしてない”とか、その反応の理由は自分でも分かる。だから最近は“この曲はこれ”っていう明確なタイトルとかテーマを持って作ります。

──怜さんのリアクションから思いがけないものが生まれることもありますか?

圭:BAROQUEの場合は、基本的に2人で同じゴールを目指すので、全く違う反応がくるということはあまりないんです。だから僕ら、あまりぶつからないんですよ。10代から一緒にいて同じものを見てきたというのもあるし。それに僕、コミュニケーション能力というか、協調性がないので。

都:あはは! そうなん(笑)?

圭:誰かとの共同作業は怜としかしてないし、できないんですよね、きっと(笑)。自分1人で音楽を作るのは好きで、近くに怜がいるからバンドを続けられているというだけで。僕はバンドをやっても必ず何年かするとそこからはみ出るタイプ。バンドは向いてないんです(笑)。

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