【特集 インタビュー vol.3】植田真梨恵、アートを語る「作品に服を着せる感覚なんです」

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■あのタイミングで“悪い私”を
■ちゃんとやっておきたかった

──それが後々、何かのきっかけになったり、別の膨らみ方をするんでしょうね。ここからはミュージックビデオの話を訊いていきたいのですが、まずインディーズ時代の「心と体」。たくさんの写真をつないでいくことで、曲の世界観や心のあり方、スピード感が表現されていますよね。それもアナログなテイストと、DIYな肌触りも表現されていましたが。

植田:ミュージックビデオ制作から学んだことは多かったですね。初めてのミュージックビデオ撮影が「未完成品」で。ディレクターさんが中心となって制作してくれたものなんですけど、“ライブシーンのようなミュージックビデオ”というコンセプトがざっくりと決まっていたんですね。コンセプト自体はシンプルだけど、一口にライブシーンと言っても、“どのくらいの広さなのか”、“歌っているときにマイクはあるのか”、“バンドメンバーはいるのか”、といった事前にわかっていたい情報ってあるじゃないですか。19歳とか20歳当時のその撮影では、誰に従えばいいのかもわからなかったし、面倒くさくても誰かが明確に伝えないと後々みんなが大変なことになるんじゃないかな?と思ったんです。だから、もし自分に見えている部分があって、お話を聞いてもらえる環境にあるなら、できる限り伝えようと思ったし、ないなら“ないです、そこはお任せします”ってしっかり言おうと思ったんですね。


──そういう経験が植田さんを成長させたんですね。

植田:それを経て撮ったミュージックビデオが、写真を使った「心と体」で。私の意見がとても反映されているんですけど、とにかく写真をたくさん撮って……。

──結構な枚数の写真を使っていると思いますが、全部自分で撮ったものだったんですか?

植田:全部じゃないですけどね。マネージャーさんは海外旅行が好きなので、そのときに撮った写真とか、お世話になっていたカメラマンさんが撮った写真も混ざっていたり。全部で3,000枚くらいだったかな。それを素材に、パラパラ漫画みたいに編集していったんですけど。途中、“やっぱりここはこの写真じゃない”っていう部分がどうしても生まれてしまって。最終的に、まさにこのビルの中にある編集室で、ディレクターさんの横に8時間くらい張り付いて編集作業しました。「次、703番の写真です。そのあとに705番の色を変えたカットを入れます」とか言いながら(笑)。こだわり出すと、最後まで自分でやらないと気が済まなくて。


──そういう作業が曲の世界観を伝える映像を生むんですね。そもそも、どうして写真を使うアイディアだったんですか?

植田:映像からコマを落とせば簡単にパラパラ漫画風にできるんですけど、それとはまったく逆の手法で作りたかった。つまりアンチテーゼです。

──そんなパンク精神が(笑)。

植田:コンピュータ上でなんでもできるからこそ、“1枚1枚、全部のカットを写真で撮るんだ”って(笑)。“情熱だけで頑張る”みたいな作品をつくりたかったんです。ディレクターさんが一番大変だったと思います、だって3,000枚の写真を全部並べたのに、「ここは違う」とか言われちゃうわけですから(笑)。何からスタートして何に辿り着くと一番自然で、どうすれば意図してる部分がみんなに伝わるだろうかっていうことが大事で。なかなか、それを共有することは難しいですね。

──植田さんの頭の中をトレースしないと難しいですよね。

植田:でも、アイディアを出した人の意向で突き進むっていうことが、何にしても鉄則。10代の後半からそれは学ばせてもらいました。

──たとえばアートワークや映像的なイメージが先にあって、そこから曲につながっていくこともあるんですか?

植田:ああ……それはあまりないですね。唯一あったとしたら、インディーズ初期のアルバム『退屈なコッペリア』収録の「ハルシーネーション」。この曲は、先に映像のイメージがあったんですけど、ミュージックビデオは撮ってないですね。あと、「夢のパレード」はアートワークで、聴く人にイメージを補完してもらいたい楽曲ではありました。映像先行ということではないですけど。


──たしかに「夢のパレード」は、映像やアートワークが歌の世界観をより膨らませるものになってますね。そういえば、ミュージックビデオやアートワークで着用していたパジャマも、自分の持ち物だって当時のインタビューで話してくれましたが。

植田:そうですね、大阪のアメ村にある古着屋で買ったパジャマでした。そのときは普通に服を買いに行ったんですけど、“大人用なのに、こんな子どもみたいな可愛いパジャマがあるんだ!”って買っておいたものだったんですよ。

──そのパジャマの感じも曲とマッチしていて、現実だけどファンタジー世界のようなムードが出ている。「夢のパレード」のミュージックビデオやアートワークなどの撮影も楽しかったですか?

植田:写真撮影は楽しかったんですけど、ミュージックビデオを撮るときは大変でした。コオロギが多すぎて(笑)。ジャケット写真は夏に夜中の公園で撮影したんですが、この時も木にセミの抜け殻が1000個くらいくっついていたり、足元を孵化したばかりのセミが歩いてたりしたんです(笑)。そこまではよかったんですけど、ミュージックビデオ撮影のほうはコオロギがテントの明かりに集まってきちゃって。私、虫がダメなんですけど、テントの中で寝そべってるまわりをピョンピョンしてるんですよね、コオロギが。最後のほうは慣れましたけど(笑)、撮影終了後に、お借りしていたランプをアンティークショップに返しに行ったら、その中からピョコンとコオロギが出てきましたね(笑)。



──「夢のパレード」や砂漠をさすらう壮大な「スペクタクル」のようにロケで作る楽しさもありつつ、一方でアルバム『はなしはそれからだ』収録曲の「FRIDAY」やシングル「REVOLVER」のような、段ボールを使った箱庭的な手作り感のある映像作品も植田さんならではですね。

植田:そうですね。アルバム『はなしはそれからだ』では“移り変わり”も表現したかったので。そのリード曲「FRIDAY」では、“お部屋の壁紙がどんどん変わっていくミュージックビデオがかわいいな”と思ったんです。それと、私はあのタイミングで、“悪い私”をちゃんとやっておきたかったというか。

──“悪い私”というと?

植田:パッと見の印象だと思うんですけど、初対面のときの歌ってない私は、結構大人しく見られがちなんです。そういうイメージだと後々困るというか、急にイメージが変わったみたいになるのもイヤだと思っていて。アルバム『はなしはそれからだ』の時点では、1stシングル「彼に守ってほしい10のこと」と2ndシングル「ザクロの実」はリリースされていたんですけど、もっと“悪い私”もみせたかったというか。


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