【ライブレポート】“aiko”というモラトリアム…<LLP21>が生み出した魔法の時間

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aikoが3月10日(日)、マリンメッセ福岡にて3箇所6公演のアリーナツアー<Love Like Pop vol.21>を締めくくった。今回のツアーは、20周年というアニバーサリーを迎えて行われたメモリアルなものとなっている。本記事ではさいたまスーパーアリーナ公演を振り返り、レポートをお届けしよう。

◆aiko<Love Like Pop vol.21> 写真

   ◆   ◆   ◆

本当に尊敬に値するほどストイックで、とことん自分に厳しくありながら、何よりも周りの人やファンの人たち想いで、あんなにも優しくいられるaikoのことを、“人として生きる上での鏡としたい”と日常会話の中で私が度々口にすると、唐突に出される“aikoちゃん”と言う個人名に、決まってみんな「aikoちゃんって、『カブトムシ』の?」と聞き返す。

そう。「カブトムシ」のaikoちゃん。

aikoにとって「カブトムシ」は4枚目のメジャーシングル。1999年の11月17日にリリースされたこの作品で、多くの人がaikoというシンガーの存在を知ることになったと言っても言い過ぎではないだろう。1998年の7月17日に「あした」でデビューし、翌年の3月に「ナキ・ムシ」で一気に音楽チャートの順位を上げ、同年8月にリリースした「花火」ではトップ10入りを果たした。大ヒットとなった「花火」は当時の彼女の歌い姿と共に印象的に思い出されるほど記憶に深いのだが、みんなが“aiko”と言えば“「カブトムシ」”と言うように、間違いなく「カブトムシ」はaikoの代名詞と言っていいほど、“aiko”が詰まった名曲だ。

しかし。ときに、aikoはそのあまりにも強く印象付けられた自身が生み出した名曲に、苦しめられたこともあったに違いない。

それを越えていかなければいけないという試練からくる苦しみ。多くの人が深く印象に残した曲を世に残せたことは間違いなく彼女自身の大きな自信となったことだろうし、そこがあったからこそ20年という歴史の中で「カブトムシ」を超える名曲たちを次々と生み出していけるシンガーになれたはずだが、ここまでの歴史を刻んでくる中で、「aikoちゃんって、『カブトムシ』の?」という認識が、どれほどまでに彼女にプレッシャーを与えてきたかと思うと、そこには本当に私たちの想像を超える努力と葛藤があったであろうことが浮き上がってくる。

頑張り屋である元々の性格もあるのだろうが、aikoがとことんストイックに作品に向き合えているのは、ずっと彼女が自分自身と戦い続けているからなのだと私は思う。


<aiko Live Tour 「Love Like Pop vol.21」>。aikoは20周年を迎えた2018年に続き、間髪入れずに2019年1月より全国3都市6公演をまわるツアーをスタートさせた。今回のツアーは、約3年ぶりのアリーナツアー。久しぶりに見たaikoのアリーナツアーは、いつもよりも距離が遠い故に、さらにaikoがその距離を感じさせないようにと、とにかく全力を注いで楽しませてくれたライブだった。

2019年2月10日。ここまで真っ暗に客電が落とされたことは無いというほどに光を遮断した空間にオープニングSEが流れ始めると、オーディエンスは途中からその音に合わせてクラップを重ねた。SEが止まり会場中がaikoを迎え入れる拍手で埋め尽くされた次の瞬間、そこに1曲目のイントロが流れた。聴き慣れたピアノのフレーズ。

そう。始まりは「カブトムシ」。

会場からはざわめくオーディエンスの声が上がった。この曲からの始まりに特別な意味を感じたのだろう。近くにある小さくて当たり前の愛しさが何よりも大切だと教えてくれるこの優しい唄を、aikoは一音一音、そして、一言一言に感情を込めて歌い進めていった。目を閉じるように静かに聴き入っていたオーディエンス。その空間がどれほど心地良いものであったかは、どんな言葉を使っても表しきることは出来ない。普通では無い上がり方をする独特なサビのファルセットはこの曲の心臓。aikoがサビのフレーズを唄いきると、オーディエンスは深呼吸をするように、その曲を大きく自分の中に送り込んでいた。

“aiko”というモラトリアムを感じた。ここにこれば、自分が一番幸せだった時間に戻れるような。自分の一番好きだった時間を呼び戻せるような。そんなあたたかな時間。aikoのライブにはそんな魔法がかかっている。


「始まります! aikoです! よろしくお願いします!」

「カブトムシ」を唄い終えたaikoは自らのスイッチを入れ替えるかのように明るく短い挨拶を挟み、「ハナガサイタ」で一気に会場をポップに引き込んだ。ぴょんぴょんとリズムを取って跳ねながら唄い、「雲は白リンゴは赤」「冷凍便」へと繋げていった。

1曲唄い届けるごとに小声で“ありがとう”を呟くaikoの気持ちは本当の心の声。オーディエンスのクラップと歓声の中で幸せそうに唄い舞うaikoを観ていると、心底その言葉を呟いているのだということが深く伝わってくる。

この日は、アリーナという場所を最大限に活かすために用意された“束縛バンド”と名付けられたリストバンド型のシンクロライトが全ての席に用意されていたのだが、このタイミングで挟んだMCでaikoは、客席の1人に向かって「そこ、誤作動起こしてたやんね? 『カブトムシ』のときに1人だけ光ってて気になっててん。ごめんね〜。(新しいものと)変えてもらってね〜」と気さくに声をかけ、会場を和ませた。

場所をアリーナに移しても、aikoのライブは変わらない。アリーナであることを忘れてしまうほどに距離が近い。ときおり会場から直接飛んでくる質問や世間話に、壁を立てることなく友達と普通に話すかのように答えたり、ちょいちょい中学生レベルのイタズラな下ネタを挟みながらオーディエンスを喜ばせるaiko。オーディエンスは、aikoの唄を聴くことを第一目的であることはもちろんのこと、MCで気さくに話す“aikoという人間”に会いにここにやってくるのだろう。この日改めてそれを知った気がした。

この広いアリーナという空間の中で距離を感じさせないaikoはすごい。なかなか出来ないこと。まさしく、これはaikoの人間力である。

MCを挟んで届けられた「冷たい嘘」「かばん」「三国駅」を届け、時間の流れの進み方をゆっくりに切り替えていった。平凡な幸せの渦中にありながら、いつか愛しい人が自分の隣から居なくなってしまうのでは無いかという不安を唄うaikoの声は、少し切ない。しかし、何故だろう、とても温かい。きっとそれは、愛されたいと願いながらも、それ以上に愛したいと願うaikoの気持ちの温かさが伝わってくるからなのだろう。

「みんな嫌なことは、全部この会場に吐き出していってください!」

aikoはこの日、何度もこの言葉を叫んだ。彼女の言葉に嘘はない。aikoがライブをする意味そのものでもある気がする。そして、その言葉通り、aikoのライブは本当に嫌なことを忘れさせてくれる。余談であるが、実際この日、ライブ直前に別件であり得ないほどの苛立ちを覚える出来事が起こっていた私自身、aikoが唄を放った瞬間から自分でも驚くほどに一瞬にして1秒前までのマックスに達していた苛立ちが消え去っていったのだ。恐るべき浄化作用である。恐るべし、aiko。この人は、こんなちっちゃな体の中に、一体どれだけのパワーを秘めているのだろう。

aikoはライブ中盤、花道の中央に創られたサブステージに場所を移し、アコースティックで「Do you think about me?」と「桜の時」を心地良いフェイクを響かせながら届けてくれた。

アコースティック後、後半戦に向けては、「あたしの向こう」「ストロー」「ドライブモード」で盛り上げていったaiko。「あたしの向こう」では間奏で、床にしゃがみこみ、床を鍵盤に見立て、MVにもあったようにエアーピアノを魅せ、イントロで銀テープが放たれた「ストロー」では下手に全力疾走してやんちゃなポーズをしてみせたり、「ドライブモード」では、50メートルはゆうに越えている花道を全力疾走してサブステージまで移動し、くるくると回るaikoらしいパフォーマンスで楽しませていたaikoの姿はとても愛しかった。


「ありがとう。20周年を改めて意識してセットリストを組むことができて、こうしてアリーナツアーを組むことができて、本当にみなさん夢のような時間をありがとうございます。ずっと先も会いたいし、今すぐにでも会いたいです。今日はありがとうございました」

と、本編を締めくくるMCから繋げたのは「ホーム」だった。“あいしてる 強く抱きしめてたい”“大切なものにあたし達は何度か出逢う”というこの曲の歌詞の断片に、この曲を本編ラストに置いていたaikoの想いと重なった気がした。

アンコールでは「ナキ・ムシ」「今度までには」「プラマイ」「えりあし」「嘆きのキス」「あした」「恋のスーパーボール」「花火」「Loveletter」「二人」がメドレーで次々と届けられていった。これもまさに、20年という歴史がなければ作り上げることが出来なかった大切な時間だった。

「ハタチの頃とかデビューした頃は、20年も音楽を続けられると思っていなかったし、ずっと音楽を続けていたら、やり残したことはなくなって、全部やりきっちゃって燃えかすになっちゃうんだろうなって思ってたんですけど、やりたいこともまだまだたくさんあって、まだそれに自分が届いてなくって、悔しい43歳を迎えることになるとは思わなかったっていうくらいに、みなさんがここまで連れてきてくれました。本当にありがとう。嫌なこととかあるやん。エゴサしてると、ライブに来てくれてるみんなの日常は、こんなことになってんねやって思うねん。一緒なんやなぁって。私も同じことあるからさ。そういうの見ると、この人にこの曲はこんな風に届いてるんやな、よし、頑張ろう! って思えるんです。自分が作ったときは、そのときに思ったままを書いたんやけど、そこから時間が経ってその曲がみんなのおかげで色が変わっていったんだなって。その色を絶対に壊したくないし、それを一生懸命に壊さないように大事に歌って行きたいなって思ってます。みんなが居てくれたら私は生きていけます。本当にみんなも元気でいて下さい。私も元気でいます。お互い頑張りましょう! よろしくお願いします!」

1998年に、初となるワンマンライブを『LOVE LIKE POP!』と名付けた頃、aikoはこのタイトルの後に刻まれる数字が、一体どこまで続くと思っていたのだろう? 20周年という一つの大きな節目からの第一歩となる<aiko Live Tour 「Love Like Pop vol.21」>は、aikoにとって確実に新たな歴史を刻み続けていくための一歩であったに違いない。

aikoはこの日、時間の許す限り、オーディエンスの声に応えて何度もステージに舞い戻っては曲を届けた。ずっとそこに居続けたいというaikoの気持ちが痛いほど伝わってきた。同じく、集まったオーディエンスも全く同じことを考えていたことだろう。『LOVE LIKE POP!』の後ろの数字が、この先も永遠に続いていくのが見えた。aikoとオーディエンスが作り上げる、何よりもあたたかな空間は、未来もずっと形を変えることはないだろう。

取材・文◎武市尚子
Photo:岡田貴之




セットリスト<Love Like Pop vol.21>

2019年2月10日 さいたまスーパーアリーナ公演
01. カブトムシ
02. ハナガサイタ
03. 雲は白リンゴは赤
04. 冷凍便
05. 冷たい嘘
06. かばん
07. 三国駅
08. 染まる夢
09. 心日和
10. 恋人
11. Do you think about me?
12. 桜の時
13. あたしの向こう
14. ストロー
15. ドライブモード
16. ひまわりになったら
17. 夢見る隙間
EN1. メドレー(ナキ・ムシ〜今度までには〜プラマイ〜えりあし〜嘆きのキス〜あした〜恋のスーパーボール〜花火〜Loveletter〜二人)
EN2. キスする前に
EN3. be master of life
WEN1.予告
WEN2.愛の病
WEN3.ジェット

LIVE Blu-ray/DVD『My 2 Decades』

2019年3月13日(水)発売
品番:Blu-ray PCXP-58615/DVD PCBP-58615
定価:Blu-ray 5800円/DVD 4800円(本体)+税
初回限定スペサルBOX仕様

■予約購入先着特典:パスステッカー
全国のCDショップ(タワーレコード、TSUTAYA、HMV、新星堂他)、WEBショップ(amazon 他)が対象です。
詳しくはお近くのCDショップに直接お問い合わせください。
※特典は数に限りがございます。無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※一部取り扱いのないCDショップ・WEBショップもございます。各CDショップ・WEBショップの告知をご確認ください。

■収録内容
Disc1:Love Like Rock vol.8
夢見る隙間
Milk
相合傘
Power of love
なんて一日
恋愛
プラマイ
ドライヤー
アンドロメダ
えりあし
雨踏むオーバーオール
恋のスーパーボール
明日の歌
beat
小鳥公園
舌打ち
赤いランプ
be master of life
恋をしたのは
Loveletter
キラキラ
特典映像:LLR8 backstage

Disc2:Love Like Aloha vol.6
夏が帰る
あたしの向こう
予告
横顔
アンドロメダ

メドレー
天の川
花風
夢見る隙間
ストロー
ハナガサイタ
キラキラ
特典映像:LLA6 backstage

■西武新宿駅前ユニカビジョンでaiko特集が放映決定

放映日時:
3月11日(月)~3月17日(日)まで
10時 12時 14時 16時 18時 20時から約32分間
※時間は、予告なく変更になる場合がございます

内容:
2019年3月13日(水)リリースのLIVE Blu-ray/DVD
『My 2 Decades』から6曲のライブ映像を放映します

「Love Like Rock vol.8」より
1.アンドロメダ
2.明日の歌
3.be master of life
「Love Like Aloha vol.6」より
1.瞳
2.ストロー
3.ハナガサイタ
(全曲ノーカットフルバージョン)

【アプリ「VISION α」連動企画について】
本特集番組を高音質サウンドでスマートフォンから聴くことができます。
また、“aiko オリジナルポスター”が10名様
“Amazonギフト券 1,000円分”が50名様に当たる
プレゼント企画に応募することができます。

「VISION α」をダウンロードしたスマートフォンを本特集番組放映中のユニカビジョンにかざせば、スマートフォンから番組の音声が高音質で流れ、プレゼント企画へ応募することが可能になります。イヤフォン・ヘッドフォンをして、没入感溢れる音楽x映像体験をお楽しみください!

aiko配信シングル「愛した日」

https://lnk.to/aiko_aishitahi
各主要音楽配信サイトにて配信中

<Zepp Tokyo 20th Anniversary ~Special Live Act 5days~「Zepp Tokyo 20th Anniversary aikoの時。おめでとゼッペちゃん!! 」>

3月21日(祝・木)18:00/19:00 東京:Zepp Tokyo
3月22日(金)18:00/19:00 東京:Zepp Tokyo
チケット料金:4,980円(税込 ※入場時、別途ドリンク代500円必要)


LIVE Blu-ray/DVD『My 2 Decades』

2019年3月13日(水)発売
品番:Blu-ray PCXP-58615/DVD PCBP-58615
定価:Blu-ray 5800円/DVD 4800円(本体)+税
初回限定スペサルBOX仕様

■予約購入先着特典:パスステッカー
全国のCDショップ(タワーレコード、TSUTAYA、HMV、新星堂他)、WEBショップ(amazon 他)が対象です。
詳しくはお近くのCDショップに直接お問い合わせください。
※特典は数に限りがございます。無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※一部取り扱いのないCDショップ・WEBショップもございます。各CDショップ・WEBショップの告知をご確認ください。

■収録内容
Disc1:Love Like Rock vol.8
夢見る隙間
Milk
相合傘
Power of love
なんて一日
恋愛
プラマイ
ドライヤー
アンドロメダ
えりあし
雨踏むオーバーオール
恋のスーパーボール
明日の歌
beat
小鳥公園
舌打ち
赤いランプ
be master of life
恋をしたのは
Loveletter
キラキラ
特典映像:LLR8 backstage

Disc2:Love Like Aloha vol.6
夏が帰る
あたしの向こう
予告
横顔
アンドロメダ

メドレー
天の川
花風
夢見る隙間
ストロー
ハナガサイタ
キラキラ
特典映像:LLA6 backstage

■西武新宿駅前ユニカビジョンでaiko特集が放映決定

放映日時:
3月11日(月)~3月17日(日)まで
10時 12時 14時 16時 18時 20時から約32分間
※時間は、予告なく変更になる場合がございます

内容:
2019年3月13日(水)リリースのLIVE Blu-ray/DVD
『My 2 Decades』から6曲のライブ映像を放映します

「Love Like Rock vol.8」より
1.アンドロメダ
2.明日の歌
3.be master of life
「Love Like Aloha vol.6」より
1.瞳
2.ストロー
3.ハナガサイタ
(全曲ノーカットフルバージョン)

【アプリ「VISION α」連動企画について】
本特集番組を高音質サウンドでスマートフォンから聴くことができます。
また、“aiko オリジナルポスター”が10名様
“Amazonギフト券 1,000円分”が50名様に当たる
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「VISION α」をダウンロードしたスマートフォンを本特集番組放映中のユニカビジョンにかざせば、スマートフォンから番組の音声が高音質で流れ、プレゼント企画へ応募することが可能になります。イヤフォン・ヘッドフォンをして、没入感溢れる音楽x映像体験をお楽しみください!

aiko配信シングル「愛した日」

https://lnk.to/aiko_aishitahi
各主要音楽配信サイトにて配信中

<Zepp Tokyo 20th Anniversary ~Special Live Act 5days~「Zepp Tokyo 20th Anniversary aikoの時。おめでとゼッペちゃん!! 」>

3月21日(祝・木)18:00/19:00 東京:Zepp Tokyo
3月22日(金)18:00/19:00 東京:Zepp Tokyo

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