【インタビュー】むぎ(猫)、歌えて踊れて楽器も演奏できる「天国帰りのネコ」が待望の1stアルバム『君に会いに』リリース

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「天国帰りのネコ」として、新しいニャン生(人生)を満喫中のむぎ(猫)。その正体は、歌えて踊れて楽器も演奏でき、作詞・作曲はもちろん、グッズのデザインやMVの制作まで手がけていて、おまけにフジロックにも出演済みというネコ界初の偉業をいくつも成し遂げているネコだ。そんなむぎ(猫)が、3月20日に1stアルバム『君に会いに』をリリースした。楽しくて、優しくて、あたたかいんだけど、心のどこかがちょっと切ない。むぎ(猫)の作り出す音楽を聴いていると、忘れかけた大切な気持ちが甦ってくるような気がした。

■むぎ(猫)の歌を聴いてライブを見て
■大人もこの一瞬を宝物のひとつにしてくれたらいいな


――メジャーデビューおめでとうございます!今のお気持ち、率直にいかがですか?

むぎ(猫):いやもう、本当にドキドキしています。メジャーデビューだからって、むぎ自身が何か変わるわけじゃないとは思いますけど、どんな自覚が芽生えてくるのかなって、そこはむぎ自身も楽しみ。わくわくしています。

――2017年には「FUJI ROCK FESTIVAL」、昨年は「RISING SUN ROCK FESTIVAL」。そして今年は、幕張メッセで行われた「ビクターロック祭り」にも出演されてますね。

むぎ(猫):はい。むぎ(猫)としての音楽活動は小さな喫茶店から始まったんですが、商店街のイベントやライブハウスなど、場面場面で色んなライブ活動をやってきました。とてもいい経験をさせていただいています。

――地域のイベントなどでは、やはり小さなお子さんとかも集まってきますか?

むぎ(猫):そうですね。「むぎ(猫)」のステージは大人から子供までみんなが楽しめるように作っているので、まず見た目で子供達が寄って来て、一緒に来た大人達がまた別の魅力を見つけてくれている感じなんですよね。むぎ(猫)の音楽を聴いて「なんだ、面白いじゃないか」って。子供の気持ちを持った大人達も楽しんでくれているなって思います。

――むぎ(猫)さんは、もともとクラシックをやってたんですか?

むぎ(猫):いえいえ、それはむぎじゃなくてカイヌシです。むぎのカイヌシのゆうさくちゃんはクラシックを学んで東京に来て、音大に入ったんです。その時にホームシックになり、拾った猫がこのむぎなんです。

――むぎ(猫)さんとカイヌシさんの関係性をわかりやすく物語にした「天国帰りのネコ」という動画もありますね(https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=WBKm3f2JWO4)。

むぎ(猫):カイヌシとむぎの共同作業で作りました。家族に可愛いがられていたけど、むぎは2009年に天国に行っちゃうんですね。そこまでのリアルな部分は紙芝居で表現していて、天国での部分はファンタジーということで、しっかり切り替えたくて人形劇っていう形をとっています。

――むぎ(猫)さんは5年間天国にいたわけですが、カイヌシさん手作りの新しい身体を手に入れ、再びこの世に舞い戻られたんですよね。その時はどんなお気持ちだったか、聞かせてもらえますか?

むぎ(猫):むぎはカイヌシと相棒のような感じで一緒に暮らしてたんですけど、むぎが天国に行ってから、カイヌシが本当に寂しい思いをしていたんだなってことを、またこの地上に戻って来て改めて実感しました。むぎに対する執着といいますか(笑)、愛情が本当に強かったんだなって。むぎが帰って来たらカイヌシが大喜びしていたのがわかって、むぎもすごく嬉しかったです。

――そうやってむぎ(猫)さんの新しいニャン生(人生)が始まったわけですが、そこからカイヌシさんと一緒に、音楽という表現手段を使っていくことになったのには何かきっかけがあったんですか?

むぎ(猫):むぎが天国から蘇った時、カイヌシはノープランだったというか、むぎを形としてこの世に呼び戻すことだけしか考えていなかったんです。むぎもただその気持ちに乗っかって、散歩したり、街角で勝手に握手会をしたり(笑)、そんな感じで過ごしていました。ところがその様子をSNSに上げていたら、面白いって見てくれてる人が出て来て、ある時イベント出演の依頼がきたんです。小さな喫茶店だったんですが、色んな人が飼っているネコの写真を展示したりするっていう。でも、むぎがただそこに行って握手するだけじゃつまらないなと思ってカイヌシに相談したら、カイヌシは音楽が得意だから、むぎも音楽をやってライブにしちゃったらどう?って話になったんです。そこから曲作りをしたり、むぎも木琴や歌の練習を始めたりしました。

――そうだったんですね。

むぎ(猫):だから街を歩いたりしてるだけの時は、まだおしゃべりができなかったんですよ。ただ黙って、みなさんと握手したりしていた。でもそのイベントをきっかけに人間の言葉を覚えて、歌を歌ったり、楽器を演奏したりするようになったんです。そうやって一生懸命ライブの演出とかも考えてやったその最初のライブを、みんながすごく喜んでくれたことがとても大きかったんですよね。


――とても温かいエネルギーが生まれたんですね。

むぎ(猫):みんなが、面白いし泣けたって言ってくれて。その時すごく嬉しかったのが、カイヌシのお友達夫婦がいるんですけど、そのイベントに来るまですごい夫婦喧嘩をしてたんですって。でもむぎのライブを見て帰る頃には、すっかり仲直りしていた。”イヌも食わない”ものをネコが直したなんて話、聞かないですよね(笑)。でもそういう優しい気持ちになれるような、そんな力もあるんだなって思いました。飼ってるネコに早く会いたくなったとか、もっと優しくしようと思ったとか、そういう気持ちが生まれたよってことをむぎに教えてくれる方もいて、あぁ、これはいいことだなって。むぎ自身も、続けていきたいなって思ったんです。

――ちなみにその時はオリジナル曲だけやったんですか?

むぎ(猫):カバーもやりましたし、自分の曲を流しながらライブペインティングをしたりもしましたね。

――オリジナル曲に関しては、どんな風に方向性を考えていったんですか?

むぎ(猫):やっぱりこうやってネコが歌うわけですから、難しいものじゃなくてわかりやすいもの。ライブの現場で聴いて、意味もすぐにわかるし、優しくなれるようなものを心がけています。

――以前発表された「天国かもしれない」という曲は、どういうきっかけで作られたんですか?

むぎ(猫):ライブ活動を始めてしばらくは、大人の前だけで演奏していたんです。この見た目なので、子供向けだろうって思われるかもしれないけど、本当にライブハウスが中心で、大人のみんなに喜んでもらっていた。でもある時、保育園から音楽鑑賞会の依頼があったんですよ。子供の前でやったことがなかったからすごく緊張したし、言葉遊びの曲とか伝わるのかな?って不安もあったんだけど、その保育園の子たちがすごく喜んでくれて。笑ったり、逆に怖がったり(笑)、大人よりも感情を爆発させてるなっていう実感があって、むぎはすごく感動したんです。

――子供達の様子が目に浮かびますね。

むぎ(猫):そしたらそのライブが終わって、保育園の先生から「子供達がむぎ(猫)ちゃんの絵を描きました」って、写真がたくさんメールで送られて来たんです。もう本当に感動して。それはどうしてかっていうと、絵の内容がバラバラだったんです。個性、なんですよね。逆に、個性は教え込まれることでなくなっていくのかもしれないなっていう風にも感じて。小学校に入る前の子供達ですから、絵の描き方とかは習ってないんだけど、どの絵も本当に素晴らしくて、子供達の表現に感動させられたんです。現場で爆発的に笑ったりしていたあの感じ、大人になったら忘れちゃうのかなあっていう不思議さもあって、あの曲を作りました。

――そして、その送られて来た写真を使ってMVを作られたと(https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=DDw0AM0QQME)。

むぎ(猫):はい、まさにそうなんです。先生達すごいなあと思ったんですけど、「この絵は子供達の思い出になるから」ってことで、実物の絵はいただいていないんですよ。後日改めて写真を撮りに行かせてもらって、あのMVを作ったんです。


――よく見ると裏に描いた絵が透けていたりして、そこがまたあたたかいなあと思いました。

むぎ(猫):そうなんですよね。あの絵がみんなの宝物になってくれたら嬉しいなと思います。2番では<大人になっても子供の気持ちは忘れないんだな>って歌ってるんですが、「むぎ(猫)」の歌を聴いて、ライブを見て、大人のみんなもこの一瞬を宝物のひとつにしてくれたらいいなっていう気持ちを込めました。


――この曲は以前出された自主制作音源「天国かもしれない」に収められていますが、何か制作にまつわるエピソードなどはありますか?

むぎ(猫):あの頃はライブがメインでしたから、CDなんて作ろうと思っていなかったんです。でもある程度ライブ活動を続けるとファンの方も増え、そろそろワンマンライブをやってみたいなと。それで日程を決め、ハコを押さえた上で、このワンマンライブをきっかけとしたCDを作ろうかなと思ったんです。普通はCDを作ってからリリースライブをやったりするんでしょうけど、むぎは逆だったんです。

――有料のお土産みたいな(笑)。

むぎ(猫):そうそう(笑)。今となってはCDも大事なんだなとわかりましたけど、当時はライブを見に来てくれた人が優先って気持ちが大きくて。むぎのことを知って、ライブで色んなことを感じてくれた人に「どうぞ」って気持ちで作っていましたね。

――だけど結果的には、あの作品がむぎ(猫)さんの存在を知るきっかけになったという人も多いと思います。

むぎ(猫):音楽って遠くにまで届くんだなっていうことがわかりました。むぎ(猫)はライブっていうショーがメインだと思っていたけど、音楽を聴くだけでも好きになってくれる人っているんだなって、すごく自信に繋がりました。

――次なる制作への意欲にも繋がりましたか?

むぎ(猫):そこはまたちょっと違っていたというか。新曲を作って、アルバムを作って、次はライブに来てもらってっていう順番じゃなくて、それまでの活動をまとめたみたいな感覚でしたからね。むぎは安心して、マスターピースができたな、くらいの感じでいました。だからすぐ「次も頑張るぞ!」って気持ちにはならなかったです(笑)。

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