【インタビュー】セラー・ダーリン「無理矢理言えば、俺達はプログレッシヴ・フォーク・ロック」

ツイート

スイスのプログレッシヴ・フォーク・ロック・バンド、セラー・ダーリンが、『ザ・スペル』をリリースした。セカンド・アルバムにして、死神に恋した女性の苦悩をテーマとしたコンセプト・アルバムであるという。ドラマーのメルリン・スッターに話を聞いてみた。





──ニュー・アルバム『ザ・スペル』は、デビュー作からどういう進化を果たしましたか?

メルリン:いきなり難しい質問だね。一番の違いは今回はコンセプト・アルバムということ。だから、曲を書き始めるよりも前に、曲名も決まっていてストーリーがあったんだ。つまり、そのストーリーにあったサウンドトラックを作っていく感じだった。音楽的にもバンドとしてとても進歩していると思うよ。スタジオで時間をかけてとても自然なプロセスで曲を書いたしね。

──アナの書いたストーリーに基づいたものなんですよね?

メルリン:アナは、古くからある「死と乙女」というコンセプトにインスパイアされたんだ。ルネッサンスのころの絵画やクラシック音楽などでも使われていたコンセプトで、これを元に彼女自身のストーリーを書き上げたんだ。父親とスイスの山にハイキングにいったときに思いついたらしい。苦痛に満ちた世界に生まれた女性が、擬人化された死に出会い、恋に落ちる。だけど死の方は、罰として彼女に不死身となる呪文をかけてしまう。そのせいで、彼女は死ぬことができず、死と一緒になることができない。ストーリーはこんな感じ。アルバムは、愛するものと一緒になろうとする彼女の苦闘を描いているんだ。

──アートワークもこのコンセプトに基づいたものなのですね。

メルリン:ある部分はそうだよ。ルーマニアのコスティンというアーティストに描いてもらった。彼にストーリーを伝えて、彼自身の解釈の余地を残せるよう多くの指示はしなかった。アルバムは音楽があり、歌詞の世界があり、アートワーク単独としても完全に成り立つ作品として作られているんだ。

──そもそもセラー・ダーリンというバンド名は、どういう意味が込められているのでしょう。アナのソロ・アルバムのタイトルに由来しているとのことですが。


メルリン:ある程度自由に解釈できるものだよ。エルヴェイティを抜けて新しいバンドを作り、何か名前を考えなくてはいけなかったのだけど、最近では使われていないバンド名を考えるのも一苦労だ(笑)。それでいろいろと候補を考えたのだけど、アナのソロ・アルバムのタイトル『セラー・ダーリン』の語感が気に入っていたから、バンドの方向性を考え議論をした結果、メタルのような暗い要素・暗い歌詞だけでなく、明るいもの・ポジティヴなものも常にそこにあるというコンセプトに「セラー・ダーリン」という名前がぴったりだということになったんだ。”Cellar"はジメジメしてメタル的なイメージだけど、”Darling"というのはスイートでポジティヴな単語だろ?

──セラー・ダーリンの音楽を、無理やりにでもカテゴライズするとどうなるでしょう。

メルリン:俺たちもさんざん自問自答しているんだよ(笑)。レーベルからも「君たちのスタイルをどう形容すればいい?」って聞かれる。俺たちのやっている音楽は、とてもプログレッシヴだと思う一方、アナが奏でるフルートやハーディ・ガーディみたいなクラシカルでフォーキーな要素も保持していきたい。だから、プログレッシヴ・フォーク・ロックというのが良いのかな。

──セラー・ダーリンの音楽には非常に多くの音楽からの影響が感じられますよ。

メルリン:曲はだいたいアナとイーヴォが一緒に仕上げているのだけど、アナはクラシックからインスパイアされることが多い。彼女の両親はともにオペラ歌手で、彼女の継父はオペラのディレクターなんだよ。だから彼女はいろいろとクラシックを聴いて育ったのさ。俺たちはメタルも聴く。イーヴォはブラック・メタルや暗いのが好きで、アナもブラック・メタルを聴く。そして俺たち全員ポップスも好きなんだ。さまざまなスタイルのね。俺は父親のレコードコレクションを聴いて育ったんだ。クラシック・ロックとかいろいろあった。その後ドリーム・シアターを聴いて、こういう音楽をやりたいと思った。ずいぶんと大仰な答えになってしまうけど、こういう要素がすべてセラー・ダーリンの音楽になっている。メタル、プログレッシヴ・メタル、クラシック。メロディに関しては民俗音楽やポップスからの影響がある。


──バンドとして影響を受けたヘヴィメタル・バンドとなるとどうなりますか?

メルリン:誰とツアーしたいか?と考えると、すぐに出てくるのはオーペス。俺たちはみんなブラック・サバスも大好きさ。5月にはカタトニアとのツアーも決まっている。とても良い組み合わせだと思うよ。新しいプログレッシヴなバンドも好きだよ。レプラスとか。このあたりが良い例じゃないかな。

──日本での来日公演も楽しみに待っています。

メルリン:日本には、セラー・ダーリンとして一度、エルヴェイティで二度行ったことがある。日本は世界で最も素晴らしく美しい国のひとつだから、数週間に一度、また日本に行きたいって話し合うくらいだよ。何度でも日本に行くことが俺たちの最優先事項のひとつだから、なるべく早く行きたいね。

取材・文:川嶋未来
写真:Urs Gantner


セラー・ダーリン『ザ・スペル』

2019年3月22日発売
【50セット 直筆サインカード付きCD+オーディオブックCD+Tシャツ】 WRDZZ-854 / ¥6,000+税
【初回限定盤CD+オーディオブックCD】 GQCS-90697~8 / ¥2,800+税
【通常盤CD】 GQCS-90699 / 4562387208999 / ¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ペイン
2.デス
3.ラヴ
4.ザ・スペル
5.バーン
6.ハング
7.スリープ
8.インソムニア
9.フリーズ
10.フォール
11.ドロウン
12.ラヴ・パート2
13.デス・パート2

【メンバー】
アナ・マーフィー(ヴォーカル)
イーヴォ・ヘンツィ(ギター)
メルリン・スッター(ドラムス)


◆セラー・ダーリン・オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報