【ライブレポート】AK-69「ここにお前らといることが全て」、武道館で見せた貫禄のステージ

ツイート

3月31日、AK-69が挑む初の日本武道館2DAYSの2日目、<AK-69 THE ANTHEM in BUDOKAN“RED MAGIC BEYOND-2012~2019-”>を観た。前日の“REDSTA is BACK-2004~2011”とは殆ど曲の被りがないと聞いていたが、直前にセットリストを見て驚いた。両日共に31曲、被りは4曲のみ。2日で総勢20組を超えるゲストも全く異なる。15年かけてHIPHOPシーンの頂点に立った男の半生を紐解く、これはライブという名の自伝だ。九段下周辺は花見客とHIPHOPファンが入り混じって大渋滞を引き起こし、開演が30分押した。騒然とした空気と緊張感の中、午後4時半、歴史的ライブの幕が開く。

「武道館、調子はどうだ!」

AK-69のサクセス・ストーリーと、日々を懸命に生きる市井の挑戦者たちの姿をシンクロさせたドラマチックなオープニング映像、そして最新アルバム『THE ANTHEM』の冒頭を飾る「The Anthem」から「THE RED MAGIC BEYOND」へ。巨大なセットの上に登場した白ずくめのAK-69が第一声を放つと、満員の武道館が大歓声でぐらりと揺れた。「THE INDEPENDENT KING」から「SWAG IN DA BAG」へ、ステージで炎がぶち上がり、ダンサーが激しく踊り、オーディエンスは69サインを掲げてキングの凱旋を歓迎する。ロック的な質感を加えた4ピースのバンドが叩き出す音はまるでスタジアム・ロック、いやスタジアムHIPHOP。ド迫力の重低音が空気をびりびり震わせる。


「CLUB日本武道館へようこそ!」

ストリートから出てきたHIPHOPアーティストが日本武道館2DAYSをやるなんて誰が想像できた? みんなに感謝します。ここまで俺を連れてきてくれてありがとう――。AKらしい、強気と自然体が入り混じったMCのあとに飛び出した決め台詞に、思わずニヤリ。ここに立つロック・バンドの慣用句「ライブハウス武道館へようこそ」というフレーズを鮮やかに更新する、今この言葉が吐けるのはこの男しかいないだろう。


おざなりの音を出す気はないぜ――。その言葉通り、「A Hundred Bottles」「Too Much Money Out Here」「THE SHOW MUST GO ON」と、ヘヴィなローを効かせたトラックを連ねてぐいぐい進む。「もう1ミリ」を歌う前には長めのMCを入れ、無理と思ったところからもう1ミリ自分を更新する勇気を持てと、オーディエンスと同じ目線のメッセージをぶつける。武道館を一つにした“もう1ミリ!”の大合唱は、熱いメッセージへの完璧なアンサーだ。

さあ、ここからはゲスト・アーティストが続々登場するハッピー・タイム。先陣を切るNORIKIYOが、ロック的なエッジの効いた「ロッカールーム -Go Hard or Go Home- REMIX」に乗せてハイ・テンションのラップで盛り上げる。続く「Oh Lord」を挟んで登場したUVERworldは、ボーカル・TAKUYA∞の「たった2曲で空気変えに来たぜ!」という雄叫びの通り、「Forever Young」に加えライブ初披露となる「ONE LIFE」を全力でパフォーマンス。立ち向かうAKも気合満点、ステージを乗っ取るほど強力なロック・バンドとタイマンを張って一歩も引かない。ここまで歌えるラッパーが他にいるか。AKの底力を見せる素晴らしいコラボレーションは、間違いなく前半最大のハイライトだ。

▲TAKUYA∞(UVERworld)

男は妬むより妬まれたほうがいい――まっすぐに夢を目指す生き方を肯定するMCからの「#BOSSLIFE」、そして「MINAHADAKA」では伸び盛りの若手ラッパーたちが躍動する。激しく挑みかかるLui Hua、独特の粘っこいフロウが魅力のOZworld a.k.a.R’kuma、メロディアスに歌い上げるHideyoshi。トップに立ったからこそ「後に続く若い奴らにHIPHOPドリームを見せたい」と語るAK-69と、その音楽に熱狂する武道館いっぱいのオーディエンスは、彼らにどんな刺激を残しただろう。こうしてバトンは手渡され、日本のHIPHOPの歴史は繋がってゆく。

ここまで14曲でジャスト1時間。メンバー紹介を兼ねたバンドの単独演奏の後はいわば第二部、白いスーツに着替えたAK-69が次のゲストを紹介する。群れた羊より孤高のライオンでありたい。そんな歌をここであいつとやりたかった――。曲は「Lonely Lion」、そしてボーカルはもちろん清水翔太。黒のパーカーに身を包み、目立たないように見せてその歌声で誰より目立ってしまう、生粋のボーカリスト。歌い終わるとハグもシェイク・ハンドもせずにさっと手を振り立ち去る、ストイックな歌声にストイックなアティテュードがよく似合う。

「今日ここにいる母ちゃんにありったけの愛を捧げます。父ちゃんにも見せたかったな。時間は限られています。みんなの中の愛を大事にしてください」

間違いなくここが、この日最もディープでエモーショナルなセクションだ。「ICU」から「Stronger」へ、もはやラップもボーカルもない絶唱は、歌からはみ出す魂の震えだ。AKは、ずっとかけていたサングラスを外した。角度がなくはっきり見えないが、スクリーンに映る目元に光るものがちらりと見えた気がした。アカペラ「上ヲ向イテ」からの「START IT AGAIN」は昨日と同じ選曲で、AKは「今日も歌わせてくれ」と言ったが、歌ってほしいのはこちらだ。AK-69屈指の人気曲の、武道館を包み込む大合唱の一体感が凄い。ここが今日のピークかもしれない。しかしその予感は、次の曲であっさりと覆されることになる。

失くした仲間、失くせなかった夢、孤独と絶望、それでも生きてゆく希望。名曲「BRAVE」の、地べたを這いつくばる人間の視点で歌うAK-69の後、ステージ下のポップアップから現れたToshl(X JAPAN)の、まるで神の視点で歌う超絶ハイ・トーンの衝撃を、何と言葉にすればいいか。Toshlを送り出した後の「…神が降臨した」というAKの呟きが全てを物語る。そしてAK-69の名を一躍全国区にしたビッグ・チューン「And I Love You So」の、不器用な男がラブソングに込めた背一杯の思いの深さ。「これはもう俺だけじゃない、みんなの歌だ」とAKは言った。愛を歌うラブソングと、生き方を問うライフソング。AK-69の世界観を代表する名曲2連発、なんて贅沢なセットリストだろう。

▲Toshl(X JAPAN)

ライブは三分の二を過ぎた。ここからはスウィートなラブソングのセクションで、まずは網タイツの女性ダンサーを従えた「メアリー ~My Love Next Episode~」で思い切り艶やかに。続く「Baby」では客席から女性をステージに上げ、ソファーに腰かけて歌う粋な演出で華やかに。AK-69に手を取られ耳元で歌われた夢の時間を、彼女は一生忘れないだろう。そして女性がいる場所にはこの男がもれなくついて来る、t-Aceをゲストに招いた「You Mine」は、アルバム『THE ANTHEM』の中でも異色のユーモラスでポップなラブソング。あえて言うなら軟派と硬派、そんな二人が恋愛観をぶつけあってラップで共演できる、だからHIPHOPは面白い。「With You ~10年、20年経っても~」はラップ要素の薄いメロディアスな歌ものだが、AK-69がそこにいればそれはHIPHOPだ。


▲t-Ace

DJ NISHIMIAとG.O.T.Oによるご機嫌なMIXショーで一息つくと、いよいよクライマックスへ向けた最終章の扉が開く。覆面男と下着美女のヤバいパフォーマンスに目を奪われる「YELLOW GOLD」を経て、炎がぶち上がるステージにXサインを掲げて颯爽と現れたのはSWAY(DOBERMAN INFINITY)。「XXX」で無駄な動き一つなくストイックなラップを決め、「みんな、最後まで兄貴をしっかりサポートしてくれ!」と叫んで去る、全ての動きが爽やかの一言。続く「Flying Lady」はHIDE春の強力なアカペラ・ボイスから始まり、CITY-ACEがオートチューンを効かせたメロウなラップをじっくり聞かせる。一人残ったAKが「この世でたった一人の自分を誇ろうぜ」と呼びかける声に答え、「ONE」を歌うオーディエンスの力強い声が武道館いっぱいに響き渡る。さあ、残すはあと2曲。

「不器用でも、才能なくても、負けても、それでも前に進む。その精神を伝えていきたい。ここにお前らといることが全て。お前らの代弁者、AK-69の歌が、全国の、必死に生きてる奴らに響けばいいと思ってます」


すでに29曲を歌ったというのに、まだまだ熱い思いは伝えきれない。この日最も長く熱いMCの後、人生賭けた勝ち上がり美学をリリックに託した「Flying B」を歌う、その声とそのパフォーマンスには疲れも迷いも全く感じられない。日本のHIPHOPになかった地図をこれから描いていこうと思います。力を貸してくれよ、俺も頑張るから――。MCと言うよりも自分に言い聞かせるような言葉の後、自身初の日本武道館2DAYSを締めくくる最後の曲は「Divine Wind -KAMIKAZE-」だった。壮大なスケール、重厚な曲調、シンガロングできるメロディ、絶対に後へ引かぬ決意を綴るHIPHOPアンセム。散った奴らの分まで、一歩たりとも引かねぇ、孤高のWarriorsー。Warriorsが複数形である意味は、失くした仲間と共に、今ここにいるオーディエンスを指すことは言うまでもない。

「さあ、一緒に戦おう。ありがとう」

31曲2時間半を歌い終えてステージを降りる、その間際の言葉がいつまでもリフレインする。共に戦おうぜと呼びかけ続けるアンセム、それがAK-69の音楽。2か月前、アルバム・インタビューの最後にAKは「武道館が終わったら少し休もうかな」などと言っていたが、きっと彼はそうしないだろう。一つ夢を叶えたらさらに遠くの夢に手を伸ばす。孤高のHIPHOPファイターは貪欲だ。


取材・文◎宮本英夫
撮影◎cherry chill will.

この記事をツイート

この記事の関連情報

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス