【ライブレポート】ティム・クリステンセン、一夜限りのソロ来日公演で初披露の新曲も

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4月3日、クラブチッタ川崎にてディジー・ミズ・リジーのフロントマンであるティム・クリステンセンによる、一夜限りのアコースティック・ソロ公演が行なわれた。過去、母国デンマークにてアコースティック・ツアーが実施されたことはあるものの、こうした単身でのライヴが日本で実現するのは初のこと。ステージ上の光景は、ティム自身とアコースティック・ギター2本のみ、というきわめてシンプルなもの。しかし、これまでに発表されてきた3作のオリジナル・ソロ作品のみならず、2011年にティム・クリステンセン&ザ・ダム・クリスタルズ名義で発表されたアルバムや、ディジー・ミズ・リジーの作品群からもセレクトされた色とりどりの楽曲が配された90分間のライヴは、観る者を少しも飽きさせることのない、音楽的な純度の高い、とても濃密なものとなった。

◆ティム・クリステンセン 画像

選曲面について補足しておくと、この夜の彼はあらかじめ固定的なセットリストを用意することなく、ステージ上でプレイしながら次の演奏曲を決めていた。そんな自由度の高いライヴのなかで、これまで演奏されたことがないという“Silver Lining”と題された新曲が披露されたことが、この夜最初のサプライズだったといえるだろう。この曲を今後、ディジー・ミズ・リジーに持ち込むことになるのかソロでやることになるのかは不確かであるようなことをステージ上でのティムは語っていたが、公演翌日に本人に話を聞いたところによると、実はごく近いうちにディジー・ミズ・リジーとしてスタジオ入りする予定があり、そこで試すことになるはずだとのこと。ただ、そこからいきなり長期間にわたるアルバム制作期間に突入するのではなく、幾度かに分けて短期間のスタジオワークを重ねていく形で、『フォワード・イン・リヴァース』(2016年)以来となる通算第4作の制作を進めていくつもりだ、と彼は語っていた。


さらに付け加えておくと、この日は彼の敬愛するビートルズの楽曲のなかから「ゲッティング・ベター」と「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」(ともに『サージェント・ぺパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』からの選曲)がメドレー形式で披露され、また、ティム自身が8歳当時に作ったというデンマーク語の歌詞による「Take My Hand Fan」なる初期衝動の象徴のような楽曲も飛び出した。そうした意味においても今回の公演は、実にさりげなく自然体でありながら、結果的にはこの類まれなソングライターの音楽的な出自や生い立ち、現在の成熟ぶりに至るまでを網羅した画期的な内容のものになっていたように思う。

加えて、これまたインタビュー時にティム自身も認めていたことだが、エレクトリックでヘヴィに仕上げられた楽曲についても、そもそもは1本のアコースティック・ギターから生まれているケースが多く、いわばこの夜の幸運なオーディエンスはそうした曲たちの生まれたままの姿を堪能することができたというわけだ。また、彼は「エレクトリックな楽曲をラウドに演奏することも心底好きだが、こうした究極的にシンプルな形態で楽曲を提示することも同じくらい好きだし、自分にとって必要なことだとも思っている」と語っていた。実際、大音量で大好きな曲を聴くことができるのは楽しいものだが、適度な音量で聴いてこそ楽曲本来の持ち味が伝わってきたり、そこに新たな発見が伴ったりすることもあるものだ。僕がそう告げると、ティムも深く頷いていた。


インタビュー時のティムの発言についてはまた機会を改めてお届けするつもりだが、2曲の味わい深いアンコールを含めた90分の演奏を終えると、彼はスタンディング・オヴェーションをする観衆に「またいつか、これをやろう」と告げ、その場を去った。もちろんディジー・ミズ・リジーの新作発表と、それを引っさげての来日公演実現が何よりも待ち遠しいところではあるが、こうしたソロ公演も今回が“最初で最後”ではあって欲しくないし、彼の言う“いつか”ができるだけ早く訪れることを願いたい。

取材・文◎増田勇一
撮影◎Yoshika Horita

■<Tim Christensen Acoustic 2019>2019.04.03@CLUB CITTA’ KAWASAKI SETLIST

Barbedwired Baby’s Dream (※)
Never Be One Until We’re Two
I Would If I Could But I Can’t (※)
Love Is a Matter of…
Love Is a Loser’s Game (※)
Tell Me What You Really Want
Silver Lining (新曲)
Take My Hand Fan (ティムが8歳当時に書いた曲)
Right Next to the Right One
Silverflame (※)
BEATLES MEDLEY:Getting Better~
With a Little Help from My Friends
Surfing the Surface
Superior
Maggie My Dear
Jump the Gun
-encore-
Whispering at the Top of My Lungs
Kings Garden
(※)=DIZZY MIZZ LIZZY songs

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