【インタビュー】クランベリーズ、「これは悲しいアルバムじゃない」

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■ 何らかの形で音楽を続けていきたい

── 今回の11曲のデモは、どんなふうに作っていったんでしょうか? ノエルが作った曲を、ドロレスに送って、彼女がそこにヴォーカルを加えていたんでしょうか?

ノエル:うん、そんな感じだった。作り方には二通りあって、ドロレスがギターかピアノで曲を作って、歌詞とメロディを作って、そのデモを送ってきて感想を訊いてくるか、もしくはリハーサルに来て僕達に聴かせてくれるか、それがひとつのやり方だった。もうひとつは、こっちの方が多かったけど、僕が曲のデモをラップトップで作って、それをドロレスに送って、たとえば5曲送ったらそのうちのこの3つがいいとか言ってくれて、その3曲に集中することにして、それから僕が曲の部分に必要なものを全部作ってみて、ドラムをプログラミングしたり、キーボードやピアノやギターを入れたりして、それを彼女が聴いてヴァースをもっと長くしたいとか、コーラスを長くしてほしいとか、そういう調整をして、それから彼女がヴォーカルを付けて送り返してくれて、それに僕が感想を言ってまたやり取りしていく感じだった。そんな感じで結構時間がかかるんだ。いろいろとテクノロジーが使えるようになる前は、カセットテープを使ってたわけで、バンドを始めたときからずっとやり方は同じだったんだよ。

── 『イン・ジ・エンド』のレコーディングは、ドロレスが残した歌にバンドが寄り添うように行われたと想像しますが、バンドのアレンジ、演奏では、どんなことを意識したのでしょうか?

ノエル:僕やドロレスが作ったデモをひととおり聴いてみて、ここはいい、ここは使おうっていうのを決めていって、マイクとファーガルがベースとドラムのパートを作って、僕がそれに合わせて弾いていくのはいつも通りだったけど、今回はドロレスのヴォーカルがすでにできていたから、僕達がヴォーカルのフィーリングに合わせて演奏していく感じだった。つまり、ドロレスがヘヴィでハードに歌い出したら僕達もそれに合わせていって、ヴォーカルが遠慮がちでソフトになったら僕達もそうするっていう。ヴォーカルはもう手元にあって、それはそのままで変えることはしないわけだから、僕達の演奏に関してはヴォーカルにリードされる形をとったんだ。でもそれはまだ去年の4月頃のことで、1月にドロレスが亡くなったばかりで、生々しい悲しい感情がそこにあった。たとえば、ヘッドフォンをしてドロレスのヴォーカルが直接聞こえてくるときに、奇妙な感じがしたというか、いろんなことが思い出されてきて、特に最初の数時間はそうだった。そのうち何日もやっていくうちに音楽に集中できるようになって、曲を仕上げたり、自分のパートをちゃんと弾いたり、アイデアを出そうとしたりすることに集中していった。忘れてしまいがちだけど、ドロレスがいたら、自分のやることにフォーカスできていたはずだからね。振り返ってみると、はじめの頃は本当につらかったと思う。

── 全ての楽曲に思い入れがあると思いますが、あなたが特に思い入れがあるとか、気に入っている曲を、その理由と合わせて教えてください。

ノエル:僕が気に入ってるのは、シングルの「オール・オーヴァー・ナウ」で、すごくこう、クラシックなクランベリーズの曲だと思うから。この曲はザ・キュアーを意識して作った曲なんだ。僕達はキッズの頃からザ・キュアーの大ファンだったけど、僕があんな曲を書いたのは初めてだった。で、この曲をドロレスに送ったら返事が来て、すごく気に入ってくれて、これは上手くいきそうだってことで仕上げた曲だった。あと、「ロスト」もそうだ。これもすごくエモーショナルで、彼女のヴォーカルははじめ怯えているようにも聞こえるけど、そこからどんどん強くなっていって、最後には穏やかさにたどり着くっていう、さまざまな感情が込められた曲だと思う。それと、最後の曲の「イン・ジ・エンド」もすごくきれいな曲だと思うし、特に歌詞が何よりそうだと思う。


── 1曲1曲、繊細に作り上げた楽曲、そしてそれを奏でているバンドの演奏も大きな聴きどころだと思います。

ノエル:ありがとう。

── バンドの演奏については、今回、特にどんなところに注意して聴いてもらいたいですか?

ノエル:このアルバムは、全体を通してひとつの作品として聴いてもらいたいんだ。最近は曲単位で、1曲聴いたらもう別のアルバムとかそういう聴き方が普通になってるけど、今作は最初から最後まで一度に聴くと最高なアルバムだと思う。最近はそういうのがちょっと失われてるところがある気がするけど、今作はひとつの作品として聴くと、アルバムの全体像がわかってもらえると思う。そして聴く人に感じてほしいのは、これは悲しいアルバムじゃないってこと。そう思って聴く人も多いだろうけど、今作もこれまでと変わらないクランベリーズのアルバムとして書かれたもので、僕達の人生の物語を反映した曲の集まりなんだってことを覚えておいてほしい。実際シングルを聴いて、ビッグなロック・ソングだから驚いた人が多かったんだ。たぶん、何だろう、すごく悲しくて暗い感じの曲を予想してたんだと思う。でも今作にはいろんな雰囲気の曲があるし、ダイナミックなアップダウンがある。そういうところも分かってもらえたら嬉しいよ。

── 日本のファンにメッセージをお願いします。

ノエル:何から始めたらいいかな、僕達はとにかく、まずこんなに長い間僕達の音楽を聴いてきてくれている人達がいることを嬉しく思ってる。ライヴをやると見慣れた顔があったりして、そんなファンがいてくれることに心から感謝してるんだ。それは去年ドロレスが亡くなったときに強く感じたことでもあって、本当に大勢の人がお悔やみのメッセージを送ってくれたりして、すごく感動したんだ。自分達の音楽がこんなに多くの人達の人生に触れていたなんて気付いてなかったから。だからファンにはお礼を言いたい。そして僕達が願うのは、最後のアルバムを楽しんで聴いてもらうこと。これはお別れでもあるけど、このバンドを祝福するものでもあるからね。

── 最後に、あなたたち3人は、どんなふうに音楽活動を続けていくつもりですか? もし今後のビジョンが決まっていたら教えてください。

ノエル:まだよく分からないというか、ここ1年くらいはこのアルバムを作るのにすごく集中してきたから、これからどうするかについてはまだきちんと考えられていないんだ。あと1カ月くらいでアルバムがリリースされるから、終わりが近付いている実感が湧いてきていて、これからもっと考えられるようになるんだと思う。3人とも、何らかの形で音楽を続けていきたい気持ちはあるんだ。それが何かって言うのは難しいけど、僕は曲作りをやっていくことについてよく考えてる。それがこれまでドロレスと一緒にやってきたことだから、僕の得意なことで、もっとやっていきたいことなんだと思う。他の人達と一緒に曲作りをしていくのが。他のバンドに加入することは、今の段階ではあまり興味がないんだ。未来に何が起こるか、先のことは分からないものだよね。

インタビュー:山口智男
通訳:網田有紀子

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■アルバム『In The End / イン・ジ・エンド』

2019年4月26日発売
¥2,200+税/WPCR-18196

M1. All Over Now / オール・オーヴァー・ナウ
M2. Lost / ロスト
M3. Wake Me When It's Over / ウェイク・ミー・ホエン・イッツ・オーヴァー
M4. A Place I Know / ア・プレイス・アイ・ノウ
M5. Catch Me If You Can / キャッチ―・ミー・イフ・ユー・キャン
M6. Got It / ガット・イット
M7. Illusion / イルージョン
M8. Crazy Heart / クレイジー・ハート
M9. Summer Song / サマー・ソング
M10. The Pressure / ザ・プレッシャー
M11. In The End / イン・ジ・エンド

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