【対談】人間椅子・鈴木研一×BARKS編集長、ロック好きによるロック談義

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──ところでKISSのあと、何を聴いたんですか?

鈴木研一:高校に入って、貸しレコード屋でブラック・サバス『Vol.4』を聴いたら良かった。そのあと、レコード屋で「なんかすごいジャケットのアルバムがある」ってんで「これは買うべきだろう」と思って買ったのがオジー・オズボーン『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』で、ライナー読んだら、前に聴いたブラック・サバスっていうバンドのボーカルだったっていうことが判明して、自分にとってカルチャーショックくらい感動だったんですよね。高校生のときの思い出のアルバムです。

──いいアルバムと出会ってますね。

鈴木研一:そうなんですよ。「この曲」っていうよりも「この方向性」なんですよね。とにかく変な格好をしてライブをやりたかったんです。「この人、俺のやりたいことやってる」って思って「俺はこの路線でいく」って思ったアルバムですよね。高校時代のキーバンドは、ジューダス、スコーピオンズ、オジー・オズボーン、UFO…このあたり。

──ジューダス・プリーストは『ブリティッシュ・スティール』を持ってきました。

鈴木研一:このアルバムできましたか。

──こんなのも持ってきちゃったけど。『Point Of Entry』です。


鈴木研一:これ、いいっすよ。ほんとはベストワンに挙げたいぐらい。BARKSの連載の懺悔の回(https://www.barks.jp/news/?id=1000167340)、あれもジューダスを聴きすぎてああいう現象が起きるんですよ。「ブレイキング・ザ・ロウ」みたいに誰でも知ってるようなリフだったら「これジューダスと同じだ」と思うけど、あの曲(「セインツ・イン・ヘル」)はあまりにも地味すぎて自分で考えたと思っちゃったんですよね。すごい好きで聴きすぎてこういうことが起きんだなあ。これは高校時代に買ったんですか?

──これは大学生の頃かな。

鈴木研一:僕が大学の時は、こんなのをジャケ買いしていました。


──このジャケはロジャー・ディーンですね。

鈴木研一:すごい綺麗ですよね。これ見て感動して、裏ジャケの解説で「バッジーはハードだ。けれどもそれ以上にヘビーである。そう、ちょうどブラック・サバスがそうであるように」って大貫憲章さんの言葉を読んで、これはいいアルバムに違いないと思って買ったんです。

──バッジーをジャケ買いするって、本当にレアケースだと思います(笑)。

鈴木研一:これで「ブレッドファン」という曲に出会って、今の「針の山」があるんですけどね。あそこでジャケ買いしてなかったら「針の山」は無かったんですよ。

──人間椅子に直接影響を与えたアルバムのひとつでもあるんですね。

鈴木研一:そうですね。ブラック・サバスもそうだけど、これはいけると思って、すごい和嶋くんに推してた記憶がある(笑)。

──もしサバスとバッジーの存在がなかったら、和嶋さんはどこにいっていたんだろう。

鈴木研一:ブルースじゃないですか?ロビン・トロワーとか大好きで、ロリー・ギャラガーが好きで、あとビートルズが大好きで、でもクリムゾンは好きだった。あとツェッペリン。どっちにしろブルース主体のプログレちっくな感じかなあ。

──バッジーのあとは?

鈴木研一:バンド始めてから、カクタスとホークウインドとか好きになった。ホークウインドと出会ってから、人間椅子の曲のなかに宇宙シリーズを採り入れたんですよ。今回のアルバムも「宇宙のディスクロージャー」って曲がありますけど、宇宙シリーズを続けるようになったキッカケがホークウインドなんですよね。ベースはレミーっすよ。


──ベースが目立つ気がする。

鈴木研一:レミーが加入している3枚は、なんかベースが大きいっすね。

──このリバーブのかかり具合が、当時な感じですね。

鈴木研一:そうそう。ポニーキャニオンから出た『無限の住人』ってアルバムから宇宙シリーズを始めて、その次の『頽廃芸術展』というアルバムでは和嶋くんがミキシングをしてるんですけど、自分はホークウインドにずっぽりハマってたから「もっとエコー深く、もっとエコー深く」ってすごい深くかけちゃって。「かけすぎだよ」「いや、これでいいんだ。これがロックだ」って言って、そのまま深いまま出しちゃったんだけど(笑)。

──いいですねえ。そういう影響が作品に直結することって素敵だと思います。

鈴木研一:編集長は他には何を持ってきたんですか?

──ピンク・フロイドとかガールとか…

鈴木研一:あ、『シアー・グリード』。


──「ハリウッド・ティーズ」、めっちゃ流行っていましたよね。フィル・コリン。

鈴木研一:ガール、めちゃくちゃ女の人に人気あったんですよね。そしてその対抗馬がワイルド・ホーシズで、ガールとワイルド・ホーシズが『ミュージック・ライフ』を席巻してたんですよ。ワイルド・ホーシズって、ブライアン・ロバートソンがいるんじゃなかったでしたっけ。のちにこういうバンドの人がいろんなバンドに分散していくんですよ。それが広大なバンドツリーになっていくんですよね。ベースのジミー・ベインは、レインボーからワイルド・ホーシズを経て、のちにディオに入るんですよ。ブライアン・ロバートソンがシン・リジィに入って…こんな話してもしょうがないっすよね。すいません(笑)。

──レインボーは『バビロンの城門』を持ってきました。

鈴木研一:レコード時代、ハードロックの代表格ですよね。なんかディープ・パープルより聴きやすかった。

──ロニー・ジェイムズ・ディオの歌に惚れちゃって、「今度生まれ変わったらロニーになる」と思ったな。

鈴木研一:歌い上げるビブラート唱法の方が好きなんですね。じゃあオジーとかはダメですよね?

──いやいや、オジーは孤高ですよ。

鈴木研一:ハードロック好きなんですね。改めて言うのもなんですけど、編集長というお仕事をしてるから、音楽全般に目が向いてるのかと思ったら、結構ハードロックで。

──1970〜1980年代で育っていますので、ハードロックとプログレですね。鈴木さんはストーンズのアルバムも持ってきていますね。

鈴木研一:これは最近、50歳代になってやっとストーンズの良さがわかったっていうことで持ってきたんです。この『レット・イット・ブリード』のアルバムの「レット・イット・ブリード」っていう曲が50歳にしてやっと良さがわかったんですよ。ずっと、なんかつまらない曲だなって思ってたの。でも、歳をとるとわかってくるってあるじゃないですか。

──はい。

鈴木研一:ストーンズって有名な大ヒット曲はいいなあって思ってたけど、曲によってはいなたくて、どこがいいんだかわかんなかったっていうのがあってね。

──どんな感じに変わってきたんですか?


鈴木研一:なんだろうな。なんかハードロックで疲れた心を癒やしてくれるってところですかね。ツアーでずっとハードロックをやっているじゃないですか。移動のときの車でこういうのがかかると、すごい心に沁みるんですよね。ストーンズって車で聴くのがいいなって思った。このレコードを買ったのは二十歳より前の頃で、ヒット曲以外は全然良くなかったけど、今は心に沁みるんですよ。今にしてやっとこの良さがわかるようになった。ついに自分も歳とったな。

──僕も同じような体質なので、ハードロック系を聴いてた人が30年かかってやっとストーンズの良さに気付くのは分かる気がします。でも逆ってあるのかな? ストーンズフリークが、30年後越しでスコーピオンズを好きになってくれることって…。

鈴木研一:ないと思います。

──ははは(笑)。そろそろ時間ですね。とりとめのない話になりましたが、ありがとうございました。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也



New Album『新青年』


2019年6月5日(水)発売
■初回盤(CD+DVD)¥3,241(税別) TKCA-74791
■通常盤(CD)¥2,685(税別)TKCA-74792

[CD]
M1.新青年まえがき(作詞・作曲/和嶋慎治)
M2.鏡地獄(作詞・作曲/和嶋慎治)
M3.瀆神(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M4.屋根裏の散歩者(作詞・作曲/和嶋慎治)
M5.巌窟王(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M6.いろはにほへと(作詞・作曲/和嶋慎治)
M7.宇宙のディスクロージャー(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M8.あなたの知らない世界(作詞・作曲/和嶋慎治)
M9.地獄小僧(作詞/和嶋慎治 作曲/ナカジマノブ)
M10.地獄の申し子(作詞・作曲/鈴木研一)
M11.月のアペニン山(作詞・作曲/和嶋慎治)
M12.暗夜行路(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M13.無情のスキャット(作詞・作曲/和嶋慎治)

[DVD]
「新青年」への軌跡

<三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアー>

2019年
6月26日(水)千葉・千葉LOOK
6月28日(金)兵庫・Chicken George
7月1日(月)福岡・DRUM Be-1
7月3日(水)京都・KYOTO MUSE 
7月5日(金)愛知・E.L.L.
7月7日(日)香川・高松オリーブホール
7月11日(木)山形・ミュージック昭和セッション
7月13日(土)青森・Quater
7月15日(月)宮城・仙台CLUB JUNK BOX
7月19日(金)北海道・cube garden
7月23日(火)大阪・umeda TRAD
7月26日(金)東京・豊洲PIT

<インストアイベント>

2019年
6月5日(水)東京・ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
6月9日(日)東京・タワーレコード渋谷店 B1F「CUTUP STUDIO」
6月13日(木)大阪・タワーレコード難波店
6月14日(金)愛知・タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
6月30日(日)福岡・タワーレコード福岡パルコ店
7月20日(土)北海道・タワーレコード札幌ピヴォ店

『椅子の中から 人間椅子30周年記念完全読本』


2019年6月26日(水)発売
A5判/240ページ/本体価格2,000円+税

■デビューから現在まで、秘蔵写真満載の人間椅子写真館
■全アルバム解説10時間インタビュー
■和嶋慎治、味噌作りに挑戦
「味噌は分別ある大人でないと作れない」
■鈴木研一、暴れん坊将軍に変身
「自分の顔は悪代官が似合ってるんじゃないかな」
■ナカジマノブ、東京03・角田晃弘と対談
「3人で1つになった時は“ゾク”っときます」
■最新作『新青年』ロング・インタビュー
■初エピソード満載、今こそ、お互いと向き合ったメンバー同士インタビュー
■初めて作ったバンド・ロゴ、手書きのフライヤー、Tシャツ、ファンクラブ会報──30年の歴史を総まとめにした人間椅子博物館
■メンバー自ら綴った「マイ・ヒーロー」
■みうらじゅん/『イカ天』プロデューサー/マネージャー等、関係者が明かしたバンドの素顔

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