【連載レポート】NAOKI SERIZAWAと行く、世界を巡るDJ奮闘記|ミラノ・デザインウィーク編

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毎年4月にイタリア・ミラノで6日間に渡り開催される世界最大規模のデザインの祭典<ミラノ・デザインウィーク(ミラノ・サローネ)>。この時期は、ミラノの街のあちこちでインテリアやオブジェなどのインスタレーションが展示され、市内のいたるところに“デザイン”が溢れている。それらは、インテリア・メーカーのみならずルイ・ヴィトンやエルメスといったハイブランドから、LEXUSやSONY、ヤマハといった多種多様の企業が参加し、実験性に満ち溢れたデザインをエキシビジョンホールやギャラリー、時にはストリートにも展示している。



例えば、有名な凱旋門の前に高さ4メートル以上あるペガサスがシャンデリアを咥えてるインテリアが展示されていたり、川沿いを歩いてると、突然、川の中にLEDパネルを直立させた水面の反射を利用したデジタル・インスタレーションに遭遇したりと、街を歩いているだけでワクワクするものがたくさん。

その中でもユニークだったのが、ルイ・ヴィトンの<オブジェ・ノマド コレクション>。17世紀の貴族であるセルベッローニ家の住居として建設された宮殿「パラッツォ・セルベローニ」を舞台に、世界中の著名デザイナーが「旅」にインスパイアされたオブジェをデザインしたコレクションが展示してあり、伝統と未来が共存しているようなアンビバレンスな感覚を強く抱いたのを覚えてる。



このデザインウィーク<SALONE DEL MOBILE.MILANO 2019>を目掛けて、今年は181カ国から38万人以上が来場した。そんな世界中からミラノに人が集まるタイミングで、たくさんのパーティが開催される。クラブはもちろん、ギャラリー、公園、さらに教会をリノベーションしたような一風変わったロケーションまで。僕は、この絶好のタイミングで複数のブッキングのオファーをいただき6公演のイタリア・ツアーを巡りました。今回はそのレポートの第一弾をお届けします。

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僕が出演した<Giardino DEI Visionari>は、音楽プロデューサーのJamyとドラマーのLucaによる兄弟ユニット“ETNA”と、DADAMAXのデザイナー“Dafne”を中心に、ミラノで活躍するアーティストやイラストレーター、ファッションデザイナーなどのクリエイターが中心になってオーガナイズしているパーティだ。だからこそ、音楽のみではなく、アートワークやデコレーションに至るまで徹底しており、その時、そのパーティでしか生まれない“一期一会の体験価値”を大切にしているように思えた。実際にそのパーティは、アフリカン・スタイルのシャーマニックな雰囲気をアートワークやデコレーションに落とし込み、一度会場に踏み入れると、ジャングルの奥地の未だ見ぬ部族たちの儀式に迷い込んだかのような土着的でミステリアスな雰囲気を纏っている。



その空間で鳴らされる音楽も徹底されており、オープンからのウォームアップの時間帯は、BPM100前後のNicola CruzやVoodoohopに代表されるトライバルで呪術的なスロウハウスで雰囲気を作りながらフロアを温める。今回僕はクロージングアクトを担当したのだが、交代時はフロアで踊っている人は5割くらいだった。最初の3曲が勝負だと思いギリギリまで複数のパターンをイメージした。それで直前のフロアの状況でどの道を選ぶか考えていたのだが、それが見事にハマり15分経つころにはフロアはパンパンになっていった。2時間に渡るDJセット中フロアの熱気は上がるばかりで、最後の30分は何をかけても爆発するDJとダンスフロアの信頼関係ができていた。最後の曲をかけ終え、アンコールにも答え延長戦が終了。そして照明が上がるその時まで超満員のお客さんが残っていて、拍手喝采で僕を迎えてくれた。本当に嬉しかった。

この時、確信に変わった。


誰も自分のことを知らなくても、世界中のどの街でも、自分が積み上げてきたものを表現できれば、自分さえ出し切れれば、ダンスフロアから愛され熱狂的な空間が創れる。そしてフロアで踊り楽しむみんなと一緒に最高にハッピーな時間を共有できると。確信とは大げさだけど、自分のDJ人生にほんの少しだけ自信を与えてくれた。僕は、最高の形でイタリア・ツアーの幕を切ることに成功した。そしてこの後にもっとドラマティックな結末が待っているとはこの時は気づいていなかった……。

続く。

文:NAOKI SERIZAWA

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