【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.62「地獄」

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新譜の発売日が近づき、レコード会社が用意してくれた取材や撮影の機会が増えたので、会社のある五反田によく足を運びます。近所に「地獄の担々麺」と大きく看板を掲げたお店があり、いつも列ができているので中を覗くと、眉間にしわを寄せながら黙々と麺をすするサラリーマンの方々の姿が印象的です。そんなにつらいなら食べなきゃいいのにと思いますが、美味しさと一緒に、辛さを越えた先にある達成感までも味わっているのでしょうか。奇しくも「からい」と「つらい」は同じ漢字です。お店のネーミングも効果的です。「激辛担々麺」より「地獄の担々麺」のほうが、食べてみようかという気にさせられます。そうです。人は地獄が好きなのです。

そこでまた新たな商売を思いつきました。以前、山を買ってお化け屋敷を建てる計画を披露しましたが、その隣に「地獄湯」という名の健康ランドを造ることにしました。地獄がテーマの一大アミューズメント温泉施設です。入口を開けるとまずそこに広がるのは「賽の河原」です。「六文銭」ならぬ「600円」を「奪衣婆」に払い、「三途の川」を模した「足湯」を越えて地獄の門をくぐると、そこにはほの暗い洞窟が延々と続いています。天井からだらだらとお湯が降り注ぎ、かけ湯の役割を果たしています。両側には鬼に苛められる機械仕掛けの亡者の人形たちが苦しんでおり、呻き声が無限に響き渡ります。先に進むと鉄分を多く含んだ「血の池」の湯に癒されます。もちろんお湯の向こうでは亡者の人形がのたうち回っています。次の湯船に移るには「針の山」ならぬ尖った石でできた足つぼマッサージの通路を通らなければなりません。亡者の呻きに合わせて自分も叫んでしまうこと請け合いです。その先に待つのは「糞尿地獄」、激しい臭いが鼻を突く硫黄泉です。壁や天井はもぞもぞ蠢く機械仕掛けの芋虫で覆い尽くされ、がさごそがさごそリアルな音が耳を苛みます。時々天井からゴムの芋虫が落ちて来てお湯一面に浮いています。この芋虫は持ち帰り自由ですのでお土産にどうぞ。

その先には「灼熱地獄」があります。お湯は熱めで、湯船は巨大な鍋になっており、ジャグジーの泡がぐつぐつ煮立ったようにも見えます。壁には燃え盛る炎の映像がごうごうという音とともに流れ、磔にされ焼けただれた亡者の人形が断末魔の叫びを洩らしています。風呂からあがってやっと地獄から解放されると思って出口を出ると、そこにあるのは拷問部屋です。日本だけに留まらず、世界各国の拷問道具に人形たちが苦しめられています。彼らの隣にあるマッサージチェアに座ってみましょう。少し強めの揉み加減はまるで自分が責め立てられているようです。お腹が空いたら、まな板の上で鬼に刻まれる亡者の人形と一緒に食事してもらいます。刺身やしゃぶしゃぶがおすすめです。さあ、この地獄から抜け出すには「蜘蛛の糸」が必要です。ぶら下がった綱をしっかり掴み、クレーンに引っ張ってもらって地上に戻りましょう。この壮大な商売の計画はコンセプトがはっきりしているのでアイディアが正に湯水のように湧いてきます。


ロックのアルバムにもコンセプトアルバムが数多くあります。代表的なところではBEATLESの「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」やTHE WHOの「Tommy」などが有名ですが、他にもよくプログレバンドが手がけているようです。例えば、PINK FLOYDなら「The Dark Side Of The Moon(狂気)」、EMERSON,LAKE&PALMERなら「Tarkus」、YESなら「Tales From Topographic Oceans(海洋地形学の物語)」といった具合です。そして今回紹介するGENESISなら「The Lamb Lies Down On Broadway(眩惑のブロードウェイ)」です。GENESISの後期がポップ過ぎて苦手な人も、前期が叙情的過ぎて苦手な人も、その両方を兼ね備えたこのアルバムならば満足できるはずです。コンセプトはネットで調べてもらうとして、とにかく曲が素晴らしいのです。二枚組ですが、あっという間に聴き通すことでしょう。コンセプトが優れた曲を生み出した成功例です。ちなみにKISSは「The Elder」というアルバムで・・・。

人間椅子の新譜「新青年」には「地獄」が付く曲が多いです。早く皆さんに聴いて欲しいです。

今回のマイベストテープ~コンセプトアルバムの中の好きな曲

A1.In The Cage / GENESIS(「The Lamb Lies Down On Broadway 眩惑のブロードウェイ」より)
A2.Nights In White Satin / THE MOODY BLUES(「Days Of Future Passed」より)
A3.Starman / DAVID BOWIE(「Ziggy Stardust And The Spiders From Mars」より)
A4."2112" / RUSH(「2112」より)
A5.A Day In The Life / BEATLES(「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」より)
B1.Love Reign O'er Me / THE WHO(「Quadrophenia 四重人格」より)
B2.The Oath / KISS(「The Elder」より)
B3.Twilight / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA(「Time」より)
B4.Brain Damage~Eclipse / PINK FLOYD(「The Dark Side Of The Moon 狂気」より)Star
B5.2000 Light Years From Home / THE ROLLING STONES(「Their Satanic Majesties Request」より)


New Album『新青年』



2019年6月5日(水)発売
■初回盤(CD+DVD)
¥3,241(税別) TKCA-74791
■通常盤(CD)
¥2,685(税別)TKCA-74792
※ジャケットは初回・通常共通

[CD]
M1.新青年まえがき(作詞・作曲/和嶋慎治)
M2.鏡地獄(作詞・作曲/和嶋慎治)
M3.瀆神(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M4.屋根裏の散歩者(作詞・作曲/和嶋慎治)
M5.巌窟王(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M6.いろはにほへと(作詞・作曲/和嶋慎治)
M7.宇宙のディスクロージャー(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M8.あなたの知らない世界(作詞・作曲/和嶋慎治)
M9.地獄小僧(作詞/和嶋慎治 作曲/ナカジマノブ)
M10.地獄の申し子(作詞・作曲/鈴木研一)
M11.月のアペニン山(作詞・作曲/和嶋慎治)
M12.暗夜行路(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M13.無情のスキャット(作詞・作曲/和嶋慎治)

[DVD]
「新青年」への軌跡

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