【連載】Vol.070「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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熟練バンドの真骨頂を見た!ダニー・コーチマーandイミディエイト・ファミリーLIVE!!



昨年に引き続きダニー・コーチマーをリーダーとするイミディエイト・ファミリーのライヴを5月17日Billboard Live TOKYO で大いに楽しんだ(ファースト・ステージ)。僕は昨年ダニーへインタビューしたが、彼の半生こそウエスト・コースト・サウンド史の頂点を支えた一人だったと強く感じていた。今回はもうだいぶ前になるけどキース・リチャーズに紹介して貰ったワディ・ワクテルへ初インタビューを行ったが、彼の半生もダニー同様にウエスト・コースト・サウンドの歴史そのものであり、奇遇にも二人とも出身がニューヨークだと分かりアメリカのカルチャーの懐の深さを感じた。尚、ワディへのインタビューは次号掲載予定。

定刻18時半を数分回った頃ダニーとイミディエイト・ファミリーの登場。上手からスティーヴ・ポステル(gtr, vo),ラス・カンケル(ds)、ダニー・コーチマー(vo, gtr)、リーランド・スクラー(bs)、そしてワディ・ワクテル(gtr, vo)が揃い、場内はソワソワしてきた。昨年に続きお馴染みの5人なのだが、どんな演奏を聴かせてくれるか!観客は期待がはち切れんばかりだ(笑)。

ワディのギターの合図で故ウォーレン・ジヴォンの「Lawyers, Guns & Money」でステージは始まった。



WZ1978年作品。親しみのあるリフと今回Ding Wallのベースを弾くリーとラスのリズム隊が重量感あるビートを刻む。後半から大きくフィーチャーされるワディの切れあるギターは一級品だ!勿論ヴォーカルも彼だ。コーラスをダニー&スティーヴが担当。昨年の日本公演でも取り上げアルバム『LIVE IN JAPAN At Billboard Live TOKYO June 18, 2018』にも収録。ハンク・ウィリアムス・ジュニアのヴァージョンも僕は好きだ…。



暫し静寂の中ジェームス・テイラーで知られた「Honey Don’t Leave L.A」が続いた。昨年のライヴではオープニングを飾った曲。元々はダニーが70年代半ばに組んだアティテューズで発表したが、これを彼の幼馴染ジェームスがアルバム『JT』でカバーして有名になった。昨年リリースのDK and IFのアルバム・タイトル・チューン。


▲CD『Honey Don’t Leave L.A.』



ここではダニーのヴォーカルとギター・ソロ、そしてワディのギター・ソロが楽しめる。今宵のステージは、曲が終わった後ギターの音が小さかったことに腹を立てたワディがアンプを倒すパーフォーマンス!会場から「Waddy!」とおっさん声が(笑)すかさず「スイマセン」とワディ、和んだ一瞬があった(笑)。70年代のロック・ステージではこんな光景をよく見たもんだ(笑)。



続いてスティーヴのヴォーカル「3:45 Coming Through」、とにかくスティーヴは声がいい!声の表現力が素晴らしいのだ。彼の11年前リリースのアルバム『Time Still Knocking』からのナンバー。ここからワディのギターがやや大きめにフィーチャーされた。ワディ&ダニーがコーラス。この曲は昨年のライヴでも披露され『LIJ』にも収録された。



ここでリーによるメンバー紹介。スティーヴ→ラス→ワディ→ダニー、そしダニーのMCでリーを紹介。

そして「High Maintenance Girlfriend」。昨年のライヴにも登場し『LIJ』収録のこのナンバーは、ワディがリリースしたばかりのアルバム『Unfinished Business』オープニング・ソングでもある。



2012年作品。ワディの刻むリフにラスとリーのリズム隊が絡んでいく彼らお得意のサウンド!軽快なこのロックンロールはワディ参加のKRソロ・アルバムさえも彷彿とさせてしまう。勿論ヴォーカルはワディ。ヴォーカル・ブレイク・パートでのリー&ラスの派手さは無いが超かっこいパーフォーマンスにも感激。ワディ、ダニー、スティーヴのそれぞれのギター・ソロが魅せどころで場内に大きくグルーヴがうねった。それに会場も大きな手拍子だ。





“ドウモ アリガトウ。次はジェームス・テイラーの曲だけど彼との違いをチェック・イット・アウト”というダニーのMCから5曲目「Machine Gun Kelly」へと続く。ダニー在籍のジョー・ママが70年に発表。翌年にジェームスが『Mud Slide Slim And The Blue Horizon』でカバーした。禁酒法時代のギャング、マシンガン・ケリーを歌っている。ダニーのヴォーカルがオーディエンスを魅きつける。そしてワディのスライド・ギターにも見事だ。ラスの重いリズムにリーの唸りを上げるベース、そこへ切れ込むワディのギター、大きく盛り上がる素晴らしいステージングに爺は拍手。アルバム『HDLLA』『LIJ』収録。



“続いてはジャクソン・ブラウンと共作した”というダニーのMCで「Somebody’s Baby」。ヴォーカルはスティーヴ。JBのように力強く歌うのでなく優しく訴えるように歌う。か弱い男の気持ちで歌っている感じだ(笑)。場内を見ると若い人の殆どがスティーヴの声に合わせ口ずさんでいる。そしてスティーヴ/ダニー/ワディのコーラス・パートにも注目してしまった。基本はダニーお得意のリフが曲の柱となっている。この曲はJBで82年にBillboard誌HOT100で7位を記録した映画「初体験/リッジモント・ハイ」主題歌。『HDLLA』『LIJ』収録。



ワディのMC で“次は新曲です”、「Fair Warning」。ここ最近イミディエイト・ファミリーのステージでは頻繁に演奏している。終演後にバックステージでワディに確認したら作詞作曲も彼で来年リリースのDK and IF新作に登場予定とか。ミディアム・テンポのタイトなロックンロール!ラスの刻むビートが70年代ウエスト・コースト・サウンドを感じさせる!ヴォーカルはワディ。





8曲目は「Dirty Laundry」。ダニーとドン・ヘンリーの共作。ドンのヒット・チューン、82年Billboard誌HOT100で3位を記録した。昨年のライヴでも人気を博したダニーがヴォーカルのナンバー。勿論『LIJ』収録。印象深いリフがこれでもかと繰り返し続くミディアム・テンポのロック。ダニーの曲作りのセンスがここでも光る。『HDLLA』にも収録。



続いてのナンバーもダニー&ドンの共作ロッカ・バラード「New York Minute」。『HDLLA』『LIJ』収録。タイトルはせわしないニューヨークの賑わい(当時よくそれをニューヨーク・タイムと言っていたのを思い出す)と対照的に暗い影の部分を歌い上げている。ヴォーカルはスティーヴ。90年にドンのこの楽曲シングルはBillboard誌HOT100で48位だったがアダルト・コンテンポラリー・チャートで人気を呼んだ。

今度はワディがMC、“次は故ウォーレン・ジヴォンの曲です。僕もレコーディングに参加してとても良く仕上がったんです”。ウォーレンが78年に発表した素晴らしいポップ・チューン「Johnny Strikes Up The Band」だ。ステージ・センターでワディが活き活きとしたフレーズを弾く!ミディアム・テンポのパワフルな名作。①同様、WZの素晴らしきヒット・アルバム『Excitable Boy』(78年)収録。



そして昨年アンコールで大いに盛り上がった「Cruel Twist」がこの日は11曲目で登場。思わず踊りだしたくなるご機嫌なナンバー!ヴォーカルはダニー。彼が20年くらい前に作り、昨年リリースのアルバム『HDLLA』で初登場した。アップ・テンポのこの曲の見せ所は強いビートに任せて3人のギタリストが順にソロを弾きまくるところだ、ダニーからスティーヴ、そしてワディと…堪らない!『LIJ』にも収録。



そしてスティーヴのMC“来年ニュー・アルバムを引っ提げて再びここに戻って来る!”このナンバーはそのニュー・アルバムに収録されるということを終演後バックステージでダニーに教えてもらった。タイトルは「Time To Come Clean」。ダニー/ワディ/スティーヴの共作。ヴォーカルはスティーヴ。ワディも少し担当。そのワディのギターがエクスプロージョン。その裏でダニーがリフで曲を彩る(一瞬ダニーがKRのあのポーズ、見逃さなかったヨ)。また、間奏でのワディ&ダニーのGTRバトルも盛り上がりそこにスティーヴもジョイン。その後ろでしっかりオーディアンスを乗せまくっているのがラス&リーなのだ。

そしてラスト・ナンバーはお待ちかねの曲。ワディがMCで狼になって吠えまくってくれと観客にリクエスト。ウォーレン・ジヴォンの最大ヒット曲(78年Billboard誌HOT100で21位)、3コードが堪らない「Werewolves Of London/ロンドンの狼男」だ。ヴォーカルはワディ。あの循環コードが自然に身体が受け入れてリズムをとってしまって妙に心地よい!そこで皆一斉にアウ~♪ 何たる心地よさか(笑)。ここでもワディのスライド・ギターの素晴らしさにシビレル。エンディング近くで歌詞の“アイツの仕立屋(tailor)に会ってみたいもんだ”というところを【テイラー繋がり語呂アソビ/ダジャレ】で“ジェームス・テイラーにクビにされちゃうよ”と変えちゃって歌っていた。大笑!昨年のステージでも同様で『LIJ』でしっかりチェック・イット・アウトなのだ(CD歌詞カードにはそこのところは省かれている)。ジャクソン・ブラウン&ワディのプロデュースしたウォーレンのアルバム『Excitable Boy』収録、改めてこの作品集にダニー、ワディ、ラス、リーが参加していたことを思い出す…。





アンコールはドン・ヘンリー85年のヒット曲「All She Wants To Do Is Dance」。Billboard誌HOT100で9位を記録。ダニーの作品で、昨年のインタビューで確か当時発売されたばかりのYamaha DX-7で作曲したと語っていた。アルバム『HDLLA』『LIJ』収録。ダニーのヴォーカルによる実にタイトなナンバーで観客総立ち&手拍子、そしてミラー・ボールが場内をより盛り上げていく。っヴォーカルはダニー。スティーヴのギターもしっかりフィーチャーされた。この日の“Danny Kortchmar and Immediate Family”は、1970年代から90年代初頭のウエスト・コースト発のアメリカン・ロックを魅せつけたステージだった。その殆どがセルフカバー、実に聴き応えあるステージだったのだ。




▲終演後バックステージでダニーと1年ぶりの再会

*Pic by. Yuma Sakata(LIVEショット)
*ジャケット写真提供:VIVID SOUND CORPORATION

【ライヴinfo】

◇テリー・リード40年ぶりの来日!



1960年代中期から後半にかけて、テリー・リードの名前はローリング・ストーンズ・ファンの間では結構知られていた。つまりストーンズのツアーでサポーティング・アクトを務めていたからだ(ジェイウィーカーズとソロ)。確か日本盤レコードもリリースされていて、知り合ったばかりの当時東芝EMIのディレクターだった故・石坂敬一さんと「Empty Heart」とテリーの話しで盛り上がったことを思い出す。テリー・リードはわが国でも“レッド・ツェッペリンのリード・ヴォーカルを蹴った男”として知られ、また彼はディープ・パープルにも誘われたことがあるという。70年代に入ってからは僕が大好きなダウン・トゥ・アースなサウンドにも取り込みジェシィ・デイヴィスらと共にスワンプ・ロッカーとしても注目された。ローリグ・ココナツ・レビュー・ジャパン・コンサート1977で初来日。このコラムでもレビューした僕も日本発売でちょこっとお手伝いさせてもらった同名のCD14枚組で、そこにテリーの「All I have To Do Is dream」「Foggy Dew」の2曲が収録されている(実は90年に来日予定もあったが…)。そういえばテリーはミック・テイラーとも交流があったというという、いつだったかミックから聞いたことがある。1949年ハンディントン生まれ。10代半ばから本格的に音楽活動を始めている。まさに音楽史道をしっかりと闊歩しているミュージシャンの一人だ。その姿をBillboard Live OSAKA & TOKYOで披露。ギタリスト&ソングライターとしても実力者で、60年代末から70年にかけて多くのアーティストに注目作品を提供している。テリー・リード、楽しみなLIVE IN JAPANである。

*2019年6月27日 Billboard Live OSAKA
ファースト・ステージ 開場17:30  開演18:30
セカンド・ステージ  開場20:30  開演21:30
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11494&shop=2

*2019年6月29日 30日 Billboard Live TOKYO
ファースト・ステージ 開場15:30  開演16:30
セカンド・ステージ  開場18:30  開演19:30

http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11493&shop=1

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