【インタビュー】HYDE、『ANTI』を語る「まず抗うこと。そこから創造が生まれる」

■自分自身がカッコいいと思ってるカタチで
■世界のフェスに受け入れられたい

──フィーチャリング曲が2曲収録されています。リズムとメロディのバランスがめちゃくちゃかっこいい「SICK」でFrom Ashes to NewのMatt Bをフィーチャーしたのはどういう経緯だったんですか？

HYDE：「ZIPANG feat. YOSHIKI」の他にも、もう一人ぐらいフィーチャリングしたいなってことになって。From Ashes to Newはもともと好きだったんで、「やってくれないかなぁ」って言ったら、やってくれたという（笑）。昔ね、僕らのオープニングアクトでライヴに出てくれたことがあったんですよ。VAMPSのニューヨーク公演かな。その頃は、From Ashes to Newのことをそこまで知らなかったんだけど、その後、彼らの曲をあらためて聴いてみたらカッコいいなと思って、結構聴いてたんです。今回、ラップじゃないけどスピーチみたいなのが欲しかったから、「Matt B、やってくれへんかなぁ」って言ってたらマネージメントが連絡してくれて、実現したんです。



──もうひとつのフィーチャリング曲(「ZIPANG feat. YOSHIKI」)は、＜HALLOWEEN PARTY 2018＞のMCでYOSHIKIさんが「共作した」「ピアノを弾いた」とフライングでおっしゃってた待望の1曲（笑）。

HYDE：ははは！ 見事にステージ上で言っちゃってたね（笑）。

──改めてこの曲は制作の際、どんなテーマをお二人で共有されていたんでしょうか？

HYDE：結構お任せでしたね。だから、いろいろトライしてくれたみたいで、素晴らしいカタチになりました。僕としては、ライヴのセットリストの流れの中で、一回谷を作りたい時に、どうせ身体を動かさないならただのバラードでなく、日本の美しさや心地よさを表現した曲を世界に発信したいという発想から作りました。

──「ZIPANG」ミュージックビデオでのHYDEさんの神々しい姿も印象的でした。監督さんの映像アイディアですか？

HYDE：そうですね。実際やってみたら、ヘッドセットが圧迫感がすごくて頭が痛くて大変でしたけどね。ま、国宝だったり世界遺産を相手にするので、あれぐらいやらないとな、と。

──もはや人間を超えた美しさでしたから。

HYDE：ぜひやってみてください、大丈夫大丈夫。次の取材はあれで来てください。いつでも貸しますよ（笑）。

──何でですか（笑）。海外での活動においてはそういう日本的なものをアピールすることも武器になりますよね。

HYDE：まさにそう。武器になる。

──それでもHYDEさんは、日本的な部分を極端にアピールする”クールジャパン”なやり方ではなく、アメリカのバンドと同じ土俵で勝負するほうを選んできたわけで。

HYDE：その辺は微妙ですよね。日本的な部分をアピールしていくのであれば、例えばヴィジュアル系っていう方向性や、もちろんL'Arc-en-Cielのような方向性でやってもいいと思うんです。でも、それはカルトだと思うんですよね。特殊な人たちに受け入れられたというか。それでも広まればいいんですけど、それ以上の広がりがないかもしれない。たとえば、今僕が出ようとしているアメリカのフェスにヴィジュアル系は出にくいと思うんです。僕は、アメリカのフェスで盛り上がるバンドを目指してるんで、今さら僕が、いわゆるヴィジュアル系をやるっていうのも難しいと思うし（笑）。もちろんマリリン・マンソンみたいなスタイルも好きですけど、自分がやりたいことという意味では今は共感出来ないかもしれない。今、自分自身がカッコいいと思ってるカタチで受け入れられたい、そう思ってるのかもしれないですね。



──フェスで盛り上がると言えば、ヘヴィなサウンドとハネたリズムが融合した「OUT」をはじめとする楽曲は、これまで以上にリズムが強調されてますし、オーディエンスとの掛け合いが楽曲の一部となっている曲が多いのも、フェスでの盛り上がりを想定してのことですか？

HYDE：そう。そのために新しい曲を作ってきた感じですかね。その辺は意図的にやってます。オーディエンスの身体が動くかどうかが、勝敗のメーターだと思っているので。たとえば、“このフェスで盛り上げる”っていう具体像を描くと、自分の中で決まってくるジャンルがあるんですよね。それが今の自分の核になっています。

──性急な2ビートが印象的な「SICK」は確実にライヴで燃え上がるでしょうし、HYDEさんの楽曲にパンキッシュな2ビートというアプローチも驚きと新鮮さがありました。今回リズムという面ではかなりヴァリエーション豊かですよね。

HYDE：うんうん。さっき「「SICK」もある意味プロデューサー発信の曲」って言ったけど、実はこの曲って、作曲したプロデューサーが一度出してきた曲なんだけど、「やっぱり忙しくなっちゃったからなかったことにしてください。」って下げようとした曲なんですよ。「おいおい！」ですよね（笑）。だったら、こっちで最終的に作り上げるからデータを送ってほしいってデモの状態をもらって、日本で仕上げた曲なんです。最初にデモを聴いたときにリズムがすごくよくて、この曲は絶対アルバムに入れたいと思ったから。

──日本発信の曲にアメリカのプロデューサーのフィルターを掛けることもあれば、その逆も然りだったという。そんなHYDEさんの“今”が詰まった『ANTI』を引っ提げ、6月22日からは国内ツアー＜HYDE LIVE 2019＞が始まりますが、3月から4月にかけて行われたアジアツアー＜HYDE LIVE 2019 ASIA＞、そして5月に行われたアメリカツアー＜HYDE LIVE 2019 US＞を経て、どんな“盛り上がるツアー”になりそうですか？

HYDE：わかりやすく言うと、去年までの国内ツアーの流れを今回のアジアツアーとアメリカツアーでやったので、仕切り直して、次の日本のツアーでは新しい雰囲気のライヴにしたいなと思ってます。やってる曲はあんまり変わらないんですけど、演出とかが変わるかな。去年はみんな、音源(アルバム『ANTI』)を聴いてない状態で来てたけど、今回は曲を知った状態でツアーが始まるので、さらに盛り上がると思いますよ。

取材・文◎早川加奈子







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