【ライブレポート】ヴァージュ、古き良きV系の継承「ここは通過点でしかない」

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5月22日に1stフルアルバム『Gracia-ガラシャ-』をリリースし、6月8日から東名阪ワンマンツアーへと旅立ったヴァージュ。

◆ライブ写真(16枚)

今年1月に氷龍(G)と憂璃(B)が加入して新体制となった彼らにとって、今回の音源リリースとツアーが重要な意味を持っていたことは言うまでもない。ここで、よりパワーアップした姿を見せることで、いい波に乗って以降の活動に向かっていけるからだ。そんな中6月も後半に入り、6月21日にツアーファイナルを飾る公演がヴァージュ史上最大規模となるTSUTAYA O-WESTで行われた。



ライブは、ハードかつメロディアスな「Vanish」で幕を開け、ヘヴィな「-ガラシャ-」に移行する流れからスタート。青白い炎を思わせるミステリアスなオーラを発しながら、力強さと妖艶さを併せ持った歌声を聴かせる遼(Vo)。クールな表情で、テクニカル&エモーショナルなギターソロを奏でる紫月(G)。エレキギターとアコースティックギターを自在に操るスキルの高さと激しいステージングのマッチングが印象的な氷龍。膝の辺りにベースを構えて、重厚にうねるグルーブを紡いでいく憂璃。ビートチェンジや手数の多いフィルを多用した、緻密なドラミングを展開する或(Dr)。感情を駆り立てるアグレッシブなサウンドと激しくパフォームするメンバー達の姿にオーディエンスのボルテージも一気に高まり、ライブが始まると同時に場内は熱気に包まれた。


その後はメタリックなサウンドとキャッチーなサビパートを活かした「暁」やドラマチックに疾走する「影」、レトロ感が生み出す“尖り”をフィーチュアした「ベラドンナリリーにナイフを添えて」、ハイエナジーな「家族ごっこ」などを相次いでプレイ。MCどころか曲間を開けることもなくハードチューンを畳み掛けてくる構成に、圧倒されずにいられない。アグレッシブに突き進むライブでいながら常にサウンドがタイトなこともさすがの一言で、今回のツアーを通して彼らのアンサンブルにさらなる磨きがかかったことを感じさせた。


ライブ中盤では「行き場のない誰にも届かない言葉と共に沈んでいこう。真っ暗な真っ暗な深海へと……」という遼の語りからスローチューンの「深海」、「このまま僕はどこへ向かうのだろうか」と始まった「白昼夢」を続けて披露。情熱的に歌いあげる遼のボーカル、抑揚を効かせたエモーショナルなサウンドともに良質で、ヴァージュのバラードも聴き応えがあった。激しいライブの中でメンバー全員が“スッ”と気持ちを切り替えて、深みのある世界観を構築する辺りは実に見事。特に「白昼夢」は彼らの表現力/演奏力の高さが十分に発揮されて、ライブ前半のハイライトといえるシーンになっていた。いいバラードが書けて、それをいい形で聴かせることができるのは、ヴァージュの大きなアドバンテージといえる。


或のパワフルなドラムソロと楽器隊によるインストゥルメンタル・セッションを挟んで、「Angraecum」からライブは後半へ。「かくれんぼ」や「毒苺」「醜劣」といったハイボルテージなナンバーが相次いで演奏された。ハードモードに再びシフトして、フィジカルなパフォーマンスを展開しながら重厚かつスリリングなサウンドを叩きつけてくるメンバー達。攻撃的なヴァージュに応えてオーディエンスも怒涛のリアクションを見せ、場内は熱狂的な盛りあがりとなった。


バンドとオーディエンスが完全に一つになったことを感じさせる中、本編のラストソングとして「Le ciel」をプレイ。激しくいきあげた後にキャッチーなサビ・パートを配した「Le ciel」を持ってくる流れが功を奏して、客席から大合唱が沸き起こる。煌びやかな情景を場内に描き出し、心地好い余韻を残してメンバー達はステージから去っていった。

アンコールでは、遼がギターを弾きながら歌う中、蝶をかたどった無数の紙吹雪が舞い散る「紋白蝶」を皮切りに、セクシーなシャッフル・チューンの「fated」、スタイリッシュな「夜想」が演奏された。本編で見せたアグレッシブな姿とは異なる、エモーショナルかつしなやかなヴァージュも魅力的で、ここでも彼らの幅広さが光る。オーディエンスの反応も上々で、アンコールに入って水を挿されたような雰囲気は微塵もなく、場内は華やかな盛り上がりを見せた。


再度のアンコールを求めるファンの熱烈なコールに応えて、ヴァージュは再びステージに立った。ダブル・アンコールでは、遼の「本当にいろんな人の協力があって、ここに集まってくれたみんなのお蔭で、O-WESTに立っています。ありがとう。でも、このO-WESTは通過点でしかないと思っているから。もっと上を目指していきます。だから、着いてきてください」という言葉に続けて、アグレッシブな「醜劣」と「蓮華」「二枚舌」などをプレイ。ライブ終盤にきて、さらに加速する彼らの持久力は圧巻といえる。

さらに、「二枚舌」の中間の“煽りセクション”では、遼がステージからフロアに降りて客席をアジテートしまくるという熱いパフォーマンスを展開。場内は膨大なエネルギーが渦を巻き、ヴァージュとオーディエンスの双方が完全燃焼したことを感じさせて、ツアーファイナル公演は幕を降ろした。


勝負どころとなった今回のツアーで、良質なライブを披露してみせたヴァージュ。華麗なヴィジュアルとマニアックさとポピュラリティーを兼ね備えた音楽性、優れた演奏力、MCを一切入れずに世界観を見せつける硬派なライブのあり方など、“古き良きヴィジュアル系”を標ぼうしているバンドにふさわしい、王道的なヴィジュアル系の魅力を湛えた彼らは本当に魅力的だ。さらに、ただ単に往年のヴィジュアル系を模倣しているわけではなく、より洗練されたメロディーやモダンなハードネス、ビート/テンポチェンジを活かしたアレンジなど、コンテンポラリーな要素を採り入れていることも注目といえる。
伝統性と新世代感覚を絶妙にバランスさせて、魅力的な個性を生み出すことに成功しているのだ。


もうひとつ、今回のライブは、ヴァージュのファンの“熱さ”も印象的だった。ライブを通してヘッドバンギングや折り畳み、拳振り、合唱といったリアクションを見せ、曲間もメンバーを呼ぶ声や歓声が止むことはなく、聴くべき曲ではしっかり聴きの体制になるというファンの姿からは、ヴァージュに対する深い愛情や信頼感が伝わってきた。この辺りからはヴァージュがただ単にいいバンドというだけではなく、リスナーを強く魅了する“特別な何か”を備えていることがうかがえる。

若いバンドだけに未完成な部分があることは事実だが、彼らがブレることなくさらに進化していけば、TSUTAYA O-WESTの熱狂が各地に広がっていくに違いない…そんなことを感じさせる、インパクトの強いライブだった。

文◎村上孝之
写真◎尾藤能暢

セットリスト

1.Vanish
2.-ガラシャ-
3.暁
4.影
5.凶夢
6.ベランドナリリーにナイフを添えて
7.ワイセツCandy
8.家族ごっこ
9.琥珀
10.深海
11.白昼夢
-ドラムソロ&楽器セクション-
12.Angraecum
13.かくれんぼ
14.毒苺
15.お人形遊び
16.醜劣
17.Le ciel

アンコール
en1.紋白蝶
en2.fated
en3.夜想

ダブルアンコール
en4.醜劣
en5.蓮華
en6.二枚舌
en7.ユートピア

ワンマンライブ・主催ライブ情報

<紫月生誕祭ミニワンマン「紫紺の月」>
2019年8月10日(土)池袋Black Hole

<氷龍生誕ミニワンマン「BLACK DAY」>
2019年10月17日(木)巣鴨獅子王

<或生誕主催「Pediment Rise District」>
2019年12月3日(火)巣鴨獅子王

<ヴァージュ単独公演「千」〜遼 生誕〜>
2020年2月11日(火・祝)赤羽ReNY

◆ヴァージュ オフィシャルサイト
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