【対談 #前編】SUGIZO × miwa、「音楽観の重要な部分を『ガンダム』から学んだ」
■宇宙を感じるような
■永遠の光を感じるような曲──miwa
──その作品に関わられることになったのが“主題歌”。楽曲でどのように表現をしようとお考えになったんでしょうか。
SUGIZO:長い間、僕はガンダムに影響を受けているので、知らず知らずのうちに僕の音楽のテイストとか音楽から見える景色とか、自分が音楽を生んでそこに乗って旅をしたい感覚や、宇宙的な憧れなど、実はあらゆるところがガンダムに起因しているんですよね。自分の音楽観や音楽に対する自分の哲学の、ベーシックな部分でガンダムはかなり大きく影響を及ぼしていると認識してる。自分が気持ちのいいことを自然に表現すればそれがガンダム的になるんです。
──特に影響を受けられたのはどんなシーンですか?
SUGIZO:本当に多くのシーンに影響を受けているんですが、特にララァの絶命のシーンから僕が受けたインスピレーションは計り知れない。僕の音楽のルーツはそこにあると言っても過言ではないです。あの光。突然トリップするサイケデリックな世界。深遠な無数の銀河。ほんの一瞬のはずなんですよ、エルメスがビーム・サーベルに刺されて、爆発するのはほんの一瞬の出来事。せいぜい数秒。その一瞬が永遠に感じられる。その永遠の中であらゆる会話があって、精神的なコミュニケーションがあって、銀河が見えて波が来て、光が見えて。あの体験から数年後に僕はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』にハマって、「これだったのか!」というルーツを知ることになるんですけれども。確かに富野監督は『2001年宇宙の旅』がお好きで、ああいった作品を作りたかった、とおっしゃっているんですけど、音楽を使ってトリップする感覚、一瞬を永遠に感じるという感覚。ここにいるのに1億光年先に行けるような感覚は、まさにララァのあのシーンに影響を受けたもので。それはビートルズにも繋がっている。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や『マジカル・ミステリー・ツアー』のときのビートルズは、あのララァのシーンとも通じていると僕は感じるし、音楽観の重要な部分をガンダムから学んだというか、発想を植え付けていただいたというか。なので、今回の作品を作るにあたり、最初はすごく考え、途方もないプレッシャーを感じ、“果たしてこの大役が僕で良かったのか”と虫けらのような小さな気持ちになったりもしました。でも、自分がこの作品に影響を受けて今ここにいるわけだから、何も考えずに自分が一番気持ちいいと思うこと、自分が一番得意なことを今表現すればマッチングしないわけがない、とどこかで吹っ切って、それを自分自身に言い聞かせながら作業を進めていきました。
──そうしてプロデュースされている主題歌ですが、GLIM SPANKYやコムアイ(水曜日のカンパネラ)といったアーティストのみなさんとのコラボでのエンディングもありつつ、LUNA SEAとしてのオープニングもある。そこでのバランスはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
SUGIZO:それは制作チームのみなさんと何度も打ち合わせを続けていきながら、ひとつ僕が提案させていただいたのは、「オープニングはLUNA SEAでやらせてもらってもいいでしょうか」というお願いをまずは宮河社長にお伺い立てて、「SUGIZOさんのプロデュースなので、何でも好きにやってください」と言っていただいて。「男性ヴォーカルは全てうちのRYUICHIでやらせてください」ということ、そして「エンディングでは女性ボーカルをフィーチャーして、そのヴォーカルは今、僕らが一番輝いていると感じる方を起用させてください」というお話をして、今に至ります。
──第1弾、第2弾と往年のガンダム主題歌の名曲のカバーをコラボアーティストがエンディングテーマとして歌ってきた中、miwaさんとの「A Red Ray」はオリジナル曲で、miwaさんの歌詞によるもの。それはどうしてだったんでしょうか。
SUGIZO:LUNA SEAがオープニングでTM NETWORKの「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」をカバーするから、今度は逆にエンディングがオリジナルなんです。“必ず1曲はオリジナルで1曲はカバーで”ということも企画を詰めながら決まっていきました。
──楽曲を受け取られたときの印象を教えてください。
miwa:本当に宇宙を感じるような、永遠の光を感じるような曲で。メロディもそうですし、構成も、鳴っている楽器も、シンプルなんですけどひとつひとつの楽器にこだわって、音の一音一音に魂が込められているアレンジになっていて、宇宙を構成するようなアレンジになっているのかなと思いました。
──そんな1曲を歌われることになっていかがでしたか?
miwa:すごく素敵な楽曲をご提供いただいたので、歌詞を書くときにもSUGIZOさんに相談をさせていただいて、沢山アドバイスもいただきました。わたしがガンダムに触れてみて思ったガンダムの世界観だったり、言葉だったり、というのをご提案させていただいて、歌詞の世界観を作っていきました。
──miwaさんらしさを引き出しつつ『THE ORIGIN』の世界に浸透させる。そのためにどのようなバランスで楽曲を制作されたのでしょうか。
SUGIZO:実は僕は、元気ではつらつとしたmiwaちゃんも好きなんですが、意外と彼女のちょっとキュンとくるバラードが好きなんです。「オトシモノ」とか「めぐろ川」とか。実際、miwaちゃんのちょっと見え隠れする闇の部分が好きだったんです。闇の部分って悪い意味ではなくて、大人が持っている深さとか痛み。それを超えて人は大きくなっていく。ただ元気なだけじゃないその部分って、実はこれからのmiwaというアーティストにとってとても重要なんじゃないかなっていう気がしていて。そこを拡げて、先に踏み出したmiwaちゃんを表現できたらいいね、というやりとりをしました。
miwa:それもあって今までとは違う言葉選びをするようにして。歌い方でも、参考になるような、イメージになるようなアーティストの資料を沢山送っていただいたんです。これまで聴いたことのなかったアーティストばかりだったので、すごく刺激になりました。レコーディングもすごく面白かったです。
SUGIZO:すごくスムーズでしたね。
miwa:はい。
SUGIZO:「参考に」って渡したのはスティーナとか、バネッサも渡したっけ?
miwa:はい、あと映画も色々とお薦めしていただきました。
SUGIZO:そうそう。ガンダムに対して僕がすごく感じるのは、今、現代の中東を見ているような感覚なんですよね。僕はそういった活動をしていることもあって、近年はよく中東に行くんですが、たとえばパレスチナでも、シリアでも、子供たちが自然と戦火に巻き込まれて、身を守るために武器を持たなければいけなかったり、少年兵が普通にいたりする。『機動戦士ガンダム』が始まった僕らが子供の頃には想像もしていなかったけれど、今まさに中東でここ何年も起きていることというのは、ガンダムの主人公たちと重なってしまうんです。そういう戦火の被害を受けて家を失った人、故郷を失った人、逃げてきた人、親を亡くした子供たち。そういう人たちの視線で想いを届けられたらいいかもね、という話をmiwaちゃんにして、いくつかの僕の好きなお薦めの映画を伝えたんです。イランとイラクの国境線の船の上での少年と少年兵との交流を描いた『ボーダレス ぼくの船の国境線』とかパレスチナの映画で戦火のガザ地区で暮らす歌手になる夢を抱く少年の物語『歌声にのった少年』とか。戦火の中で音楽をやっていたり、戦争の中で敵国の子供と仲良くなったり、そんな素晴らしい作品をmiwaちゃんと共有しながら作っていった「A Red Ray」です。
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