鈴木大介 x 酒井健治、夏の訪れを感じる京都でコンテンポラリーを語った夜

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日本を代表するギタリストの鈴木大介と作曲家の酒井健治が、今週末29日(土)に京都コンサートホールで開催されるベルギー王立リエージュ・フィルの来日公演に先駆け、6月20日(木)京都岡崎 蔦屋書店にてスペシャルイベントに出演した。

『鈴木大介トークセッション&プレミアムライブ ~新しい音楽、クリエイティブ最前線~』と題したこのイベントは、リエージュ・フィル公演のソリストを務める鈴木に、酒井をトークゲストに迎える形で開催された。

前半はトークセッション。今回のテーマでもある「現代音楽」についてのトークが繰り広げられた。以前取材を受けた際、現代音楽について根本的な質問を受けたエピソードを話す鈴木。「そもそも“新しい音楽の響きを発見していくこと”は現代音楽にとって必要なことなのか」という問いに、酒井は「歴史的に言うと、モーツァルトやベートーヴェンは当時では革新的な響きを求めていた作曲家。一方でハイドンの後を追うような懐古主義的な作曲家もいた」とした。タン・ドゥンはどちらかと言うと後者であり「ハリウッド映画のような、アメリカのエンターテイメント的な要素も感じられる。一口に現代音楽と言ってもどちらも存在するもの」とした。


鈴木は現代音楽の演奏に軸足をおいた活動を展開しているが、一方で「手法は新しいが、サウンドしない(響かない)、企画倒れに終わる作品」もありがちだと指摘。それでも新しい響きを求めることについて酒井は「合理的でない難しさ、人間の肉体に取り込めないような複雑な事を書いている作曲家も、ハリウッド的、エンターテイメント性を兼ね備えた音楽を書く作曲家も、すべて再演にされて生き残っていくかどうかが大事」「同時代の聴衆の方と感覚を共有する事を目指して書いているが、実際に何が正解なのかは、50年後の聴衆がジャッジすると思う」と語った。

セッションは鈴木がリエージュ・フィルと共演する、タン・ドゥン作曲の「ギター協奏曲 「Yi2」を題材にギター部分の演奏を織り交ぜながら進行。琵琶を感じる音色やトレモロを駆使する奏法、京劇を連想させるシーンなど中国ならではの要素から、フラメンコや中東系のハーモニーまでも行き来する。


「この曲はアメリカそのもので、実にコスモポリタン。タン・ドゥンはアメリカの作曲家そのものだと思う」と酒井。鈴木は、タン・ドゥンの魅力を紐解く中で、フレージングについても日本的な細かいパーツを積み上げるような構造美とは異なり、広く長い大陸的なメロディーが特徴で、どこまでも音楽が続くような感覚を感じられる作品であると語った。


後半のプレミアムライブでは、鈴木と酒井がタッグを組んだ最初の作品「エーテル幻想 ギターソロのための」を演奏。難曲で、鈴木もまだ消化に時間がかると言う作品だが、その疾走感溢れるメロディーと迫真のパフォーマンスに、集まったオーディエンスから大きな拍手が贈られた。

ライブでは、タン・ドゥンのことを高く評価していた日本人作曲家の武満徹の編曲による「イエスタディ」「オーバー・ザ・レインボー」「シークレット・ラヴ」などを惜しげも無く披露。夏の訪れを感じさせる京都岡崎の夜、美しいクラシックギターの音色、至極の演奏に、酔いしれたひとときだった。

ライブ・イベント情報

ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団 2019年 来日ツアー
2019年6月29日(土)京都・京都コンサートホール ※プログラムC
2019年6月30日(日)東京・すみだトリフォニーホール大ホール ※プログラムA
2019年7月1日(月)東京・サントリーホール ※プログラムB

出演:クリスティアン・アルミンク(指揮)
小林愛実(ピアノ)※7/1のみ
鈴木大介(ギター)※6/29、6/30のみ
ティエリー・エスケシュ(オルガン)※6/30のみ

<プログラムA>
ルクー「弦楽のためのアダージョ」
タン・ドゥン「ギター協奏曲「Yi2」」ギター:鈴木大介
サン=サーンス「交響曲第3番 ハ短調 op.78「オルガン付き」」オルガン:ティエリー・エスケシュ

<プログラムB>
ルクー「弦楽のためのアダージョ」
モーツァルト「ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466」ピアノ:小林愛実
ブラームス「交響曲第1番 ハ短調 op.68」

<プログラムC>
ルク―「弦楽のためのアダージョ」
タン・ドゥン「ギター協奏曲「Yi2」」ギター:鈴木大介
ブラームス「交響曲第1番 ハ短調 op.68」
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