【インタビュー】フジロックの生みの親SMASH日高正博「俺は、無理だと言われたら面白くなっちゃう性分」

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■ 来年のいろんなことも考えてますよ

──ネット時代において音楽も所有から利用の時代に変わってきていますが、そんな世の中の変化をどうみていますか?

日高:音楽に関しては「会った瞬間」としか言いようがない。音楽が好きだし人が好きだから、いろんな国や地域に行くでしょ? 音楽の裏側にはその国の歴史があって、俺にとって歴史と音楽は一緒なの。そして人の生活がそこにはある。俺たちは、狭い島国で育っているとどうしても視野が狭くなりがち。もちろんアメリカみたいなでかい国に生まれてもトランプみたいなバカが出てくるから、国がでかけりゃ視野もでかくなるというわけではないんだけど(笑)、音楽・小説・絵…人の生き方、全部が面白いよ。それを端的に表すのが音楽だと思う。フジロックには、何万人もの人の興味を引くヘッドライナーのアーティストもいるけど、自然に身体が動いてしまうようなそれまで知らなかったアーティストもいる。「あ、こんなのあるんだ」って、いろんなものの融合点になっていくということが、一番やりたいことだからね。

──もはやフジロックの出演ラインナップ自体が、巨大なプレイリストにも感じます。フェスのラインナップが、音楽文化に大きな影響を与える時代ですから。

日高:フジロックも思いつくままにステージを作ってきて、同時に出てもらうバンドも決めていたけど、次には他のステージとのバランス/コンセプトが重要になってくるんだよ。「お客さんはどうやって歩いたり、どの順番で観たら面白いか」が重要になってくる。昔、カセットで聴いていた頃って、自分がDJじゃない? 自分でダビングしてさ、それを持って遊びにいったりしてたわけよ。自分がDJだから面白いわけ。それを人に押し付けるからもっと面白いの。嫌がらせだよな(笑)。

▲ホワイト・ステージ

▲レッド・マーキー

▲ウィールド・オブ・ヘブン

──マイベストカセット作りも、巨大フェスのアーティストラインナップ作りも、もとは同じ気持ちなのかもしれませんね。

日高:俺の思いも出してるのかもしれないけど、どっちかというと「このほうが面白いだろ?」っていう気持ちでやってる。多分それしかないのかな。だからRED HOT CHILLI PIPERS(レッド・ホット・チリ・パイパーズ:REXY SONGからリリースしたスコットランドのバグパイプ・バンド)も全くのジョークだもんね。スコットランドのおみやげ屋さんのレジにCDがあってさ、「なにこれ? チリペッパーズでこんなジャケットあったっけ?」って思ってよーく見たら「チリパイパーズ」って(笑)。部屋に帰って聴いたら大笑いしちゃったよ。ああいう音楽はセルティックって言うんだけど、ヨーロッパ/ノルウェー/スウェーデン/スコットランド/アイリッシュ/フランス/スペインまでの一種の民謡で、ポルトガルのファドまで入るかな…俺はそういうの大好きなんだけど、チリパイパーズ自体はパンクという(笑)、その姿勢が笑えたよね。

▲RED HOT CHILLI PIPERS

──音楽との出会いって、本当に偶然なんですね。

日高:ほとんどの音楽が偶然だよ。チリペッパーズもそうだもん。ロサンゼルスで「近くで、ちゃちいけど家をスタジオにしてる奴がいるから遊びに行くけど、行かない?」って言われて行ったら、それがレッド・ホット・チリ・ペッパーズだった。

──凄いエピソードだ。

日高:そのタイミングじゃないと会えてないよね。オアシスもそうだよ。ロンドンで「そういえば今日、俺ヒマなんだけど、なんかいいのないかな?」って言ったら「俺も聴いたことないんだけど、このバンドなら今日の夜に演るよ」って。オックスフォード・ストリートの100クラブっていう500人くらいのクラブなんだけど、行ったら200人くらいしか入ってなかった。それがオアシスで、「これ、絶対売れる」と思った。

──既に“オアシス”だったんですか?

日高:そうだよ。それもたまたまの偶然だもんね。だから、ぼけーっと待ってたらなんも来ないということだよね。

──人との関係性が財産ということでもありますね。

日高:俺は売れているアーティストには全然興味がないの。売れてるんだから誰がやったっていいわけ。俺は好きな音楽はっきりしてるから、古いものだとブルースやR&B、カントリーあたりから入っていくと、日本にも必ずそういう音楽が好きな人がいるの。1000枚とか2000枚とかしかレコードは売れなくても「まさかこういうブルース・ミュージシャンが日本に来るなんて」って喜ぶんだよ。

──それがSMASHなんですね。

日高:いろんな人のつながりがでてきて本当に面白いなって思う。話が脱線したけど、こんなインタビューで良かったのかな(笑)。

──2020年は、フジロックはどうなるんですか?

日高:答えられない(笑)。オリンピックに向けてどうのこうのとか、いろんな話が来るよな。

──苗場でも影響はあるのでしょうか。

日高:そりゃやっぱり影響あるでしょ。<サマーソニック>もできないもんな。幕張メッセが使えないし人間がいない。プロフェッショナルなスタッフがいないし機材車もない。そういう意味では俺たちも同じだよ。

──機材や人員の問題があるんですね。

日高:それをなんとかひねり出して、無理を言ってやるってのも面白いけどな。

──でも普通に考えたらできない。

日高:わかんないけど、要するに俺は、無理だと言われたら面白くなっちゃう性分なんだよ。それだけ。「イエス、イエス」とか言われてたら、やる気がなくなっちゃう。なら「誰でもいいじゃん」とか思っちゃうからね。まぁ、来年のいろんなことも考えてますよ。

──これからのフジロックがより楽しみになりました。ありがとうございました。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也

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■<FUJI ROCK FESTIVAL'19>

2019年7月26日(金)27日(土)28日(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※入場券は販売時期によって料金が変わります。
※中学生以下は保護者同伴に限り入場無料となります。
※チケット料金、販売スケジュールにつきましてはオフィシャルサイトをご覧ください。
※出演者・出演日・出演順に変更が出る場合もあります。
総合問い合わせ/オフィシャルサイト:https://www.fujirockfestival.com



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