【インタビュー】Waiveの田澤と杉本が語る“解散中”という新たな概念「バンドにとって死を意味すると思うんです、解散って」

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■解散が終わりだとは限らない
■という結論に辿り着くような

──「Waiveというバンドが命を持った」とおっしゃいましたが、まさに生きているバンドになったからこその行動だったと?

杉本:そう……だと思う。10月はしっかりとバンドができた気がしていたのに、ツアーが始まって、初日はとにかく“バンドをしなかった”ので。それは最初に話したみたいに自分の感覚だけかもしれなくて、“めっちゃバンドだぜ、イエイ!”と他のメンバーは思ってたかもしれないけど(笑)。僕自身は“うーん……”と思ってしまったところがあったんです。自分の状態も良くなかったし。でも1本目の柏公演が終わって“なんか違うんじゃないか?”となったからこそ、2本目のさいたまでガラッと違うものにできた感じはあった。これを1本1本手探りでやっていても、運みたいになっちゃうと良くないから。コンスタントに、確実に良くしていくために必要なものってなんだろう?と考えたときに、言ってしまえば僕的には強硬手段みたいなものが要るかもなぁ……とは感じたんですよね。

──そういう杉本さんからの一歩踏み込んだ働き掛けに対して、田澤さんはどう感じましたか?

田澤:ライブを観に来てくれた、とかについてですか? そうやなぁ……単純にうれしかったですしね、「観に行くわ」と言ってもらえたのは。だって僕のライブを俯瞰で観るのなんか、それこそ……。

杉本:20年ぐらいぶりやもんな(笑)。

田澤:そうそう、20年ぶり(笑)。地元のライブハウスで対バンしてた頃ぶりじゃない?っていう話で。仕事の都合でちょっとしか観てもらえなかったけど、その短い時間の中でもらった感想が、善徳くんはさっき「10個言ったうちの1個」とか言ってましたけど、全部当たってました。10個とも“確かに”と思えた。それを受けて、さっき善徳くんが言ってた“還元”じゃないですけど、Waiveでできることはフルでやり切ろうって改めて思いましたし。まぁ、今の出来事は要因のひとつに過ぎなくて。そういうちょっとした出来事が気持ちの中に染み渡る、と言いますか、なんと言いますか……。

──些細なことの積み重ねで、Waiveに対する気持ちが変わっていった、という感じですか?

田澤:変わっていったというよりは解放されてった感じですかね。正直、今回僕はWaiveに居心地の良さを感じてしまっていて。でも、そういう気持ちを押し殺すんじゃなく、もう認めてしまっていいんだと。関係値というかなんというか、古くからの付き合いというのはやっぱりデカいなと。それはバンドについてのやり取りもそうだし、そうじゃない何気ない部分でもそうだし。音を出してて“やっぱこれやな!”という感覚は、昔も今もあまり変わらないわけですよね。あったとしても“ここ上手くなったね”とか“上手くなったから良くなくなったね”とか、そのぐらいのもので。やっぱり、なんてことない瞬間に昔を思い出したり、言葉にせんでもわかることがたくさんあったり。音楽を鳴らしているときじゃなくてね。むしろそっちのほうでWaiveやってることを実感したというか。今までもそういうことはあったけど、今回はその状態が過去の再演に比べて一番ナチュラルだったと思うんですよ。それがなんでなのかは分からないですけどね。時間が経ったからなのか、みんなの心境なのか。

──そうなると、もっともっとこの状態のWaiveを観たくなりますが……。

田澤:っていう話になりますよね。でも、やりゃあいいってもんでもないみたいな。難しいですけど。

──“解散中”という状態を保ちながら、今後「またやろうよ!」となったら、「解散中だけど……」という枕詞をつけながら、というスタンスで行くんですか?

杉本:そういう感じがいいんじゃないですか、ね?

田澤:うん。

杉本:京都のライブのときに、MCの中で田澤くんが「ところで、解散中ってなんなん?」という話をしてきて(笑)。

田澤:「どう解釈するのが正解なん?」みたいな(笑)。

杉本:「なんとなくの感覚でみんな共有してるけど」という話が出て。僕ももちろん答えを持ってるわけじゃないけど、「ひとつの考えとしてこう思ってる」ということをそこで話したんです。解散ってバンドにとって……バンドに限らず組織にとって、ひとつの死を意味すると思うんです。“死人が生き返りました、良かったね!”みたいな話だと、“そいつ、たぶんまた死ぬで”みたいなのがあるし、“結局は形あるものだからいつかなくなる”というところは揺るがないですよね。Waiveっていうバンド名の意味合い(※権利を放棄する、の意)と一緒で、ちょっと変なバンドだから、世の中で“こういうふうにやっていけ”と言われてることとは常にズレた選択をしていくべきなんじゃないのかな?と僕は思っているので。スタンダードなバンドだと思われがちだけど、だったらなおさら、“いざ中に踏み込んでみたらこんなにも変なのか!”というバンドでありたいから。解散中という字面自体も変だけど、やっぱり“要するに、解散中ってことはまたやるってこと?”みたいなのも含めて。Waiveの解散に触れた人だとか、あるいはWaiveの解散中という文字に触れた人たちが、“解散が終わりだとは限らない”という結論に辿り着くような、なにか勇気のもらえるような活動をしているバンドになればいいな、と思うんですよね。

田澤:うん。

杉本:もちろん、活動を再開してそのまま「俺たちは二度と解散しないぜ!」と言っているバンドもあるし、それはそれでひとつの勇気なのかもしれないな、と思うんです。でも僕はやっぱり、“それって「解散しない」だけでしょ?”という気がどうしてもするんです。自然消滅していくような感じで、“もうそろそろ年やから、でけへんなぁ” “そろそろ人(観客動員)が入らんから、でけへんなぁ”とか、なんかの形でできなくなったことを、“でも俺たち解散しないって言っちゃったし”っていう理由で止めてるだけでしかないから。それって一見ポジティヴに見せているだけで、僕にはすごく商業的に見えちゃうところがあるので。

田澤:うん、そうやね。

杉本:そのへんを認めた上で、“僕らは解散してますからね。だから、活動があるほうがおかしいんですよ? ただ、またできたらいいね”というスタンスを貫くことが……特にWaiveは解散が結構重めだったバンドなので、言葉は非常に好きじゃないけど、罪滅ぼしにもなるんじゃないかな? あとはやっぱり、新しくファンとして入って来た人たちにとっても、“いやぁ、解散してくれてて良かった!”みたいな謎の言葉が生まれるのも面白いし(笑)。

田澤:そういう可能性もあるよね。いやぁ、解散中っていう概念はね、真似する人らが出てくると思う。

──新しい形を提示していますよね。

杉本:うん、そう思う。それぐらい希望のあることをできているんじゃないかな?という気はするんですよね。

──解散中と謳いつつも、“自由意志で、またやりたきゃやるでしょ”とメンバーそれぞれが思えている。その形が成立しているのは、バンドとして生きているから、という気がします。

杉本:正解は分からないですけどね。ただ、やっぱり僕らは発信する側だから、“なんとなくみんな復活してるし、復活しときますか”というわけにもいかんのとちゃうかな?って。そんな気がどうしてもするんですよね。

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