【インタビュー】新井崇之(LIPHLICH)、「ギターがボーカルでボーカルがギター」

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8月5日に渋谷REXで開催されるBARKS主催イベント<千歌繚乱 vol.21>に、LIPHLICHのギタリストである新井崇之がソロで出演する。

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ヴィジュアル系バンドの中でも特に独特な、シアトリカルな雰囲気をまとったLIPHLICH。そんなLIPHLICHをギターの調べで彩る新井崇之は、ソロではインストゥルメンタル楽曲のみでライブを行っている。ヴィジュアル系バンドのメンバーがこのようなスタイルでライブを行うことは珍しいが、そこにはどのような思いが潜んでいるのだろうか。BARKSでは<千歌繚乱>前に新井崇之にロングインタビューを行い、彼の考えに迫った。なお、新メンバーが加入したばかりのLIPHLICHについても語ってもらっている。

※本記事は<千歌繚乱 vol.21>において来場者限定で配布される「千歌繚乱 ARTIST BOOK」掲載のインタビューの一部を事前に公開するもの。「千歌繚乱 ARTIST BOOK」では各出演者への一問一答アンケートなど、より深い内容が掲載されている。

   ◆   ◆   ◆

──新井さんのソロワークについてお話を伺う前に、まずはLIPHLICHの新ベーシスト決定という嬉しいニュースに触れたいと思います。急な発表で驚きました。

新井崇之(以下新井):バンドとして北海道でのライブが入っていたんですが、その時は“この人でいこうか”っていうベースの方がほぼ決まってたんです。でも、もう少し時間をかけながら様子をみたいっていう話になって、だったら北海道に関しては別なサポートを立ててやろうかと。で、そこでサポートに入ってくれたのが竹田(和彦)さんだったんですよ。そういう流れだったので、ある意味、お仕事でお願いしますっていう割り切った感覚で参加してもらったんです。ただ、その時の感触が結構よくて。曲を覚えるのも早かったし、ライブ中も演奏に徹するだけじゃなく、チラチラと他のメンバーの様子を見てくれるわけですよ。それを見て、“あ、いろいろ探ってくれているんだな”って感じたり。とはいえ、ライブが終わったら“ありがとうございました! じゃあ……”みたいな感じでお別れしたんですね。ところがその後、ほぼ決まっていたはずのベースといろいろ話を進めていくうちに、お互いの兼ね合いが難しくなってきてしまったんですよ。そこで、また白紙に戻ってしまって。

──それはなかなか厳しい状況ですね。

新井:ようやく4人そろって、ちゃんと活動ができると思っていた矢先に“どうするよ?”って感じでした。それが5月くらいだったと思います。

──かなり最近の話じゃないですか。

新井:そうなんです。そこでボーカルの久我くんが竹田さんに連絡して、いろいろ話したらしいんです。そしたらたけぽんが……。

──たけぽん(笑)。すでに竹田さんのことをそう呼んでいるんですか?(笑)。

新井:はい、たけぽんです(笑)。そのたけぽんが「俺、LIPHLICHやりたいんだよね〜」って言ってくれたそうなんです。久我くんとしてはビックリしつつも、たけぽんは曲を覚えるのも早かったし、ぜひお願いしたいと思ったみたいで各メンバーに連絡がきたんですね。そこでみんな“めっちゃいいじゃん!”ってことになって。

──北海道でサポートに入った時、竹田さんも何か感じたものがあったんでしょうね。

新井:あ、言ってました。北海道のライブをやってもらった時に、たけぽんはメンバーひとりひとりがLIPHLICHっていう看板を背負っているのをすごく感じたらしいんですよ。そこにすごく感動したって言ってました。だから、その時から純粋に“LIPHLICHをやりたいな”って思ってくれていたみたいです。

──運命でしたね。

新井:ホントにそうです。運命を感じました(笑)。それまでサポートを入れながらもLIPHLICHの活動は途切れず続けてきたんですが、やっぱりどこかポッカリ穴が空いたような感覚があったんですよ。サポートベースは毎回変わったりするし、やっぱり僕はメンバー4人がそろって、ひとつのバンドだって思っちゃうので、どこか寂しかったというか。

──今のところ、新井さんから見て竹田さんはどんな存在ですか?

新井:自分に似たところもあるんですけど、音楽やバンドに対する情熱はすごく熱い人だなって感じます。しかも、すでにもう何年も一緒に活動しているような感覚なんですよ。

──いや〜、これからが楽しみですね。

新井:もちろん、今まで掲げてきたエンターテイメントロック……ただの演奏会じゃないライブを今後もやっていくと思いますし、視覚的要素の探求も変わらず大事にしていきたいですね。大もとになっているのは、久我くんの頭の中にある久我ワールドですけど、最近は他のメンバーもいろんな意見を出し合っているので、面白いですよ。

──じゃあ、すでに新生LIPHLICHとして曲作りも始まってるんですか?

新井:今はまだたけぽんがLIPHLICHの曲を一生懸命覚えている段階なので(苦笑)。何しろ100曲以上はレパートリーがありますからね。まずは曲を覚えることを優先してもらってます。

──さて、そんな中、新井さん自身はソロ活動という新たなチャレンジも始めましたね。やはり刺激になってますか?

新井:なってます! まず、いちばん大きかったのは2017年に赤坂BLITZ(現在のマイナビBLITZ赤坂)で行われた<Legend Guitarist Vol.2〜Summer Next Start〜>に参加させていただいたことだったんですよ。すごい影響を受けました。僕がキッズの頃から見たり聴いてきたバンドの大先輩ギタリストの中にポンと入れてもらって……。自分という人間がここにいて、ギターを弾いていいんだ!っていう自信にもつながりました。ギターインストはLIPHLICHのライブの中の企画のひとつとしてやった程度だったので、ガッツリやるのは初めてだったんですよ。そこではギターがメインで作る曲やライブに痺れました。ギターが歌うっていうライブのカッコよさを改めて感じた日でしたね。そこからギターインストの曲でライブをやることに興味が沸いてきたんです。

──特に痺れたのはどんなことですか?

新井:その時、全19曲やったんですけど、その中で僕が選んだ曲はカバーも含めて3曲だったんですね。それ以外は全部違う先輩方の曲だったんで、タイプも違えばクセも違う曲ばかりで。その中で、自分ではなかなかやらないフレーズの組み合わせがあったりして、それぞれの個性がすごく出ていたんです。そこに感動しました。

──参加されたギタリストもKOJIさんや(ALvino)、youさん(Janne Da Arc)、そしてRENOさんという、超辣腕アーティストばかりですし。

新井:そうなんですよ。だから、自分には“あ、この曲って新井っぽいよね”って思われる部分があるのか……とか、自分の色が出ているのか気になり始めて。それまでは、ギターよりキャラクターが全面に出ているのが自分の売りなのかなって思っていたんです。それが、あのイベントに参加させていただいたことで、ギターの音やフレーズだけで、どうしたらキャラクターを表現できるんだろうって、すごく考えさせられました。あとは、何でこのフレーズが弾けないんだろうって、苦労しまして(笑)。ひたすら動画でその人のプレイを何回も見て、基本的なことから勉強し直しました。

──そんな中で、自分らしい表現やクセは見つかりましたか?

新井:自分の場合、ソロの曲を作っていて思うのは、すごく耳なじみのいいメロディーや、わかりやすいメロディーが絶対出てくるんですよ。そのたびに“ああ、自分ってこういうのが好きなんだな”って実感します。よく言うのですが、ギターがボーカルでボーカルがギターっていうことを意識しているのが自分らしいのかなって。

──歌にフォーカスするというのはLIPHLICHの世界にも通じるところ……のような気もしますね。

新井:ところが、僕の曲は思った以上にポップなんですよ(笑)。LIPHLICHでは絶対できないような曲調があったりするんですよね、これが(笑)。もちろんLIPHLICHという看板は常に背負っているつもりではありますが、ソロに関してはあくまで新井崇之の純度100パーセントの曲なんで、そこは気持ちを切り替えて作ってます。

──そもそもソロ活動を始めたキッカケは何だったんですか?

新井:とにかくギターが大好きなんで、ずっとギター曲をやりたい気持ちがあったんです。それで、少しずつギターインストの曲を個人的に作ったりしながら事務所に相談してたんです。そんな時に事務所から「この日にソロライブとかどう?」って話を振ってもらったんですよ。ところが、いきなりだったせいか怖じ気づいたのかわからないんですけど、いったん断ってしまったんです(笑)。

──やりたいと言ってきたのに(笑)。

新井:そうなんですよ(笑)。でも、すぐにすっごく後悔して、電話をかけ直してライブやらせてくださいってお願いしました。あそこで断っていたら今はソロとかやってなかったでしょうね。チャンスを無駄にするところでした。ああいうのはダメですね。少しでもチャンスと思ったら飛び込まないと。それが去年の12月でした。

──そのおかげで、今日があるわけですね。では、ここで8月5日に渋谷REXにて開催される<千歌繚乱 vol.21>について伺います。ここではソロのパフォーマンスということで、どういう部分を見せたいですか?

新井:ポップな曲だけでなく、ギターがギャンギャン鳴ってる曲とか聴かせる曲もやると思います。

──新井さん個人の音楽要素が楽しめそうですね。

新井:はい。実はカントリーミュージックとかアコースティックミュージックも好きなんですよ。LIPHLICHの激しめのロックをアレンジして、カントリー調にしたこともありますから。

──それ、すごいですね! カントリー要素出せる人ってあまりいないですよ。普段やれないことを出せるのもソロのよさですね。

新井:あらゆるものから影響を受けてきたのが伝わると思います。あと、ギターインストのライブって特殊じゃないですか。言葉を操る人がいないですからね。そこでどう楽しめばいいのか、分かりづらい部分もあると思うんです。中には、椅子に座って聴く音楽鑑賞会みたいなインストのライブもありますけど、僕はライブ人間だし、ロックな人間なので、ロックバンドと変わらない押せ押せな部分も、じっくり聴いて欲しい部分もやりたいです。実際僕の曲には部分的に歌が入った曲もありますからね。叫ぶみたいな感じで。ギターインストでも、飛び跳ねたり叫んだりするライブがあっていいと思うんです。だからあまり構えず、純粋に音楽と曲の雰囲気とギターを楽しんでもらえたら嬉しいですね。僕自身も会場にいる人全員に伝わるように全力で演奏するつもりです。

──この活動は今後も続けていく予定ですか?

新井:はい。中途半端に終わらせるよりは、できる限り続けていきたいと思います。LIPHLICHの外で活動することで、最終的にはLIPHLICHに何かを持って帰りたいっていう思いもあるので。実際、バンドに還元できているなって感じることもありますからね。ただの自己満足ではない活動をしていく予定です。

──ゆくゆくはソロツアーとか?

新井:ああ〜。やりたいですね、機会があれば。ギターでずっとメロディーを弾き続けているのが楽しいんです。でも、すごく注目して欲しいっていう気持ちはあまりなくて……。とにかくギターが楽しいんですよ(笑)。もちろん、ギターを弾いていれば何でもいいっていうわけじゃないですよ(笑)。

──楽しみにしています。ちなみに、ギターインストって、言葉は関係ないので、海外でも評価される可能性もありますね。

新井:確かに。もし、チャンスがあるなら挑戦してみたいですよね。結果どうなるかわからないけど、やらないよりはやった方がいいだろうし。ただ、バンドをおざなりにして好き勝手やるとか好きじゃないし、あくまで僕はLIPHLICHのギタリスト新井崇之なので……。そこは芯として揺るがないと思います。なので、安心して活動を見守っていてください。ちなみにLIPHLICHとしては高田馬場でマンスリーライブも行っているので、そこも見逃せないですよ! 毎月、楽しいことをやってますから。

──そこも要チェックですね! 期待してます!

取材・文◎海江敦士

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新井崇之が出演する<千歌繚乱vol.21>は、8月5日(月)渋谷REXにて開催。チケットの購入はコチラから。

<千歌繚乱 vol.21>

日時:2019年8月5日(月)開場 17:00/開演 17:30
会場:渋谷REX
出演:新井崇之(LIPHLICH)/ WING WORKS / 怪人二十面奏 / KØU / LAPLUS

チケット:一般チケット 3,800円/当日券 4,000円


【一般先着受付】
7月19日(金)12:00~8月4日(日)
チケット購入ページURL:[イープラス] https://eplus.jp/sf/detail/2950490001-P0030001

主催・制作:BARKS(ジャパンミュージックネットワーク株式会社)

<AREA 22nd anniversary~LIPHLICH -Monthly- Oneman Show~>

2019年8月10日(土)高田馬場AREA
2019年9月4日(土)高田馬場AREA
2019年10月12日(土)高田馬場AREA
2019年11月9日(土)高田馬場AREA
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