【インタビュー】J、11thアルバム『Limitless』完成「だから誰にも止められないんです」

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■こういう時代だからこそなのか
■楽器の可能性をすごく感じてるんです

──今回、情報としてまず届けられたのが、このタイトルとアートワークでした。ジャケット写真を最初に目にした時は、“NOW PRINTING”の文字が抜けているのかと思いましたけど。

J:ははははは!

──ただ、この白いジャケットはただの真っ白ではなくて、ムラのある白ですよね。

J:うん。アートワークについてどうするか。それを考えるのはいつもアルバム作りの途中段階でのことなんですけど、自分が絶対的な絵を持っている時は、最初からその絵を目掛けて向かっていくんだけども、それよりもむしろ、アルバムを作りながら見えてきた景色みたいなものをジャケットに落とし込んでいってるようなことが多いんです。ただ、今回に限って言うと、真っ白なジャケットがいちばん最初に浮かんできた。何故なんだろうと感じながらも、自分でその想いを手繰り寄せてみると、やはり11枚目、新しいスタートということと重なるものがあるのかな、という考えに至って。まったくもってゼロの状態というわけではなく、今までの積み重ねの上にある真新しさというか。そういった感覚で、このアルバムを捉えてたからこそ、この発想が出てきたのかもしれないですね。

──最初は何か意味があるんじゃないかと勘繰りました。光に透かして見ると何かの画像が見えてくるとか(笑)。ただ、さきほどキャンバスに色を塗るという表現がありましたけど、油絵を描く時って、一度描かれたものを白い絵の具で塗りつぶして、その上に描いたりするじゃないですか。だから一見まっ白なようでありながら、うっすらと前の絵が残っている。なんか、それにも似ている気がしたんですよ。

J:素晴らしいですね、それ。そういうことにしましょう(笑)。でも実際、“白”ではあるけど“無”ではない、というのは(デザイナーにも)言ってあったんですよね。二次元ではない、と伝えてた。それは自分でも憶えてますね。

──まっ白に見えるジャケットの向こうに、これまでのすべてが隠れている。

J:そう。それと同時に、聴いてくれた人がどういう色付けをしてくれるのか──そこに委ねてる部分もありますし。そういうことを全部重ねていくと、ああ、今回はまっ白で行きたいな、と。そういうことだったと思います。

▲『Limitless』SPECIAL盤

──今回、アルバム全体を一聴して思ったのは、本当にシンプルかつストレートで、“まだそぎ落とせるものがあったのか!”というくらい研ぎ澄まされている、ということ。

J:ははは! ホントですよね。

──ただ、“骨と皮”みたいな音ではない。

J:そうなんです。僕が理想としてるバンドサウンドにより近付けたと思ってます。もちろん前作を作り終えた後に、ヒントみたいなもの、次はこうすればまた違った形の何かが生まれてくるかもしれない、みたいなものを感じながらここに向かってきたところはあるわけです。そういったなかで、バンドとしての挑戦もあったし、僕自身がモノづくりをするうえで次のステージに進みたいという想いもあった。そういう意味で、実はいろんなことにトライした4年間だったわけなんです。

──そのなかで足し算をしたり、引き算をしたり。その繰り返しだった、と?

J:そうですね。より各楽器の音色と、より自分たちの想いみたいなものを……寄り添わせたかった、というか。これはマインド的なものなのかもしれないですけど、ここ最近、こういう時代だからこそなのか、なんか楽器の可能性をすごく感じてるんですよね。

──新しい楽器ということではなく、元々ある楽器の可能性、ということですね?

J:そうそう。逆説的な考え方なのかもしれないけれど、そっちのほうが刺激的だな、と感じていて。もしかしたら一周廻ってまたそこに来たのかもしれないんだけど、こっちのほうがパワフルに聴こえるよね、よりエモーショナルだよね、みたいな感覚がすごく生の楽器にあるんですよ。

──デスクトップで作られた音楽が主流となっている昨今にあっては、昔ながらの楽器の音によるバンドサウンドというのは、むしろ希少なものになっていますよね。正直、スポティファイなどで流行の曲をまとめて聴いていると、どれも音像が似たり寄ったりで歌だけ挿げ替えられているかのように感じられたりもします。

J:如実ですよね、その傾向が。

──ええ。ただ、そこにときどきTHE BLACK KEYSの新譜とかが混ざってくると、すごく浮き上がって聴こえたりするわけです。

J:まさにそういうことですよね。今回のTHE BLACK KEYSの新作は、彼らのベストアルバムになるんじゃないですかね? そう思えるぐらい、なんか時代への異物感も含めて確信的に鳴らしてる感じがすごくする。敢えて狙ってますよね、そのいなたさを、みたいな(笑)。でもそれが今すごくカッコ良く感じられるんですよ。そういうロックサウンドのための場所が、やっとできつつあるようにも思うんです。流行りのフォーマットに寄り添おうとしてる人たちも多いなかで、“俺たちはこうだぜ!”と主張し続けてきた人たちのための場所が。なんかすごく、そういう気がしていて。

▲『Limitless』通常盤

──そうして楽器の可能性について実感しているなか、今作ではJさん自身がかなりの割合でギターも弾いていますよね?

J:そうですね。エンジニアには、下手なギタリストよりよっぽど上手い、とお墨付きをいただいてます(笑)。まあ実際、自分の曲は自分のニュアンスで弾いたほうがちゃんとした絵が描けるかな、なんていう部分もあるし。そこについては何の抵抗もなく向かっていきましたね。結果、ベーシックについてはほとんど僕が弾いているんで。

──Jさん自身、ご自分をどんなギタリストだと思っていますか?

J:やっぱりベースをずっと弾いてきてるので、リズムに関しては、ギタリストのそれとはちょっと違うと思うんです。リズムの置き場というか。そういう意味では、自分で録るというのも理に適ってるのかな、と。うちは編成的にギターが2人いて、ベースとそのギターを繋ぐギターというか、そういうものを自分はプレイできるんじゃないかな、と思っていて。ユニゾンのフレーズなんてのは、やっぱり同じ人間が弾いてるだけあってタイミングも合いやすいですよね。そういう部分を自覚的に利用してたりとか。そこでむしろ、ちょっとずらしたい時なんかは、masa(masasucks)やごっちん(Kazunori Mizoguchi)にそういうふうに弾いてもらったりとか。細かいことなんですけど、なんかそういうコントロールみたいなことも自分のなかで自然にできるようになってきてるのかな。

──いわば、自分自身の使い分けも含めたキャスティングができているわけですよね?

J:そうですね。やっぱり、同じギターを弾いたとしてもプレイヤーが違えば音色も違うわけですから。そういった意味では、その場でいちばん必要な音色をはじき出せるプレイヤーを使えればいいかな、なんて思ってますし。

──しかも自分で弾くことにより、曲が生まれた時といちばんイメージの近い状態で鳴らせるわけですもんね。それにJさんの場合、ギターソロとかを弾いているわけではない。そこでJさんの音楽の骨格がどの部分なのか、というのも改めてよくわかるというか。

J:そう言ってもらえると有難いですね。自分自身から出てくる音というのは、自分自身のスタイルとしてそこに残るわけですから。そういう意味でも今回のアルバムでは、“あ、Jのサウンドってこういうものなんだ”というのを、より感じでもらえるはずだと思う。しかも、無意識でそこに向かえてたのは良かったなと思う。

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