【ライブレポート】MASHの歌で涙が止まらない夜

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MASH初のアメリカライブのレポートが届いた。

◆ライブ画像(7枚)

「いつかポートランドに来てもらいたんだよね、で、向こうで歌ってくれたら、最高だよね。」何年も前からMASHと会うたびに言い続けて来た言葉。多分、出会って、仲良くなってからだから、もう10年以上言い続けて来たかもしれない。特に、僕のポートランドの友人、ポールがMASHの歌詞に惚れ込んで好きになってからは、現実味を帯びたトーンで誘い続けて来た。でも、その頃、MASHに言っていた、「ポートランドで歌ってよ」は、ライブという形ではなく、もっと気軽なものをイメージしていて、例えば、僕らと旅行をして、食事の後とかに、数人の友人たちの前で歌ってくれたらってものだった。なのに、あんな夜が生まれるなんて……。


会場は「Portland Roasting Coffee(ポートランド・ロースティング・コーヒー)」。MASHの歌に惚れ込んだ友人ポールが勤める会社だ。元々は卸専門でポートランドのコーヒー業界を牽引していた会社が、小売に力を入れるため数年前に作ったカフェ&イベントスペースがあり、そこをライブ会場とした。カフェは、ゆったり50席ほどあり、地域の人たちがそこで会話を楽しんだり、学生が勉強をしているのが当たり前の光景。カフェの横に設けられた大きなイベントスペースは、スタンディングならば、100人以上収容可能なほどの大きさだ。僕ら日本からのポートランドツアーメンバー33名と、現地の日本人コミュニティーの70名ほど合わせて、まさに100名を超える人数がこの日ライブを観ることになった。MASHにとっては、海外初ライブ。初ライブがいきなりそんなに大きなキャパになるなんて、まさか本人も想像していなかっただろうし、無責任なことに、企画者側である僕自身も全く予想だにしていなかった。


MASHのリハーサル。言葉の問題に関しては僕が間に入って通訳をしようと思っていたけれど、僕も音楽の専門的な言葉をそこまで知っているわけでも無く、また、音の繊細な調整などニュアンスを伝えるのが難しいかもと覚悟してリハーサルに臨んだ。「ギター、OK?」片言の英語でMASHが「ジャーン」と最初の音をかき鳴らし曲を弾き始めた瞬間、真剣な眼差しで見つめながら、細かく調整を始める音響スタッフ。「アルペジオの曲の時にマイクのリバーブをもう少しだけかけて欲しいんだけど、アルペジオって英語でなんて言うんだっけ?」そんな使ったことのない言葉だから、調べて伝えようとするやいなや、「この感じの曲の時は、リバーブもう少し欲しいんだろ?」二人が言葉を超えて音楽で会話をする瞬間を目の当たりにした。そして今振り返ると、この時からMASHのライブは言葉の壁を凌駕し始まっていた。


「彼はかつてHIPHOPを愛し、ラップをしていましたが、今はギターを手に持ちシンガーとして活動を続けています。僕らのツアーメンバーのほとんどが愛知県からやって来ましたが、まさに僕たちの街が誇るミュージシャン……MASHです!」「ハロー、アイムMASH、フロムジャパン!」片言の英語で挨拶をし、曲を始めるMASH。正直、後でこうして振り返るまで、なんの曲で始まったか覚えていないくらい、主催者の僕自身が緊張していた。しかしステージの上のMASHは飄々としているように見えた。何曲か披露し、合間合間に英語でMCを入れていたMASH。しかし「この中で、日本語を理解する人ってどれくらいいるんですかね?」とMASHが尋ねると、会場の半分くらいの人が手を挙げ、「結構いるんですね(笑)じゃあ、もうここからは日本語で話します。もし、わからない人がいるようであれば、隣の人が通訳してあげてください!」


MASHは続けた。「いつもに比べて緊張していないなと思っていたんですけど、違いました。2ヶ月前にこのライブが決まってから、ずっと緊張していたんだってことが今わかりました(笑)」そうかMASHも緊張していたんだ。そして、この瞬間から、会場の空気が変わった。もしかしたら、観る側にも、言葉だったり、詳しくは曲を知らないだとか、どこか身構えていた緊張感があったのかもしれない。MASHが自分の抱えていた想いを赤裸々に伝えた瞬間、見えはしないけれどそこに張り詰めていた膜は弾け、その後にMASHから発せられた歌声によって、会場全体が包まれていった。温かく、優しく、そして、強く。


「七月六日」、「稲穂」、そして「星が綺麗な夜に」。あんなにもポートランドでライブをやって欲しいと願っていた自分が、今、どこでMASHの曲を聴いてるのかわからなくなった。歌の世界で描かれる、自分の故郷や思い出の場所。そして、人。まだまだしばらく側にいてくれるだろうって思っていた大切な人が、突然自分の目の前からいなくなる。今回のツアーで旅してきた場所は全て、大切な父親との思い出の場所ばかり。その場、その場で感傷的になることはなかったけれど、いつだって存在は思い出す。そしてやっぱり思う、「側にいてよ(Stand By Me)」悲しみの涙、寂しさの涙でもあるけれど、MASHの歌の中で、久々に会えたことの嬉し涙が止まらない夜だった。

文◎小林拓一郎

◆MASH オフィシャルサイト
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