国府達矢、ニューアルバム2作同時リリースを発表

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昨年2018年に15年ぶりのオリジナル・アルバム『ロックブッダ』で完全復活を遂げたシンガーソングライター国府達矢が、ニューアルバム『スラップスティックメロディ』および『音の門』を9月25日に2作同時リリースするという。

この2作は、『ロックブッダ』の創作と前後してレコーディングされた全く異なるアルバムだという。なお、『スラップスティックメロディ』のジャケットは画家、高木真希人による描き下ろしで、『音の門』は漫画家、山本英夫の作品『ホムンクルス』から抽出した絵をアートディレクターの小田雄太(COMPOUND)がコラージュし、作り上げた。

▲アルバム『スラップスティックメロディ』

▲アルバム『音の門』(『ホムンクルス』 (c)山本英夫 / 小学館)

発売に先駆け、本作を聴いた盟友・七尾旅人をはじめ、いとうせいこう、ライター磯部涼からコメントが寄せられている。

■コメント

90年代の末、お互いデビュー前の若手ミュージシャンとして出会って以来、純真で優しく、音楽に全てをなげうつ男、国府達矢は、僕にとってまるで実の兄のように大切な存在だった。
そして同時に、最も困った存在でもあった。
2000年代初頭、メジャーを飛び出して作り上げた、早すぎた傑作「ロック転生」から、昨年になってようやくリリースされた「ロックブッダ」まで、15年も待たされようとは夢にも思わなかった。
15年間はおよそ5478日。その1日1日に、いろいろなことが起きたはずだ。何もしていなかったわけじゃない。でも一人のミュージシャンにとっては、気の遠くなるような年月だ。音楽の世界で欲望されること、消費の対象は、目まぐるしく移り変わっていく。この社会の、時代の表層的な欲動に国府達矢は背を向けて、5478日のあいだ、深層へ、深層へと、掘り進めていった。

彼にもういちど表舞台で音楽をやってもらうためなら、なんでもしたいと思っていた。しかし何をしても、一抹の不安が残った。その不安が晴れたのは今作「スラップスティックメロディ」のデモ音源を聴いた時。

国府さんは昔からいつでも現実より理想が先立ってしまう人だった。とても深い場所や、高みが見えているのに、肝心の足元が見えなくなる。本人いたって生真面目なのだが、現実の階段を踏みしめる前に、理想を高く高く掲げてしまう。もちろんそういう気質は必要だ。音楽で果てしない夢を見ようと思えば。
しかし、理想のためならこの男、人生まるごと潰してしまうのではないか。理想に喰い殺されかけていないか。そんな不安が拭えなかったし、実際に彼の生活は、いったんほとんど潰れてしまった。凍てついた暗やみの世界に彼は居た。

そのどん底で作られた「スラップスティックメロディ」が、これほど豊かで、広く、強い作品ならば、国府達矢は、これから何度でも立ち上がってくるだろう。そう思えた。
僕の知るそれまでの国府作品とは全く異質なアルバムだった。理想や思想、目指されるべきゴール。冷えた現実の前で、そうしたものの全てを粉々に砕かれて、空っぽのまま、ただ国府達矢として、立っているだけ。歌っているだけ。その姿のなんと美しく、輝かしいことか。ここにあるひとつひとつのメロディ、ハーモニー、言葉、音色、そのどれもが奇跡に思える。

国府さん、あなたは人間的にも音楽家としてもすごいやつだ。これを聴いていったいどれほどの人々が勇気を持つだろう。でもあなたに付き合っていくのはけっこう大変です。それでもあなたの音楽は、僕を一度も裏切らなかった。今までの作品も全て、僕の人生の特別な場所にあるけれど、もし1枚だけ棺桶に入れてもらうのなら、「スラップスティックメロディ」かもしれないな。こんな作品をありがとう。

その時期からさらに落ち込みまくって生死の境を彷徨いながら作ったのが「音の門」だと、自分は知っている。宮沢賢治にも比肩しそうな透徹とした詩をつぶやく国府達矢に、泣いたよ。でもその話はまた今度にしましょう。実際に3作品ならべて聴いてもらうのがいちばん良いもんね。
リリースおめでとう。
今度こそ、ほんとうの意味で、おかえりなさい、国府さん。

── 七尾旅人

  ◆  ◆  ◆

天国も地獄も果てまで歩いて、二枚のアルバムにポピュラリティを持たせてしまうとは。ディスイズ国府POP!

── いとうせいこう

  ◆  ◆  ◆

「日本のロック・ミュージック史におけるミッシング・リンク」……昨年、ようやく日の目を見た(元)幻の名作『ロックブッダ』についてそう書いたが、この『スラップスティックメロディ』『音の門』と続けて聴けばはっきり分かる。国府達矢の才能は、歴史の穴を埋めるどころか全く別の歴史を立ち上げるような、異様なものだと。

── 磯部涼

■アルバム『スラップスティックメロディ』

2019年9月25日発売
PECF-1172 felicity cap-314
定価:¥2,600+税

01. 青の世界
02. キミはキミのこと
03. 廻ル
04. not matter mood
05. 彼のいいわけも
06. fallen
07. 窓の雨
08. 青ノ頃
09. シン世界

■アルバム『音の門』

2019年9月25日発売
PECF-1173 felicity cap-315
定価:¥2,600+税

01. 日捨て
02. きみさえいれば
03. 悪い奇跡
04. KILLERS
05. 重い穴
06. 逃げて
07. こころよりじゆう
08. ライク ア ヴァーチャル
09. Poison free
10. 思獄
11. うぬボケ
12. おつきさま
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