ヤマハ、手軽に吹けるカジュアル管楽器Venovaにアルトバージョンが登場

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管楽器の本格的な演奏感や表現力をより気軽に、より身近に楽しめるまったく新しいタイプのアコースティック管楽器「Venova(ヴェノーヴァ)」に、アルトバージョンが仲間入り。「Alto Venova(アルト ヴェノーヴァ)」がヤマハより9月12に発売される。8月8日に開催された発表会には高野猶幸、福井健太、鈴木圭によるVenova Trioが登場し演奏を披露、Venovaの魅力を語った。


▲左の2本がアルトバージョンの新製品「Alto Venova」(市場予想価格は税別18,000円前後)、右が2017年発売の「Venova」(市場予想価格は税別1万円前後)。「Aloto Venova」は「Venova」よりもひとまわり以上長いが、シンプルな指づかいは継承。

カジュアル管楽器「Venova」の最初のモデルは2017に発売。円筒管を分岐させた「分岐管構造」と管を曲げて長さを稼ぐ蛇行形状による今までにない独自のデザインを採用することで、コンパクトなボディサイズながらサクソフォンのような音色を奏でることが可能。また、管体を蛇行させることで、管楽器初心者でも演奏しやすいリコーダーに似たやさしい指づかいで演奏が楽しめる。

ABS樹脂製のため、軽量ながら耐久性に優れ、水洗いができるのも大きな特徴。これらのデザインと機能、さらに管楽器ならではの本格的な吹き心地が、管楽器ビギナーだけでなく経験者にも満足できる楽器であると評価され、楽器として初めてグッドデザイン大賞(2017年)を受賞している。ちなみに「Venova」の名称は「Ventus(ラテン語で“風”)」+「Nova(ラテン語で“新しい”)」を組み合わせた造語から。「新しい管楽器Venovaで、あなたの日常に新しい風を届けたい」という思いが込められている。


▲Alto Venovaの本体サイズは590(L)×96(W)×55(H)mm(マウスピース、キャップ込み)、重量は293g(マウスピース、キャップ込み)。

今回登場した「Alto Venova」は、2017年に発売したソプラノ音域を奏でられる「Venova」の手軽さはそのままに、初めての人でもより演奏しやすく、落ち着いた音色を奏でられるアルト音域のモデルだ。


▲上が「Alto Venova」、下が「Venova」。実際に吹いてみると音を出しやすいのは圧倒的にAlto Venova」の方。ただし、手の小さい子供や女性にはキイ配置が広すぎるかも。

最大の特徴はアルトサクソフォンのような落ち着いた暖かい音色。マウスピースに付けたリードを震わせ発音し、アルトサクソフォンのような音色と、リード楽器ならではの本格的な吹き心地で表現力豊かな演奏が可能。また、ヤマハ独自の音響解析技術を生かして管体の内径と音孔の設計を最適化することで、2オクターブの音域を実現。多くの楽曲が演奏できる。音域はF33-F57(VenovaはC40-C64)。


▲音域は「Venova」がCから2オクターブだったのに対し、「Alto Venova」はその下のFからの2オクターブに。

▲マウスピースは「Venova」がソプラノサクソフォン用4C相当、「Alto Venova」がアルトサクソフォン用4C相当。キイの形状もそれぞれ異なる。

「分岐管構造」と蛇行形状によって、リコーダーに似た、習得しやすく演奏しやすいシンプルな指使いを実現しているので、管楽器初心者でも気軽に演奏が楽しめること、ボディがABS樹脂製のため、軽量で壊れにくく水洗いが可能なのは「Venova」と同様。耐久性が高く安定性に優れた樹脂製の専用リードを付属し、キイ部分のパッドにも安定性の高い合成素材を使用。丈夫でコンパクトなので、気軽にどこへでも持って行くことが可能。アウトドアでも気をつかわずに演奏が楽しめる。

本体の構造は「Venova」が一体型だったのに対し「Alto Venova」は分割式。マウスピースも異なり、「Vonova」がヤマハソプラノサクソフォン用4C相当だったのに対し、「Alto Venova」はヤマハアルトサクソフォン用4C相当となっている。サクソフォン用のマウスピースを使用したり、付属の樹脂製リードを葦製のリードに取り替えたりといった使い方も可能だという。


▲「Alto Venova」は分割式ボディでより手入れがしやすくなった。上下パーツの接続部分には合わせマークが入っている。

▲音程改善、操作性を考慮し、「Alto Venova」ではキイを新設計。Venovaではトーンホールアダプターで運指を変更できる仕様だったが、Alto Venovaではトーンホールアダプターを装着したのと同様にし、F#の音程を改善するキイを装着。F#の運指は指をずらして中央の穴をあける方式に。また、一体式キイユニット採用でパーツ交換も容易になった。

▲パッケージにはマウスピースやマウスピースキャップ、ストラップ付きのケース(右)、ガイドブック「Venovaを吹いてみよう」、専用クリーニングスワブなどが付属。別売りアクセサリーとしてクリーニングスワブ、専用樹脂製リードも用意される。

▲開発時の音響設計に使われたストレートバラック品(下)と3Dプリンター試作品(上)。ストレートバラックの長さは「Venova」が567mmだったのに対し、「Alto Venova」では807mmに。これで音色を決めた後、3Dプリンターで造形、幾度にわたる修正と試奏評価を繰り返し製品が完成した。

▲発表会ではサクソフォンプレイヤー、クラリネットプレイヤーとして活躍する3名からなるVenova Trioが演奏を披露。左から高野猶幸さん、福井健太さん、鈴木圭さん。

8月8日に開催された新製品発表会には、スペシャルゲストとして高野猶幸さん、福井健太さん、鈴木圭さんの3名からなるVenova Trioが登場。まずは「Venova」のデモムービーで使われているテーマソングをアルト用に編曲し直したバージョンを演奏。音程が下がり音色も変わったことで、ちょっと大人な雰囲気に。感想を聞かれると「リードが大きくなってる分、音は出しやすくなって、吹きやすくなったかなという印象があります」と福井さん。


▲福井健太さんは、「どんな曲が合うと思いますか?」との質問に「派手にイケイケな曲も当然吹けますけど、それよりも歌と同じように、肉声に近い感じで童謡なんかも吹いてもいいんじゃないかな」と回答し、「ふるさと」をソロでしっとりと聴かせた。

「サックスでもまったく同じことが言えるんですけども、実は大きいサックスと小さいサックスって、そんなに見た目のインパクトほど音が高い・低いってのはないんです。でも、大きい楽器の方が単純に下の音がよく鳴る、小さい楽器の方が上の音がよく鳴るんです。これ(Alto Venova)も従来のものよりも低音の方がスルッ、ポンッと出てくれる感じがちょっと新感覚で、ドキドキしながら吹いていました」と高野さんが続ける。

鈴木さんは、「前のVenovaを買った方が(周りに)すごく多くて。『どうだった?』って聞くと、すごいカンタンに音は出るんですけど『いろいろむずかしいところがあるね』と言われてたのが、こっち(Alto Venova)になると、改善というか。小さい楽器ほどコントロールがむずかしかったりとかシビアなところがいっぱいあるんですけど、(Alto Venovaは)大きくなったことで、音を出すことが楽になったというか、指を動かすとちゃんと音も変わる感じがすごい強い。演奏はしやすくなった感じがします」とコメント。


▲高野猶幸さんはシールでかわいくデコレーションした「Alto Venova」を持って登場。「自分の楽器にはシールなんて絶対貼らないんですけど、こういう楽しみ方ができるのは一つの特徴かな」と笑顔。どんな曲に合う?という質問には「郷愁というか懐かしい感じ」と答え、学校や街中で夕方に流れる「家路より」(元曲はドボルザーク)を演奏。確かにとてもぴったりくる選曲。

音色については「従来のVenovaってけっこう明るくて華やかな、どちらかというとサックス寄りのサウンドだったんですけど、Alto Venovaに関してはもう少ししっとりとした、大人びたというか……。あとはちょっとダブルリードの管の長い楽器にも音色が似ているかなと思って。すごく新鮮なんです! 私達にとっても。やっぱり新しい楽器なので、この音で、これが正解なのかな?と思いながら吹いてるというか。なので、吹いた方にそれぞれのオリジナリティがあるんじゃないかなと、楽しみにしております。」(福井さん)

続いては「VenovaとAlto Venova、ぶっちゃけどっちが好きですか?」という質問。「Venovaはかなりいろんなところで吹いたり演奏したりしてきたので、かなり親しんだところがあるんですけど、(Alto Venovaは)まだオモテで吹いたことがないんですよ。今日が初めてなので、まだこれから探っていきたいなというところがあるので。今はAltoに気持ちが動いてますけれど……。その場その場で、アンサンブルする時は誰かがAltoを吹いたりとか、Venovaの音色が欲しい時はVenovaを吹いたりということで。今、開発したいな、と思ってるのはAltoなんですけど。場面によって使い分けられたらなと思っております。」(福井さん)


▲鈴木圭さんはVenovaとAlto Venovaの両方を手に持って比較。「華やかにパーンッ!って吹くにはVenovaがいい」という一方、「Alto Venovaは男性が普通に歌ってる音程、音域でそのまま演奏できる」とそれぞれの音色の特徴を説明。

「お仕事でVenovaを『この音色、合うな』って思って使ったことがけっこうあるんですけど、やっぱりちょっと下が足りないな、音域的にあと何音か下が欲しいな、とちょうど思ってたんですよ。すると、これ(Alto Venova)があると、ちょうどいいんですよね。なんか男性の肉声ぐらいの音域なので。Venovaはすごい華やかな音色なんですけど、Alto Venovaはちょっと男性的というか、牧歌的な音がするので……。やっぱり2つで同時に演奏するとすごい多彩になるので、アンサンブルとしてはすごく向いてると思います。使い分けができるってのはすごいいいと思います。」(鈴木さん)

最後はVenovaとAlto Venovaを使って「いつか王子様が」を3人で演奏。軽やかな音色と牧歌的な音色が交互に展開。音域の広いバリエーション豊かなサウンドで、Alto VenovaとVenovaによるアンサンブルの魅力をしっかりと感じさせてくれた。


▲高野さんは限定販売されたイエローのVenova(すでに完売)とAlto Venovaを途中で持ち替えて演奏。3人がメロディと伴奏を交互に入れ替わり、多彩なサウンドで来場者を魅了した。

製品情報

◆Alto Venova YVS-120
価格:オープン(市場予想価格 18,000円前後 税別)
発売日:2019年9月12日
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