【ロングレポート】<FUJI ROCK '19>、広がりとアイデンティティ

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7月26日(金)、27日(土)、28日(日)に新潟県 湯沢町 苗場スキー場にて23回目の<FUJI ROCK FESTIVAL>が開催された。各日のヘッドライナーとして、7月26日(金)にTHE CHEMICAL BROTHERS、7月27日(土)にSIA、7月28日(日)にTHE CUREがGREEN STAGEに出演したわけだが、実際に現場に足を運んでみるととにかく来場者が多く、このフェスがいかに認知を深めているかを体感する3日間となった。近年増加している子供連れの姿を見かけることにも慣れ(場内のKIDS LANDはますます盛況だった)、またアジア圏中心に外国人も多かった。一方でSNS上では、YouTubeでのライブ配信に関する投稿が昨年から引き続き活気を帯びていたこともトピックのひとつである。そして、このフェスを支配する“天候”については、1日目は雨混じり、2日目は台風6号の影響による大雨、3日目は一転してほぼ晴天と、実に山らしい劇的な変化を見せた。

今年も濃密な体験を与え、いまだSNSで話題にのぼる2019年のフジロックの模様を、本稿ではさまざまな角度から振り返っていく。

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▲GREEN STAGE


▲前夜祭の花火



▲KIDS LAND


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オフィシャルからは、7月25日(木)の前夜祭から4日間で延べ130,000人が来場したと報告された。その内訳は、前夜祭に15,000人、チケットが完売した金と土曜は各40,000人、最終日の日曜には35,000人が訪れたという。特筆すべきは、金曜日の1日券が約1ヶ月前には完売したことだろう。既にその制度が忘れられている感もあるが、この日は、月末の金曜日を豊かに過ごそうというプレミアムフライデーにあたる。プレミアムフライデーの提唱もスタートした2017年に、フジロックを主催するSMASHの運営スタッフにインタビュー
した際には「平日に会社を自由に休むことができ、金曜日のチケットが売り切れるようになったら日本は安泰」というコメントがジョーク混じりながら述べられていたが、今年それが実現したわけである。



その賑わいの大きな要因の一つになったのが、昨年2018年に活動再開しフジロックには11年ぶりに登場したELLEGARDENであることは明白で、場外の物販エリアには、ELLEGARDEN専用の物販レーンが設けられたほどだ。勿論ライブもGREEN STAGEを人が埋め尽くし、会場に来られなかったファンが羨むセットリストが組まれた。また、2日目のWHITE STAGEに登場したAMERICAN FOOTBALLも出演発表の時点からエモ好きが湧いたアクトだ。万感の思いが宿るそういった光景は、フジロックが記念碑的なステージの場として継承されていることを物語っていた。


▲ELLEGARDEN



▲AMERICAN FOOTBALL


初日は、トップバッター陣も強力だった。GREEN STAGEに登場したのは、そのバンド名から今年は話題を集めたスコットランドのバグパイプ・バンド、RED HOT CHILLI PIPERS。前夜祭にもTV番組「スッキリ」にも生出演するなどプチ旋風を巻き起こした彼らと同時刻に、会場奥地のFIELD OF HEAVENに登場したのが、邦楽シーンで注目される中村佳穂だった。今年のフジロックは総勢245組が出演したが、到底すべてのステージは観られないアクト数の多さと内容の充実が早くも証明され、こうしたひとつ一つの選択を迫られた参加者は、千差万別のフジロック体験をする。


▲RED HOT CHILLI PIPERS


なお、同じくSMASHが主催する<ASAGIRI JAM>は、フジロックとは好対照にゆったりとしたタイム感が魅力のキャンプイン・フェスだ。昨年に引き続き、フジロックの会場内で第1弾出演アーティストが発表され、くるり、HOT CHIP、コーネリアス、cero、ハナレグミらという豪華なラインナップに盛り上がる人も見かけた。



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チケットが完売しているだけあって、広大なフジロック会場を移動する道にも人が多かったが、普段アウトドアに馴染みのない参加者にとっては、要所で舗装がされてきているとは言え、野性味のある道は歩いているだけで気分がいい。効率よく白線で仕切られ、まさに敷かれたレールの上を歩いているような都心の歩道とはまるで違って、自分が進めた一歩に手応えがあって異様に楽しい。そんな苗場の自然のなかで久しぶりに思い切り深呼吸をすると、解放感で満たされる。だがその反面、普段いかに息苦しいかを実感してしまい切なさも覚えたのが正直なところ。自由とその為の責任、といったフジロックで得られる価値観を日常にも持ち帰ることが、この時代にフジロックが存在する意味だと考えた。この日の出演者である七尾旅人やジャネール・モネイのステージから受け取ったエネルギーの影響もあったかもしれない。


▲JANELLE MONAE


夜になっても人足はまったく引かなかった。最新アルバム収録曲「Go」からライブがスタートしたTHE CHEMICAL BROTHERSは「Hey Boy, Hey Girl」といった代表曲も交えた構成やセンスのいい映像、大量のボールが客席に舞うといった演出に熱狂は増すばかりだった。一方でWHITE STAGEのトリをつとめたTHOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXESでは、THOM YORKEのテンションも高く(「コンバンワーッ!!」というごきげんな彼の挨拶に会場がザワついたほど)、解放的な空間を作り上げていた。それにしても、WHITE STAGEの音響は何故こんなに良いんだと疑問に思うほど良い。



▲CHEMICAL BROTHERS




▲THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES


今年のフジロックのトピックのひとつに、Bryan Burton-Lewisがプロデュースするオールナイト・フジの復活があった。雨天に見舞われながらも、会場最果ての地に向かっているとところ天国では野外シアター「富士映劇」で上映中の『ボヘミアン・ラプソディ』に集中している人々がしっかりといることに感心。ちなみに、フジロック会場で『ボヘミアン・ラプソディ』が観れるというチャンスを諦めて足を運んだのが、GAN-BAN SQUAREでおこなわれたニューカマー、THE ALEXのデビューライブショーだった。SMASH日高氏が代表を務めるレーベル「REXY SONG」から年内デビューする旨がフジロックのTwitterから事前に情報発信されていたが、メンバーの素性も明かされていない謎のバンドである。直感的にニュー・オーダーを想起させたが、魅惑的なフィメールボーカルにも興味をそそられ、今後の動向が気になった。






いざオールナイトフジの現場に足を踏み入れると、レコード盤で壁が作られた迷路が出迎えてくれた。地面がぬかるむなか、さらに歩みを進めると緊縛インスタレーションが行われていたり、ライブステージではWRENCHに熱狂する人々がいたり。得体の知れないカオスな空間に、フジロックのはずせない魅力の一つを見る。

▲昼間のorange caféと迷路


だが、この日のピークタイムはこの後に来た。27時のKID FRESINOのステージだ。このRED MARQUEEには、TORO Y MOIやMITSKIのステージに外国人含めて溢れんばかりのオーディエンスが夕方から集まっていて、夜中のターンでもBIGYUKI、YAEJI、KAYTRANADAが沸かせていた。その熱狂を受け継ぐように、バンドセットでパフォーマンスしたKID FRESINOはゲストを招いたスペシャルなステージを展開した。「Arcades ft.NENE」のイントロでオーディエンスがざわつき、実際にゆるふわギャングのふたりが登場したのだから爆発的に盛り上がった。コラボが世界的に話題になったケミカルのステージにNENEが登場することを期待していたこともあり、KID FRESINOのステージでのサプライズは嬉しかった。「誰よりも楽しめー!」とシャウトしたNENEの言葉はすべての若者に届いてほしい。

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