【インタビュー】マカロニえんぴつ、カラフルでアイディア豊富な遊び心と等身大のメッセージを両立させた『season』

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■4人全員の曲が入ってるから4という数字を前面に出したいことと
■リスナーに対しての“あなたの旬でいたい”という強い思い


──せっかくメンバー全員が作曲に関わっているから、全曲について語りましょう。2曲目に登場するのが田辺由明さん作曲の「恋のマジカルミステリー」。

田辺:僕の曲が入るのは今回が初めてなんですけど、僕自身80'sのハードロックがすごく好きで、どうしてもそういうフレーズになるんですよね。それをデモで持って行ったら、“逆に80'sぽい音色やフレージングで振り切ろう”ということになって、サビの鍵盤の…。

長谷川:アルペジエイターね。

田辺:今こんなことやる若手バンドは絶対いないでしょうと(笑)。でもそっちに振り切ることで、古臭いものをマカロニえんぴつなりにうまく消化できた曲なのかな?と思ってます。

はっとり:温故知新ですよ。ドラムのスネアの“ドーン!”っていうリバーブの効いたうるさいぐらい主張してるサウンドも、よっちゃんが好きなヴァン・ヘイレンとか、あのへんの感じをどうにか出せないかな?と思って、エンジニアの人に“すかんちみたいな感じでお願いします”とか言って。でもメロディはポップでキャッチーですごくいいと思う。80'sの感じは特にしないというか。

田辺:それなら良かった。うまいバランスで消化できたのかなと思ってますね。

──そして3曲目が「二人ぼっちの夜」。さあ高野さん。

高野:これは仮タイトルが「水槽」で、世界は広いけど魚たちにとっての世界は水槽の中だけで争うのも仲直りするのも水槽の中の出来事だというイメージです。昔、熱帯魚が好きで飼っていたことを不意に思い出したんですよね。それを人間に置き換えると、会社とか学校とか、自分が関わる友人や上司はほんの小さなスペースだけ。そのバチバチした感じを出したくて、ギターを歪ませて鍵盤はシロタマで、アレンジを詰める時間もそんなにかからず。

はっとり:曲のイメージがそんなにあったとは本当に知らなくて。言ってくれないんですよ。作り終わったあと、何ならいま知ったから(笑)。

高野:僕が作ったテーマに影響されない、はっとりの詞が見たかったんで。

はっとり:俺を試したのか? どこまでこいつ行けるか?って。

高野:そう(笑)。

はっとり:クソー。水槽だけに泳がされた。


──うまいね、どうも。

はっとり:じゃあ、賢也のイメージでは恋愛詞じゃなかったんだ。

高野:じゃなくて人間関係。

はっとり:それを僕は恋愛のほうに持って行って、狭い世界でだらだら続いちゃってる、終わりに向かってる恋なんだけど、あなたじゃなくてもいいと思ってるけど、この居心地の良さに甘えてしまっているという切なさを、“二人ぼっち”と表現しました。今まで作った恋愛曲の中でも上位に入る切なさを醸し出してる気がします。

──「TREND」行きますか。作曲は長谷川大喜さん。これまた妖しい曲。

長谷川:そもそも僕のテーマとして、他の3人が作らなそうな曲を作りたいと思っているので、僕なりに“歌いづらさ”を求めていたところがあるんですね。Aメロなんかはコードの和音の中にない音を引っ張ってきているから、普通の人には歌いづらいんですよ。でもあえて、みんな音大出身だし。

はっとり:見せつけてやろうと(笑)。ダイちゃんは『LiKE』ですごいポップなほうに寄せて来て、“みんなで歌える曲を”とか言って、あのダイちゃんがポップスを作るようになったのかと思っていたら、次がこれだったからやっぱり歌いづらいほうに行かせたいんだなと(笑)。でもサビが良かったから、これ入れようということになった。レコーディングが面白かったね。

長谷川:2番の頭は遊ぼうということになって、スタジオにあったありとあらゆるものを使って、鉛筆削りのザーッていう音とか、ペットボトルの水をこぼす音とか。

はっとり:ラジオで流れてた英会話のレッスンみたいな音を拾ってきて入れたり、カオスにしたかったんですよ。僕がニワトリの物まねをしたんですけど、結局レベルを下げられて聴き取れないとか(笑)。それとベースライン。

高野:他のメンバーは8小節周期で演奏してるんですけど、自分だけ3小節周期で弾いています。時々、俺は今どこで何をやってるんだ?と思いながら。

はっとり:本来こういう曲って、イエスとか、ジェントル・ジャイアントとか、プログレバンドが10分以上かけてやるタイプの曲なんだけど、短い中でそれをやるためには、ポップからそれてちょっと崩壊しちゃってもいいんじゃないか?と。


▲田辺 由明(Guitar & Chorus)

──これ、歌詞がすごく響きます。皮肉で、でもリアルで。

はっとり:これもよっちゃんの「恋のマジカルミステリー」と一緒で、曲の雰囲気が呼んだ歌詞でもあります。今回の『season』というアルバムタイトルに込められた思いも、この曲で代表して言ってる感じはあります。

──そうなんだ。そこんとこ詳しく。

はっとり:シーズンというと、春夏秋冬の四季を最初にイメージすると思うんですけど、4人全員の曲が入ってるから4という数字を前面に出したいと思って『season』にしたのと、シーズンには“旬”という意味もある。最近、旬と言われる機会が増えたんですよ。今が旬のバンドだとか。そこに違和感を覚えていて、旬になった途端いつか腐る時が来るんじゃないか?と思ったし、旬になって取り上げられるのは喜ばしいことだけど、僕らが目指している方向は、リスナーの心の逃げ場所になることなので。マカロニえんぴつの曲に頼ってくれた時に、ハマるタイミングは人それぞれだということをツアーでも実感したんですけど、いつどのアルバムから出会っても、その人がすごく必要としてくれた瞬間がその人にとっての旬であれば全然かまわないと思ったんですね。歌っている内容として、聴く人のそばに寄り添う温度感でやっているから、“あなたの旬でいたいです”という思いが強まったタイミングでのミニアルバムなので『season』というタイトルをつけました。「TREND」という曲はそれをすごく皮肉っぽくとらえながら“トレンドになるつもりはない”と歌っている。トレンドに食いつくことがステイタスになるのではなくて、自分が必要としたものを…それは『LiKE』も同じで、自分がライクと思ったものをラブにしてくれという思いが前作にはあったんですけど、誰かのトレンドに振り回されるんじゃなくて、本当にいいものを吟味して愛してほしいという、それは音楽に限らず、当たり前にみんながしていれば、本質がどんどん磨き上げられていくんじゃないかな?と思うので。「TREND」にはそういう思いを込めました。

──順序が反対になっちゃったけれど、はっとりさん作詞作曲の1曲目「ヤングアダルト」。この渾身のメッセージも、このミニアルバムを象徴していると思います。

はっとり:これができた時は“来たな”と本当に思いました。夜中の2時くらいに家の防音室にこもって、ギターを弾きながら“♪ハロー絶望”ってしゃべるような感覚で言葉が出てきた。そんな経験はほとんど初めてだったので自分でも興奮しました。自分で自分を感動させることができないのが産みの苦しみというか、自分の曲では絶対に泣けないんですよ。でも感動に近い瞬間はたまにあって、それがこの曲のAメロで、メロディと言葉の相性がすごく良くて、嘘がなくて、サビ前の“♪愛情なんだけどな”までは一気に作りました。それからサビを作って。


▲高野 賢也(Bass & Chorus)

──夜を越えるための唄が死なないように。まっすぐで強い言葉。

はっとり:これを出すタイミングは、もっと先でもいいんじゃないか?という声もあったんですけど。これは今出さないと意味がないし本当に今の自分の等身大なので。たぶん30歳になったらこの曲の気持ちには戻れない。生々しい葛藤や愛に飢えた気持ちや何とも言えない孤独感や様々な感情を持つ人たちに“俺たちも一緒だよ”って、似たもの同士だから、辛いことがあっても絶対死ぬなよって言いたかった。「青春と一瞬」から派生したような歌詞ではありますね。人間はいくつになっても悩み苦しむものだと思うし、それに自分の中でとりあえず答えを出してあげたのが「青春と一瞬」で、「ヤングアダルト」は答えを出し切れてないんですけど、絶望というものを俯瞰で見るのではなく“ああ、やって来たな、ハロー、絶望”っていう感じで受け入れちゃえばいいんじゃないかな?と。それで悩む人の気持ちをちょっと楽にさせてあげられる歌になればいいとすごく思っています。

──それがこのアルバムのテーマだし、マカロニえんぴつのテーマだとすごく思いますね。それを遊び心を加えて音でも表現するところが、バンドの素晴らしいところ。掴みましたね、やるべきことを。

はっとり:やっと掴んできた感じはあります。あとは手を出していないジャンルはたくさんあるし、エレクトロな方向にも興味があるし、まだまだやりたいことはあります。とりあえず今の段階でバンドが自然にたどり着けた作品である気がしています。

取材・文●宮本英夫


リリース情報

『season』
2019.9.11 ON SALE
初回限定盤[CD+DVD] TLTO-018 ¥2,700(税込)
通常盤[CD] TLTO-019 v\1,944 (税込)
M-1. ヤングアダルト
M-2. 恋のマジカルミステリー
M-3. 二人ぼっちの夜
M-4. TREND
M-5. 青春と一瞬
M-6. two much pain(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
M-7. ワンドリンク別(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
M-8. 哀しみロック(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
M-9. レモンパイ(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
M-10. STAY with ME(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)

ライブ・イベント情報

「マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~」
2019年
10/25(金)神奈川 F.A.D yokohama
10/30(水)香川 高松 DIME
11/ 1(金)広島 Cave-Be
11/ 8(金)宮城 仙台MACANA
11/10(日)北海道 札幌BESSIE HALL
11/14(木)新潟 GOLDENPIGS RED
11/15(金)長野 松本ALECX
11/17(日)石川 金沢vanvan V4
11/23(土)大阪 梅田クラブクアトロ
11/24(日)名古屋 新栄SPADE BOX
11/29(金)福岡 DRUM Be-1
11/30(土)熊本 熊本B.9 V2
12/ 6(金)静岡 FORCE
12/13(金)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
2020年
1/12(日)東京 マイナビBLITZ赤坂

●追加公演
「マカロックツアーvol.8 おかわり篇~東名阪追加公演だよ!きっともっとホットに温めます、春夏冬で商い(秋ない)中~」
2019年
12/4(水)愛知 NAGOYA QUATTRO
12/7(土)兵庫 神戸太陽と虎
12/14(土)京都 KYOTO MUSE
2020年
1/11(土)東京 マイナビBLITZ赤坂

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