【ライブレポート】布袋寅泰、<GUITARHYTHM VI TOUR>完遂「自分らしく生きるための唯一の方法」

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布袋寅泰のアルバムツアー<HOTEI Live In Japan 2019 -GUITARHYTHM VI TOUR->の最終日、8月29日の神奈川県民ホール公演を体験した。

◆布袋寅泰 画像

音楽と人とがまれに見るレベルで切り結んだ一夜だった。場内に足を踏み入れたのは開演20分前。すでに手拍子と布袋コールが始まっていた。立ってコールしているのは若いファン。座って手拍子しているのは20年、30年と追いかけてきたとおぼしき人たち。親子づれもたくさんいる。母親と娘、というのはよくあるパターンだけど、ここは父親と息子、娘が多い。それが同じツアーTシャツを着て声援を送っている。元スタッフの方が子供を連れて、という姿も見かけた。

まさにファミリーなお客さんたち。その反応は開演の何十分も前からコールが起こっていることからも窺えるように、平均的なライブのそれとは一段違っていた。午後7時少し前、場内アナウンスが流れる。その瞬間、普通だったらアーティストが登場した時にこそ起こるような歓声が湧き上がった。さらに開演を告げるBGMが流れると、今度はそれが聴き取りづらいぐらいの大歓声に変わり、ステージに本人が姿を現すと、もうゴーという歓声を超えた音が場内に充満。一人のアーティストとその音楽に対するマックスの期待から、ライブは始まっていった。


本編前半。布袋はニューアルバムの2曲目から5曲目までを曲順どおりに聴かせた。まず「Middle Of The End」。不協和音になる寸前で調和を保つAメロ。キャッチーなサビ。軽やかに浮遊するブレイク。音楽と深くコンタクトしてきた人間だけが作り得るナンバーだ。続いて「Doubt」。ギタリズムのリズムの部分を地でゆくリズム押しの曲。反対に一貫してメロディー押しの「Shape Of Pain」。絶妙な悲しさ漂うアルペジオがVRの中に活きる男の物語にピッタリな「Black Goggles」。通算18枚目のアルバムのテイストが今なお曲ごとに大きく異なり、かつそのどれもが誰とも似ていない。この事実だけでもお客さんの熱烈な声援に応えうるものだろう。

6曲目「Clone」。新作ではコーネリアスが関わっていた曲だ。ここではギターを手放して歌い演じていた布袋。しかしスタンドに据えられたギターを弾いてのソロパートは圧巻だった。大胆にコンピュータ編集されたようなニュアンスを手弾きで作り出していて。王道も実験も、どちらでも行ける。ギタリストとしての彼の希少な強みもさらに凄みを増していた。続いて1988年に発表された最初のギタリズム・アルバムより「MATERIALS」と「GUITARHYTHM」。30年も前から今に通じるオリジナリティーが発揮されていたことを証明するナンバーたちだった。

曲が終わってピアノの前に座る布袋。アコーディオンに持ち替えたキーボーディストとのアバンギャルドな即興演奏が始まった。このときの音選びがまた鋭かった。さらにピアノ弾き語りでギタリズム第2作から寂しげな3拍子の「ANGEL WALTZ」。そのピアノが撤去されたのちは一転、新作収録のめちゃくちゃモダンなコード進行のバラード「Calling You, Calling Me」。悠々と歌い終わって、いったん彼は去っていった。

転換時はバンドのみがインストを演奏する。布袋がいなくなったところで「FROZEN MEMORIES」という名の曲を演るとはシャレが効いている。

12曲目「Give It To The Universe」。登場したのは布袋だけじゃなかった。彼につづいて頭が狼の奴らが! トーキョー・タナカとジャンケン・ジョニーとカミカゼ・ボーイ。布袋の再登場で盛り上がったところに、さらにマンウィズだ。これは完全に火に注がれた油。両者の音楽的接点をたくみに活かした楽曲だけに、盛り上がりも特大。ここからやはり新作収録の「202X」を経て「BAD FEELING」「BE MY BABY」「DANCING WITH THE MOONLIGHT」へ。後半のピークに向かう気配アリアリのセトリに場内がさらに湧く。そしてボーカリストが交代し始めた。布袋単独から集まったお客さん全員へと。


さらに布袋の短いアオリから総勢2500人のアンサンブルで「C'mon Everybody」「GLORIOUS DAYS」。続く「MERRY-GO-ROUND」のエンディングでテクニカルなフェイクを見事にきめた布袋は、まずファンに感謝。今回のツアーでは初めていった場所、半分ぐらいが新しいお客さんだった場所があったことなどを報告したあと、メンバー紹介へ。ただ名前と担当を叫ぶだけではない、心のこもった個々の紹介だ。特に、初めて聴いたロックが『GUITARHYTHM III』だった男が自分が最も信頼するギタリストになった、というサポートギタリスト・黒田晃年の紹介は、そのストーリーにひときわ大きな喝采が起こった。そして最後に、来場したすべての人へのギフトにもなるような言葉が聞けた。

「弱っちい自分じゃ勝ってもしょうがない。強い自分でいたい。そんな自分を乗り越えるのはなかなか難しいことかもしれないけど、自分らしく生きるための唯一の方法だと思います」

その言葉を受け継ぐような曲「LONELY★WILD」で本編は終わりを告げた。驚いたのはそのあとだった。前半からアクティヴに動きつつ、その時の衣装はビシッとしたスーツだった。後半はもう少しラフな格好に変えたものの、今度は片足を大きく上げてリズムをとるあのスタイル連発だった。本編20曲だけでもすごい運動量。その上でアンコールを3曲。セカンドアンコールは超高速な「バンビーナ」。さすがにこれで終わりかと思いきや、自分ひとりだけ戻ってきてギター弾き語りで「さらば青春の光」。そして終演後は再びスーツに着替え、疲れた様子などみじんも感じさせずに多くの関係者の一人一人と丁寧に応対。ボクはそこで「やっとやりたいことが形になってきたかんじなんだよね」と聞いて、さきほどのMCのセリフが蘇った。

強い自分をのりこえていくことが自分らしく生きる道。それを1981年のBOØWYのデビューから40年近く、1988年のソロデビューからでも30年以上続けて、いまようやく形になってきた“やりたいこと”。今回のライブで体感した尋常じゃない音楽性の広さ、ギタリストとしての幅、集中力の総和はまさに、その言葉にふさわしい大きさだった。その彼がステージで「次はもっと最高の布袋になる」と叫んでいたことも思い出した。だからきっと拍手は鳴り止まない。新たな幕が開く前から。

取材・文◎今津甲
撮影◎山本倫子

■<HOTEI Live In Japan 2019 -GUITARHYTHM VI TOUR->8月29日@神奈川県民ホールSETLIST

01. Welcome 2 G Ⅵ
02. Middle Of The End
03. Doubt
04. Shape Of Pain
05. Black Goggles
06. Clone
07. MATERIALS
08. GUITARHYTHM
09. ANGEL WALTZ
10. Calling You, Calling Me
11. FROZEN MEMORIES
12. Give It To The Universe (布袋寅泰 Feat. MAN WITH A MISSION)
13. 202X
14. BAD FEELING
15. BE MY BABY
16. DANCING WITH THE MOONLIGHT
17. C'mon Everybody
18. GLORIOUS DAYS
19. MERRY-GO-ROUND
20. LONELY★WILD
encore
21. 季節が君だけを変える
22. Thanks a lot
23. DREAMIN'
encore2
24. バンビーナ
encore3
25. さらば青春の光

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