【ライヴレポート】deadman、13年ぶり復活ワンマンで「また会う日までよろしくね」

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deadmanが2019年9月9日、東京・LIQUIDROOM ebisuにて活動休止から13年ぶりのワンマンライヴ<oneman live 2019 -before the dawn->を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆deadman 画像

「エンドロールって言うと、解散や終わりのイメージが強いかもしれないけど、映画には続編がつきものだから」──これは13年前、aieがとある雑誌のインタビューで語ってくれた言葉である。活動休止前のラストツアー<endroll>に向けた心境を尋ねたときに、彼は未来についてそんな風に、約束のようで約束ではない言葉でインタヴューを結んだ。そのときは映画好きの彼らしいウィットに富んだ返しだな程度にしか思っていなかったし、もともとビジネスライクなバンドでもなかったから、内心“そうは言っても事実上の解散…”なんてことも心のどこかでは思っていたりもした。事実、活動休止から13年という区切りらしい区切りでもないこのタイミングでの復活という点からも、今回の再演が狙ったものではなく自然発生的に生まれたものだということをうかがい知ることができる。




開演10分前。なにが飛び出すかわからない不安感と、それを少しだけ上回る期待感が入り混じるなんともいえない見世物小屋的な雰囲気が場内を包み出すと、気持ちはおのずと13年前にタイムスリップしていく。ふとPA席のメインテーブルに目を向けると、deadmanのライヴではお馴染みだったスタッフが当時と変わらぬ位置で陣取っていた。すると次の瞬間、定時ジャストに記憶と現実ははじけた。

BGMがノイズと共に唸りをあげ、開演を告げる暴力的なダンスビートが場内を不穏に塗り替える。この定時ジャストというスタイルは彼らが長年積み上げてきたひとつのライヴの封切りの仕方だった。違うのは今夜ステージに立つメンバーのほう。オリジナルメンバーである眞呼とaieにメリーのテツ(B)とlynch.の晁直(Dr)をサポートに迎えた新編制で、見る人が見れば名古屋オールスターな装いである。





「25」で幕を開けたライヴはいきなりのドライヴ感に度肝を抜かれた。晁直とテツが一体となって轟かせるビートにaieのリフがガチガチに絡んでいく様は実にスリリングで、それは立て続けに放たれた「please god」でより色合いを深め、どちらかといえば退廃的な表情を覗かせていたはずの楽曲が瑞々さを宿してメンバーから解き放たれていく。その感覚になにやら経験したことのない新鮮な衝撃を覚える。

しかし一方で、「ウェルカム! ようこそ兄弟!」という眞呼の挨拶がわりの短いMCが会場を沸かすと“ああ、やっぱりdeadmanだ”とハッとさせられる。また、「溺れる魚」で頭を振り乱すロングウェーヴの女性たちの隙間からちらほら短髪を見つけると、“そうだdeadmanは昔から男性ファンが多かったな”なんて記憶も蘇ってくる。みんなずっとこの日を待ってたんだ。



陰鬱でやるせない感情表現は彼らを形成する絶対的バンドカラーであり、光が届かない世界に引きずりこむ眞呼のフロントマンとしての存在感は楽器隊の豊かな表現力によって今夜は狂気をより色濃く滲ませていた。ステージの中央にへたりと崩れ落ち、客席に横顔を向けながら宙を見つめる「ドリスからの手紙」は、そのあまりの無力感漂う姿にモニターが地下牢に置かれた机のように見えてしまうから不思議で、「蟻塚」ではランタンをかざしながらさまよい歩く動作で不穏を表現する。こうした小道具を使った楽曲世界のイメージ喚起も彼らの独自性のひとつだろう。

また、独自性といえばMCを極力排除したステージというのも印象のひとつだったが、「蟻塚」の直後に眞呼が「しゃべるのは苦手なんだけど…」と前置きしつつマイクを取り、出し抜けに8月のSchwarz Steinライヴにゲスト出演した時のMCエピソードを披露しようとするなど(話の途中でaieに「眞呼さん、やめときましょう」と止められていたが)、ギャップがイメージを塗り替える(いい意味で雰囲気を崩す)場面も見られ、そういうところにいまの彼らの関係性が写されているような気がして微笑ましかった。





終盤はライヴでは欠かせない楽曲で固められた。イントロが鳴った途端に「おおー!」と歓声が上がった「lunch box」でフロアは再燃し、紫のフラッシュが妖しさを醸し出した「through the looking glass」で大いに頭を振ると、極め付けの暴れ曲「quo vadis」でさらに畳みかける。そしてトドメは「re:make」か!?と思いきや、そこはサラリと「sons of star fucker」で繋いで本編を駆け抜けた。

意外な締めに驚いていると、さらに意外なことにこの日は珍しくアンコールも用意されていた。やはり今日のdeadmanはなにかが違う。そんなことを考えていたら、aieからちょっと遅めのメンバー紹介があり、そこで今日のセットリストの99%はテツ考案によるものだということが明かされた。残りの1%の行方が気になったが、定番の「re:make」ではなく「sons of star fucker」が本編のラストであったことや、かつては1曲目や場面転換後のブロックの頭を飾りがちだった「盲目の羽根と星を手に」がいきなりブロックの最後に演奏されたことの理由がわかったような気がした。しかし、それにしても13年ぶりの自分たちのワンマンであるにも関わらずサポートメンバーにメニューを託すという点に、バンドを私物化せずに解放している様や、その変化や反応を彼ら自身が楽しんでいる気がして、12月に控えている東名阪クアトロツアーに向けて展望が広がったように思う。




「また会う日までよろしくね」と告げてステージを去った眞呼を見届けながら、「雨降りの悪い夢」「桜と雨」「ブルーべジー」「family」「in media」「聖者ノ行進(when the saints go marching in)」「銀のパラソル」…などなど、気づけば終演後に今日聴けなかった楽曲の数々を指折り数えている自分に気付く。聴き足りない。でもまだ終わりじゃない。今回の映画の続編は、どうやら期待してもよさそうだ。

取材・文◎柳本剛
撮影◎荒川れいこ (zoisite)

■<deadman oneman live 2019 -before the dawn->9月9日@東京・LIQUIDROOM ebisuセットリスト

01. 25
02. please god
03. 受刑者の日記
04. blood
05. 溺れる魚
06. asthenia bullet stain
07. monster tree
08. 向日葵
09. this day.this rain.
10. ドリスからの手紙
11. follow the night light
12. 蟻塚
13. star baby
14. rip roll soil
15. raison d’etre
16. 盲目の羽根と星を手に
-imp-
17. lunch box
18. through the looking glass
19. quo vadis
20. sons of star fucker
-encore-
21. 色別の亡い空虚
22. god
23. bodybag No.
24. re:make
25. additional cause for sorrow

■東名阪ワンマンツアー<tour2019 -twilight->

12月09日(月) 渋谷クラブクアトロ
open18:00 / start19:00
12月16日(月) 名古屋クラブクアトロ
open18:00 / start19:00
12月17日(火) 梅田クラブクアトロ
open18:00 / start19:00
guest musician:テツ(メリー)/晁直(lynch.)
▼チケット
スタンディング 前売¥6,000(税込)
※ドリンク代 600円別
一般発売日:10月26日(土)10:00~

■[before the dawn] 追加公演 SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO 20TH ANNIVERSARY [till dawn]

2019年10月16日(水) 新宿LOFT
open18:00 / start19:00
▼出演
deadman guest musician:テツ(メリー)/晁直(lynch.)
▼チケット
前売¥5,600- (税込・整理番号付)
※入場時ドリンク代別途¥600-
オールスタンディング

■<メリー18周年記念公演「ノスタルジヰ」>

2019年11月7日(木) 恵比寿LIQUIDROOM
open18:30 / start19:00
▼客演
deadman guest musician:テツ(メリー)/晁直(lynch.)
▼チケット
前売り¥5,500- / 当日売り¥6,000-(共にD別)
※オールスタンディング
一般発売:10/27(日)
・チケットぴあ
・ローソンチケット
・イープラス
(問)NEXTROAD 03-5114-7444

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