【インタビュー】レルエ、初フルAL『Alice』完成「ファンタジックなものを求めている」

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■ 音楽って情報戦だなぁって思うんです

── 音楽的なルーツとしても、海外の音楽からの影響が強いんですか?

櫻井:「身体を揺らす」という点に関してはEDMとかの影響が強いと思いますし、基本的には洋楽のインディ界隈を中心に聴いてきました。でも、歌に関しては「日本語でどれだけ届けられるか?」っていうことが、この国のシーンでやっていくうえでは大事だと思うので、宇多田ヒカルさんとかYUKIさんも好きだったりしますね。

── スケールの大きなサウンド、日本語の歌、それぞれの面で優れた人たちからの影響を受けてきたんですね。

櫻井:言い方は変ですけど、僕は、サウンドに関しては情報戦だと思っているんですよ。どれだけインプットしたかが、その作品に出ると思っていて。

── 「情報戦」という言葉は、バンドマンから初めて聞きました(笑)。

櫻井:そうですよね(笑)。でもやっぱり、引き出しが少ないと、ポップな音楽は作ることができないと思う。「難解な音楽をどれだけポップにできるか?」は、どれだけ引き出しの量があるかにかかっているなって思います。僕は、曲作りをする時は、家でDTMとかを使ってミニマムに作るんですけど、その段階で、どれだけ聴いている人を想定したディレクションできるかによって、その音楽のポップさは決まってくると思うんです。ターゲティングというか、「この曲はどういった層にはまるかな?」とか、曲を作りながらすごく考えるんですよ。そのためには、たくさんの音楽を聴いていないと、考えることすらできないんですよね。だからやっぱり、音楽って情報戦だなぁって思うんです。

── なるほど……非常に現代的な考え方なのかもしれないですね。

saya:今の音楽って、ちょっとした音の違いで「今っぽい」とか「そうじゃない」とかが現れてきますよね。アレンジが同じでも、音の違いで感じ方が違ってきたりする。だからってもちろん、流行に合わせればいいっていうわけでもなくて。そういう意味でも、「自分たちは、なにを取捨選択するか?」っていうことはすごく大事な部分だし、根本的に情報を持っていないと、選ぶことすらできない。なので、ちゃんと情報を集めつつ、「自分たちはなにを選ぶのか?」っていうことをちゃんと判断していきたいなって思うんですよね。

── そこに、自分たちの個性や美意識、あるいは知性が色濃く反映されますもんね。

▲アルバム『Alice』通常盤

saya:それこそ、今の時代はツールがあるから、簡単にある程度のラインの音楽はみんな作れるし、それをYouTubeに上げることだって簡単にできる時代ですよね。変な言い方をすると、プロフェッショナルが作った洗練された作品と、誰でも作れるような作品が並列に並べられてしまう。でも、初めて音楽を聴く人は、その作品がどういったレベルのものか判断できない可能性だってあるじゃないですか。そういう意味で、今はすごくカオスな状況だし、そのカオスさゆえに優れた作品もあるかもしれない……でも、プロとして音楽を作る私たちとしては、自分たちが「間違いない」と思えるものを作って、それをより広く知ってほしいんですよね。「誰でもできる」ことが悪いことだとは思わないけど、これだけモノに溢れていると、プロが作る洗練された作品を知らないままで、人生を終えていく人だっているかもしれないわけで。

── そうですね。

saya:そういう意味でも、「文化を残していきたい」っていう気持ちが、私は強いです。これまでいろんな人たちが受け継いできたものが途切れてしまわないように、積み上げられたものを、ちゃんと後世につなげていきたいなって思うんですよね。

── よくわかります。ただ、それこそ櫻井さんが「情報戦」というように、これだけ情報の多い世の中だからこそ、自分たちが鳴らしたい音、作りたい音楽にそれ相応の芯がないと、情報の波に埋もれてしまう可能性だってある。今のレルエには、「自分たちがなにを選ぶのか?」という問いに対しての選択基準は、明確にありますか?

櫻井:そうですね。言葉にすると難しいですけど、そこで問われるのが「センス」なんだろうと思います。「自分たちが、なにをかっこいいと思うのか?」っていうことがわかっていなければ、いい音楽を作ることはできないから。

── そのレルエの「センス」の部分を、ぜひ言語化したいです。

櫻井:う~ん……音を言葉にするのは難しいですよね(笑)。

saya:全部をトータルして、なにか1個のポイントを追い求めているというよりは、曲によってはダイナミクスを追い求めていたりもするし、他の曲では「BGMのように聴いてもらえればいいね」っていうのもあるし……それぞれの曲に、それぞれのポイントがあるような気がします。裏を返すと、どの曲にも、他の曲にない「ここがかっこいい!」って思える部分があるかどうかが大事、というか。そういう曲だったら、聴いていても飽きないし、聴くのがしんどいなって思わないと思うんですよ。

── 聴き手としてレルエの音楽に一貫していると思うポイントを言うと、それは最初にも言った「ロマンチシズム」という部分が大きいのかなって思うんです。歌詞の幻想性もそうだし、メロディもビートも、非常にスケールの大きなものが、大胆なくらいに堂々と鳴っていますよね。これは、音楽に対して「自分」の存在を超えるようなロマンを求めていないと、作れないものだと思うんですよ。

櫻井:そうですね……等身大な音楽や、聴いている人と距離が近い音楽も多いとは思うんですけど、僕はもっと幻想的な、ファンタジックなものを求めているな、とは思いますね。

saya:曲を聴いて、違う世界に入っていけるようなものがいいよね?

櫻井:そう、現実的なものというよりは、非現実的なものがいいなって思う。テーマパークのアトラクションのような、エンターテイメント性は大事な部分だなって思っていますね。今回のアルバムも、曲ごとにいろんな世界感があるし、いろんなイメージを渡り歩くような感覚があると思うんですよ。

◆インタビュー(3)へ
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